リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

桑名六華苑秋のミニコンサート

2018年10月30日 18時33分28秒 | 音楽系
今年の秋の六華苑ミニコンサートは、ギターの伊藤兼治さん、高須大地さんをお迎えしました。お二人とも名古屋のギター界で大活躍されている若手です。



高須さんのお父様には実は40数年前に、私がまだギターを弾いている頃にお世話になったことがありました。お父様は今もお元気とのことでした。数年前に何十年ぶりかにお目にかかったときは、私のことをよく覚えてくださっていました。

コンサート当日は秋らしい天気に恵まれ、広い日本庭園を舞う小鳥の鳴き声もときどきギターに合わせているかのようでした。プログラムは、以下の通りです。


ヨハン・セバスチャン・バッハ作曲
コラール「主よ、人の望みの喜びよ」(BWV147より)

イギリス組曲第三番BWV808より
プレリュード、ガボットⅠ&Ⅱ、ジーグ

フランソワ・クープラン作曲
神秘のバリケード(高須ソロ)

ヨハン・セバスチャン・バッハ作曲
無伴奏バイオリンソナタ第二番BWV1003よりアンダンテ(伊藤ソロ)

ルイージ・ボッケリーニ作曲
ギター五重奏曲第四番G.448より
序奏とファンダンゴ

アンコールで、トマス・ロビンソン作曲のトイを弾いていただきました。

六華苑ミニコンサートシリーズ、本年度はこれで終了です。来年度は、春が5月18日(土)で私のバロック・リュートのコンサートです。秋は未定です。


頑張れニッポン!

2018年10月21日 18時33分37秒 | 音楽系
ナクソス・ミュージック・ライブラリで下調べをしているとき、ひょんなこと「台北男声合唱団」のアルバムが出て来ましたので、聴いてみましたら、それがなかなか素晴らしいです。アルバムは宗教曲を集めたものでしたが、You Tubeで探してみましたら、日本人の作品も歌っていました。

You Tube で見るとみんな若いです。ひとりひとりの力量がとても高いので、内声部もきちんとした音程でハーモニーを形作ることができています。日本の合唱団の問題点はここなんですよね。少し上手いひとはいるけど、アルトやテナーはきちんと音程があっていない、ソプラノもがなったり音を外したり、バスはもごもごということがあるのが今まで聴いたことがある日本の合唱の問題点です。(簡単にいうとヘタということですが・・・失礼!)

曲は松下耕作曲の「ほらね」でした。台湾の人が日本語できれいなハーモニーを聴かせるのは、なんか少し悔しいですね。台湾がニッポンのコンピュータ産業を凌駕してもう久しいですが、文化面でも追い越しつつあるのでしょうか。

台北男声合唱団はプロですが、日本でプロの男声合唱団とか混声合唱団はないのか調べて見ましたら、あるにはあるんですが、どうもいまひとつみたいです。

古楽系の声楽アンサンブルではとてもきれいなハーモニーを聴かせてくれる団体はあるのですが、トータルとして日本の声楽は世界と比べるともうひと頑張りほしいところというのが正直な感想です。鈴木雅明さんのバッハカンタータシリーズは何年か前に録音が完結しましたが、結局ソリストがオール日本人というのはなかったということが、日本の声楽界のレベルを表していると思います。もっともナニ人、ナニ人なんていう時代ではないですけどね。でもこれはまた別の問題。

ポピュラー音楽の世界では、昔ダークなんとかとかボニーなんとかという4人の男性コーラスグループが巷ではきれいなハーモニーで歌っているということでしたが、実際には相当音程は甘いです。ボーカルアレンジもよくないし。70年代の頃山下達郎が自作のコーラスアレンジを歌うことができる(もちろんきれいなハーモニーで)人が見つからなかったので、全パートを自分で多重録音したというのはよく知られた話です。

最近のポップスのコーラスグループは上手くなったのでしょうか。ついこの間ル・なんとかという男性コーラスグループを聴いてみましたがダークなんとかが少しマシになった程度で甘いですねぇ。寡聞にしてあまりポップス界のグループは知りませんが、テレビの番組でチラッと聞いたことがあるので、今ならきっといるのではないかとは思いますが。

