リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

バロック音楽の旅Ⅹ

2016年04月27日 12時55分49秒 | 音楽系
ことしもバロック音楽の旅講座が開催の運びと相成りました。その名も「バロック音楽の旅Ⅹ」。なんかどっかのゲームみたいですね。(笑)

この講座は、コンサートとレクチャーによる講座で、年間に全6回開催されます。毎回コンサートとレクチャーをするのではなく、最初の2回はレクチャー(一部生演奏が入ります)、あと4回はトーク付きのコンサートです。

先週の金曜日に桑名市の認定を受けるためのプレゼンがありました。



この講座も10年目を迎えますので、プレゼンも10回目ですが、なんか本番で演奏しているときより緊張します。(笑)与えられた時間は5分しかありませんので、演台の上にiPhoneのストップウォッチを置き、それとにらめっこしながら4分56秒プレゼンをしました。まずまずですね。まぁ、きっちり時間が決まったというところで評価されるものではありませんが。

例年はその場で結果発表となっていましたが、今年度から結果を郵送していただくことになり、昨日結果が届きました。結果は無事認定されました。これでやれやれです。あとは、申込〆切の6月20日まで宣伝活動にいそしむことになります。


プレリュード、フーガ、アレグロ(BWV998)その4

2016年04月12日 15時53分35秒 | 音楽系
さて998のタブの話に戻りますが、件の40年前に書いたのタブを弾いてみましたら、自分で言うのもナンですがなかなかよく書けています。でも調弦が煩わしいことや(ほとんど変ロ短調で書かれたロジー伯のトンボー(ヴァイス)並です)いま一つタイト感が足りないように感じたので一音上のヘ長調版を作ってみました。実はこのヘ長調版は10年くらい前にざっと作っていて、今回指運を見直してみました。ヘ長調版は音が高いのでとても明るく響きます。でも高い音域(14フレットまで)を多用するので音がちょっとキンキンするします。ギターだととても魅力的なポジションですが、リュートだとあまりエレガント響きません。そして何より技術的にとても難しいです。

998はニ長調でもよく演奏されます。最近ではハ長調版も発表されています。ニ長調版はホプキンソン・スミス版と今村泰典版があり出版もされています。ハ長調は、数年前にアメリカのリュート・ソサエティに発表されたものをベースに自分で作り直した版があります。今はヘ長調版をさらっていますが、変ホ長調版、ニ長調版やハ長調版を弾くとなんかホッとします。これらも決して簡単というわけではないのですが、リュートだとやはりこのくらいの音域かなという感じもしています。アクロバティックな左手指運満載のヘ長調版の明るさも捨てがたいですが、この曲の本質とはちょっと離れているような感じもします。何調で弾くかは今のところ流動的です。決めていても本番の1週間前にコロっと変わるかもしれません。

プレリュード、フーガ、アレグロ(BWV998)その3

2016年04月10日 20時47分50秒 | 音楽系
この曲を久々に演奏するにあたり、昔使っていたタブを使おうかと、もうすでに紙にシミがついていて「古文書」化しかけている六線譜を引っ張り出してきて眺めてみました。曲の最後に、「1976年デン・ハーグにて」と書かれていました。これは1976年に佐藤豊彦さんのお宅に押しかけて居候させていただいたときに仕上げた楽譜です。プレリュードとフーガはすでに日本にいるときにタブにしたのですが、最後のアレグロを氏のお宅で仕上げたということです。厚かましいことに、六線紙まで頂いています。

76年には約一ヶ月程滞欧したのですが、この間なんとホテルに泊まったのは2日だけであとは、佐藤さんのお宅や知り合いの下宿に転がり込んだり、列車や船の中ですごしました。そのホテルの2日も実は自腹ではなく航空会社持ちで泊まったものです。(パリ発の帰りの便で韓国の某航空会社からオーバーブッキングなので、2日後にチューリッヒから乗ってくれと言われました。同様の日本人が何人かいましたので、皆さんと一緒に航空会社と交渉してチューリヒまでの飛行機代、ホテル代、食事代すべて出して頂けるようになりました)

