ベラルーシの部屋ブログ

東欧の国ベラルーシでボランティアを行っているチロ基金の活動や、現地からの情報を日本語で紹介しています

チロ基金の活動「ビタペクト2&『放射能と栄養』無料配布・SOS子ども村 第118回」

2011-05-30 |   ビタペクト配布活動
 5月30日にビタペクト2と「チェルノブイリ:放射能と栄養」のコピー無料配布運動として、SOS子ども村への第118回目の配布を実施いたしましたので、ご報告いたします。
 今回はビタペクトTを12個、そして「放射能と栄養」のコピーを10部渡しました。
 これで今までに配布したビタペクト2は合計1820個、「チェルノブイリ:放射能と栄養」のコピーは1570部となりました。
  
 今回で通算128回目のビタペクト2(ビタペクトT)の配布となりました。延べ人数ですが、1820人の子どもにビタペクト2(ビタペクトT)を、1570家族分の「放射能と栄養」のコピーを配布したことになります。

(これまでのビタペクト2配布運動について、詳細はこちらをご覧ください。)

http://belapakoi.s1.xrea.com/chiro/katudou/bitapekt/index.html


http://blog.goo.ne.jp/nbjc/c/e1e67d76a4796f3c95377bb7bdabd215


(またこの活動報告を読むにあたり、「チロ基金の活動『ビタペクト2無料配布』について追加のご説明」も併せてご覧ください。)

http://blog.goo.ne.jp/nbjc/e/67c3b73ea2f30e880c3d4eb8bedded13


(ビタペクト2とビタペクトTについてはこちらをご覧ください。)

http://blog.goo.ne.jp/nbjc/e/5cab63b65562dd2f64a820a7e4298a0b


(「チェルノブイリ:放射能と栄養」について詳細はこちらをご覧ください。)

http://belapakoi.s1.xrea.com/chiro/katudou/chel/index.html


(SOS子ども村についてはこちらをご覧ください。) 

http://belapakoi.s1.xrea.com/jp/no2/2001/soschild.html


(ビタペクトTを開発、製造、販売しているベルラド放射能安全研究所のサイトはこちらです。)

http://www.belrad.nsys.by


(ベルラド研究所について日本語でご紹介している記事はこちらです。)

http://blog.goo.ne.jp/nbjc/e/c382ef7eca8660531e895c8a646e7f2a



 今回はゴメリ市(チェルノブイリ原発から約140キロ)に住む2家族がSOS子ども村に保養滞在していました。
 それぞれの家族に話を伺いました。
 
(家族A)

 お母さんが4人の子どもと1人の姪を連れてきていました。この家族には5個のビタペクトTを渡しました。前回来ていた長男は大きくなったので、保養にきていません。
 この家族は2010年5月にもSOS子ども村で保養滞在していました。そのときの詳しい様子はこちらをご覧ください。
 チロ基金の活動「ビタペクト2&『放射能と栄養』無料配布・SOS子ども村 第103回」
 (家族B)のほうです。

http://blog.goo.ne.jp/nbjc/e/173ccb43e8ef2acd0d52b785f6291455


  それぞれの体内放射能測定結果はこのとおりです。○印の子どもにビタペクトT(ビタペクト2)を渡しました。
 2010年5月の測定結果と今回(2011年)の測定結果を示しています。
 
母親(事故発生時14歳)  8ベクレル → 12ベクレル
長女(14歳) 0ベクレル → 39ベクレル ○
次女(12歳) 0ベクレル → 44ベクレル ○
三女 (6歳)18ベクレル → 29ベクレル ○ 
次男 (2歳)29ベクレル → 24ベクレル ○
姪 (13歳)32ベクレル ○ → 24ベクレル ○

 つまり1年前にビタペクト2を飲んだのは、姪の1人だけで、あとは0ベクレルであったりと、よいほうの結果だったのです。
 ところが、今年はどうしてこんなにみんな体内放射能が増えてしまったのか?
 姪っ子1人が
「ビタペクト2を飲んだから私は減った。」
と喜んでいましたが、減ったと言ってもまだ20ベクレル以上だから、再びビタペクト2を飲まなくてはいけません。
 お母さんはものすごくがっかりしていました。
 (今から考えれば、6歳の三女にも去年ビタペクト2をあげておけばよかった。原則20ベクレル以上だとあげることになっていますが。)