日本の声楽はアマチュアの合唱団まで含めるととてもすそ野が広いです。でもすそ野だけ広くて、その上にそびえる山が少し貧弱な感じがします。演歌のソリストはとても表現力豊かで音程もしっかりしていて上手いので、私たちの声楽は決して低いレベルではないと思いますが、こと西洋音楽式のハーモニーを作るということに関しては我が日本民族は苦手なのかも知れません。でも三重県のどっかの中学校の合唱部がとてもきれいなハーモニーを聴かせてくれましたが、彼ら彼女らが全国に増えてそこから伸びていけば将来は明るいと思います。







バロック音楽の旅12第3回講座

2018年10月17日 13時48分35秒 | 音楽系
バロック音楽の旅第3回講座が終了致しました。今回はこのシリーズ初となるバロック・オーボエの大山有里子さんとシリーズ常連の岡田龍之介さんによるコンサートです。



初めて聴くことになる楽器なので、いつもの楽曲の説明に加えて楽器の構造やリードについての解説も交えて進行いたしました。途中、サプライズで、プログラムにない、岡田さんのソロを無茶ぶりしてしまいました。(笑)

プログラムは、ソナタ変ロ長調(ヴィヴァルディ)、ソナタト長調(サンマルティーニ)、組曲ニ短調(フィリドール)、オーボエ・ソロト短調(エマヌエル・バッハ)の作品とサプライズの神秘のバリケード(クープラン)でした。

初めてのバロック・オーボエの音色に参加の皆さんは堪能されたようでした。エマヌエル・バッハのソロの最後の音が止んだら、会場からため息がさざ波のように広がったのが印象的でした。

次回は11月11日、ヴィオラ・ダ・ガンバの坂本さん、リコーダーの坂本洋子さん、そして私(アーチ・リュート)によるイタリアとフランスの作品のコンサートです。


作曲家の久保摩耶子さんとランチ

2018年10月13日 13時27分44秒 | 日々のこと
今日はベルリン在住の久保摩耶子さんと名古屋でランチです。ランチと言ってもラーメンと餃子でしたが。



久保さんは、2013年のリサイタル用に「Gruene Chaconne(緑のシャコンヌ)」という曲を作っていただきました。古典的なリュート曲にはない斬新で現代的なサウンドの作品です。でもこの曲はホント演奏が大変で、リサイタル直後に録音を聴いたときは、技術的な苦労がやたらと耳についたものでした。

最近久保さんからメイルをいただき、リサイタル直後に送った録音を最近聴き直してみたそうです。そうしたら、作曲した時点とは異なる印象を持ったとのことでした。私も自分の録音を聴き直してみましたら、演奏してもう5年経っているせいか、演奏の苦労はすっかり忘れてしまっていて、曲の中身に集中して聴くことができました。

ランチのあとコーヒーショップで、この曲の改訂版について説明していただきました。なんでもドイツのリュート奏者がこの曲の演奏を試みたらしいですが、運指がわからないので演奏を諦めたとのこと。タブがあれば・・とのことでした。実はこの曲は出版の予定があったのですが、私がタブラチュアに直すのをサボっていたので、頓挫していました。とても現代的な曲なので、タブの記述能力を超えている部分があるのですが、何とか克服して年内にタブを作成することを約束しました。機会を作ってまた本曲改訂版の再演をしたいと考えています。


超一級のプロか、アマチュアか

2018年10月11日 01時20分59秒 | 音楽系
テレビのバラエティ番組で面白いのをやっていました。世界的に活躍している「超一級のプロ」のソプラノと「アマチュア」のソプラノをそれぞれ目隠しで聴いて、「プロの歌声」「アマチュアの歌声」を当てるという趣向です。当てる人は、歌手やらお笑いや歌舞伎俳優などの芸能人です。

7人くらいの芸能人が当てることになっていましたが、答えは全員同じ歌手を選びました。彼らは自分たちの答えに相当自信を持っていて皆「間違いない!」と口を揃えていました。実は私も芸能人と同じ答えでしたが、答えは違っていまして全員はずれ!これって一種の放送事故なのかな?

