リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ノンフィクション作家星野博美さん(1)

2021年05月31日 13時07分02秒 | 音楽系
日本経済新聞土曜日朝刊の読書欄は毎週楽しみにしているページです。書評を読んでたまに購入するときもありますが、大体はなんとなくその本を読んだ気分になって終わります。

先週の同欄にフィリップ・ブローム著「あるヴァイオリンの旅路」の書評が出ていました。評者によると「著者がひょんなことから出会ったヴァイオリンの来歴を追った記録である」そうです。

書評を読もうとして、まずに目に留まった文章は、「世界中から弦楽器が集結する展示会に出向いたことがある。ルネサンス期にヨーロッパで流行したリュートという弦楽器の製作を依頼するためだった」でした。

書評を読んだあと、この冒頭の文章の方が気になって、評者の名前を見てみました。評者はノンフィクション作家星野博美という方でした。この文章からすると星野さんはリュートをお持ちでひょっとして習っているのかと思われました。

リュートを弾く人は、プロはそうでもないのですが、理系でとても理屈に強く男性が多いのです。この方のように作家で女性(名前からすると男性かも)の方はとても少ない、というか私が知っている範囲では誰もいません。

これは珍しい方だと思い少し調べてみることにしました。

武満徹とフーガ

2021年05月30日 20時22分37秒 | 音楽系
今年は武満徹没後25年ということで、当ブログでも少し取り上げたことがあります。企画コンサートもぐぐってみますと多くはないですがいくつか出てきます。残念ながら名古屋地区で開催されるものはないようですが。

武満がなくなる10カ月ほど前、名古屋のしらかわホールでオール武満プログラムのコンサートがありました。24年前のちょうど今頃です。このコンサートにはなんと武満本人が来ていまして、本番開演前に1時間ほど指揮者の岩城宏之氏とトークショーがありました。(当日のオケはオーケストラ・アンサンブル金沢でした)

その中でどういう流れだったかはよく覚えていませんが、確か映画音楽だったかの話だったような感じがします。武満は若い時から沢山映画音楽を書いています。その話の流れで岩城がフーガに関する話題を出してきました。

武満は少し気色ばんで、

「ぼくはフーガなんていくらでも書けますよ。ちゃっちゃっとね。・・・」

なんて言っていたことを妙に覚えています。

彼の作品の中でフーガは多分相性が悪いので出てきませんし、多分映画音楽の中にもないと思います。岩城がフーガの話題を持ち出したのも武満がまだ書いていないからだったようです。

フーガはバッハのものがとても有名ですが、別にバッハの専売特許というわけではなく、フランチェスコ・ダ・ミラノだってフーガという名ではありませんが、沢山同様の曲を書いていますし、他のリュート奏者も一杯書いています。バロック以降もいろんな作曲家が書いていますし、20世紀に入ってからも例えばブリテンのヘンリーパーセルの主題による変奏曲とフーガという作品がありますし、日本人の作曲家だと戦前の橋本國彦の交響曲第1番第4楽章の紀元節の歌による主題と変奏曲とフーガとか、戦後の矢代秋雄の交響曲の最終楽章にもフーガ風の部分があります。

武満は書く機会がなかったんでしょうけど、トークショーを聞いていたときは、そのうち武満の書いたフーガが聴けるのではと期待がふくらみました。しかし残念なことにその翌年の2月20日、四日市市内の高等学校に出張に出かける車内で武満の訃報を聞きました。

旧ゴールデンランド木曽岬温泉

2021年05月29日 18時32分20秒 | ローカルネタ
木曽川下流の左岸は愛知県になりますが、最下流の木曽岬町(きそさきちょう)だけは三重県です。長島温泉のある長島町と同様古くは尾張の国に属していたようで、ことばは関西系のアクセントではなく非関西系の尾張系のアクセントです。電話の市外局番も三重県の059*ではなく愛知県弥富市と同じ0567、郵便番号も三重県の51ではなく、愛知県内の49で始まるものが使われています。

木曽川で三重県と隔てられているので、愛知県内にある三重県の飛び地みたいな感じがしないでもありませんが、ここは飛び地とは言わないようです。(ちなみに三重県内には北山村という和歌山県の飛び地があります)平成の大合併のときも、桑名郡の多度町、長島町は桑名市と合併しましたが、木曽岬町は桑名郡のままです。

そんな木曽岬町にはかつてゴールデンランド木曽岬温泉と言う立派な温泉施設がありました。開業は昭和46年頃です。その頃車の運転免許を取ろうとがんばっていたのですが、免許を持っている人にこのあたりまで乗せてきてもらって、車の運転の仕方を教わっていたことがありました。無免許ですからゼッタイに運転はしていませんよ!ホント。そのとき建設工事中の木曽岬温泉の湯舟のところに腰かけて休憩したものです。温泉施設は食事もでき、演芸場もありなかなか立派な施設でありました。