 3歳以上が対象のビタペクトTなのですが、お母さんはどうしても2歳になったばかりの次男に飲ませたい、と言うので渡しました。しかしもし腹痛など起こしても自己責任ですよ、と念を押し、半量だけあげてみて、何かあったらすぐ飲むのを中止すること。そしてもし余った場合、ビタペクトTはお母さんが飲んでしまうこと、を条件としました。
 
 SOS子ども村の医師リリヤ先生は、急にこんな数値になった理由を
「食べ物です。きのこでしょう。」
と言っていました。お母さんの話によると、去年は経済的に苦しく食費を減らすために、ゴメリ市近郊の森で野生のきのこを集めて、家族でかなりたくさん食べ続けたそうです。
「その森はきのこを採取するのが、許されている森なんですか? 禁止地域に指定されているところもあるでしょう?」
と尋ねるときのこ拾いをしたのは、禁止地域の森ではなかった、という答え。
 さらに去年渡した「チェルノブイリ:放射能と栄養」のコピーに書いてある方法できのこを洗ったり、ゆでたりした、というのです。
 理由の真相はよく分かりません。考えられるのは、「きのこの洗い方をまちがっていた。」
「『チェルノブイリ:放射能と栄養』に書いてある方法はあまり効果がない。」(←そんなあ・・・。)
「ものすごく汚染されていたきのこだったので、ちゃんと洗ったりしても、まだ放射能が残っていた。さらにそれを大量に食べ過ぎた。」
 最後のパターンが一番真実に近いのでは? と私は思ったのですが、実際には分かりません。
 しかしこれが正しいとすると、きのこを採ってもよい、とされている地域でも実は汚染度が非常に高いことになります。

 お母さんは
「牛乳はたくさん飲むが、店で売られているもので、検査済みのはず。」とか
「店で鯉を買って食べたが地元でとられた鯉だった。」
とかいろいろ思い出して話していました。リリヤ先生は
「魚は放射能検査済みの証明書がついてないと店で売られないことになっているんですよ。」
と話しているのですが、買い物客がいちいち店頭で「証明書を見せよ。」と店員に求めることもないようです。
 結局理由ははっきり分かりません。もしかしたらいろんな食材から少しずつ放射能を摂ってしまい、合計でこのような測定値になったのかもしれません。

 さて、聞き取り調査です。14歳の長女は背骨が歪んでいます。
 12歳の次女は甲状腺の肥大が見られますが、第1段階だそうなので、特別な投薬治療は受けておらず、ビタミン剤だけ飲むよう医者に言われているそうです。最近血液中のホルモンの検査を受けたそうで、まだ結果は出ておらず、お母さんは心配していましたが、リリヤ先生は
「思春期に入るころ、血液中のホルモン検査をするのはよくあることです。」
とあっさり言っていました。
 ベラルーシでは中学生に血液中のホルモン検査するのがごく普通のことなのか、と驚いてしまいましたが・・・。

 6歳の三女は咳が出て何も食べないので、病院で超音波検査をしたところ、喉に嚢状の腫れ物が二つできていたため、手術して取り除くように言われたそうです。
 その後もう一度同じ医師、同じ場所で検査すると、腫れ物がなくなっていました。医師からは
「もうなくなっているので手術の必要なし。」
と言われました。その後風邪をひいたのですが、再び咳が出て何も食べられないので、また病院に行くと、やっぱり腫れ物が二つできていました。
 しかし、しばらくすると消える(超音波検査の画像に現れなくなる)ため、どうしてよいか分からず、放置されている状態です。
「この子はリンパ腺の形が奇形で、こうなっており、病気になると変わった形に膨らむので、腫れ物と見間違えた。」
と医師から言われたそうですが、他の医者は
「そんな形のリンパ腺の奇形はありえない。」
と言い、もめていました。
 結局、舌の付け根部分に良性腫瘍ができていた、と分かり、すぐに手術を受けたそうです。
 私は「下の付け根」と聞いて、その手術というのは、口をあーんと開けて、器具を口から入れていくのかな? と想像しました。実際には喉のほうを切開して、腫瘍を取り除く手術をしたそうです。喉のところに手術の痕が1本残っていて、痛々しかったです。
 リリヤ先生は
「大きくなったら薄くなるわよ。」
と言っていました。また子どもが歯が痛いと言うので虫歯だと思っていたら、実は喉の部分の病気が隠れていることがあるそうです。
 
