リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ヴァイスのソナタ25番、51番、95番(13)

2024年04月27日 18時12分47秒 | 音楽系

トルバンを演奏できるということは、バロック・リュートやテオルボはすぐ弾けるでしょうし、彼は多分上手に弾けたのでヴァイスもすぐに弟子にしてくれたということでしょう。

You Tubeにビデオクリップがありました。

調弦は1コース~6コースがレシソレシソ、あとバス弦は音階で8コース分、計14コースで、さらに1コースの下に半音階の弦が1オクターブ分(12本)です。

昔のドイツテオルボがウクライナに伝わりローカライズされ、時代を経て少しモダナイズされてはいるものの、かなり古い時代の要素を残して現代に伝わっているのは驚きです。

なお連載(12)で出て来ましたバンドーラというイギリスのルネサンス時代のものとは異なります。また現代のウクライナのバンドーラは完全にモダナイズされた楽器でリュートの面影は全くありません。ややこしいですね。(笑)昔のバンドーラは今のトルバンという名でほぼ伝えられていて、バンドーラ自体はモダナイズされていった?といことでしょうか。この辺の事情はよくわかりませんが、ますますややこしい。


桑名六華苑春のコンサート

2024年04月26日 11時38分10秒 | 音楽系

5月24日(土)14時から桑名六華苑で「バロック音楽の散歩道」と題したコンサートを開催します。

六華苑は桑名市にある重要文化財で、桑名の豪商諸戸氏がジョサイア・コンドルに設計を依頼して建築した洋風建築+和風建築群と庭園です。ジョサイア・コンドルは鹿鳴館を設計したことで有名ですが、地方に残っているものはこの六華苑が唯一のものだそうです。実はこの場所は、江戸時代は豪商山田彦左衛門のお屋敷で明治維新、戊辰戦争を経てオーナーが諸戸氏に変わったのですが、庭園は山田氏の庭園を受け継いだものです。

六華苑ホームページ

この六華苑でのコンサートは担当させてもらってもう10数年になりますが、毎年春と秋の2回開催しています。今回はヴァイオリンの磯部真弓さんをお迎えして、ディヴィジョン・ヴァイオリンより何曲かとヴェラチーニ、ヴァイスなどの作品を演奏します。入場は無料ですが、六華苑の入苑料が必要です。


ヴァイスのソナタ25番、51番、95番(12)

2024年04月25日 15時24分57秒 | 音楽系

この写本について「この紙の分析は、この手稿本はロシアで作られ、それは少なくとS.L.ヴァイスの死後15年後である」と解説にはあります。

ヴァイスの死後15年は1765年です。ヘンデルはもう亡くなっていますし、1767年没のテレマンも相当衰えていたころです。一方モーツァルトはすでに9歳で天才の評判はとどろいていたころです。ハイドンは30代半ばで油が乗りきっていた頃です。

モスクワ写本の筆記者は、コーカサス地方出身のティモフェイ・ビエログラドスキで1710年頃の生まれです。音楽愛好家でもある彼は1733年ロシア帝国の大使としてドレスデンに赴任。1737年にはベルリンに居住。ヴァイスに会い弟子にしてもらったときは、彼はバンドーラというトルバンの様な楽器を演奏していました。

(以上モスクワ写本現代版の解説を参考にしました)

トルバンというのはウクライナの民族楽器でリュートとツィターを併せ持った楽器です。ネットで調べてみましたらこんな楽器です。

これってツィター部分を除くとほぼドイツテオルボですね。


緑のトンネル

2024年04月24日 18時32分56秒 | 日々のこと

ミューズのレッスンの帰りに少し違う道を通ってみました。いつもですと国道19号線を南下して鶴舞公園の五叉路まで行き、そこから金山・熱田神宮を経て名古屋市の南部に出て国道23号線に入ります。これが下道では交通渋滞も少なく最も早くウチまで行けるルートです。

今日は途中広小路葵交差点から右折して広小路に入ってみました。こちらのルートだと多分倍くらい時間がかかってしまうのですが、食事やお茶ができるところが道路沿線に多いというメリットがあります。最短時間ルート沿線もお店はあるのですが駐車出来ないところが多いのです。

新栄から広小路を西進しました。久しぶりにこのあたりを走ったのですが、街路樹が大きく育っているのに驚きました。葉が空を覆うくらいになっていてまるでトンネルです。ただ残念なのは信号交差点の10mくらいでそのトンネルが切れてしまうのですがそれを過ぎるとまたトンネルが続きます。さすがに栄の久屋大通の大交差点では眼前に空が広がります。あいにく今日は雨模様。信号で止まってふと左を見ると、昨日前面オープンした新中日ビルが目に入りました。しゃれたカフェには大勢の人が入っていました。

