信州自由人

のぐケーンのぶろぐ

東太郎山・道草道中

2015年05月30日 | 自然

上田市民の山といわれる太郎山の東隣に東太郎山があります。
太郎山裏参道の駐車スペースに車を置き、林道沿いに道草歩きです。
かなり上まで林道があり、道路が乾いていれば乗用車でも通れそうです。


登り初めてまもなく、砂利道に敷き詰められた『落とし文』。
江戸の頃、手紙は筒状に巻いて渡したとのこと。
その手紙を、そっと道端に落とし、例えば恋しい思いを伝えたとか。
画像の落とし主はオトシブミ科の昆虫、巻きあげた葉をせっせと作り、路面に落とします。


この虫に狙われた葉はナラの仲間、葉柄の長い樹種と、短い樹種がありました。
長いほうがコナラで、短いほうがミズナラかと思われます。


葉を同じ形にしっかりと巻きあげる、とても昆虫の所業とは思えぬ作品です。
この落とし文、幼虫を卵から育てるゆりかごで、揺籃(ようらん)と言うそうです。


巻いた葉を広げてみると、このゆりかごには偶然か2個の卵が入っていました。
卵は1mm以下の大きさで鮮やかな黄色、葉には密着しておらず葉を傾げると転がります。
落とし文を何個か拾ってきましたので、湿らせた水苔の上に置き様子を見てみます。


林道沿いのあちこちに「クララ」が目につきます。
クララとは響きの良い名ですが、毒性があり、噛むと目がクラクラということだそうです。
毒草も稀少チョウの「オオルリシジミ」にとっては唯一の食草、東御市では特別待遇です。


林道の60mほど先から、なにやら黒い塊が走ってきます(左上)。
カモシカと気付いても、突進の迫力に押され、妻は思わず奇声を発して後ずさり。
30mほどの距離に近づいたところで止まり、こちらを凝視するカモシカ(中央)。
危険と感じたようで、林の中に急旋回、カモシカの機敏な動きを始めて見ました(右下)。



林道を彩る花々、道草道中には絶好の5月最後の土曜日でした。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

実生山野草15-1

2015年05月25日 | 実生

今年2回目の実生山野草部会は、発芽後間もない株の移植をしてみました。
シラネアオイの種子を昨年10月12日に播いた鉢ですが、混み始めたので移植します。
白花の株から採種したものですが、幼軸が紫色の実生と緑色の実生があります。
もしかしたら、紫色の株は紫色の花、緑色の株は白色の花が咲くかもしれません。


数時間前にたっぷりと水を与えておいた鉢から、やさしく用土ごと実生株を出します。
3株が緑軸で4株が紫軸、左の株から番号をつけ、花が咲くのを楽しみに育てます。


湿らせた用土で、静かに丁寧に根を痛めないようにを鉢内に埋め込みます。
移植後の水やりは、じょうろで鉢底の穴から水が流れ出るまでたっぷりかけます。


今回の部会のもう一つのテーマは、間引きについてでした。
大切に育ててやっと出た芽、可愛くてもったいなくて、混んできても間引けません。
ですが、そのままにしておくと、ぎゅうぎゅう詰めで、丈夫な株に育ちません。
画像左は間引き前、右は5月11日に間引いて13日目、しっかりした株に育ちました。


実生山野草の栽培には失敗がたくさんあります。
画像左は、移植用土に肥料を2回入れてしまって、肥料やけを起こした株です。
右は虫害、うっかり見過ごすとナメクジや毛虫に大切な葉を食べられてしまいます。
毛虫の頭には八の字、風に乗ってやってきたマイマイガ、油断も隙もありません。


早春に咲く植物のうちオキナグサなどは、種子を稔らせる時期になりました。
4月30日に花を開き始めたアズマギク、5月24日に2つの花から種を取りました。


種を播いて育てると、変わった個体の出現を見ることがあります。
画像の花はアヤメで、2012年に種をまき、昨年数輪の花を咲かせました。
今年はたくさんの花を咲かせてくれましたが、なんと、白花が混ざっています。



