もう1週間以上前になりますが、川崎市多摩区の路上で、私立カリタス小学校の児童ら20人が殺傷された事件は酷いものでした。18年前の6月、大阪教育大学附属池田小学校内で発生した小学生無差別殺傷事件を、否が応でも思い出してしまいます。
今回は、犯人が自殺したものだから、怒りのやり場もなく、なぜそういう凶行に及んだかの解明も困難を極めています。ただ、この犯人は両親が離婚して伯父夫婦に引き取られたものの、自分に対する愛情を感じなかったことから性格が歪み、伯父夫婦の子供(つまり犯人とはいとこ同士)が私立カリタス小学校へ行き、自分は公立へやらされた…というような恨みが今回の凶行につながったのでは、という見方もあります。もしそうなら、40年もの間、恨み続けていたというのも、驚くべきことです。今回被害に遭われた園児と保護者とは全然関係ないのに、なぜこの人たちが標的にされなければならないのか、全く狂気の沙汰という他はありません。
そして今度はまた、別の事件で、元農林水産事務次官だったという76歳の男性が、暴力的な言動を繰り返していた44歳の長男を殺害したという、またも衝撃的な事件が起きました。殺害理由は、日ごろから両親に暴力を振るっていた長男が、隣の小学校の運動会がうるさいと怒り「ぶっ殺してやる」と口走ったので、父親が注意をすると、さらに長男が荒れた。父親は川崎市の殺傷事件を連想して「息子も子どもたちを襲うかもしれない」と思いつめ、長男を殺害したということでした。
世間の声は元次官の男性に同情的な意見が多く寄せられ、一方ではそれを巡ってマスコミでは「感情と意見とは分けなければならない。殺人を容認するような空気を漂わせてはいけない」という自戒を込めた論調も出て、波紋はどんどん広がっていくばかりです。
僕は、この元次官が本当に気の毒だと思いますが、長男をこういう人間に育ててしまった責任感、というのも親として、痛切に感じておられたのかも知れません。いずれにしても、子どもたちに危害を加える危険性があると感じたら、それを未然に防ぐための殺人というのは、一体どういう量刑になるのか、今後の裁判の行方が注目されるところです。もしかしたら、多方面から嘆願書などが集まるかもしれませんが。
さて、これらのことは連日新聞・テレビ等で大きく報じられているので、皆さんもよくご存じだと思いますが、2件とも「引きこもり」が事件の大きな要因になっていますね。
川崎市で児童らを殺傷した51歳の男も、そして元事務次官に殺害された44歳の長男も共に「引きこもり」だったということで、それで今は俄然、この中高年の「引きこもり」が注目を浴びることになってきました。
40歳から64歳までの、いわゆる「中高年の引きこもり」は、内閣府の発表では61万3000人で、その約80パーセントが男性とのことです。でも、ある識者によると、実際には200万人ぐらいいるとのこと。
僕はこれらの一連のニュースで、 「8050(ハチマルゴーマル)問題」とか、あるいは、 「7040(ナナマルヨンマル)問題」というような言葉があるということを、今回初めて知りました。
新聞によると、80代の高齢の親と、引きこもる50代の未婚の子が同居する家族の諸問題を「8050問題」と呼んだり、また、親が70代で子が40代の「7040問題」もあるそうで、長期引きこもりに加え、介護離職、高齢者虐待、経済的困窮など、複数の困難が折り重なっている事例も少なくないとされている、ということだそうです。
「7040問題」なんて言われると、僕は70歳になったし、2人の息子は共に40代なので、まともにそれに当てはまりますよね。ま、わが家はいま同居のモミィが13歳なのでそのうち「7010(ナナマルイチマル)問題」というのが出てくるかもしれません。「世代が離れすぎて話がかみ合わない」なんてね。
それにしても、 僕自身、どちらかと言えば一人でいるのが好きな人間なので、自分の以前の印象としては「引きこもり」というのは、社会に適応できない人が家に引きこもってしまう可哀想な現象で、毎日何をして過ごしているんだろうか? 寂しくないんだろうか? いや、もしかして人との煩わしい接触がないので案外心静かに過ごしているのだろうか? などと、あれこれ勝手な推測をしていましたが、それほど深刻な事態だとは思っていなかった。
しかし、その考えが変わった出来事が起きたのです。
僕が唯一知っている身近な引きこもりの男性は、昔の次男の幼なじみで、同じ幼稚園、小中学校に通い、うちの家にもよく遊びに来ていたK君でした。家もわが家の斜め向かいで、ごく近所でした。
子どもの頃は、うちの次男や長男たちとよく遊び、ホントに可愛くて、無邪気で、屈託のない男の子だったのですが、中学を卒業してから急に姿を見なくなりました。
近所の人の話から、K君は家に引きこもっていると聞いたのはいつ頃だったのか? 学校にも行かず、仕事にも就かず、ずっと家に引きこもっているという。どういう理由だったのか知る由もありませんが、そのK君が30歳になる少し前の頃だったか、ある日、近くの大和川で入水自殺をしたのです。
わが家の近くに流れる大和川は、普段はそれほど水量はなく、溺れるほどではないのですが、近くに架かる橋の橋桁(はしげた)の周りが深くなっていて、そこでK君の遺体が見つかったとのことでした。
それを聞いた時、K君の小さい頃を思い出し、「引きこもり」がどれほど辛い毎日だったんだろうか、と涙が止まらなかったのを覚えています。
わが家の近所には次男と同じ年齢の男の子が5人いました。
一番左側がうちの次男。右から2人目がK君でした。
今回の2つの事件の「引きこもり」男性は、一方は殺人者で一方は被害者ということになりますが、2人とも日ごろから凶暴性を秘めていたようです。そういう「引きこもり」が一部にいる(あるいは大勢いる?)という話を聞いて、実はかなりのショックを受けているところです。
最近、子が親を殺したり、親が子を殺したり、夫が妻を、妻が夫を殺したり、孫が祖父母を殺したり、など、家族や親族同士の殺人事件がしょっちゅう報道されていますが、今回の元次官の長男殺害事件は、その動機において、これまで聞いたことのない異例中の異例の事件だと言ってもいいでしょうか。
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