電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

香月美夜『本好きの下剋上』第三部「領主の養女V」を読む

2018年09月06日 06時01分02秒 | -香月美夜
TOブックス刊の単行本で、香月美夜著『本好きの下剋上』第3部「領主の養女V」を読みました。大学図書館司書の仕事に就くはずだった女子大学生が、地震のために自宅の本棚が倒れて本に埋まり死亡、転生した先が中世風の異世界で、兵士の娘から神殿の青色巫女を経て魔力の大きさを見込まれ領主の養女ローゼマインとなっていたところ、この巻では見知らぬ敵の襲撃を受けて二年間の眠りにつく話です。
帯に踊る文字「……誰か助けて!驚愕の新展開が待ちきれないクライマックス!」のとおり、中高年オジサンも思わずドキドキな急展開(^o^)/



始まりはイルクナーから届いた新しい紙について、ベンノらプランタン商会の面々と、領主の養女として製紙業をあと押しするローゼマインとの打合せから。少し後に神殿の灰色神官フリッツとベンノの会話で、ローゼマインが神殿長を退くときのことが語られますが、これが今後の伏線となります。

ハッセの町とローゼマインとの関わりは、平民と貴族との関係を考える良い機会となりました。出版業のためにはお話を集める「グリム計画」が大切で、ひそかに着々と進行中です。「今年こそ」と再挑戦したリュエルの実は無事に入手でき、ついでにブリギッテに恋するダームエルの求婚用もゲット(^o^)/

エーレンフェスト内の派閥争いは、アーレンスバッハに嫁いだゲオルギーネの一派とライゼガング系貴族の争いの上に、領主ジルヴェスターの権力があやういバランスで乗っているという形のようで、ローゼマイン式魔力圧縮法は領主一族にとってきわめて重要な武器の一つとなります。

イルクナーでの収穫祭の後に城に戻ったローゼマインは、初めての妹シャルロッテに胸キュンで、姉としていいところを見せようと奮闘します。ゲオルギーネ派の策動で窮地に陥ったヴィルフリートを実質的に救うことになったのも、もとはといえばシャルロッテにいいところをみせたいというのがかなり大きな動機でした(^o^)/

一難去って、神官長フェルディナンドの指導のもとに、体内に固まった魔力を溶かす薬ユレーヴェを作り、領主一族を中心にローゼマイン式魔力圧縮法を教え、シャルロッテの洗礼式を終えた直後に、未知の敵の襲撃を受けます。誘拐されたシャルロッテを救わんと前後を顧みず飛び出したローゼマインは、逆に敵に捕らえられ毒を飲まされてしまいます。



昔風の紙芝居や連続ドラマならば、「どうなる、ローゼマイン! 待て、次号!」みたいな終わり方で次回に興味をつなぐところでしょうが、ここではちゃんと眠りについた二年間のことが他者視点で語られています。姉の代わりを務めようと奮闘するが及ばないシャルロッテの挫折や、下町の家族や印刷技術集団グーテンベルグの努力、ダームエルとブリギッテの悲恋、イルクナーでフォルクとカーヤが結婚に至るまでの経緯、何事にも中心となって調整に奔走する神官長フェルディナンドの姿など、多面的に描かれますので、実に説得力あり(^o^)/



さて、次巻からはいよいよ貴族院での話です。WEBで全話を読んでいますが、個人的には貴族院での話がいちばん面白いと感じています。

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