小笠原諸島へ4回目は外来生物対策と固有種の保護活動についてです。
海洋島である小笠原諸島の生態系は外来生物に対して極めて脆弱です。
侵略的外来種はひとたび侵入すると、速やかに分布域を拡大して優占種となり、
次第に 周囲の在来種を排除していきます。
各所で生物多様性の保全に向けた環境保護対策が行われていました。
母島の桑ノ木山にある自然環境を保護するための自然観察林です。
「アカギ」に覆われて光を奪われた「シマホルトノキ」の銘木が枯木になっていました。
薪炭材用に導入された「アカギ」は極めて侵略的な外来植物です。
驚異的な成長力で固有の植物を駆逐し、動物の餌場にも影響を及ぼしています。
母島で「アカガシラカラスバト」が激減した原因のひとつが、
アカギによって「シマホルトノキ」が減少し、エサとなる実が減ったためとも言われています。
小笠原のアカギ対策は、アカギの駆除と本来の森林生態系を再生することだそうです。
アカギの駆除に関しては、『根絶』を目標としているということです。
ガイドの早川さんが熱く語ってくれました。
駆除方法は、巻き枯らし、樹幹に薬剤注入、切り倒しなどです、
画像右は、巻き枯らし処理後に株元から芽が出て成長し樹皮が再生した樹です。
左は、薬剤の樹幹注入処理の株で完全に枯死していました。
ボランティアの皆さんの協力によって伐倒されたアカギの林です。
画像の右下がアカギの切断面ですが、かなり赤く特徴的です。
旺盛な萌芽枝を年1~3回処理するか、遮光シートによる抑制対策が必要です。
伐倒後、根株が完全に枯死するまでに6~7年かかるとされています。
2011年6月に登録された世界自然遺産の登録時の条件にアカギの根絶があるそうです。
根絶には大変なお金と労力が必要でしょうが、やり遂げなければ固有種が滅びます。
父島の境浦海岸へ通じる道路沿いに「ギンネム」駆除の調査がされていました。
「ギンネム」はマメ科植物で、戦時中にはトーチカ隠しの被覆に使われていたそうです。
本種は、世界の侵略的外来種ワースト100で、要注意外来生物に指定されています。
旺盛な繁殖による被圧やアレロパシー作用によって固有植物を枯死させます。
道路沿いのギンネム林で、道路のガード支柱下のわずかなすき間にも実生がありました。
画像の左上は道路の石垣に生えたギンネムの花と実です。
この他にも小笠原の固有種を脅かす外来植物には「モクマオウ」があります。
モクマオウは、マツに似た常緑高木で繁殖力が強く大量の枯れ葉を落とすのが特徴です。
この枯れ葉が地面に降り積もると、在来植物がほとんど生えることができません。
母島に設置された「グリーンアノール」の侵入防止柵です。
「グリーンアノール」はイグアナ科で、ペットなどで持ち込まれ野生化したそうです。
本種は、昆虫類の強力な捕食者で、固有のトンボ類、オガサワラシジミ、オガサワラゼミ、
などの希少種昆虫類やオガサワラトカゲ等を食べるため、これらが大きく減少しています。
また、昆虫類の減少は、受粉を虫に頼っていた固有植物の生態系にも被害を及ぼしています。
現在「オガサワラシジミ」は、父島で姿を消し、母島でわずかに見られる程度に激減しました。
画像右は、父島の東平で日向ぼっこをしていた「グリーンアノール」です。
画像中の「タコノキ」の幹の巻かれているのは“トカゲホイホイ”?様の粘着トラップです。
父島と母島を結ぶ船の「ははじま丸」です。
乗船口のタラップ前に緑のシートが敷かれています。
靴底についた泥を落とし、母島への外来生物の侵入を防いでいるのです。
特に注意されるのが、画像中央下の「ニューギニアヤリガタリクウズムシ」です。
本種が侵入した父島では、陸産貝類が捕食されて激減し、絶滅した種もあるそうです。
ハワイでは農作物の害虫「アフリカマイマイ」対策で導入され問題になっているようです。
母島には未侵入ということで水際で靴裏洗浄による拡散防止を図っています。
乗船口には必ず警察官とともに東京都の自然保護官が立っています。
父島の自然保護区『東平アカガシラカラスバトサンクチュアリー』の入り口です。
高い金網の柵を設置してノネコやノヤギの侵入を防ぎ、固有動植物を護っています。
外敵の少ない島の鳥「アカガシラカラスバト」は地上で子育てをします。
人が住みペットで持ち込まれた後に野生化したネコにとっては格好のエサです。
2007年の生息個体数調査では40羽程度となり、絶滅が危惧されています。
減少の原因は、ノネコによる捕食被害のほか、外来種のクマネズミとの餌資源の競合、
アカギやノヤギにより在来植物が減少し餌資源が不足したことなどがあります。
島の中、あちこちで野生化したヤギ(ノヤギと呼ばれている)を見ます。
画像左は島中央部の夜明道路沿いで、右は小港海岸から中山峠に向かう山道の岩場です。
過去に食用として持ち込まれたものが占領下などの時代を経てノヤギとなったそうです。
農作物や固有植物の食害、森林の破壊や表土の流失などの問題が起きています。
そこで、ノヤギの根絶を目指して対策中とのことです。
ヤギも懸命に生きながら種の保存を目指しているのですが。
小笠原諸島では、外来生物が引き起こす重大な自然破壊について実感しました。
また、自然の保護には生物多様性の保全が必要なことも実感できました。