もっとも番組では「プロ」なのか「アマチュア」なのかを選ぶわけなので、決して上手いか下手かを選ぶというのではありません。そういう意味では答えにはいささかの問題点はなく、放送事故ではないと言えるでしょう。

あとのネタばらしで、「アマチュア」のソプラノは、桐朋音楽大学の修士課程で勉強中の音大生でした。番組の最初、アマチュアのソプラノと言っていたので、町の合唱団で歌っているおばさんが歌うのかな思っていましたが、ちゃんとした音大の学生だったので、彼女をアマチュアというのはどうかなとは思いました。彼女はまだプロになってないだけの人ですから。

「プロの歌声」の歌手さんはSさんでしたが、番組で歌った曲の一部だけを聴いた限りではどう聴いても音大生の方が上手でした。一応YouTubeで何曲かSさんの歌を聴いてみましたが、番組での歌唱と同様あまり音程がよくない人ですね。あのぐらい全体的に外れていると、古楽系の声楽では全然だめです。

オペラ界の事情はあまりよく知りませんが、欧米のオペラ劇場でそこそこの評判は取ったことがあるかもしれません。日本から見れば「すごいな」だけど、実は世界的に見ればやっぱりそこそこレベルという方なのかも。私が知っている範囲ではいくつかそういうケースはあります。まぁこれはあくまでも推測ですけどね。はずれてたらごめんなさいね。

向こうにいた頃は結構オペラ見ましたけど、スター歌手だと、声に艶があり美しく、音程もとても正確です。日本で聴く「オペラ歌手」の方って、ときどきビブラートの幅が広すぎてどういうメロディなのかはっきりわからないような歌い方をする人や、大きい振幅のビブラートの中間を取ってみると音程が大外れという方がいます。あとキンキン声のテナー、グマゴロウみたいなガラガラ声のバス、長良川の鵜みたいに喉を締め付けられたような声のテナーとか。あ、何か悪口を言ったみたいですみません。<(_ _)>でも悔しいけど彼我の差はかなりあります。バッハコレギウムのカンタータ録音で、ソリストが全員日本人になることはなかったのもそういうことです。

あと件の番組ではいろんな比較をやっていましたが、ストラディバリウスと安物の楽器というのもありました。これって比較として間違っていますよね。20万程度の安物の楽器なら確実にストラディバリウスですよ。でも現代に製作されてた最高の楽器、いくらくらいなのでしょうか、200万?300万?リュートよりは相当高いらしいですが、そういう楽器と比べないと。プロの使用に耐えない20万の楽器と、プロが使うストラディバリウスでは比較の意味がありません。900円のスピーカーと100万円のスピーカーの比較と同じです。

ストラディバリウスと現代の最高級の楽器の比較ではきっと面白い結果が出ますよ。もうすでに外国ではそういう比較が何度も行われていて、最近のものではストラディバリウスは負けています。でもこの評価がいくら正しくてもストラディバリウスの価値がさがるわけがありません。もしそんなことになったら、永遠に続くべきバイオリン・バブルがはじけて大変なことになります。




豊川でのコンサート

2018年10月05日 17時24分57秒 | 音楽系
また25号台風が近づいてきていますが、24号台風が直撃した翌日に豊川でコンサートを行いました。コンサート当日に直撃では、と危ぶまれていましたが、うまい具合に少し早めに来たので、直撃はまぬがれました。ただ、桑名では21号台風のような被害はありませんでしたが、豊川では桑名より風が強く、長い間停電していたそうです。コンサート当日も午前中は、会場付近では信号がつかないなど結構大変だったようです。



この会は「講演会」という形ですが、主催者さんからはできるかぎり演奏を多くしてほしいということでしたので、トーク付きのコンサートという形にさせていただきました。プログラムは、ルネサンス・リュートとバロック・リュートを使って、16世紀後半のルネサンス音楽、フランスとドイツのバロック・リュートの音楽、そして自作、自編の作品を演奏しました。主催をしたのは愛知教育大学出身の女性教師の会豊川支部の方たちで、若い新規採用の先生方も数名参加されていました。当日は学校の業務を終えたあと参加されていたわけですが、台風のための停電で給食が遅れてしまった学校もあったみたいで、いつもより大変な時間を過ごされた後のご参加でした。

参加されていた方は当然女性ばかりですが、会場のスタッフの方も皆さん女性で、私は「黒一点」でした。文化的な催しはどうも女性が中心になることが多く、日本の文化は女性によって支えられているという感じも致します。そういえば、バロック音楽の旅12も男性の参加者は全体のわずか20数%!です。ともあれ、参加された先生方お疲れ様でした。またこれからのお仕事にご精進なさってください。