三方ヶ峰や烏帽子岳の登山道は、野生ランのハクサンチドリが花の盛りになりました。
この時期、山を訪れる山野草ファンからの質問の多くは、テガタチドリとの見分け方です。
ことばだけの説明では受け取り方は様々ですが、画像で見比べれば一目瞭然です。
テガタチドリは、開花の盛期が7月上中旬ですので、画像は昨年のものを用いています。
この山系では登山道のわきにも株が多く、間近での観察や撮影をすることができます。
遠目では違いが?・・、でも、近づいて見ると、花の形や斑紋の違いがよく分かります。
ハクサンチドリは、花弁や萼片の先端が鋭く尖り、唇弁に濃紅紫色の斑紋があります。
テガタチドリは、花弁や萼片の先端が丸っこく、唇弁には目立った斑紋がありません。
唇弁は両方とも3裂しますが、テガタチドリは3つの裂片とも同じ長さで先は円頭です。
ハクサンチドリの唇弁は、株によって形や斑紋がわずかに異なることがあります。
ですが、中裂片の先はどの株も鋭く尖りますので、テガタチドリとの見分けはつきます。
ランには、蜜を蓄える『距(きょ)』という器官を持つ種類が多くあります。
距も見分けには重要なポイント、ハクサンチドリは太く、テガタチドリは細長がです。
ヒラタアブが右手(?)をかけているところが、距の入口で、この奥に蜜があります。
距の入口の上には、雄しべと雌しべが合体した『ずい柱』が昆虫を待ち受けています。
花が咲いていない時期は、葉の折れ具合である程度の見当がつきます。
テガタチドリは葉の中心から縦に二つに折れる傾向が強く、ハクサンチドリには稀です。
開花期は、ハクサンチドリが6月中旬~7月中旬、テガタチドリが6月下旬~7月下旬です。