信州自由人

のぐケーンのぶろぐ

ユリ科 カタクリ属、バイモ属

2024年03月02日 | 山野草

ユリ科カタクリ属のカタクリ(片栗)、「春の妖精」を代表する花のひとつです。
同じく春の妖精を代表するセツブンソウの群生地で見た株です。
「片栗」の名は、鱗茎の形がクリの片割れに似るからとか。


春の暖かい陽射しを受け、木々が葉を茂らす前のわずかな時期に花を開きます。
実を結び葉が朽ちる頃には林床に陽がほとんど届かなくなります。


お寺の裏山、愛好者の皆様に大事に保護さているカタクリの楽園です。
ピンク色の花カタクリに混じって白色の花ニリンソウもご機嫌です。


左の株は父が存命の頃からのもので、すでに数十年間この場所の主です。
西側には家が、上はカキの木が覆い、朝日のみが射し込む場所です。


雄蕊は6個で長短3本ずつあり、長い方の雄蕊の葯が先に成熟して裂開します。
暗紫色の葯の中心にピンク色の雌蕊が覗き、花柱はわずかに3裂します。
朝日を浴びると花を開き、夕暮れに閉じて、それを繰り返します。
花被片は背面で交差するほど強く反り返りますが、曇りや雨日には開きません。
花を下から覗くと、花被片の基部にある濃紅色の模様が楽しめます。


開花後は3室からなる果実ができて、各室には数個~ 20個程の胚珠が出来ます。
種子の赤ちゃん(胚珠)が並んでいますが、このうちの6割ほどが種子になります。
胚珠の先端につく乳白色の突起はエライオソームという甘いアリの好物です。


果実が成熟すると、先端が3裂して種子を散布します。
種子を散布する頃に葉は枯れ、「春の妖精」は姿を消します。


カタクリの株の周りに種子が落ちるとアリが集まってきます。
ご馳走のエライオソームのついた種子をえっさえっさと運んでいます。
エライオソームがアリの餌になり、残った種子の部分は巣の外に捨てられます。
捨てられた種子は春になると条件が良ければ発芽します。
このアリの行動によってカタクリはより遠くに子孫を広げることができるのです。
このような散布方法を動物散布のうちの「アリ散布」と呼んでいます。


カタクリの種子は長さが4mmほどと大きめで、鉢にまいてもよく発芽します。


発芽した後の成長は極めて遅く、花が咲くまでには8年前後かかります。
カタクリは地上に出ている期間は1年のうちに2ヶ月弱です。
光合成によって栄養を蓄積する期間が短いことから、なかなか大きくなりません。
葉が1株から2枚出るようになるとようよく花茎を出して花を咲かせます。


ユリ科バイモ属(貝母属)のクロユリ(黒百合)です。
貝母の名の由来は、地下にある白い鱗茎が二枚貝のような形をしているからとか。
高山帯の草地に生え、画像の株は植えられた株と思われます。
葉は披針形で質が厚く表面にはつやがあり、基部に葉柄はありません。


花は6-8月に咲き、鐘状で茎先に1-数個を斜め下向きにつけます。
花被片は6個で、暗紫褐色または黒紫色になり、網目模様があります。
雄蕊は6個で花被片の半分の長さ。花柱は基部から3裂します。
花も名前もユリ属に似ますが、葯と花糸の付き方が違います。
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