電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

和田茂夫『魔法のスプレッドシート整理術』を読む

2024年04月29日 06時00分22秒 | -ノンフィクション
図書館で、2011年にナナ・コーポレーションから刊行された単行本、和田茂夫著『魔法のスプレッドシート整理術』を見つけ、借りてきて読みました。著者はスプレッドシートと呼び、表計算とは表記していないことから見ても、どうも数値計算や表集計はあまり重視していないような印象を受けます。興味深い本でしたが、いくつか疑問も残りました。



本書の構成は、次のようになっています。

プロローグ スプレッドシート+紙とペンならうまくいく
第1章 情報のまとめ方、デジタルと紙の使い方
第2章 時間をスプレッドシート+「紙」で管理する
第3章 仕事をスプレッドシート+手書きで整理する
第4章 すべてのファイルをスプレッドシートにまとめる
第5章 「情報」は何でもスプレッドシートでつなげる

本書のポイントは、プロローグを読むとおおむね理解できるようです。(1)パーソナルデータ→(2)ToDoリスト→(3)スケジュールや住所録、ファイル一覧→(4)日誌→(5)進行表、企画リスト、アイデアリスト などをスプレッドシートでまとめてきた経歴から、たいていの情報は縦横(行と列)のセルからなるスプレッドシート形式でまとめられると気づきます。それを、入力と出力は紙とペンで、処理と記憶をスプレッドシートに、という形で一般化したということでしょう。あとは検索が容易とか編集や印刷が自由自在とか、スプレッドシートの特長を説明します。実際の利用例などはたしかに有益で興味深いものがたくさんありました。



私自身も、MS-DOS の時代から表計算の自作ワークシートでスケジュールを作り、日付関数や曜日関数などを駆使して、西暦で年を入力すればすべての曜日が自動で入るようにして、システム手帳に組み込んで利用していました。また、何年も前からパーソナルデータをワープロソフトでコピー用紙一枚にまとめ、システム手帳のリフィルとしたり(*1)、折りたたんで綴じ手帳の表見返しに挟んで随時参照する形で(*2)利用してきましたし、テキストファイルで日付とタイトルと内容という3つのフィールドからなる不定長データベースとして1989年からずっと保存してきています(*3)ので、検索や編集加工の容易さなども理解できます。ですが、そこで感じるのは、

なぜスプレッドシートなのか?

ということです。当座の処理に便利なのは充分に理解できますが、1989年当時の表計算のファイルは MS-DOS 上の Multiplan3.1 だったり Lotus1-2-3 だったり、あるいは 20/20(アシストカルク)だったり様々でした。それらのデータファイルは全部ハードディスク中の歴代PC名のフォルダに保存されていますが、SYLK形式のものを除き、それらの大部分はすでにもう読めません。MS-Windows3.1/95 当時の MS-Works の表計算データすら、読めません。かろうじて Windows2000/XP 当時の Excel のデータは読むことができますが、例えば過去に遡って確定申告等のデータを調べたいときなどには、限界があります。実際には、過去データを調べるには確定申告の控え(紙)を綴ったフラットファイルを調べるほうが確実ですし、確定申告以外でも、平成元年あたりまで遡って特定のキーワードについて検索したい時には、テキストファイル備忘録くらいしかアテにはできないのです。

ですから、長年、表計算を便利に使い続け、確定申告も Linux 上の LibreOffice Calc でやっている私の経験からいえば、

当座の処理にスプレッドシートは便利ですが、長期の視点で見るならば、時代の変化に耐えられるのはテキストファイルだけです。

ということですから、「すべての情報」をスプレッドシートに集約するというのは、ある意味、危険なことなのではなかろうか。

(*1): 来年の手帳のこと〜「電網郊外散歩道」2008年10月
(*2): 新しい手帳に差し込むパーソナルデータ〜「電網郊外散歩道」2021年1月
(*3): テキストファイル備忘録を始めたのは〜「電網郊外散歩道」2008年12月

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