リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ごまかさないクラシック音楽(1)

2024年05月31日 17時14分16秒 | 音楽系

最近読んだ本です。著者の岡田暁生氏と片山杜秀氏はそれぞれ著名な音楽学者、音楽評論家です。特に片山氏は音楽以外の分野にも健筆を奮っています。

とても興味深い内容で視点も斬新なので一気に読んでしまいました。対談形式で古楽から現代音楽までを扱っていますのでとても読みやすく構成されています。

特に片山氏の近現代のロシア音楽の造詣には感服しました。ぜひ近いうちに聴いてみたいと思います。ただ古典派以降、近現代の記述がとても充実していて興味深いですが、いわゆる古楽の範疇に入る古い音楽についてはとても見方が偏っていて鋭さを感じませんでした。そのわけについては後述します。

ところで私は評論家や音楽学者の言っていることは基本的に信じていません。というか言っていることに根本的なずれがあると考えています。演奏家や作・編曲家など音楽の「現物」に関わっている人は多大の修練に黙々と時間を費やしています。その時間に彼らはいろんなレコードやCD、ライブなんかを聴いて言いたいことを言っています。

演奏家が3分の曲に何ヶ月もかけて仕上げているのに彼らはそれを3分で聴いてしまいます。作曲家が30分の曲に3年かけてもそれを30分で聴いてしまいます。とても効率的に分かったようなことが言えます。そして演奏家に比べると彼らの声はずっと大きく、音楽界の中では立場が逆転しているようなときも出てきます。


キダ・タローさんの作曲料

2024年05月30日 23時08分26秒 | 音楽系

先頃亡くなられた浪速のモーツアルトことキダ・タローさんのCM作曲料は1曲200万円だとか。すごいですね。

でもこの200万はコミコミの200万だそうです。今みたいに作曲家がコンピュータを使って完パケを納めるのではなくて昔のやりかたでしょうから、スタジオを借りてミュージシャンを呼んで録音するという方式でしょう。プロポーズ大作戦のテーマなんか今You Tubeで聴いてみますと懐かしいサウンドです。

私もCMの仕事を1回だけしたことがありましたが、作曲料はケタが2つ違っていました。(笑)キダ・タローさんの場合はコミコミとは言っても破格の作曲料と言っていいと思います。私の場合はCM制作会社の下請けという形での仕事で、20年以上前でしたがすでにコンピュータで完パケを納める形でした。納期は短いし下請けでしたから安い仕事でした。確か某サラ金のCMでモーツアルト風の曲をという依頼でした。桑名のモーツアルトですね。(笑)

CM作曲の場合は大家のキダ・タローさんもペーペーの私の場合もいわゆる「印税」方式ではなく買い取りでしょうけど、実は「印税」での仕事をしたこともあります。某英語教科書の音楽(付録の曲、教材として組み込まれている音楽など)を担当したときはなかなかのものでした。教科書は何十万部も売れる隠れたベストセラーです。採択トップの教科書だと100万部を超えます。

ただそう長く甘い汁を吸えたわけではなく、その教科書を出していた某教科書出版社は「英語教科書の音楽化」という方針をコロッと変えたので「夢の日々」はあっさり終了しました。(笑)

 


満開ですが・・・

2024年05月29日 10時56分15秒 | 日々のこと

天然野草苑のドクダミは満開になりました。白い清楚な花は相変わらず愛しいものです。でもちぎって一輪挿しに生けることは残念ながらいたしません。

しかし開花を始めた頃のエントリーでも書きましたが、今年は昨年よりさらにドクダミの勢力が衰えています。

一昨年まではこの向こうまでびっしり一面にドクダミの花が咲き誇っていましたが今年はご覧の状態です。かつて栄華を誇っていたどっかの政治勢力が衰えてしまった成れの果てみたいな感じです。果たして復活はあるのでしょうか。かくなる上は人工的に根を移植するしかないかも。でもこれは「天然野草苑」の趣旨に反しますのでやりたくないところです。ドクダミが天下を取っていればオオアレチノギクとかセイタカアワダシソウのような立ちの高い草が生えてこないのでありがたいのですが、野草の世界も目に見えない勢力争いが繰り広げられているのでしょう。


