このあいだ、奈良市役所の庁舎の前を通ったら、
庁舎正面の庭に、こんな歌碑が建っていました。
皆さん、読めます…?
僕は、もちろん、読めません。
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話は違いますが、僕が38年間勤務した松原市役所で、
最初の部署が「市史編さん室」というところでした。
新入職員として、人事課長さんか誰か忘れたけれど、
おエラい方から辞令を手渡され、それを見ると、
「秘書課 市史編さん室勤務を命ず」とあった。
「なに…? 市史編さん室って…?」
市民課とか税務課とか福祉課というのならわかる。
しかし「市史編さん室」なんて、聞いたことない。
これは松原市の古代から現代までの歴史を編纂し出版する…
という目的で、その年度に新設された部署であったそうな。
そんな部署で、僕は、大学の先生らを相手にし、
市役所での仕事の第一歩が始まったわけである。
直属の上司は秘書課長で市史にはほぼノータッチ。
職員は僕一人で、あとは嘱託の人が一人いただけ。
何だかいきなり左遷されたような気分でもあった。
その仕事のひとつに、古文書(こもんじょ)の管理があった。
古文書とは、昔の庄屋さんだった家などに残っていた文書で、
それをお借りして、とても普通の人には読めない字体なので、
嘱託の人がそれを読み、原稿用紙に書いてゆく作業をする。
古文書というのは“くずし字”もいいところで、
本当に、何が書いてあるのやらさっぱりわからない。
↑ これは一例です(ネットから拝借しました)。
そこで僕も、嘱託の人に教えてもらいながら、
古文書の読み方を、少し勉強したことがある。
…というわけで、冒頭の奈良市役所前の歌碑の字も、
当時の僕であれば、だいたい読みこなせたかも知れない。
しかし、あれから恐ろしいほどの年月が経ってしまっている。
「う~ん、なんて書いてあるんだろう?」
と、僕は歌碑の前で立ち止まり、つぶやいた。
もちろん、妻もモミィも、わかるはずがない。
ここで、ふと、百人一首を思い浮かべた。
(百人一首は得意ですからね~。えへへ)
奈良といえば、この歌が有名ですよね。
いにしへの 奈良の都の 八重桜 今日九重に にほひぬるかな
「それじゃないの?」と僕は歌碑をじぃっと見つめた。
もう一度、同じ写真をここへ出しますが…。
右の下「奈良の都」というところだけは一緒ですが、
でもそのほかは、明らかにこの歌とは違いますよね。
では、これはどういう歌なのか…?
そこで威力を発揮するのがスマホです。
インターネットで「奈良市役所前 歌碑」で検索すると、
奈良市のHPの「万葉歌碑めぐり」というのにヒットしました。
そこに、これが出てきたのです。
あをによし 奈良の都にたなびける 天の白雲 見れど飽かぬかも
という歌でした。な~るほど。
碑にはそう書かれてあるのですね。
これも、わりに有名な歌のようで。
で、現代語訳では…
青土香る奈良の都にたなびいている天の白雲、
この白雲は見ても見ても見飽きることがない
ということだそうです。
…と、まあ、そんなお話でした。
ちなみに、前述の市史編さん室のことですが、
僕はそこに2年間だけ勤め、税務課に異動しました。
その後、市史編さん室は廃止、市史は教育委員会に移管され、
「松原市史」が発行されたのは、20年以上経ってからでした。