動物では白変して生まれたアルビノ個体は、障害を持つ場合が多いようです。
このアヤメも花弁が異常で、内花被片も外花被片も細く内側に巻いています。
アヤメの特徴である外花被片基部の網目の模様は少ないもののあるようです。
花柱と雄しべはしっかりしているので種子はできそう、大切に育ててみます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シャクナゲ祭開園

2015年05月16日 | 山野草

群馬県嬬恋村にある『浅間高原シャクナゲ園』が開園しました。
畑道をくねり、山道をくねって浅間山の麓を目指して進みます。
細い道ですが、曲がり角には必ず案内表示があり迷うことはありません。


シャクナゲ園のすばらしい自然を楽しんで頂くための案内人の研修会です。


この園の主体となる種は「アズマシャクナゲ」で、自生株は周辺の山々を彩ります。
嬬恋村に自生するもうひとつの種「ハクサンシャクナゲ」との比較をおさらいしました。
見分けのポイント:アズマシャクナゲの特徴、【葉の基部がなで肩で葉柄に流れる。
葉の表面は無毛、裏面は淡褐色の綿状の毛が密生。花期は5-6月、花の色は紅紫色】
それに対してハクサンシャクナゲは、【葉の基部が怒り肩、葉裏は淡緑色、花期は6-7月
花の色は白またはわずかに紅色を帯び、花弁の内側の緑の斑点が特徴的】などです。


園内にはヤクシマシャクナゲやホソバシャクナゲも花を咲かせております。
ヤクシマシャクナゲの花を使い、虫を集める花の戦略について勉強しました。
上の花弁の内側に、黄色を帯びた斑点がたくさん見えます。
この斑点は、虫に蜜の位置を知らせる誘導路と言われ“蜜標”などとも呼ばれています。
蜜のある方向に雄しべや雌しべを向かせ、昆虫による受粉効率を高めているようです。
この斑点はツツジ科の花にはよく見られ、花色のうすい花ほど目立ちます。


自然案内ですので、話題はシャクナゲのみではなく、草花、樹木、野鳥などに及びます。
画像は、ハナゴケ科の「イオウゴケ(硫黄苔)」という地衣類だそうです。
先端の赤い点、誰が名付けたかモンローリップ、たまには艶あるリップサービスも。
それにしても「アカミゴケ」とよく似ていて見分けがつきません。


今年の開花はやや早めのようですが、標高差があるので次々と花を開いていきます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

浅間山開き

2015年05月10日 | 

浅間山の山開きが、昨日9日に行われ、いよいよ浅間も緑の季節を迎えました。
朝8時前から天狗温泉浅間山荘前で、大浅間火煙太鼓などのセレモニーです。
8時20分過ぎ、500人程の登山者が安全祈願の絵馬札と御神酒をいただき出発しました。


山道沿いは火山館の手前までタチツボスミレが花盛り、登山者を歓迎しています。


火山館着9時50分、館長さんの出迎えを受け、背負ってきた薪を2本おろします。
画像右の建物が新築の微生物で分解するトイレ、使用協力金200円とのことです。
昨年の御嶽山の教訓により、県から提供されたヘルメットが無料で借りられます。


草走りへの分岐を過ぎて針葉樹林帯に入ると、登山道には雪が残っています。


森林限界からの植物は小低木の世界、花を開き始めた常緑の「ミネズオウ」です。


今が花の盛りの「コメバツガザクラ」、白く丸い花で岩肌を飾っています。


胸突き八丁、お母さんもお嬢さんも超前傾姿勢、下だけを見て黙々と登ります。


活発な活動を見せる浅間山、現在は内側の外輪山「前掛山(2524m)」まで登れます。
11時20分登頂、今日は午後から雨との予報があり、やや早足で登りました。
山頂一帯は、生物の気配を感じない異様な雰囲気の世界を感じます。


帰りは、空の雨模様と、足下の山野草を見ながら、いくつかの花に出会いました。
左上は「ヒゲネワチガイソウ」、仲間との見分けは細い花弁と葉、また6,7個の花弁です。
左下は「エイザンスミレ」葉の切れ込むスミレで、葉が基部から3つに分かれます。
右上はネコノメソウの仲間、萼裂片が平開で葉は互生、ツル・かタチ・走出枝が決め手。
右下は「マルバスミレ」、似たヒカゲスミレとの見分けは、葉の形と単純な唇弁の紫条。