NVIDIA

2024年05月28日 12時30分07秒 | 日々のこと

テスクトップ・コンピュータの自作を始めてもう20数年になります。現在使用しているデスクトップは第8作目で2020年8月に製作しました。不要なところにはお金を使わず、メモリは64ギガ、実質完全無音の品です。

自分の音楽系の仕事や一般的な仕事、日常の作業からするとグラボを増設するのは不要です。マザボ内蔵グラフィックで充分以上の性能があります。ですのでマザボを選択するときはグラフィック内蔵のものを選んでいます。

私のコンピュータ自作で一番用がないのがグラボなんですが、いつも気にはなっていました。昔からNVIDIAのGeforceが有名で大昔に普及品レベルの品を導入したこともありました。NVIDIAと言えば周辺機器のグラボメーカーだと認識が普通だったと思います。日本で言えば少しジャンルは違いますが、IO DATAとかBuffalloみたいなイメージでした。

それが気がついたら生成AIの急成長を支える機器メーカーとして世界中の株を動かすような存在に化けてしまいました。昔Appleは趣味的な品を作っているブランドでしたが、それが信じられないことに巨大企業になってしまったのと似ています。Appleの場合はしっかりした「信者」に支えられているし成長はするだろうとは思っていましたが、これほどまで大きくなるとは想像が付かなかった人が多かったのでは。25年前にApple株を買っておけば・・・というのはよく聞く声です。私もそうです。あの時買っておけば今頃は億りびとで左団扇・・・凡人は大体そんなことをいいます。

それでもAppleが巨大企業に成長するのにはそれ相応の期間が必要でしたが、NVIDIAはわずか数年それもここ2年くらいに株価が急上昇しています。1999年の株価は0.41 USD、2016年でも8.14 USDです。それが先週末には1000USDを超えたといいますから驚きです。8年前にNVIDIA株を1万円分買っておけば今なら120万以上になっている!10万なら1200万、100万ならもう億りびと、妄想は広がります。でも今となっては遅いですね、残念ながら。


なぜ?

2024年05月27日 17時23分46秒 | 音楽系

実は先日の六華苑のコンサート、iPad Proの同期が不調で焦りました。

ここ5年くらいは本番でiPad Proを使って楽譜をみています。私の場合2枚のiPad Proを使ってA3見開きサイズの楽譜で演奏しています。左側のiPad ProにはforScoreという楽譜リーディングアプリを立ち上げ、右側には同じベンダーが出しているCueという専用アプリを使い、左右連動させて使っています。つまり画面タッチとかペダルでページ送りの指示をしたら右ページも一緒に譜めくりができるということです。

ところがリハーサルで譜面を見ようとforScoreとCueを立ち上げてもすぐにDual Page ModeのConnectが落ちてしまうのです。iPad Proをリセットしても同じ結果です。過去のコンサートや自宅での練習時に落ちたことは一度もありません。

結局2枚のiPad ProをConnectして使うのは諦めて、1枚でBluetooth接続のペダル(iRigのBlue Turn)を使ってページ送りをすることにしました。実はペダルでページ送りをするのは苦手なんですよねぇ・・・でも本番では踏みぞこないせずに何とか無事進むことができました。

コンサートが終わり帰宅して、もう一度forScoreとCueのDual Page Modeを試してみましたら、何時間電源を入れて置いたままでも落ちません?あれっ!?なんなんでしょう。原因がよく分かりませんがとりあえずiOSとforScore、Cueを最新のものに更新しておきました。ただひとつだけ気になるのは、Cueを走らせているiPad Proは初代iPad Proなので、最新のiOSにもはや更新することができません。これが原因なのかなぁ?でもウチでは大丈夫だし。不思議です。こういう事態に対処できるように紙メディアでのバックアップと周辺機器はすべて取りそろえておいて本番に臨む必要があることを痛感しました。


