■掛留音をつかうことで、「音階」を見事に浮上させる Bachの手法 ■
~ 29日の平均律第 2巻 15番 G-Dur アナリーゼ講座 ~
2014.5.26 中村洋子
★5月22日、Germany ドイツ北西部の街 Oelde ( エルデ ) で、
知人のピアニストにより、私のピアノ独奏曲を 4曲、
ドイツ初演していただきました。
「 大成功でした、なんと沢山の感激の言葉を承った事でしょう…!」
という連絡が、入ってきました。
この演奏会につきましては、後日、ご報告いたします。
★「 Musikverlag Ries & Erler Berlin リース&エアラー社 」 から、
出版されます、私の 「 Suite für Violoncello solo Nr.2
無伴奏チェロ組曲 第 2番 」 の、最終校訂がやっと終わりました。
3回にわたり、綿密に細部を詰めました。
休む間もなく、
「 Suite für Violoncello solo Nr.4 無伴奏チェロ組曲 第 4番 」 の、
校訂に、取り組んでいます。
★5月 29日 の カワイ表参道 「 平均律第 2巻 アナリーゼ講座 」 は、
≪ 15番 G-Dur ≫ です。
この 15番は、平均律第 2巻の頂点ともいうべき
悲嘆に満ちた ≪ 14番 fis-Moll ≫ と、
峻厳で重厚な ≪ 16番 g-Moll ≫ とに、挟まれ、
可憐で無邪気、一見 “ 谷間の百合 ” のようにみえる曲です。
★しかし、 Furtwängler の ≪ Matthäus-Passionマタイ受難曲 ≫ を、
勉強したいまとなりますと、
「 なんと深く、恐ろしい曲であることでしょう!」 と、
溜息が、出てきます。
★講座では、まず、≪ Matthäus-Passionマタイ受難曲 ≫ の第 1曲の、
「 バスの上行音階 」 の意味について、ご説明したします。
その後、この上行音階と、15番との関連を、お示しします。
★具体的には例えば、15番 Fuga の 62小節 2拍目 「 D 」 から、
65小節の 「 d2 」 まで、 3オクターブにわたる ≪ 上行音階 ≫ が、
突如、 32分音符で出現します。
あたかも、 Fuga 終結部の華やかな cadenza カデンツァのように、
見えますが、それだけでは、ありません。
実に、重い役割を担っているのです。
★このパッセージは、とても一筋縄では、いきません。
Bach がなぜ、青天の霹靂のように、ここに cadenza のような音階を、
わざわざ、もってきたのでしょうか?
それを解明するのが、先ほどの ≪ Matthäus-Passion マタイ受難曲 ≫
での、「 バスの上行音階 」 なのです。
★≪ Matthäus-Passion ≫ 冒頭 6小節目のバス、
「 E ~ c1 」 まで、オクターブを 6度超えた 13度の音程を、
駆け上っていきます。
講座では、この上行音階のもつ深い意味、15番との関連を、
徹底的に、お話いたします。
★この 15番 Fuga で現れる、極めて特徴的な 「 非和声音 」 が、
≪ suspention 掛留音 ≫ です。
例えば、16~22小節は、上声ソプラノ声部各小節の 第 1拍目は、
すべて、 tie タイ によって、前の小節から suspention で、
結ばれています。
★なかでも、 35 ~38小節は、冒頭の音が 2度づつ下行し、
これが、音階の一部となります。
★もし、 ≪ suspention 掛留音 ≫ でないとしますと、
このように、なります。
★ Bach はなぜ、≪ suspention 掛留音 ≫ を、
つかったのでしょうか?