広小路をさらに西進、名古屋駅の南側を過ぎて右折して南の方に向かいます。途中から東名阪高速道路の真下を通る道に入り、弥富の五之三という変わった名前の交差点を左折して南進です。そのすぐの所に中国人が経営しているいわゆる町中華があるのでそこでお昼です。ここはとても安いのにボリュームがあり味もいいです。麻婆+台湾味噌ラーメンのラーメンをいただきました。ご飯と小鉢がついて800円です。ここから国道1号線に出て帰宅しました。やはり倍近く時間がかかってしまいましたが、新しくなって広小路界隈の景色を見たしまあいいでしょう。でも次回は最短時間ルートです。


ヴァイスのソナタ25番、51番、95番(11)

2024年04月23日 20時49分55秒 | 音楽系

モスクワ写本の現代版がパリのル・ルート・ドレから出版されています。2015年の出版です。この出版社はギターやヴィウェラ音楽、マンドリン音楽、さらには現代音楽や子供向けの楽譜も出しています。リュートとテオルボ関連の編集総括はミゲル・イスラエルが担当しています。彼は私がバーゼルで学んでいたときに一緒に勉強していた人で、バーゼルで学業を終えてパリに移り沢山のいい録音を残しているのはご存じの方も多いのではないでしょうか。彼が担当しているので、このモスクワ写本の現代版は充分信頼していいと思います。

その解説には、「現在モスクワにあるミハイル・イヴァノヴィッチ博物館の音楽図書館が所蔵している」とあります。1976年出版の全音版には中央音楽文化博物館が所有しているとあります。当時館長だったアレクセーヴァ女史からコピーをいただきミヒャエル・シェーファー氏からも助言をもらったともあります。

なにせ1976年当時はソ連だったし、その後ソ連が崩壊しどういう経緯で現在の所蔵場所に行ったのかは定かではありません。これら現代版の出版にもすでに何か歴史の流れを感じさせます。


ヴァイスのソナタ25番、51番、95番(10)

2024年04月22日 14時45分10秒 | 音楽系

ソナタ95番ト短調の構成は、Andante, Courante, Gigue, Paisane, Polonaiseの5曲です。全体的にとてもギャラントな香りが濃厚です。ヴァイスの写本にはときどき作曲年が書かれている楽曲があります。例えば1717年にプラハで作曲と書かれているソナタ1番ヘ長調(ロンドン写本)のスタイルとはかなり異なっています。

このスタイルの差はどこから来ているのでしょう。まず考えられるのはヴァイスがまわりの作曲スタイルの変化(ギャラント指向)に合わせて作風を変えていったということが考えられます。もうひとつは、実はシルヴィウスではなく一族のもう少し若い世代(例えばジギスムント)が作った作品であるということも考えられます。

先に紹介した51番も随所にギャラントの香りがしますし、ソナタ形式の萌芽も見られると書きました。定量的な根拠を提示するのは難しくあくまでも主観ですが、51番の楽曲はまだ1717年とか1719年などのように作曲年が書かれている楽曲との連続性が感じられます。しかし95番の、例えば Andanteや Courante なんかはちょっと「手」が違う感じがします。でもまぁS.L.Weiss作ということで番号がついているので、それはそれで議論の末の番号着けだったとは思いますが。


ヴァイスのソナタ25番、51番、95番(9)

2024年04月21日 15時47分58秒 | 音楽系

ソナタ95番ト短調はいわゆるモスクワ写本に所収されています。このモスクワ本、実はかなり前に日本でファクシミリ版が出版されています。

全音楽譜出版社が1976年に出版した「モスクワ本によるS.L.ヴァイス リュート曲集」です。編者は作曲家の真鍋理一郎です。真鍋は今ではあまり知られていないかも知れませんが、当時はそこそこ名の通った作曲家で、私が高校生の頃の音楽の教科書に「地球は悪いところじゃない」という歌曲が載っていました。終わりの頃に急に遠い調の和音を使うしゃれた曲でした。

当時ギターの専門誌「現代ギター」は「現代リュート」といわれるくらいリュート関連の記事を沢山掲載していました。真鍋はその推進者のひとり?だったように思われます。

その当時はヴァイスの研究がまだ進んでおらず、作品の整理番号がありませんでした。音楽学者ダグラス・オールトン・スミスの博士論文「THE LATE SONATAS OF SILVIUS LEOPOLD WEISS」が発表されたのが1977年です。

ソナタ95番は写本のP.31,32,34,36,37にあると全音版には記されていますが、番号が飛んでいるところはブランクなのかは情報がないのでわかりません。まだ研究が本格化していない当時としては、こういったことがきちんと書かれていないのはいたしかたないことなのかもしれません。


今年は異変が!