****次回は父島のたたずまいの予定です****
海洋島である小笠原諸島の生態系は外来生物に対して極めて脆弱です。
侵略的外来種はひとたび侵入すると、速やかに分布域を拡大して優占種となり、
次第に 周囲の在来種を排除していきます。
各所で生物多様性の保全に向けた環境保護対策が行われていました。
母島の桑ノ木山にある自然環境を保護するための自然観察林です。
「アカギ」に覆われて光を奪われた「シマホルトノキ」の銘木が枯木になっていました。
薪炭材用に導入された「アカギ」は極めて侵略的な外来植物です。
驚異的な成長力で固有の植物を駆逐し、動物の餌場にも影響を及ぼしています。
母島で「アカガシラカラスバト」が激減した原因のひとつが、
アカギによって「シマホルトノキ」が減少し、エサとなる実が減ったためとも言われています。
小笠原のアカギ対策は、アカギの駆除と本来の森林生態系を再生することだそうです。
アカギの駆除に関しては、『根絶』を目標としているということです。
ガイドの早川さんが熱く語ってくれました。
駆除方法は、巻き枯らし、樹幹に薬剤注入、切り倒しなどです、
画像右は、巻き枯らし処理後に株元から芽が出て成長し樹皮が再生した樹です。
左は、薬剤の樹幹注入処理の株で完全に枯死していました。
ボランティアの皆さんの協力によって伐倒されたアカギの林です。
画像の右下がアカギの切断面ですが、かなり赤く特徴的です。
旺盛な萌芽枝を年1~3回処理するか、遮光シートによる抑制対策が必要です。
伐倒後、根株が完全に枯死するまでに6~7年かかるとされています。
2011年6月に登録された世界自然遺産の登録時の条件にアカギの根絶があるそうです。
根絶には大変なお金と労力が必要でしょうが、やり遂げなければ固有種が滅びます。
父島の境浦海岸へ通じる道路沿いに「ギンネム」駆除の調査がされていました。
「ギンネム」はマメ科植物で、戦時中にはトーチカ隠しの被覆に使われていたそうです。
本種は、世界の侵略的外来種ワースト100で、要注意外来生物に指定されています。
旺盛な繁殖による被圧やアレロパシー作用によって固有植物を枯死させます。
道路沿いのギンネム林で、道路のガード支柱下のわずかなすき間にも実生がありました。
画像の左上は道路の石垣に生えたギンネムの花と実です。
この他にも小笠原の固有種を脅かす外来植物には「モクマオウ」があります。
モクマオウは、マツに似た常緑高木で繁殖力が強く大量の枯れ葉を落とすのが特徴です。
この枯れ葉が地面に降り積もると、在来植物がほとんど生えることができません。
母島に設置された「グリーンアノール」の侵入防止柵です。
「グリーンアノール」はイグアナ科で、ペットなどで持ち込まれ野生化したそうです。
本種は、昆虫類の強力な捕食者で、固有のトンボ類、オガサワラシジミ、オガサワラゼミ、
などの希少種昆虫類やオガサワラトカゲ等を食べるため、これらが大きく減少しています。
また、昆虫類の減少は、受粉を虫に頼っていた固有植物の生態系にも被害を及ぼしています。
現在「オガサワラシジミ」は、父島で姿を消し、母島でわずかに見られる程度に激減しました。
画像右は、父島の東平で日向ぼっこをしていた「グリーンアノール」です。
画像中の「タコノキ」の幹の巻かれているのは“トカゲホイホイ”?様の粘着トラップです。
父島と母島を結ぶ船の「ははじま丸」です。
乗船口のタラップ前に緑のシートが敷かれています。
靴底についた泥を落とし、母島への外来生物の侵入を防いでいるのです。
特に注意されるのが、画像中央下の「ニューギニアヤリガタリクウズムシ」です。
本種が侵入した父島では、陸産貝類が捕食されて激減し、絶滅した種もあるそうです。
ハワイでは農作物の害虫「アフリカマイマイ」対策で導入され問題になっているようです。
母島には未侵入ということで水際で靴裏洗浄による拡散防止を図っています。
乗船口には必ず警察官とともに東京都の自然保護官が立っています。
父島の自然保護区『東平アカガシラカラスバトサンクチュアリー』の入り口です。
高い金網の柵を設置してノネコやノヤギの侵入を防ぎ、固有動植物を護っています。
外敵の少ない島の鳥「アカガシラカラスバト」は地上で子育てをします。
人が住みペットで持ち込まれた後に野生化したネコにとっては格好のエサです。
2007年の生息個体数調査では40羽程度となり、絶滅が危惧されています。
減少の原因は、ノネコによる捕食被害のほか、外来種のクマネズミとの餌資源の競合、
アカギやノヤギにより在来植物が減少し餌資源が不足したことなどがあります。
島の中、あちこちで野生化したヤギ(ノヤギと呼ばれている)を見ます。
画像左は島中央部の夜明道路沿いで、右は小港海岸から中山峠に向かう山道の岩場です。
過去に食用として持ち込まれたものが占領下などの時代を経てノヤギとなったそうです。
農作物や固有植物の食害、森林の破壊や表土の流失などの問題が起きています。
そこで、ノヤギの根絶を目指して対策中とのことです。
ヤギも懸命に生きながら種の保存を目指しているのですが。
小笠原諸島では、外来生物が引き起こす重大な自然破壊について実感しました。
また、自然の保護には生物多様性の保全が必要なことも実感できました。
****次回は父島のたたずまいの予定です****