76年頃はまだ海外に行くのは珍しく経費もかかりました。(格安チケットで当時30万もしました)成田空港もまだ建設途中で羽田から出発致しました。当時はソ連領空通行不可だったので、米国アラスカ州のアンカレジまで行き、そこから北極を横切ってヨーロッパに入るルートでした。今なら中部空港から12,3時間もあればヨーロッパに行けますが、当時は確か家を出て佐藤さんのお宅に到着するのにあしかけ4日くらいかかった覚えがあります。まぁそんな「大旅行」をよくも現地における準備は全くなしでやったものです。実は佐藤さんとは手紙のやりとりこそあったものの面識はありませんでした。今から思うとめちゃくちゃですね。(笑)それに当時は電話も日本の家庭電話から直通はありませんでしたので、そもそも到着したかどうかを日本から直接の確認のしようもありませんし。下手したらどっかの国に拉致されていたかもわかりません。

プレリュード、フーガ、アレグロ(BWV998)その2

2016年04月09日 12時34分39秒 | 音楽系
この曲はバッハの自筆譜だけが残されており、筆写譜は現存していません。ひょっとしたら誰も筆写しなかった可能性もあります。オリジナルは現在上野学園大学にあります。70年代初め頃、当時同大学の助教授をされていた大橋敏成先生にレッスンをしていただいていた時期があったのですが、同大学からカラー印刷で出版されたBWV998を先生からお借りしたことがありました。このとき、アレグロの最後の方は五線譜ではなく、オルガンタブラチュアで書かれていることを知りました。紙のスペースがなくなり、窮余の策としてオルガンタブラチュアで書いたように思われます。

この曲の成立時期は諸説があるようですが、1730年代後半あるいは1740年中頃あたりのようです。円熟期から晩年に至る頃の作品のようです。興味深いのは、フーガがダ・カーポ形式になっていることです。一般的にフーガはオープン形式ですので、全体の枠組みを作ることはしません。ところが998のフーガは、展開とか変奏ともいうべき中間部があり、また始めに戻る(ダ・カーポ)という形式になっています。バッハによる同様の形式のフーガは997番のフーガにも見られますが、他は見たことがありません。いずれもリュートがらみの曲であるというのが興味深いところです。

プレリュード、フーガ、アレグロ(BWV998)その1

2016年04月07日 14時43分33秒 | 音楽系
今度のリサイタルで、プレリュード、フーガ、アレグロを弾きますが、この曲を演奏するのは久しぶりです。多分30年以上前のことだと思います。その頃は原調と同じ変ホ長調で弾いていました。

自筆譜の冒頭には、「リュートまたはチェンバロのためのプレリュード」と書かれていますので、リュートのために書かれたように思えますが、実際には、弾けることは弾けますが、とても弾きにくくさらに何か所はどうしてもそのままでは音が出せない箇所も出てきます。

調弦もとても面倒なことに、6コースと13コースを半音下げるというようなことも必要です。(変ホ長調なので、もちろん9コースはミの♭、12コースはシの♭にしています)6コースと13コースを半音下げないでも演奏可能ですが、そうするとさらに弾きにくい箇所が増えます。

原曲のままでは音が出ないところは、オクターブ下げたりして「編曲」をしていくわけですが、リュートのために書かれた曲をリュート用に「編曲」するというのもおかしな話です。実はこの曲はラウテンヴェルク(リュート・チェンバロ)といって、鍵盤楽器ですがガット弦を張ってリュートのような音が出る楽器のために作られたものです。チェンバロの人に言わせるとこの曲は音がスカスカで技術的にはそんなに難しくないそうです。一方リュート「編曲」では最高の技術が要求されます。これらの事実からすると、表題の「リュートまたはチェンバロ・・・」というのはラウテンヴェルク用に書いたということのようです。


エイプリルフールねた

2016年04月04日 13時51分38秒 | 日々のこと
今年も4月1日のヨタ話にお付き合い下さいましてありがとうございました。え!まだ読んでない?ぜひ、お読み下さい。ついでに過去の分も「ウソ系」のカテゴリーにございます。

もう10年以上もやってますと、ちょっとネタ切れになってしまいます。そこで、「ネタ帳」を作って気が付いたら書き込むことにしています。意外にマメでしょ?(笑)今年は割と直前になって放送されたNHKのサイエンスゼロの番組をもとに書いてみました。

はじめの方に出てくる「ムラドルフ大学」というのはもちろん虚構の大学です。ドイツ語をご存じの方だと、Dorf は村という意味なので、そのあたりで怪しげな話だと気がついたかも知れません。もっとも4月1日の私のブログはすべて怪しげな話なので、最初からそのつもりで読んで頂いているかも知れませんが。

