電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

村上もとか『JIN~仁~』第13巻を読む

2012年04月27日 06時02分21秒 | 読書
だいぶ間があいてしまいましたが、集英社漫画文庫から、村上もとか著『JIN~仁~』第13巻を読みました。本シリーズの完結です。

冒頭、橘恭太郎が福澤諭吉に呼び止められ、慶應義塾を見学して影響を受け、伊庭八郎の誘いを断って南方仁先生の警護役に徹することを決意します。勝海舟と西郷隆盛の談判で実現した、江戸城の無血開城が行われますが、これに不満を持つ彰義隊は上野の山に立てこもり、官軍との間に戦が始まります。

上野戦争の砲声が響く中、南方先生は自分の脳腫瘍に気づきますが、この時代では自分の腫瘍を治療することはできません。時代の終わりと命の短さを自覚した仁先生は、思い切って橘咲さんに求婚します。平成の時代に帰ることを諦め、この時代に生きようと決意したのでしょう。咲さんは、兄恭太郎の同意を得て、仁先生の求婚を受け入れます。

さて、松本良順は江戸を去り、大村益次郎に取り入った三隅俊斉が陰謀をめぐらす中、次々に犠牲が出てしまいます。咲さんが銃で撃たれ、兄の恭太郎も銃の暴発がもとで命を落とします。咲さんの怪我は右腕の貫通銃創に擦過傷ですが、ペニシリンが効かない緑膿菌に感染してしまったようなのです。江戸時代にタイムスリップしたときに持っていたはずの抗生物質を探して、三隅俊斉の奸計に落ちますが、落下した場所は平成の時代でした。ここで、物語の始まりに戻るわけです。

しかしこの後は、テレビドラマとはだいぶ違いました。仁先生は平成の時代に残され、入れ替わった自分が幕末に戻って咲さんを助け、橘仁・咲夫妻として仁友堂病院を育てたことを知るのです。少しだけ違う平成の時代。孤独に悩む南方仁先生は、国際機関の要請に応え、アジアアフリカの医療援助に没頭します。ふと日本に帰ったときに訪ねてきた女医は、名をルロンと言い、野風の曾孫にあたる女性でした。



なるほど、そう来ましたか。なかなか余韻の残る結末です。テレビドラマとはだいぶ違う終わり方に、物語のスケールの大きさを感じました。漫画とはいえ、なかなか充実した医学・時代考証を楽しむことができました。

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