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リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

バロック・リュート奏法の歴史的根拠と実践(27)

2022年12月31日 17時43分00秒 | 音楽系
バロンの著書にはビブラートについても詳しく書かれています。著書には2種類のビブラートが紹介されています。

一つ目はこちら;



この記号については次のように説明されています。

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肝心なことは、小指を文字の記されてある箇所にしっかりと押しつける。右手で撥絃し、左手で押さえながら時に左へ、時に右へ絃を幾分ゆっくりと動かす。
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(バロンの著書の日本語訳「リュート -神々の楽器-」、菊池賞訳より)


要するにクラシック・ギター奏者やヴァイオリン奏者がやっているような普通のビブラートの方法ですね。さらに、

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ただ、この際特に留意すべきことは、動かしている間は普段ネックの中央につけている親指を離し、自由にすることだ。なぜなら、指を固定しておくと、ベーブング(ビブラート)の妨げになるからだ。
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ここで少し気になることがあります。それはこの部分。「普段ネックの中央につけている親指を離し」の部分。ええっ!左手親指がネックから離すの!普通演奏するときに左手の親指を離すことはしません。ましてやビブラートかけるときならなおさらです。ギターやヴァイオリンの人だってこの方式のビブラートをかけるとき親指を離すことはないはずです。

本当にバロンはそのように言っているのでしょうか。原著を調べてみました。



ここが当該部分だと思うのですが、「loss und freh lasse」ですね。現代のドイツ語だと多分「los und frei lasse」になると思います。losは確かに辞書には「離れて」という意味が最初に載っています。やはりバロンは親指をネックから離してビブラートをしていたのでしょうか。

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というところで本年の当ブログのエントリーはここまでです。来年に続く!です。本年もお読み頂きありがとうございました。よいお年をお迎え下さい。