suspention 掛留音のような 「 非和声音 」 から、
「 本来の和声音 」 へと進行することを、 「 解決する 」 といいます。
≪ suspention 掛留音 ≫ をつかうことは、
その 「 解決 」 を、小節第 1拍目で、すべて 「 遅らせる 」
ことになります。
★ 「 遅らせる 」 ということは、 “ 気をもたせる ”
ということです。
即ち、 tie タイ で引き伸ばされることにより、
これらの小節に含まれている ≪ 大きな音階構造 ≫ が、
浮かび上がってくるのです。
音階を強調している、ということなのです。
奥深い Bach の技法です。
-------------------------------------------------------
■ 平均律 第 2巻 アナリーゼ講座
第 12回 第 15番 G-Dur BWV884 Prelude & Fuga
~平均律 2巻前奏曲になぜ、Binary form(二部構成)が多いのか~
■ 日 時 : 2014年 5月29日(木) 午前 10時 ~ 12時 30分
■ 会 場 : カワイ表参道 2F コンサートサロン・パウゼ
■ 要予約 : Tel.03-3409-1958
-------------------------------------------------------
■ 講師 : 作曲家 中村 洋子 Yoko Nakamura
東京芸術大学作曲科卒。作曲を故池内友次郎氏などに師事。
日本作曲家協議会・会員。ピアノ、チェロ、室内楽など作品多数。
2003 ~ 05年:アリオン音楽財団 ≪東京の夏音楽祭≫で新作を発表。
07年:自作品 「 Suite Nr.1 für Violoncello
無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 などをチェロの巨匠
Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー氏が演奏した
CD 『 W.Boettcher Plays JAPAN
ヴォルフガング・ベッチャー日本を弾く 』 を発表。
08年:CD 『 龍笛 & ピアノのためのデュオ 』
CD 『 星の林に月の船 』 ( ソプラノとギター ) を発表。
08~09年: 「 Open seminar on Bach Inventionen und Sinfonien
Analysis インヴェンション・アナリーゼ講座 」
全 15回を、 KAWAI 表参道で開催。
09年: 「 Suite Nr.1 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 1番 」 を、
ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。
「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲第 3番 」が、
W.Boettcher 氏により、Mannheim ドイツ・マンハイム で、
初演される。
10~12年: 「 Open seminar on Bach Wohltemperirte Clavier Ⅰ
Analysis 平均律クラヴィーア曲集 第 1巻 アナリーゼ講座 」
全 24回を、 KAWAI 表参道で開催。
10年: CD 『 Suite Nr.3 & 2 für Violoncello
無伴奏チェロ組曲 第 3番、2番 』
Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
「 Regenbogen-Cellotrios 虹のチェロ三重奏曲集 」 を、
ドイツ・ドルトムントのハウケハック社
Musikverlag Hauke Hack Dortmund から出版。
11年: 「 10 Duette für 2 Violoncelli
チェロ二重奏のための 10の曲集 」 を、
ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。
12年: 「 Zehn Phantasien für Celloquartett (Band 1,Nr.1-5)
チェロ四重奏のための 10のファンタジー (第 1巻、1~5番)」を、
Musikverlag Hauke Hack Dortmund 社から出版。
13年: CD 『 Suite Nr.4 & 5 & 6 für Violoncello
無伴奏チェロ組曲 第 4、5、6番 』
Wolfgang Boettcher 演奏を発表 。
「 Suite Nr.3 für Violoncello 無伴奏チェロ組曲 第 3番 」 を、
ベルリン・リース&エアラー社 「 Ries & Erler Berlin 」 から出版。
スイス、ドイツ、トルコ、フランス、チリ、イタリアの音楽祭で、
自作品が演奏される。
★上記の 楽譜 & CDは「 カワイ・表参道 」 http://shop.kawai.co.jp/omotesando/
「アカデミア・ミュージック 」 https://www.academia-music.com/ で販売中
★私の作品の CD 「 無伴奏チェロ組曲 4、 5、 6番 」
Wolfgang Boettcher ヴォルフガング・ベッチャー演奏は、
全国の主要 CDショップや amazon でも、ご注文できます。
★ disk Union クラシック館で、第1 ~ 6番を購入できます。
※copyright © Yoko Nakamura
All Rights Reserved
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