電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

モーツァルト「交響曲第33番」を聴く

2015年08月17日 06時03分38秒 | -オーケストラ
お盆の休みには、以前はまとまった時間が取れて、パソコン三昧とか読書三昧とか、のんびりできたものでした。ところが今は、父が亡くなって寺の総代を引き継いだり、娘夫婦の帰省で元気な孫たちがやってきたりしたこともあり、なんだかんだと役割が増えてしまっています。また、お休みですから通勤の音楽もなく、じっくり音楽を聴く機会も減少してしまいます。そんな時に、パブリック・ドメインの仲間入りしたいくつかの音源がネット上に公開されている(*1)ことに気づき、ダウンロードして再生してみました。ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団による、モーツァルトの晴朗な交響曲第33番変ロ長調K.319で、1962年10月26日の録音だそうです。



この録音は、1980年代に発売された廉価盤LP「セル/クリーヴランドの芸術1300」シリーズのVol.26(13AC446)で所有してはいますが、パソコンで音楽再生する機会が増えた現在、MP3等の形式で公開されるのはたいへん便利でありがたいものです(*2)。

この曲は、1779年の夏(7月)に、故郷ザルツブルグで第1・2・4楽章が書かれ、同地で演奏された後に、1782年にウィーンで第3楽章「メヌエット」が追加されて完成したものだそうです。パリで大規模なオーケストラに触れ、交響曲第31番「パリ」という形で区切りを付けた後に、フルートやトランペット、ティンパニを含まない、小じんまりした編成の曲を書いたのは、ザルツブルグという街のオーケストラの通常の規模に対応せざるをえなかったからかもしれません。具体的な楽器編成は、オーボエ2、ファゴット2、ホルン2、ヴァイオリン2部、ヴィオラ2部、低弦としてチェロ、コントラバスというものです。

第1楽章:アレグロ・アッサイ、4分の3拍子、変ロ長調。長い主和音を八分音符が追いかけるみたいなテーマは、楽しいオペラの序曲みたいな雰囲気を持って始まりです。そして展開部には雰囲気を変えて例の「ジュピター音型」が登場! ここは印象的です。
第2楽章:アンダンテ・モデラート、4分の2拍子、変ホ長調。アレグロ・モデラートというのはよく聞きますが、アンダンテ・モデラートというのは珍しい(^o^)/ おそらくモーツァルトは、この楽章が、あまり遅く重く演奏されるのを嫌ったのでしょう。弦楽合奏の美しさと木管のひなびた響きを堪能します。
第3楽章:メヌエット、4分の3拍子、変ロ長調。高音と低音の対象が鮮やかで、活発なメヌエットです。遠くにホルンの響きが聞こえるのも、のどかな印象。
第4楽章:アレグロ・アッサイ、4分の2拍子、変ロ長調、ソナタ形式。軽やかで活気に満ちた音楽、演奏で、室内オーケストラ以上に緊密なアンサンブルが見事です。

参考までに、LPの表記から演奏時間を示しておきましょう。
■セル指揮クリーヴランド管
I=6'08" II=5'43" III=2'50" IV=4'00" total=18'41"

ごらんのとおり、かなり速めのテンポで演奏しています。モダン楽器と大オーケストラによる演奏でありながら、この活気あるリズムの切れのよさと、強弱や音色のやわらかなニュアンスの変化には、ただ感嘆するばかりです。もちろん、古楽奏法を意識した現代の演奏の透明度とは基本的に響きが違うのですが、例えば古楽の旗手の一人、トン・コープマンのテンポよりもずっと速く生き生きとしていて、演奏が古びていません。これは驚くべきことでしょう。24℃と涼しく静かな朝に、セルとクリーヴランド管の演奏で、モーツァルトの美質を再び味わうことができました。

(*1):クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label
(*2):このLPは、交響曲第33番と第28番、そしてディヴェルティメント第2番の3曲が収録されていますが、今回はこのディヴェルティメント第2番も公開されています。これもいい曲・いい演奏です。

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