僕のほそ道   ~ のん日記 ~

  
これと言ったテーマはなく、話はバラバラです。 つい昔の思い出話が多くなるのは年のせい? 

耳鳴りの近況

2009年02月19日 | 心と体と健康と

18日、耳鳴り治療のため、大手前病院へ行った。
最近は、2ヶ月に一度の割合でこの病院へ通っている。
ここで「TRT療法」を続けている。
治療というより、経過観察とかカウンセリングみたいなものだけど。

これまでにも書いてきたが、TCIという耳鳴り治療器を耳につけて、そこから発せられるノイズで耳鳴りの苦痛を和らげ、耳鳴りとうまく付き合っていくように慣らしていく、というのがこの療法であり、耳鳴りを治すとか消すとかではなく、慣れるための訓練…というものである。

TCIを改めて紹介すると…。

http://www.siemens-hi.co.jp/trt/trt3.php 

こういうものである。

これを付けていると、たいていは、
「耳が遠いんか…? その補聴器は、よう聞えるか…?」
などと、補聴器と間違われる。当然、誰もTCIのことは知らない。

そのつど、これは耳鳴りをノイズで和らげる器具だと説明するのだが、相手はもうひとつピンとこないようなので、このごろは面倒だから、補聴器か? と聞かれたら、まあね…と曖昧に答えることにしている。

TCIは、このHPにもあるとおり、ひとつ約6万円という価格なのだが、自分の日記を見ると、去年の2月6日に購入している。

そのときは耳鳴りが発症してから4ヶ月余り経った時期で、何をするのも嫌なほど気分が塞ぎ、毎日がうっとうしくて仕方なかった。少しでも楽になれるように、TCIを早く手に入れたかった。その望みがやっと叶い、よっしゃ~、これで一息つけるぞ~、と喜んだものだ。

しかし、気になることがあった。このTCIを製造しているのはシーメンスという会社1社のみだったが、そのたった1社しかない同社が、3月をもってこのTCI製造から撤退する…という情報が流れていたのである。病院の技師さんに確かめたら、果たして、それは事実であった。4月からTCIの在庫もなくなるだろうと言う。えらいこっちゃ。もし今のものを失ったりしたら、二度と購入できないわけだ。いろんなものをなくす癖のある僕としては、きわめて切実な問題であった。それが去年の2月のことだ。

2月、3月は、病院の検査室には、白衣姿の技師さんの後ろに背広をきちんと着込んだ若い男性が控えていた。TCIの販売員だった。その背広姿も、やがて4月を過ぎると、見かけなくなった。やはり、本当に撤退してしまったんだなあ、と寂しい思いだった。

それが、前回(去年の12月)に行ったら、久しぶりに背広姿の若い男性が奥のほうに座っているのが目に入った。
「あれ…? 珍しいな~」と思った。
その人は、僕のTCIを、ちょっと貸して下さい、と言って、耳にはめる先っぽのゴムの部分を丁寧に掃除をして、返してくれた。

そして今回も、またその男性がいた。
僕が検査室に入っていくと、その男性が起立して深々と礼をする。
こちらも、あ…どうも~と、あわててお辞儀をする。

椅子に座ると、技師さんが、
「シーメンスは一度撤退しましたが、また復活することになりました」
そう言ったとき、僕はどれほど喜んだことだろうか。
あ~、これで安心、安心。よかった。うれし~い。

そして、また奥の背広姿の若い男性が、僕のTCIを手にとり、点検してくれた。毎回こうして器具をチェックしてもらえるのはありがたい。

TCIを耳につけていると、気分が落ち着く。

つけ始めて1年経過した最近では、つけるのを忘れたり、あるいは、電池が切れていて音が全然出ていないのに、つけたままそれに気がつかなかったりする。そんなケースが増えてきた。

「いい傾向ですよね」と技師さん。
「最終的には、TCIを外しても、耳鳴りを苦痛に感じなくなる、というのがこの療法のねらいですから…。順調な経過だと思います」
技師さんは、そう言ってくれた。
何となく、心がなごむ。

僕はまだまだこのTCIを外すことができないと思う。
「まだ当分つけ続けたいと思っていますが、別にいいんですよね」
そう言うと、技師さんは、
「副作用などがありませんので、問題はないですよ」
と、答えてくれた。

ひと通り、耳鳴りに関する近況を報告し、アドバイスを受けたあと、
「次回は、どうしますか…?」と技師さんが尋ねた。
「また2ヵ月後に予約をお願いします」
「じゃあ、4月中旬ですね。何日がいいですか?」
「いつでもいいです」
「では、4月○○日ということで…。時間は何時がいいですか?」
「何時でもいいです。もう4月には僕は退職していますから」
そう僕が言うと、技師さんは、
「えっ? 4月で退職…ですか?」
「はい。フリーですから、何日でも、何時でもいいですよ」
「そうですか…。退職されるのですか…」

そして、技師さんは、仕事を辞めたら耳鳴りが改善されるかも、という意味のことを言ったあと、でも…生活が不規則になったり、時間があり余ったりする状態が生じたら、逆に耳鳴りに悪影響が出るかも知れない、というようなことも付け加えた。

そのとおりだと思う。
ここが、とても重要なところなのだ。

仕事を辞めれば、ストレスが半減するだろう。
退職したら、仕事の煩わしさから解放される…最近はそう考えただけで、ぶるぶる~っと喜びに全身が震えるぐらいだから。
その分、ストレスが減ると、耳鳴りもマシになるかもしれない。

しかし…
ライフスタイルが「毎日が日曜日」状態に激変するわけだから、膨大な自由時間をどう使うかによって、生活のリズムが変わってくる。ヒマを持て余すような生活だと、かえって耳鳴りが気になり、状態が悪くなるということだって十分に考えられるのだ。

そこのところを、技師さんが指摘してくれたのである。

通り一遍の言葉ではなく、核心を突いた指摘である。

僕は思わず背筋をピンと伸ばして、姿勢を正した。
「そうですね。おっしゃるとおりです。退職後は、いろんなことに関心を持って、前向きでリズミカルな生活を送ることをめざします」
僕がそう言うと、技師さんは
「そうですね。それがいいですね」
と、何度もうなずいてくれたのである。

このまま耳鳴りに慣れていくためにも、退職後は充実した人生でなければならない。このろくでもない、呪わしい耳鳴りも、多少は僕の人生に役立ってもらわなければね~。

「ではまた4月に…」と僕は立ち上がりながら技師さんに言った。
「ここへ来るのが、楽しみになってきているんですわ」

お世辞でもなんでもなく、本当にそう思って、そう言った。

 

 

 

 

 

 

コメント (4)
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