電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

村上もとか『JIN~仁~』第12巻を読む

2012年03月03日 06時02分58秒 | 読書
先日来、行方不明になっていて、このほど大規模な捜索の結果、ようやく確保した集英社漫画文庫、村上もとか著『JIN~仁~』第12巻を読みました。

この巻は、東修介が沖田総司を斬ろうとして、誤って坂本龍馬の頭部をザックリと斬ってしまうという事件から始まります。緊急開頭手術が行われますが、執刀の際に、南方仁先生は、龍馬の脳室内にたまっていた血液混じりの髄液を顔面に浴びてしまいます。手術の途中に、南方先生もひどい頭痛とめまいに襲われます。幕末の政治情勢は、坂本龍馬危篤の報に膠着状態になり、徳川慶喜から坂本龍馬あてペニシリン薬が届けられて、龍馬存命の報せが薩摩藩内で龍馬の暗殺に動いた者たちにも動揺を与えます。

目覚めた龍馬が仁先生に伝えたのは、未来の世を見てきたこと。仁先生は、明治維新から平成までの日本の歴史の概略を語ります。もし、龍馬が未来の世すなわち平成の現代に行ったら何をしたいかと問われ、「四海兄弟」つまり世界中のあらゆる人間と、兄弟のように付き合ってみたい、と。血なまぐさい殺し合いは、もうたくさんだ、というのです。そして意識は混濁し、緑膿菌による髄膜炎を発症するのです。即ち、ペニシリンが効かない状態に。

坂本龍馬死去の報せに、政治は大きく動きます。西郷隆盛は討幕を決意、沖田総司は結核が悪化します。伊庭八郎に幕府のために戦うように誘われた橘恭太郎は心が揺らぎますが、南方先生の護衛の任務を思い、同行を固辞。鳥羽伏見の戦いで錦の御旗を掲げた薩長新政府軍は、怒涛の勢いで東征し、南方先生と咲さんらの一行は、船で江戸に戻ります。ここでも伊庭八郎の態度はなかなか立派です。

そして、戻った江戸では、勝海舟が江戸を守る手立てに悩み、西洋医学所と本道医学館は、負傷者の治療のために協力態勢を取ります。そこへ届いた野風からの手紙には、ルロン氏との間に生まれた赤ちゃんを抱いた写真が同封されていました。たとえ、残された命は短くても、野風さんはこの世に新しい命を残して行くのです。

橘恭太郎は、武士とは何かに悩み、勝海舟は恭太郎を一人連れて西郷吉之助と談判、江戸城の無血開城と和平の実点に成功します。



うーむ、この巻は、なぜか男性中心のストーリーですなぁ。咲さんも野風さんも、なんだか出番が少ない。政治と動乱の物語は、どうしても男性中心の描き方になってしまうのでしょうか。確かに、暴力とテロルと動乱の時代だものなぁ。この巻では、ちょいと心がささくれ立ちます。
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