2024年04月20日 19時04分45秒 | 日々のこと

我が家に隣接する自然野草苑は、例年ですとドクダミが青々とした葉を着けてくる頃です。当ブログのタイトルピクチャーは最盛期を迎えたドクダミです。

今年はドクダミの生息域が3分の1くらいになり代わりに多種多様な植物が生育してきています。異変は昨年にもその兆候が見られましたが、ことしは更に成育域が減少しています。

苑全体の4分の1の70%位にしかドクダミは育っていません。

花が咲いてきれいな植物もあるので、何本かちぎって一輪挿しにさしてみました。

Picuture Thisというアプリで調べてみました。花びらが5枚の黄色い花はオッタチカタバミです。同じく黄色で大きなラッパ状の形の花をつけているのは多分キイロカタバミ。アプリに写真を保存したはずですが、残っていないので記憶だけがたよりなので間違っている火も知れません。薄紫色の花は、自然に生えているときはもっと長い茎で風にそよそろゆられながら生えていました。マツバウンランという植物だそうです。

昨年から始まった多様化が今年はもっと進んでいる感じです。ドクダミがどこまでもりかえすかが見物です。ドクダミの天下だったころは立ちの高い草は絶対に生えなかったのですが、昨年はドクダミが生えていないところに立ちの高いヒメムカシヨモギやオオアレチノギクが生えてきました。

こういうのが生えてくると景観を害しますので注意してちょっとでも見つけたら大きくならないうちにひっこぬかないといけません。


なんじゃこれは!?

2024年04月19日 17時45分45秒 | 日々のこと

ちょっと所用で住民票が必要になったのでマイナンバーカードを持って市役所に出かけました。市役所はウチからは車で5分とかからないところにあります。

入り口から左手すぐのところにマイナンバーカードを使って住民票などを発行する機器が置いてありました。さて、申請しようかと前を見たら、何この文字・表示の大群!!

これだけ表示されている文字が多いといったいどこから見ていいのかわかりません。必要な情報を掲示するのは大事なことですが、これは冗長すぎかつノイズが多すぎます。まるでどっかの都心のネオン街の看板みたい。

実はこの写真の下に機器のディスプレイがあって、そのガイダンスに従って無事完了しました。ディスプレイの表示内容はとても整理されていて分かりやすかったのですが、その上にずらっと書かれている説明書き、分かっている人はもちろん、こういう機器に不慣れな人はもっと訳がわからなくなるのではないでしょうか。

最後に住民票発行料200円を入れてください、とディスプレイに表示されましたが、お金を入れる場所が見当たりません。お金を入れる場所は左のコピー機にしかなかったので、多分ここだろうとは思いましたが、もし違っていたら返金が面倒になるかも知れないので、役所で案内をやっているおじさんにききましたら、やはりこのコピー機に入れるとのことでした。

メタバース市役所も結構ですが、まずは足下から。頼んますわ、徳宇市長さん。

 


ヴァイスのソナタ25番、51番、95番(8)

2024年04月18日 14時39分18秒 | 音楽系

某愛好家会は違法コピー音源、違法コピー楽譜頒布会、さらには悪質楽器販売会になっていてまことに不適切でした。今はその会がどういう活動をしているのか知りませんが、さすがに今の時代、ちゃんとしているのでしょうか。

大英図書館でヴァイスのMS-30387(いわゆるロンドン写本)は無料公開されているし、セズネ写本も所蔵図書館から無料で入手できます。あるいはTREE EDITIONも創業者の遺志で無料公開されています。しかしそれらは真摯な研究者、演奏者、愛好家のためのものであり、駄々草に弾きちらかす人たちのために無料公開しているのではありません。

そうそうこんな経験がありました。「中川さん、リュートの楽譜が手に入ったからコピーを差し上げますよ」と言われて頂いた楽譜がなんと私が出版した「ドレスデン手稿本によるヴァイス・リュート曲集(加筆修正版)」の1ページだったのです。どうしてそれが分かったのかというとまず、まずどっかで見たことのあるシミの消し方(笑)でした。それに加筆修正した箇所が私のと同じ、それとページの数字がタイプライターの印字で私の本と同じページだったからです。そう、初版はまだタイプライターが使われていた頃に作り始めたのでした。しかしどういう経路で私のところにまわってきたんでしょう?