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電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

演奏会と拍手の意味〜「山響クロニクル〜50年の軌跡」(22)〜(24)

2022年10月13日 06時00分09秒 | クラシック音楽
新型コロナウィルス禍により演奏会の開催が困難となったとき、演奏家の人たち、とくにプロの演奏会の人たちは大きな危機感を持ったことと思います。それは東京など日本国内に限らず、世界中で生じた現実でしたが、人口20万余りの都市基盤しか持たない山形交響楽団にとって、衝撃的な現実であったろうと思われます。演奏会を開き演奏を行うことで存立の基盤としてきた団体が演奏会を開くことができないわけですから、大きく言えば自らの存在意義を問われかねない事態でしょう。



このあたりの状況を、地元紙「山形新聞」の連載記事「山響クロニクル〜50年の軌跡」では、9月20日付け「(22)前代未聞の演奏」として、2020年3月の定期演奏会を無観客で実施し、インターネットを通じて生配信したことを伝えています。「閉塞感が漂う今だからこそ、県民に音楽という喜びを届けるべきではないか。こういう時に山響の役割を果たしたい」という西濱事務局長の言葉どおり、このときのインパクトは大きく、リアルタイムで3万人、のべ人数で10万人が視聴したとのことです。私もこのときの異常な緊張感、集中力に満ちた演奏を聴き、誰もいないホールで客席に向かって指揮者も団員も一礼する姿を見て、伝えたいものが伝わったように感じました。でも、双方向メディアとは言いながら、こちら側の共感をリアルタイムに伝えることはできないのです。



9月27日付け「(23)コロナ禍の模索」は、再びインターネットを通じたライブ配信や、子どもたちに向けた楽団員によるリモートアンサンブルの動画配信など、さまざまな試みが行われたことを伝えています。さらに10月4日付け「(24)音楽の力」では、常任指揮者・阪哲朗さんの指揮のもと、新県民ホールを会場に少しずつ段階的に聴衆を入れて演奏会を再開する様子が描かれます。



確かに、コロナ禍の中で余儀なくされたこととは言え、インターネットによるライブ配信等によってより多くの人々に山響の演奏を届け、興味を持ってもらうことができたことは大きな意味があると考えますが、その一方で、地元で定期演奏会に通い、山響を応援するものとして、ホールを圧倒するような大きな拍手で共感や応援を伝えたい。演奏家が真剣に努力した音楽的な営みが聴衆に伝わり、共感と応援とが熱と力のこもった拍手となって届けられることが演奏会の本来の姿なのだと、あらためて感じられたことでした。


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