10年くらい前、名古屋でのレッスンの帰りに立ち寄ったことがありましたが、施設は老朽化してメンテも行われていない感じでした。その時はもう食事もできず、演芸もやっていませんでした。それ以降もそのまま営業していたようですが、2019年の6月頃に廃業したようです。

最近ちょっと近くまで行く用事がありましたので、そのゴールデンランド木曽岬温泉あったところに立ち寄ってみました。

もうすっかり廃墟ですねぇ。


かつての駐車場から見た入り口あたり。


内部はこんな感じになっていました。丸いところが大浴場で、奥の方には確かお城のオブジェがありました。


ここに新しい施設を作るのは今の日本の経済状況だと難しいとは思いますが、温泉をくみ上げるポンプだけは稼働していて、モーター音がしていました。


木曽岬温泉自体はまだお隣にある料理旅館庄助で入ることができます。ここはゴールデンランドと同じ井戸だそうで、さきのモーター音は庄助に供給するためのものでしょう。


ここはシシ鍋で有名なところですが、昔一度行ったことがあります。久々に再訪してみたいところです。当地方は伊勢湾断層や、桑名四日市断層など大きな断層があるためか温泉施設がとても多いのです。そのほとんどはイケイケドンドンの高度成長時代に開業したものでした。しかしここ何年かは廃業するところが目立ってきました。残っているところはがんばってほしいものです。






DX、待ったなし

2021年05月28日 16時49分54秒 | 日々のこと
何年か前、某市で教育委員会との共催事業をやることになり、それの宣伝を市の広報に掲載してくれると言うので原稿を書きました。その記事にQRコードを掲載していただくと便利なので、担当の方に問い合わせてみました。

するとQRコードはだめだとおっしゃる。1.5cm四方のスペースだから宣伝記事の少し余った部分を使えば可能ではないですか、と言っても何かよくわからない理由でだめだとおっしゃる。

実は市では広報の紹介記事以外に市のHPにも掲載してくれることになっていたのですが、それがHPにアクセスしてもいったいどこにあるのかわからないくらい深いところにあるのです。それもPDFを一枚貼り付けてくれるだけ。きちんとHTMLで記述したページではありません。

せっかくHPに掲載してあるとうたっていてもこれでは何も役に立ちませんので、自分で別のところにその事業専用のHPを作り、QRコードでいけるようにしたのです。


(今年度実際に使用する物です。スマホのカメラで読み取りHPに行けます)

QRコードだめの理由がよくわからないので、いろいろ想像してみました。印刷原稿がまだ昔ながらの手書き原稿なのか、QRコードの意味がよくわからないので何か怪しいことをしようと企んでいると思われたのか・・・何度説明しても埒が明かないので、もうQRコード掲載お願いをするのは止めました。民間のミニコミ誌に広告を出すときにQRコードを掲載しましょう。

先週のエントリーで、「申し込みはファクスで」というのを書きましたが、この手の話はいくつもあります。恐らく一番の理由は市の担当の方々が恐ろしく勉強不足でよく理解できていないのが一番直接的な理由ではないでしょうか。このコロナ禍でDXの遅れが露呈していますが、地方も国も勉強不足なのではないかと思います。

でも公私の「私」も勉強不足です。「老いも若き」の「老い」も勉強不足。私の娘婿の親は私より少し上ですが、普通にコンピュータを使いこなしています。ワクチン接種の申し込みもスムーズに行ったそうです。これは別に彼らだけの特別なことではないそうで、近所のじいいちゃんばあちゃんも大体同じ感じだそうです。この事実に目を止める人はあまりいないようですが、こういうのって実際は国力の差といってもいいですよね。

「私」の勉強不足は結果的にそうなったということでが、英語文化圏だとキーボード文化があるけど日本にはそれがないのでもともと敷居が高いという同情すべき点はあります。ですからやはりここはまず「公」の人が旗振り役でもっと頑張ってもらわないといけません。これも少し前のエントリーで書いたような気がしますが、そういった事業がどうも一本化されてないみたいな感じです。(総務省vsデジタル庁)

問題になる点が次から次へと出てくる感じです。なんか一体この国はどこに一番の問題があるのでしょうと言う感じですが、でもまぁ出てくる問題はどんどん掘り起こしていくのが一番いいと思います。コロナ禍で隠れていたものが表面に出てきて一時は混乱するでしょうけど、問題を出し尽くせばそのうちいい方向に向かうでしょう。DX、待ったなしです。


バッハよ、何様だ!

