音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■  Bach の「 イタリア協奏曲 」は、対位法の秘術を尽くした曲 ■

2011-11-18 21:18:08 | ■私のアナリーゼ講座■

■ Bach の「Italian Concerto イタリア協奏曲 」は、対位法の秘術を尽くした曲■
                    2011.11.18    中村洋子

 

 

★風邪をひいている間、 Bach  の 「 Messe in h-Moll  ロ短調ミサ 」 の、

自筆譜を見ながら、Sergiu Celibidache 

セルジウ・チェリビダッケ(1912~1996)や、

Eliot Gardiner エリオット・ガーディナー(1943~) の演奏を、

 CDで、聴いていました。


★また 「 Zweyter Theil  der  Clavier Übung  bestehend in 

einem Concerto nach Italianischen Gusto und 

einer Ouvertüre nach Französischer Art  1735 」 

( クラヴィーア ユーブング 第 2巻、イタリア趣味の協奏曲とフランス風序曲 )

初版本も、仔細に見ました。

「 Concerto nach Italienischen Gusto イタリア協奏曲 」 の自筆譜は、

失われていますが、この初版本は、

Bachの生前に出版されており、かなり信頼が置けます。


★当時は、銅板に彫って楽譜を作っていました。

私は、このイタリア協奏曲の “ 彫師 ” に、好感をもちました。

「 The Italian Concerto was  carefully engraved and

Bach made few corrections 

Bach は、ほとんど訂正しなかった 」 と、されています。

Bach の自筆譜をそのまま、極めて忠実に 「 彫った 」 と、思われます。

そのように忠実に、楽譜を出版することは、

このブログで絶えず書いてきましたように、極めて、稀です。

 

 


Italian Concerto は、 13ページにわたって、記譜されています。

1ページは、8段で構成され、現在の実用譜の 5~ 7段と比べますと、

一見かなり、過密に書かれている、という印象を受けます。

しかし、この楽譜は縦長にできています。

音符の彫りがとても美しく、じっと眺めておりますと、

泉から、水がコンコンと湧き出るように、

音楽が、溢れ出てきます。


★楽譜の構成を見ますと、

・第 1楽章 : 1 から 5 ページ

・第 2楽章 : 6 から 7 ページの 7段目まで

・第3楽章  :  7 ページ の 8段目 ( 最後の段 ) から 13ページの 4段目まで


★この 13ページの、残り半分の 4段分については、

五線は、書かれていますが、

なにも、音符は書かれていません


★この Bach の初版版の記譜法は、現代の常識的な記譜法からみますと、

いろいろな疑問が提示されることでしょう。

何故、第 3楽章を、わざわざ 7ページの一番下の 8段目から始めたのか?

8段目を空白にして、次の 8ページ目から始めれば、

きれいに、すっきりとします。


★  “ 彫師 ″ は、 Bach  に忠実に彫ったのですから、

この非常識的なレイアウトは、 Bach  本人の意図とみて間違いありません。

では、 Bach の意図とは、なんだったのでしょうか?

 

 


★結論を申し上げますと、このレイアウトにこそ、

 「 couterpoint 対位法 」 の秘密が、詰まっているのです。

 「 couterpoint 対位法 」 の究極といえるほどの 「 秘術 」 が、

ここに、見られるのです。


★1週間遅れで開きました 「 アナリーゼ教室 」 で、

それを、詳しくご説明しました。

解明するヒントを少し、お示ししますと・・・

1) 初版版  6ページ目の冒頭部分を、じっくりとご覧になり、

視覚的に、記憶にとどめてください。

そして、 7ページの終わりの部分まで、目を通してください。


2) 次に、8ページの冒頭部分を、 じっくりとご覧ください。


★答えは、自ずと出てくることでしょう。

「 couterpoint 対位法 」 は、干からびた、

教科書に書かれるだけの理論では、ありません。


★私は、この1週間、 「 Messe in h-Moll  ロ短調ミサ 」 の自筆譜を、

詳しく、見ることで、

また、新たに Bach から、楽譜の読み方を  “ 習い ” ました。

その成果により、「 Concerto nach Italienischen Gusto 

イタリア協奏曲 」を、より深く、理解することができました。


★「 Concerto nach Italienischem Gusto イタリア協奏曲 」は、

 「 couterpoint 対位法 」 の、 「 秘術を尽くした曲 」 だったのです。

≪ ここに 「 couterpoint  」 のすべてがある ≫ のです。

≪これを学べば 「 couterpoint 」 が、分かる ≫ のです。

 

 

                                          ※copyright © Yoko Nakamura
▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲

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