電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

国立研究所が推計した2050年人口について

2023年12月29日 06時00分59秒 | Weblog
過日の報道によれば、厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が発表した2050年までの地域別推計人口の表が興味深いものです。これによれば、2050年の全国の推計人口は約1億人。記憶では、昭和40年代の始めころに国内の人口が1億人を突破したはずですので、約80年余りでもとに戻ることになります。これはもちろん少子化と出生数の減少に加えて団塊世代の影響が峠をこすためでしょうが、むしろ地域別の傾向が見えてきます。縄文時代や古代の推計人口分布でもその傾向はありました(*1)が、やはり南関東の人口は減りにくい。これに対し、北東北や南紀・南四国などの減少は雪国だからとは言えない要因が大きいようですが、それはいったい何なのか。



背景が見えにくい場合は、視野を狭くして具体的なところで見ていくと、はっきりと見えてくる場合があります。具体的には、山形県内の市町村の推計人口です。これによれば、人口減少がおだやかな、減りにくい地域としては、東根市(87.6%)、山形市(80.4%)、三川町(76.9%)、寒河江市(72.2%)などが挙げられますが、これらの地域に共通なところは何だろう。

例えば東根市は、東洋経済新報社の「住みよさランキング」で山形県内1位、東北地区でも第1位になっています(*2)。さらに大東建託の「住み続けたい街」ランキングでも県内第1位、東北地区でも第2位となっています(*3)。その共通の背景となっているのは、若い世代が利用しやすい住宅供給の手頃さ、開発余地でしょうか。

確かに、東根市に流入する人口の第1位は隣の天童市からで、第2位は山形市からなのだとか。工業団地等、単純な加工組み立て型だけではない多彩な職場があり、住宅が求めやすければ住み始める人も多くなるだろうというのは当然です。折込チラシで見る土地付き戸建住宅が山形市で3,500万、天童市で3,000万、東根市で2,500万で求められるという宣伝を見ると、まだ経済的な蓄積が充分でない子育て世代、共働きをしながら住宅ローンを組む際の負担を少しでも軽くしようと知恵を絞る姿が目に見えるようで、「子育てするなら東根市」というキャッチフレーズのように子育て世代への支援や保育施設等の充実も後押しするのでしょう。

ここで一気に視野を全国に広げると、見えてくるのは雪だけではない、宅地化可能な平地の余地がどれくらいありそうか、という条件です。人口政策のバックグラウンドには、実はこうした視点が必要なのかもしれません。素人のピント外れの見方かもしれないとは思いつつ、都会の億ションに入る人たちを思う時、富の偏在という表現に思わずうなづいてしまいます。

(*1): 鬼頭宏『人口から読む日本の歴史』を読む〜「電網郊外散歩道」2022年11月
(*2): 「住みよさランキング2023」東北・北海道トップ50〜東洋経済オンライン
(*3): 住み続けたい街2023 自治体ランキング 東北版〜大東建託・いい部屋ネット

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