2021年05月27日 12時30分38秒 | 日々のこと
「バッハよ、何様だ!」。週刊誌の新聞広告です。何のことでしょう。なんかドキっとしますね。

例えばカンタータ第20番の冒頭コラーレ、それぞれ独立したオケによるフランス序曲と定旋律を含んだコーラスが同時進行する曲、もちろんフランス序曲だから途中でオケがフーガも始める、そのときもやはりフランス序曲の前半と同じようにコーラスがかぶさるという造り、何と言うのでしょう!まるで目が眩むような構築美ではありませんか。でもそれでいてそのようなことがわからなくても直接情感に訴えるサウンドを備えている音楽、そんな奇跡の曲を書いたバッハ様、あなたはいったい何者なのだ!

カンタータ第20番BWV20、ヘレヴェッヘ

おっと週刊誌の広告は呼び捨てでしたね。それに「何様」になっています。バッハには「様」がつかず、何には「様」がついています。「何様」は人を非難するときのみに使う言葉ですので、よくないバッハさんのことを言っているようです。

このバッハは、ヨハン・セバスティアンではなく、あまり人相のよろしくないトーマス・バッハ、IOC会長です。

この人たちはどうしても東京オリンピック2020をやりたいようですが、人の国で、しかもその国民の多くが開催を望んでいないのに、どういう権利があってゴリ押しをしようとしているのかがよくわかりません。もっともこの人たちは手下にすぎず、実際はアメリカの放送局などが「実権」を握っているのかも知れません。その意味では楽天の会長やソフト・バンクの会長がアメリカで開催中止の意見を表明したのは正しかったのかも知れません。

でもそれにしてはバイデン政権のやっていることはちぐはぐで、サキごろ日本を「Do not visit」国に指定したのに、サキ報道官はオリンピック選手は別だと言っていましたが、もう少しあとサキを考えた発言をしてほしいものです。日本もアメリカもなんかグダグダです。何だかよくわかりません。こういうときにドーンとなんとか女史が出てくるのでしょうか。それともすでに出る幕はなくなったのか。まぁ見守るしかありません。

リュートソングと英語(3)

2021年05月26日 11時45分01秒 | 音楽系
リュートソングの歌詞はシェークスピア時代の英語です。400数十年前の英語ですが、その頃の日本語よりは実は理解は容易です。日本語の場合は、古文の文法(原書を読む場合なら崩し字の読解力も!)は現代文とかなり異なり戦国時代の古文書を読むのはなかなか大変ですが、英語の場合は400数十年前なら基本的に現代文と同じです。

とは言うものの我々はネイティブではないので、リュートソングの歌詞を読んで、すぐにその内容が理解できる人はまずいないでしょう。

リュートソングの伴奏をするとき歌い手の方から訳詞をいただくことがありますが、これがまたなかなかのものが多いのです。私の場合、訳を頂く前にこちらから先に訳を渡すことにしています。

リュートソングの英語のレベルは、優秀でまじめに勉強している英語学専攻の大学生が苦労してやっとこせ、くらいのものでしょうか。

CDやコンサートプログラムの解説に掲載されている日本語訳はそもそも数も少ないし、それらが正確で美しくわかりやすい日本語であるとは言えないものが多いです。どうも翻訳に携わった方が英語の専門家ではないケースが多いように思えます。シェイクスピア時代の英語専門の先生がリュートソングの全和訳を出してほしいところです。古楽的な発声や表現はこれらの基盤あってのものです。

リュートソングと英語(2)

2021年05月25日 15時42分13秒 | 音楽系
日本では英語を義務教育で習うので、多くの方は英語の発音はまぁなんとか、と思っている方が多いのですが、コミュニケーションツールとしての英語ならいざ知らず、芸術表現であるリュートソングの場合はそのレベルでは全く役に立ちません。

リュートソングとして「使える英語」にするためには、普通学校教育では習わない音素レベルの発音、各種のリンキングのパターンなど音声学レベルの内容を習得している必要があります。

普通のネイティブ同士が普通に使う少しくだけた表現や発音は、これらは学校ではほとんど習いませんが、非ネイティブとしては特に習う必要はありません。もちろんリュートソングを歌うためにも必要はありません。

一般の学校教育で必要な発音はそこそこコミュニケーションをするのに必要な程度で十分、リュートソングのためにはそこから一歩踏み込んで、ネイティブが「きちんと」話しているときのような音素レベルで正確な発音が必要です。

学校でそこそこ勉強したからと妙な自信を持ってリュートソングを歌う人が多いのはとても残念なことです。英語非ネイティブの人が自然に音素レベルで正確に発音することが出来るようには絶対になりません。非ネイティブとしてはやはりちゃんとした勉強が必要です。英語音声学のテキストはいろいろ出ているみたいなので勉強できる環境は整っていると思います。

予約はファックスで!