琵琶やリュートは弦が切れる

2024年05月26日 16時30分27秒 | 音楽系

前々回の大河ドラマ「光る君へ」では、よく主人公のまひろが琵琶を弾くシーンがでてきます。もちろん使われている琵琶は平家琵琶などではなく雅楽で使われる楽琵琶です。

終わりの方のシーンで1弦が切れる場面があり、それが不吉な予兆として描かれていました。ヨーロッパの絵画でもリュートの弦が切れているのは不吉な予兆を表すようで、例えばメトロポリタン美術館所蔵のカラヴァッジョの「The Lute Player」では1コースの弦が切れていて何か意味深です。(全複弦の8コースリュートで、1コースの内側(バス弦に近い方)が切れています)

ハンス・ホルバインの「大使たち」の中に描かれているリュートも4コースのオクターブ弦が切れています。こちらはさらにドクロまで描かれています。ロンドンのナショナル・ギャラリー所蔵展示の作品ですが、絵画の真横に立つと正面から見たときは謎の細長いものにしか見えなかった物が実はドクロであることがわかるという仕掛けがあります。

まひろの家には琵琶があり、ことある毎に奏でるシーンがあることとの関連もあるのでしょう、BGMのアンサンブルにもときどきリュートの音が聞こえてきます。22日に掲載した「光る君へ」のバロック・リュートによるソロのBGM(40秒ほど)の楽譜を演奏してみた方はいらっしゃいますか?記事の中でデタラメですと書いておいたので最初から弾こうとしなかったむきもおありかと思いますが、草稿という形でしかも手書きですので、バロック・リュートを知らない方にとってはデタラメに見えるという意味です。

楽器の演奏ができる方がちゃんと音をとっていけば正確なコピーになるようになっていますのでバロック・リュートの演奏ができて興味のある方は、一度清書してから弾いてみて下さい。まぁこんな提示法が著作権に抵触しないギリギリのところですか。


桑名六華苑ミニコンサート2024春

2024年05月25日 16時10分56秒 | 音楽系

今日は桑名六華苑春のコンサートです。今回はヴァイオリンの磯部真弓さんにご一緒していただきました。

いい陽気に誘われて六華苑の人出もいつもより多い感じでコンサートも大入りが期待できます。会場のロビーはエアコンなしで窓を開けるので雨が降ると湿気で大変なことになります。

リハーサルを終えて開場(といってもロビーですので最初から開場していますが)しますと早速椅子が埋まり出しました。本番開始頃には期待を超える沢山の方にお集まりいただきました。

プログラムは次の通り。

曲集ディヴィジョン・ヴァイオリン(1688)よりイタリア風グラウンド/グリーンスリーブス/ノーフォーク公爵または聖ポール教会の尖塔/プレリュード(無伴奏ヴァイオリンソロ)/ラ・フォリア

ジョージ・フレデリック・ヘンデル(1685-1759)/サラバンド HWV437(リュートソロ)

フランチェスコ・マリーア・ヴェラチーニ(1690-1768)/ソナタ ニ短調(アンダンテ、アレグロ、アダージョ、アレグロ)

 

聴き来られた方と記念写真です。

次回は11月24日(日)ギターの高須大地さんと私のジョイントです。


あすへの話題

2024年05月24日 14時19分42秒 | 日々のこと

日経新聞の夕刊第1面のコラム「あすへの話題」、今の執筆陣はなかなか面白いです。尊敬する英語同時通訳者の鳥飼久美子さんを始め名執筆陣揃いです。鳥飼さんは通訳関連のトピックを始め英語教育に関して鋭い切り口が光ります。

哲学者の森岡正博さんは、始めは哲学のことが中心でなんかメンドクサイなぁという感じがしていましたが「おつきあい」していくうちになかなか含蓄のある記事にひかれています。

小説家の林真理子さんはさすが文筆のプロ、圧倒的に文章が上手いし、テクニックだけではなく内容的にも読ませます。某大学のややこしい問題の渦中にありながら、寸暇を惜しんで執筆されているのだと推察しますが、文章の完成度の高さはさすがです、って私がいうのもナンですが・・・

