私の小規模なコレクションの中に、日本コロムビア社の「ダイヤモンド1000シリーズ」のパンフレットがある。たぶん、1970年ごろのものと思われるが、ベートーヴェン生誕200年で、アルフレッド・ブレンデルの演奏するピアノソナタ集か何かに添付されていたものであろう。
この裏面に記載されている、大木正興氏の推薦文が、実に味わい深い。「幅の広い音楽体験を持つために」と題して、ある物故した指揮者の演奏こそが絶品だとして古い録音を集め、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲すらしらないという偏狭なレコードマニアを戒め、こんな言葉を残している。
「音楽を本当に身近かなものとして受取るためには、まず古今のすぐれた作品を、できるだけ数多くきいて、幅の広い音楽体験をもつことから始めるよりほかに方法はないのである。」
この後に、「しかし、たくさんの名曲を日常手許に置いて、時に応じて自由にきき楽しむというのは、経済的にもなかなか容易なことではない。」として、この廉価盤シリーズの企画について、曲目や演奏者を評価している。
氏は、かつてNHK-FMの金曜「夜の室内楽」の解説をつとめたこともあり、また音楽の友社から『室内楽のたのしみ』という著書も出されているが、偏りのない紹介ぶりが好ましく感じられた。この文章を読むと、まったく本当だなぁと思う。事実、多くの愛好者がこのシリーズを懐かしそうに語っている(*)。音楽の文庫本として、裾野の普及に貢献した功績は大きいが、はたして同社の誰が企画をしたものか、興味深い。NHKのプロジェクトXでも取り上げていないようだし(^_^;)、謎解きのような興味がある。どなたか、本邦初のクラシック1000円盤企画の経緯を御存知の方はおられませんか。
(*):たとえば 安田さん・BQクラシックス など。
この裏面に記載されている、大木正興氏の推薦文が、実に味わい深い。「幅の広い音楽体験を持つために」と題して、ある物故した指揮者の演奏こそが絶品だとして古い録音を集め、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲すらしらないという偏狭なレコードマニアを戒め、こんな言葉を残している。
「音楽を本当に身近かなものとして受取るためには、まず古今のすぐれた作品を、できるだけ数多くきいて、幅の広い音楽体験をもつことから始めるよりほかに方法はないのである。」
この後に、「しかし、たくさんの名曲を日常手許に置いて、時に応じて自由にきき楽しむというのは、経済的にもなかなか容易なことではない。」として、この廉価盤シリーズの企画について、曲目や演奏者を評価している。
氏は、かつてNHK-FMの金曜「夜の室内楽」の解説をつとめたこともあり、また音楽の友社から『室内楽のたのしみ』という著書も出されているが、偏りのない紹介ぶりが好ましく感じられた。この文章を読むと、まったく本当だなぁと思う。事実、多くの愛好者がこのシリーズを懐かしそうに語っている(*)。音楽の文庫本として、裾野の普及に貢献した功績は大きいが、はたして同社の誰が企画をしたものか、興味深い。NHKのプロジェクトXでも取り上げていないようだし(^_^;)、謎解きのような興味がある。どなたか、本邦初のクラシック1000円盤企画の経緯を御存知の方はおられませんか。
(*):たとえば 安田さん・BQクラシックス など。
ダイヤモンド1000シリーズの原盤レーベルも、オイロディスク、エヴェレスト、パイ、ヴォックス、ターナバウト、アマデオ、イスパボックスなどは見覚え・聞き覚えがあります。日本コロムビアの各種1000円盤シリーズにはお世話になりましたので、この経緯を知ることができ、ほんとにありがたく、感謝いたします。
ただ1968年以降に発売となった12インチステレオ盤MS規格は、それまで大きな売り上げであった米CBS・EPICとの原盤契約が失効したためそれをカバーするために1本買いも含めて当時契約のあった手持ちレーベルを総動員して必死にカタログを作っていったので玉石混交ではありましたが膨大かつ多彩なものとなりました。多くの入門リスナーはこれまでCBSの日陰者扱いだったアリオラオイロディスク、エヴェレスト、パイ、ミラーインタナショナル=アルシャイア、オットープライザー、ポーランドㇺザ、ヴォックス、ターナバウト、アマデオ、イスパボックス等の世界中のレーベルの国内初出を含めた音源を知ることになった訳です。CBSの穴を埋めることは難しかったにせよ、一定の売り上げを確保したため、そのまま暫くは入門廉価路線を堅持し、エラート1000ではパイヤール、ランパル、ラスキーヌ、ルジチコーヴァ、リステンパルト、マリクレルアラン等を惜しげもなく投入し結構な評判を呼びました。
この頃になると廉価盤が大きな存在を占めるに至りましたが、2000円だった新譜新録音のレギュラープライスが2300円に設定されると、フルプライスマイナス1000円が廉価盤の価格設定でしたから、次第に1300円のシリーズが中心となったのですが、コロムビアはこれを機にチェコスプラフォン、オイロディスク等の一線級のカタログを放出したのです。アンチェル・ノイマン・ボードの振るチェコフィル、伝統を伝える十人の指揮者たちというシリーズではケンペ・スイトナー・ザンデルリンク・マズア・コンヴィチュニー・マルティノン・フルネ・コシュラー等を世に知らしめました。オイロディスクは東欧諸国との共同制作をしていたために、その音源の中にザンデルリンクやスイトナー、コンヴィチュニーそしてSKD,LGH,BSO東が含まれていたのは僥倖だったといえるでしょう。
なお日コロはCBS契約失効による音源の枯渇の教訓から、CD時代に入ると、原盤使用に先立ち相手レーベルから日本の国内販売権を買い取る形式で長くカタログを維持する方向に切り替え、同社のクレストシリーズは1000円で長く同じものを供給し続けることができたのです。
ダイヤモンドシリーズは日本コロムビアのいわば伝家の宝刀といえるかもしれません。
1,000円盤と呼ばれたクラシック廉価盤の起源については、レコ芸の1973年6月号とか、週刊FMの1972年の特集記事(号数不明)に記載があったように思いますが、ダイヤモンド1000についての記載ではなく、一般的な話でした。
簡単に言うと2,000円のレギュラー盤では売り難いけど、1,000円なら売れるかな、というのがその理由みたいですね。
それにしても懐かしがっていただき有難うございます。 色々と取り揃えておりますので、よろしければ以下もどうぞ・・・
↓
http://www.h3.dion.ne.jp/~yasuda/bqcla/menu_data_list.htm
>今再確認すると当時の”ダイヤモンド1000”の
>録音って、けっこうマニアックで素敵な演奏が
>多かったですよね。
そうなんですよ。大木正興氏があげているだけでも、コンヴィチュニー、バルビローリ、デルヴォー、シュヒターなど、今も関心を持っている人が少なくないのでは?
それだけに、初めてこの企画をした人が誰なのか、知りたい気がします。その後の1000円盤ブームの草分けとなったわけで、「トリヴィアの泉」で何へぇ~を獲得するかわかりませんが、良いネタになるのでは、と思います。
でも、今再確認すると当時の”ダイヤモンド1000”の録音って、けっこうマニアックで素敵な演奏が多かったですよね。CD時代に再探索すべき音源となってしまいました。(遅れ馳せながらお孫さん誕生おめでとうございます。ワタシは小さい子供が大好きです)