僕のほそ道   ~ のん日記 ~

  
これと言ったテーマはなく、話はバラバラです。 つい昔の思い出話が多くなるのは年のせい? 

村上春樹について語るときに僕の語ること

2013年04月15日 | 読書

村上春樹の久しぶりの長編小説「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」が出た。例の如く発売前から話題となり予約注文が殺到するという、前回の長編小説「1Q84」と同じ現象が、今回も起きているようだ。


この「1Q84」のBOOK1からBOOK3まで出たときもそうだったが、僕がこれを読んだのは、BOOK3の発売後1年ほど経ってからである。村上春樹の新作ならぜひ読みたいという気持ちはむろんあるが、発売前から予約するほどは急がない。まだ読んでいない村上さんの短編やエッセイなども沢山あるし、既読の作品のいくつかも読み直してみたい。焦ることはない。ぶら~っと本屋に入って、この「色彩を持たない…」を本棚で見つけ「あ、そうだ。この本をまだ読んでいなかったんだ」と気づいた時の喜びも、捨てがたいものなのだ。


それにしても「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」とは、長いタイトルだ。もっとも、村上さんも長編小説を出すたびにこれだけ騒がれるのだから、凡作であってはならないのはむろんのことだが、発売されるまでタイトル以外ストーリーはいっさい明かさないので、ファンにとって作品の唯一の手がかりとなるタイトルにはすごくこだわっているはずである。「1Q84」も意表をつく題名で、ナンなのだ?と興味を引きつける。今回の長い題名も、そうだよね。


この題名を見て、僕は以前に読んだ村上さんのマラソンについて書かれた本、「走ることについて語るときに僕の語ること」という長いタイトルを思い起こさせた。まあ、今回も、いかにも村上さんらしいタイトルだと思う。


その「色彩を持たない…」について、昨日の朝日新聞の読書欄に、けっこう詳しくストーリーや解説が盛り込まれた書評が載っていたので、丁寧に読んでみた。村上さんの作品の魅力は筋書きや評論だけでは到底わからないのだけれど、この書評にはなんとなく「匂う」ところはあった。


「色彩を持たない」という意味は、主人公の多崎つくるクンが高校生の頃、男女2人ずつの親友がいて、その4人は姓に色が入っており、それぞれ「アカ」「アオ」「シロ」「クロ」というあだ名で呼ばれていたが、多崎クンの姓だけが色を持っていなかった…というところから来ているそうだ。


そして多崎クンは20歳になる頃、その親友の4人から突然、身に覚えもない絶縁を宣告され、死にたいほどのショックを受ける。その絶縁の真相を確かめるために、彼の「巡礼」の旅が始まる…というストーリーのようである。


「巡礼」は最後にはフィンランドの片田舎へ向かうということだが、そういえば「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」でも、「博士」がフィンランドに行っちゃうシーンがあったなぁ、なんてことをふと思ったりした。しかし「文章は平易だが物語が難解」と言われるように、一筋縄ではいかないのが村上さんの小説である。やはり新聞でこういう解説を読むと、「そこにどんな謎が隠されているのか…? う~ん、早く読みたい」とも思ったりしますね。


で、ここからは蛇足ですが、村上さんに関することで、書こう書こうと思っていたことがひとつあります。3年ぐらい前に映画化された「ノルウェイの森」のことですが…


「ノルウェイの森」が映画になると聞いたとき、この小説を映画にするというのは、どう転んでも無理ではないかと思った。だから映画化されたあとも、見ないままに来たのだけれど、去年の大晦日にBSでそれが放映された。見ても失望するだけだろう…と思いながらも、やはり気になったので、とりあえず録画だけしておいた。そして録画して3ヵ月ほど経った先日、その映画を見たのである。


予想どおり、何の見どころもないつまらない映画だった。まさにヤマなしオチなしイミなし…であった。映画が始まる前、字幕で「過激な表現がありますが、原作を尊重し、そのままで放映します」みたいなことが出ていたが、ほんとに、登場人物が発する卑猥な言葉がこの映画の中心を成すように見えた。俳優では、松山ケンイチは少し甘えん坊っぽい演技が気になったが、さほど悪くはなかった。しかし直子を演じた菊地凛子が不適役で、小説に登場するイメージのカケラもなかった。もう少しそれらしき直子を演じられる女優はいなかったのだろうか。


映画自体も小説の断片を寄せ集めたような構成で、原作を読んでいない人にはさっぱりワケがわからない映画だっただろうし、原作を読んでいる人には、何か小説のダイジェストを映像で見せられているようで、これが映画としてどんな感動を呼び起こすのか…? 戸惑うばかりだったのではないか。


しかしまあ、考えてみれば、映画の出来としてはこれが精一杯だったのかもしれない。元々、映画化するのは無謀だったのだから。…今ごろ3年前の映画についてとやかく言うのもナンですけどね。


蛇足のそのまた蛇足 


2009年(平成21年)6月17日のこのブログで「ノルウェイの森」を再読した感想文を書いているが、そこで少しだけこれの映画化について触れている。ちょうど映画化されることが決まった時期で、「あの物語がどんな映画になるのだろうか…。見当もつかない」と書いている。しかしまあ、これは少し控えめな表現であって、実は「どうせロクな映画にしかならないだろ」と思いながらも、遠慮してそう書いたような記憶が残っているのでありマス。

 

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