14時10分、無事下山し小諸市の皆様のおもてなしで豚汁をご馳走になりました。
その頃から夕立のような強い雨が降り始め、山開きの余韻に浸るまもなく退散です。
チェリーパークラインのサクラ並木、雨に打たれ花びらを道路に散りばめています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

似たもの同士の見分け

2015年05月02日 | 山野草

春の花の真っ盛り、植物の先生から似たもの同士の見分け方を教えていただきました。
この辺のフクジュソウには「フクジュソウ」と「ミチノクフクジュソウ」の2種があるそうです。
両者は染色体数が異なるそうで明らかに別物、きちっと区別できなくてはと思いました。
早速、我が家のフクジュソウや近所の野山のフクジュソウを見比べてみました。
見分けのポイント茎の断面:フクジュソウは中が詰まり、ミチノクフクジュソウは中空。
萼:前者は花弁とほぼ同長かやや短く赤紫色を帯び、後者は花弁より明瞭に短く淡色。
果実(集果)の形:前者は楕円形~亜球形、後者は球形。などなどです。
なるほど、画像中①の近所の野山のものは「フクジュソウ」でしょう。
そして、②の我が家のものは「ミチノクフクジュソウ」でしょう。
画像中の果実は、二つとも①でして、果実での見分けは微妙なところがあります。


画像左は、先生の庭に咲く「シナノタンポポ」、右は路傍に咲く「セイヨウタンポポ」です。
シナノタンポポは日本在来のタンポポ、この辺りでは自生株が見られるそうです。
セイヨウタンポポは外来種で、アカミタンポポなどと共にはびこっています。
日本の在来種と外来種の見分けポイントは、黄色い花弁の下にある総包です。
総苞片が反り返らないのが日本在来のタンポポで、反り返っているのが外来種です。


武石余里は花桃が見頃、4km程の花桃街道はウォークコース、タンポポも咲いてます。
歩いていると花がよく見え、総苞片の反り返らない株もポツポツと目につきます。
シナノタンポポかなあと思いながらも、隣の総苞片が反り返った株が気になります。
見た目は在来種固有の姿ですが、交雑により変異が進んでいるかもしれません。


画像左は我が家の庭の「スズラン」、右は近所のお宅の「ドイツスズラン」です。
スズランは日本に野生する種で、ドイツスズランはヨーロッパ原産です。
両者の見分けは、奥ゆかしく咲くスズラン、葉の上まで出て目立って咲くドイツスズラン。
ぱっと見で、おおよその見当をつけていましたが、花の中を覗くと一目瞭然だそうです。


白無垢の花はスズラン、白を基調に6点の紅を配した花がドイツスズランです。
スズランの別名は「君影草」、日本のスズランにぴったりの名と自分で納得しています。


この時期、道端や空き地をうめるのは、カラスノエンドウの仲間の3種です。
「カラスノエンドウ(ヤバズエンドウ)」、「スズメノエンドウ」、「カスマグサ」です。
大きめのカラス、小ぶりのスズメ、カスマは『カとスの間』という意味で付いた名だとか。
近所の道端にこの3種が絡み合って花を咲かせていました。



3種の見分けは、小葉の大きさ、幅、先端の形。巻きひげの分枝。托葉の蜜腺の有無。
花の大きさ、個数、色。果実の大きさ、向き、毛の有無。種子の数などがあります。
小さくて虫眼鏡がないと見えずらいのですが、違いを見つけるのは結構楽しい作業です。


3種とも花が咲いていれば、簡単に見分けることができます。
カラスノエンドウは、葉腋に無柄の赤紫色の花を1~3個つけます。
カスマグサは、葉腋から長い花柄を伸ばし、1~3個の薄青紫色の花をつけます。
スズメノエンドウは、葉腋から花柄を伸ばし、白から淡紫色の花を3~5個つけます。
カラスノエンドウは目立つのでお馴染みですが、他の2種はあまり気づかれないようです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする