話題の映画「武士の一分」を見てきました。良かった。私は芸能スポーツ流行にとんとうとい生活なので、キムタクという言葉があることは知っていましたが、どんな人なのか顔を知らなかった。主演の木村拓哉は、なかなかナイスな演技でした。妻役の新人女優さんは、ほんとにきれいで立派な演技です。
ところで、映画のストーリーとは別のところで、気づいたところをいくつか。
(1) 孤児の加世さんは、いったい誰に育てられたのか。
--映画の中で「みなし児だった私は」というセリフがあります。また、敵役の島田藤弥が道端で加世に言う「寺子屋に通う貴女を見て」という台詞もあります。この点については、藤沢周平『隠し剣秋風抄』所収の原作「盲目剣谺返し」の中に、「新之丞の母は以寧をことわって、自分の遠縁でみなし児の境遇にいた加世を選んだ」とあります。新之丞の母方の家で躾けられた加世は、文武に優れ、気持ちの優しい新之丞に憧れたのでしょう。おしゃべり叔母さんの以寧は、原作では新之丞の二つ上の従姉という設定で、新之丞のもとへ嫁入ることを望んでいたことになっています。たぶん、映画では「加世はそげだ淫らなことをするおなごではありましね」という台詞を、言わせたかったのでしょう。
(2) 忠実だがとても気が利くとはいえない老僕を雇い続けた理由は。
--徳平は、料理は下手だし薪割も上手とは思えず、目の見えない新之丞を厠まで手を引く際にも物干し竿を避けていくことさえ気づかないほど、気が利かない男です。朴訥と言うよりも、どちらかといえば愚鈍に近いほどの、しかし忠実で誠実な年寄りです。先代から勤め始めたようですから、この老僕を雇い続けた理由があったのでしょう。たぶん、新之丞の父母は、徳平の無類の忠実さ、誠実さの価値を高く買ったのだろうと思われます。
(3) 離縁された加世は、どこにいたのか。
--まさか島田藤弥の屋敷には行けませんし、親族会議の状況を見てもわかるとおり、みなし児の境遇には受け入れてくれる実家もありません。では、加世はどこに行ったのか。たぶん、徳平の家だったのではないかと思われます。
(4) 映画中の音楽の中で、笙の響きが使われているところがあった。
--解説を見ると、宮田まゆみさんとある。以前、N響のヨーロッパ公演で、武満徹さんの「セレモニアル」を演奏した人とは違うのかな?
いや、ひさびさにいい映画を見ました。だいぶ泣かされました。涙は埃っぽい心を洗い流してくれます。
ところで、映画のストーリーとは別のところで、気づいたところをいくつか。
(1) 孤児の加世さんは、いったい誰に育てられたのか。
--映画の中で「みなし児だった私は」というセリフがあります。また、敵役の島田藤弥が道端で加世に言う「寺子屋に通う貴女を見て」という台詞もあります。この点については、藤沢周平『隠し剣秋風抄』所収の原作「盲目剣谺返し」の中に、「新之丞の母は以寧をことわって、自分の遠縁でみなし児の境遇にいた加世を選んだ」とあります。新之丞の母方の家で躾けられた加世は、文武に優れ、気持ちの優しい新之丞に憧れたのでしょう。おしゃべり叔母さんの以寧は、原作では新之丞の二つ上の従姉という設定で、新之丞のもとへ嫁入ることを望んでいたことになっています。たぶん、映画では「加世はそげだ淫らなことをするおなごではありましね」という台詞を、言わせたかったのでしょう。
(2) 忠実だがとても気が利くとはいえない老僕を雇い続けた理由は。
--徳平は、料理は下手だし薪割も上手とは思えず、目の見えない新之丞を厠まで手を引く際にも物干し竿を避けていくことさえ気づかないほど、気が利かない男です。朴訥と言うよりも、どちらかといえば愚鈍に近いほどの、しかし忠実で誠実な年寄りです。先代から勤め始めたようですから、この老僕を雇い続けた理由があったのでしょう。たぶん、新之丞の父母は、徳平の無類の忠実さ、誠実さの価値を高く買ったのだろうと思われます。
(3) 離縁された加世は、どこにいたのか。
--まさか島田藤弥の屋敷には行けませんし、親族会議の状況を見てもわかるとおり、みなし児の境遇には受け入れてくれる実家もありません。では、加世はどこに行ったのか。たぶん、徳平の家だったのではないかと思われます。
(4) 映画中の音楽の中で、笙の響きが使われているところがあった。
--解説を見ると、宮田まゆみさんとある。以前、N響のヨーロッパ公演で、武満徹さんの「セレモニアル」を演奏した人とは違うのかな?
いや、ひさびさにいい映画を見ました。だいぶ泣かされました。涙は埃っぽい心を洗い流してくれます。
初・キムタクという事で、かえって偏見なく映画を見られたのが良かったのではないかと思います。
narkejpさんがお気づきの点は、なるほど。と、読ませて頂きました。特に、徳平のこと。あまり気にせずに見ていたもので(苦笑)←恥。
いい映画でしたよね。好きな映画になりました。
そして、narkejpさんの記事の
>涙は埃っぽい心を洗い流してくれます。
この一文がとても素敵だと思いました。
主演の木村拓哉さん、はじめのうちはちょっとちんぴらくさい(失礼!)若旦那で、従来の藤沢周平作品のイメージと違うかな、と懸念しましたが、失明してからの演技は秀逸でした。
半分喧嘩腰で観にいったのですが、中盤から良くなりましたね。
原作が短くても、
去年の「蝉しぐれ」のように長すぎても、映画化は大変なのでしょうね。
どちらにしても、藤沢周平の世界を壊さないでくれればいいと思ってます。
3部作ということは、もう続きはないのでしょうね。
なんだかんだ言っても、いつも楽しみにしてたので寂しくなります。
ということで、貴兄のブログにお邪魔して読ませて頂きました。原作を読んで居られるのですね。加世や以寧や徳平について、詳しいことをお教え頂きました。視野が一段と広がった気がします。どうもありがとうございました。
以寧については私の書込では触れていませんでしたが、桃井かおりも巧かったですね。実に芸達者な女優さんだと思います。
お詫びかたがた御礼まで。
アスカパパ
トラックバック、当方より再送しました。
非常に爽やかな映画ですね。
私もnarkejpさんとほとんど全く同じ感想をもちました。
笙の宮田まゆみさんの演奏は、さすがでしたね。
あと、チェロが非常に効果的に使われていると思いました。
また、できればもう一度見てみたい映画です。
P.S
コメントいただいておりましたのに、仕事の期限に追われ(自業自得なのですが・・・)、遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
映画「武士の一分」、おっしゃるように、音楽もよかったです。もし作者が存命だったら、この音楽になんとコメントしたのでしょうね。
理由はいろいろありますが、言葉が、私の生まれ暮らした西日本に似た響きを持つことも影響していると思います。
春頃には庄内に移住し、仕事が安定するならば、永住の計画であります。
もっけだの。
せばの。