執筆陣は何ヶ月かで総入れ替えになりますが、つまらない内容を書く人がいたこともありました。某大学の総長をされていた方は、自分の大学の改革話ばかりで内輪を知らない一般の読者には何も響かなかったのではないでしょうか。

宴会での話題が自分が勤めている大学の話ばかりの「学園もの好き」のギターのセンセを知っていますが、一般の大学論ならまだしも自分の所の大学の学園ものなんて興味がわかないですよね。


NVIDIAの決算

2024年05月23日 11時13分09秒 | 日々のこと

NVIDIAの2-4月(第1四半期)の業績が発表され、市場の予想を上回っていました。同期の売上高は260億ドルと、前年同期比3倍強に拡大です。やっぱり生成AI発展の中核を担うGPUを圧倒的なシェアで作っているところは違います。現在日経平均はこの結果をうけて買いが先行していますが、アメリカの一企業の決算が日本の平均株価を押し上げるなんてすごいことです。

ChatGPTが発表されたのは22年の11月頃でまだそれから1年半あまりしか経っていませんが、この間の進展は想像を絶する速さだと感じます。この間経済も政治も大きく動きました。Windows 95が発表されたときでもそこまでのインパクトはありませんでした。

もともとコンピュータ関連の進展はよくドッグイヤーなんていわれていて人間より7倍くらい早い人生(犬生?)を犬時間にたとえられました。7年前に発売されたパソコンは家電なんかでいうと21年前のものと同じくらいの古さだ、という感じです。

生成AIの進展はドッグイヤーたるコンピュータ界の中のドッグイヤーみたいです。ChatGPT発表から1年半、他のコンピュータ分野だと10年半分の進展です。うむ、大雑把ですがなんか合っている感じです。コンピュータ以外の分野だとそのさらに7倍ですから73年半!まぁちょっと行き過ぎみたいな感じもしますが、半分の40年くらいは行っているのではないでしょうか。

40年前の自動車と言えば、たとえば我が愛車でありましたホンダ・シビックの初代モデルです。初代シビックから今シビックに至る変化がコンピュータ界のこの1年半で起こったというのは、あながち大げさとも言えない感じです。

 

 


NHK大河「光る君へ」でバロック・リュート

2024年05月22日 13時04分54秒 | 音楽系

NHKの大河ドラマ「光る君へ」の音楽は冬野ユミが担当していますが、クラシック風の音楽だと思ったらジャズ風ありバロック風ありともうなんでもありの音楽ですが、今の時代なんでしょうねぇ、それが結構はまっている感じがします。役者さんのセリフも帝に奏上するようなシーンだとすごく古めかしいことばが使われいます。今の若い人にはひょっとして理解できないかも。かと思うと全く今風の会話が出てきたりします。この落差と音楽の落差がちょうど一致していてある意味とても巧みな音楽だと思います。

ドラマの音楽の中でときどきリュートの音が聞こえるときがありますが、5月12日放送回では少しまとまったシーンにバロック・リュートのソロを聞くことができました。どなたが弾いているのかな、と思ったので、知り合いのリュート奏者に聞いてみたら、そういう仕事はしていないとのこと。

詳しく調べてみたら、ベルリンの教会で古楽器のチェンバロ・リュート・ビオールなどを使って音楽を録音したとありました。なるほど、そうなると演奏家は現地調達でしょう。その方が安上がりになりますね。誰が弾いているかは気にはなりますが。なんでも件の教会がとてもいいサウンドを持っているからベルリン録音になったそうですが、別に日本でもできますよね。まぁ話題づくりもあるんでしょう。

で、その音楽がこちらです。

私が耳コピで書いたタブです。音楽は415のニ短調でバロック・リュート特有の動きが明確に出ています。曲はバロック時代の曲の特徴がないので作曲家のオリジナルです。なお耳コピには楽器を全く使っていませんし、まだ一回も楽器では弾いたことはありません。ですから多分楽譜はデタラメの草稿です。弾いてみたらわかります。清書をするつもりもありません。デタラメですから著作権にはひっかからないでしょう。