 2歳の次男は肝炎にかかった状態で生まれてきて、生後4ヶ月まで黄疸症状があったそうです。しかし治療の結果改善し、最近の検査でも異常は見つからなかったそうです。
 今は風邪をよくひき、長引くことが多いそうです。

 13歳の姪は特に持病などはありません。
 しかしSOS子ども村に来てから、日光浴をしていたら赤いあざのようなものが体中にできて、かいていたら、ばい菌が入って化膿していました。こんなことがあるんですね・・・。


(家族B)

 お母さんが自分の子どもを3人、4人の姪を引率してきていました。この家族には7個のビタペクトTを渡しました。
 それぞれの体内放射能測定結果はこのとおりです。○印の子どもにビタペクトTを渡しました。

母親(事故発生時10歳)21ベクレル
長男(15歳)30ベクレル ○
次男(9歳) 36ベクレル ○
三男(6歳) 24ベクレル ○
姪 (7歳) 28ベクレル ○
姪 (5歳) 25ベクレル ○ (この2人は姉妹。)
姪 (7歳) 34ベクレル ○
姪 (6歳) 32ベクレル ○ (この2人は姉妹。)

 15歳の長男は習慣性扁桃炎で、肥大が見られるそうです。
 9歳の次男はハーブティーを飲んでアレルギーを起こしていました。
 6歳の三男は生後2ヶ月のとき、左足の大腿骨の付け根の関節部分が腐ってくるという病気になりました。医者は足がまっすぐになるようにするため、両足の付け根をひもでくくって脚が閉じるようにした上で、ベビーベッドの上の天井から脚をぶら下げ、お尻はやや浮かすようにして仰向けに寝かせるように言ったそうです。この状態で1ヶ月寝ていたそうです。
 その結果脚がまっすぐになって状態がよくなったそうです。しかし2歳になってようやく歩けるようになったそうです。病気そのものは進行中で、それをとどめるために抗生物質を飲んだり、脚に注射したりしています。
 将来的には腐っている骨の関節部分を切り取る手術をして、人工の関節をつけることも考えているそうです。リリヤ先生は、そうしたほうがいいと話していました。確かに小さい子どもが薬を飲み続けるというのもあまり体全体によくないような気がします。
 リリヤ先生は症状が悪化するから、絶対に体の中にウイルスが入らないように、絶対風邪をひいてはいけない、とお母さんに話していました。
 
 7歳の姪(28ベクレル)は咳をよくしており、熱を出したり風邪をひくことが多いそうです。
 6歳の姪は生まれつき心臓に穴が開いていました。そして手術をするという話でしたが、成長するに従い、穴がどんどん小さくなってきて、この調子だと手術しなくてもいいのではないか、という話になっているそうです。
 5歳の姪は喘息、慢性気管支炎を患っています。
 リリヤ先生は風邪の予防に、秋に免疫力を高めておくこと、と話していました。 
 
 今回もいつものように子ども達に折り紙、折り紙の作り方のコピー、日本の絵葉書、おやつ昆布などをプレゼントしました。
 おやつ昆布は1人で何枚も食べる子もいて、おいしい!と話していました。この調子でどんどん食べてほしいですね。

 最後になりましたが、ビタペクトTの購入費、そして「放射能と栄養」をコピーするために必要な経費を寄付してくださった方々、折り紙や昆布など子どもたちへのプレゼントを寄贈してくださった方、また日本ユーラシア協会大阪府連主催のバザーなどでSOS子ども村への交通費を捻出してくださった多くの日本人の皆様に、この場を借りて深くお礼申し上げます。
 多くの方々に支えられて、この活動が続いています。
 ベラルーシの子どもたちもお母さんたちもSOS子ども村の職員の方々も皆様に大変感謝しております。本当にありがとうございました。