2021年05月24日 12時36分04秒 | 日々のこと
今村泰典講習会はちょっとした手違いで延期になってしまい、その気になっていた方にはご迷惑をお掛けして大変申し訳なく思います。また新たな日程を発表させていただきますのでよろしくお願いします。

今回は会場をいつもの拙宅「ヴェルサイユの間」から変更して、メディアライヴのホールに致しました。本家おフランスのヴェルサイユの間は広いですが、我が家のはちょっと手狭ですので・・・(笑)

会場の予約をしようとメディアライヴのHPにアクセスして、記載されている電話番号に電話をかけました。メディアライヴは図書館や各種ホールなどからなる複合施設ですので、ホール受付に電話をしたのです。

すると「おかけになった電話は現在使われておりません」・・・あれ?こんなことってあるんでしょうか。仕方がないのでメディアライブの総合受付に電話して、そこから内線でホール受付に繋いでもらいました。

内線に出たおじさんに希望日時を告げて申し込もうとしましたら、本当は受付はファックスのみだそうな。でもせっかく電話して頂いたので受け付けてあげましょうということになりました。申し込みに必要な事柄を伝えたあと、確認の書類をファックスで送るのでファックス番号を尋ねられました。ウチはたまたまレーザープリンタ複合機がありオマケにファックスが付いているのでいいのですが、今ではファックスを持っている人は少数です。なかった場合はどうするのでしょうか。郵送?それとも取りに来い?

それにしても今どき、ファックスで申し込み、ファックスで返信というシステムになっている事実に少し眩暈がしました。そのくせID番号というのがあって、まずそれに登録しないといけないそうです。いかにもデジタル化しているかのようなID登録ですが、実際の流れは、ID登録→ファックス申し込み→ファックスで確認、です。私はたまたまID登録をしていましたので、ワンステップ少なかったですが。

なおファックス受付のみなのでホール受付には電話がないのかも、なんて思ったりもしましたが、実際にはちゃんとありました。向こうからの確認ファックスに書かれていた番号(HPの番号とは異なります)に掛けると繋がりました。HPの電話番号が更新されてないだけでした。まぁこれはこれで困ったものですが。

現在では多分個人ベースでファックスをお持ちの方は少ないと思うのですが、まだファックスベースで仕事をしている事業所が多いということを反映しているのかも知れません。しかしシステム的には30年くらい前のもので、今だにこれが現役とは驚きました。これが地方都市の現状です。DXは道遠しです。


リュートソングと英語(1)

2021年05月23日 17時14分58秒 | 音楽系
リュートソングはイギリスの曲ですので英語で歌います。ネイティブの歌手だと発音や内容理解の問題はあまりありませんが、時にネイティブであってもよくわからない語や表現もあるようです。以前よく伴奏をしていたスコットランド出身のバリトン歌手がルーリー先生にことばの意味についてときどき質問していたことが思い出されます。

日本人がリュートソングを歌うとき、実は言葉の理解や発音の問題はとても深刻です。以前アマチュア(セミプロ?)のヴォーカルアンサンブルがナイジェル・ノースのマスタークラスを受講したときに、英語発音のレッスンだけで終わってしまったことがありました。そのアンサンブルの方は肝心の「音楽」のレッスンをしてもらわなかったことにとても不満そうでしたが、ナイジェルに言わせればリュートソングの本質が全く分かっていないということでしょう。

英会話の場合だと、ものすごく正確な発音でなくとも相手にわかるレベルの発音であればそれ以上のレベルは不必要でしょう。発音以外にもコミュケーション・スキルや文法、語彙力も必要で、場合によってはこれらの方が重要かも知れません。

リュートソングの場合は、英会話で通じるレベルの発音では話になりません。リュートソングの歌詞はバロック時代のアリアとは異なりとても歌詞の分量が多く、英語表現が音楽により密接に結びついているのです。

今村泰典講習会開催のお知らせ【訂正あり(延期)】

2021年05月22日 16時38分36秒 | 音楽系
※誠に申し訳ありませんが、今村講習会は手違いで日程を延期させていただきます。日程は未定です。追って発表します。

今村泰典講習会を開催致します。昨年予定をしていましたが、コロナ禍で延期になった講習会です。
リュートだけでなく、声楽・旋律楽器、クラシック・ギターの方も受講できます。中京地区では10年ぶりになる講習会です。

日時:2021年9月30日(木)13時~19時頃
会場:くわなメディアライヴ時のホール(三重県桑名市)

今村講習会は、今までは拙宅で開催していましたが手狭なので今回は会場を借りての開催となります。
受講は数人程度、聴講は特に制限はありません。

受講料:17000円
聴講料:4000円

受講、聴講ご希望の方は私までメイルで連絡をお願いします。→ shoji726lute@gmail.com