電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

チャップリンの映画「街の灯」を観て昔の記憶違いを知る

2019年12月08日 06時01分40秒 | 映画TVドラマ
DVDで、チャップリンの無声映画「街の灯」を観ました。学生時代以来、約半世紀ぶりです。あらためて、実に濃密な名作と感じました。あらすじは今さら説明も不要でしょうが、要するに浮浪者チャーリーが盲目の花売り娘と知り会い、やや人格破綻の金持ちの知遇を得て、娘のために一肌脱ごうと奮闘するドタバタ喜劇が、強盗と間違われて刑務所に入るはめになります。チャーリーが出所したところで、彼からもらったお金で貧困を脱し、手術で視力も回復した娘と再会する話です。

YouTube にあった音楽付き超ダイジェスト版で全編をおさらい;
街の灯 チャップリン/愛のテーマ ニューシネマパラダイス(サントラ完全版)


今回、あらためて感じたことをいくつか挙げてみると:

  • 若い娘が花を売っていると、チャーリーのように買ってくれる人もいるけれど、交代してくれたおばあさんには誰もふりむいてさえくれないという残酷な真実。うーむ、中高年になると、こういう短いシーンが突き刺さるようです。このへんが、「ライムライト」につながっていくのかな。
  • 刑務所から出てきたチャーリーが街を歩き、ショーウィンドウを眺めていたお店は、「Music Store」でした。チャップリンがまだ若く、貧困にあえいでいた頃の、楽器や楽器店への憧れを表しているシーンでしょうか。その後、チェロをたしなみ、音楽の才能を示したことなどから、つい、そんな想像をしてしまいます。
  • 最後の有名なシーン、「You ?」(チャーリーがうなずき)、「You can see now ?」「Yes, I can see now.」 これは、なんとも絶妙のシーンです。ペーソスがただよいます。そうだよね〜、人生って、こんな感じだよね〜、って(^o^;)>


学生時代にはじめてこの映画を観たときは、祖母が30代で失明し、全盲の困難な生活をおくる中で子供時代を過ごしましたので、絵空事と思えず感動した記憶があります。たぶんそのせいだと思いますが、花売り娘が手術後に目が見えるようになる場面で、モノクロの画面がカラーになるというシーンがあったような気がしたのでした。全編を見通しましたが、残念ながらそんなシーンはなく、おそらくは「そういう場面があったら良いのに」という願望が、そのような誤った記憶になって残ってしまったのでしょう。でも、ほんとに味がある、いい映画です。

最後はまた音楽で。マンドリン・オーケストラの演奏です。
映画「街の灯」よりラ・ヴィオレテラ (すみれの花売り娘) La Violetera : ホセ・パディーヤ・サンチェス José Padilla Sanchez



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6 コメント

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Unknown (Tommy)
2019-12-10 08:51:10
チャップリンの映画ご紹介ありがとうございます。
この映画は観たことがなく解説付はありがたく思います。
今度機会があれば白黒でも一度全体を見たくなりました。


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Unknown (おなら出ちゃっ太)
2019-12-10 18:22:55
この映画、ちゃんと観たことはないけど、「見えるの?」のくだりは知っています。
実は観たことがあるのか、名画紹介ででも知ったのか……。

赤塚不二夫の漫画「おそ松くん」の後期の作品で、「街の灯」を下敷きにした漫画がありました。
「イヤミはひとり風の中」というのですが、怠け者の浪人が盲目の少女のために奮起して治療費を捻出。
しかし御用金を狙ったために牢に入れられ、出てきたときには知っている人が誰もいない。
偶然に出会った少女は、目が見えるようにはなっていたが、目の前の人物が恩人とは知らない。
主人公もまた、落ちぶれた自分の姿を見せたくないと一人、風の中に去っていくというストーリーでした。

子どもながら読んで泣きました。「街の灯」よりも、自分だと明かさないところで赤塚漫画のほうが上だと確信していたものです。もちろん、どちらが上という比較はおかしいですし、作った人や評する人の国民性もありますから。たぶん日本人は、自分だと告げずに立ち去る悲劇性や潔さが好きなんでしょうね。
もちろん赤塚不二夫が「こうしたほうが泣けるな」と映画を参考にしたアドバンテージも見逃せませんが。
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Unknown (おなら出ちゃっ太)
2019-12-10 18:27:25
忘れてましたが、「お婆さんと交代したら売れなくなった」というくだり。
もしかしたら、ギャグなのかもしれませんし、ブラックジョークで人間の本質を切り出した皮肉ともとれますね。

この辺も映画を観る側によって違ってくるのではないでしょうか。そこが面白いところですね。
教科書や試験問題的みたいに、
「老婆からは誰も花を買わないことで作者は何を言おうとしているか。次の256個のうちから選べ」と言われても困る。
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Tommy さん、 (narkejp)
2019-12-10 19:48:04
コメントありがとうございます。チャップリンの映画はどれも面白いですが、『街の灯』は祖母の全盲という個人的な事情も加わり、格別に印象深い映画です。最後のシーンで、チャップリンは女優さんに何百回もダメを出したとか、色々な思いをみな含んだ上でのシーンですね。機会をみつけて、ぜひ一度ごらんいただければと思います。
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おなら出ちゃっ太 さん、 (narkejp)
2019-12-10 19:57:54
コメントありがとうございます。「おそ松くん」の漫画に、そんな作品がありましたか。それは、おそらく「街の灯」の翻案でしょうね。戦前の芝居に、すでに翻案物が上演されていたそうですし、赤塚不二夫さんにも強く訴えるところがあったのでしょう。チャップリンの場合は、明らかに格差というか階級を意識しており、映画の冒頭の除幕式のシーン等はそういう描き方だと思いますが、最後の場面は、そういう格差を描きながらも、しみじみとペーソスを感じさせる、秀逸な描き方だと感じます。
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おなら出ちゃっ太 さん、 (narkejp)
2019-12-10 20:02:27
「お婆さんと交代したら売れなくなった」件は、「小さな親切・大きな下心」の要素をあぶりだす面もあり、笑いの影にひそむ辛辣さを感じざるを得ません。チャップリン作品には、そういう辛辣な要素が含まれ、晩年の作品ほど、苦さが増していくようです。でも、「ライムライト」などは大好きです。
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