ネットではいろんな会社がエイプリルフール話を企画していました。トヨタ自動車では水中を走ることができるランドクルーザーを発売するとか、BWVミニが跳ね上げ式のドアがオプションにしたとかいった話が出ていました。荒唐無稽な話をいかにもまともな話風に書いているところが面白いです。

マツダはマニュアル車を今後全廃するという話を掲載していました。スポーティーでカッコいい車を立て続けに発表して企業イメージ急上昇のマツダならではのネタで、ちょっとよたり気味の自動車会社が書いたら「あ、そう」で終わってしまうところでしょう。

ひょっとしたらアリ?とか、まさかこんなのはないでしょう、でもひょっとしたら?やっぱりなぁ、というようなネタを作るのがポイントですね。このあたりが単なるウソとは異なるところです。私の場合でしたら、「リュート3本買いました」、翌日に「実はウソでした」だけだったらこれは単なるウソ、例えば「折りたためるテオルボを買いました」あたりならエイプリルフールのウソネタとして結構イケると思います。

例えば、「折りたたみ式テオルボ」の合成写真を作ったり、実は歴史的にもあったみたいな話や製作した人の話題など、虚実おりまぜて話を作って行きます。全部「虚」ではいけないんですよね。適当に「実」をおりまぜる、あるいはほとんど「実」にするところがポイントです。ひとつのウソをつくために99のホントで固める、ってやつです。

このテオルボネタ、来年にでも使えそうですが、実はこの「折りたたみ式テオルボ」は実際に作った人がいるので、もうネタとして使えません。エイプリルフールよりは何ヶ月か前に読んだ記事なのでホントの話だとは思いますが・・・

最新の脳科学機器

2016年04月01日 00時19分20秒 | ウソ系
先日MHKテレビのサイエンスBEROで興味ある研究が紹介されていました。

それはドイツ・ハンブルクのムラドルフ大学医療センターのテーレマン先生による研究ですが、8~10ボルトの弱い電流を頭蓋骨を経由して脳に通すことにより、脳活動を向上させるというものです。専門的にはtDCS(経頭蓋直流電気刺激)というそうです。これがtDSCのための機器です。意外と簡素なものなんですね。電極を上頭分の任意の2か所に貼り付けます。


(著作権の関係で画像を加工しています)

テレビの放送では様々な理由で脳の活動に障害のあるかたのリハビリだけでなく、健常者の脳活動を向上させた例も紹介されていました。何と楽器の演奏家の技術的向上の例も紹介されていました。

普段から生徒さん達にリュートの上達は要するに脳活動の向上であると主張している私としては、自分の主張を裏付ける有効な機器であると確信致しました。早速ムラドルフ大学のテーレマン先生に連絡を取ってみました。

先生によると最新開発の機器は稼働させるための電流をコードレスで送ることができ、なおかつ超軽量薄型になるそうです。それを帽子とかカツラに埋め込むことも可能のようです。となるとtDCSの機器を使っているということはもやは外からわからず、いままでよりずっと卓抜した動きの右手や左手を得ることになります。この機器を使えば、ややこしい左手の動きや、どの弦を弾いているかよくわからない右手親指の動きも確実にコントロールできそうです。つまり誰でもヴァイスになれるわけです。

テーレマン先生にリュート演奏における活用を提言申し上げましたら、大変喜んで頂きました。彼が住んでいるハンブルクはバロック時代にはあまりリュート奏者はいなかったと現在では考えられているが、実は彼の祖先にあたるゲオルク・フィリップ・テーレマンはカンタータなどにリュート系の楽器を頻繁に使っていたとおっしゃる。なんとテーレマン先生はあのバロック時代のご長寿作曲家テレマン(日本ではテはのばさないで発音します)から数えて12代目にあたるそうなんです。

ハンブルクのリュート奏者はダヴィッド・ケルナーがよく知られていますが、テレマンもリュート二重奏を書いており(編曲かもしれませんが)また彼の書いたおびただしい数のカンタータにはマンドーラと総称されるリュート系の楽器を通奏低音に使っていることが知られています。さすが12代目、よくリュートのことをご存じです。

テーレマン先生はハンブルクとリュートは昔から縁が深い、ぜひ日本でもデータを取ってほしいということで5台程(というか、最新型は超軽量極薄なので、10枚って感じです)送るとおっしゃって頂きました。到着が楽しみです。もし今度のリサイタルに間に合えば私もぜひ使ってみたいと考えています。なんせオールバッハプログラムでてこずっていますので。(笑)こうなったらそのうちオールテレマンプログラムも考えないといけませんですね。