リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

探偵ナイトスクープ

2014年11月30日 11時07分43秒 | 日々のこと
探偵ナイトスクープを見ていましたら、ダンスリー・ルネサンスの岡本一郎さんが出ていてびっくりしました。

探偵への依頼は、彼のご子息が自転車に乗れるようにして欲しいという内容でした。猛特訓の末、ご子息は自転車に乗れるようになりメデタシメデタシでした。

岡本一郎さんにお会いしたのはもう随分昔です。確か70年代の初め頃、静岡県の御殿場というところで行われた古楽講習会だったと思います。

ミヒャエル・シェーファーさんという当時大活躍のリュート奏者が来日して、その古楽講習会のリュートコースの講師をされていました。そこに岡本さんも来てらしたと記憶しています。リュートコースの通訳はつのだたかし(当時は角田隆)さんがされていました。

現在も頭頂部の様子こそ大きく変化してしまいましたがとてもお若く見えます。当時もとてもお若く見えて、お風呂で一緒になったときも、

「・・・あの、ところで岡本さんはおいくつですか?」
「ああ、ロクですよ。」

とおっしゃるのでてっきり26歳かと思っていましたが、実は36歳だとわかったのは講習会から帰ってしばらくしてからでした。

ダンスリー・ルネサンスは古楽アンサンブルの草分け的存在で、かつていろいろな古楽奏者が関わっていました。つのださんや、来年コンサートでご一緒させていただくヴィオラ・ダ・ガンバの坂本利文さんたちもメンバーの一員でした。岡本さんにはこれからもずっとお元気で活躍してほしいですね。


バロックなひととき

2014年11月27日 16時44分20秒 | 音楽系
「バロックなひととき」が無事終了致しました。沢山の方に来て頂き、本当にありがとうございました。



当日はとても天気がよく、会場のHITOMIホールに入るとき、ふと空を見上げると、生命保険会社の飛行船が真上を飛んでいました。珍しいので見とれていました。飛行船って無音で飛んでいるとばかり思っていましたが、結構ヘリコプターのような音がするんですね。こんな珍しいものが飛んでいるのを見られるなんて、さい先がいい!?

今回のプログラムは、17世紀、18世紀の、フランス、ドイツ、イタリアの音楽で、前半が17世紀、後半が18世紀の作品で構成しました。今まで3回公演を行っていますが、テーマは同じでこれまでとは内容が異なる「Bプログラム」です。

実は新しいプログラムでのリハーサルは1回しか行っていませんが、そこは皆さん達者な方ばかりですので、何も心配もありません。

私は、今回は通奏低音に2種類の調弦が異なる楽器を使用しました。(バロック・ギターとアーチ・リュート)混乱しないように何度もチェンジの練習をしましたので、特に問題はありませんでしたが、それでも結構負担を感じました。更にソロのリュート・タブもフランス式とイタリア式の2種類を使いました。ホントにご苦労さんって感じですねぇ。更にバスの8コースを「ミ」にしたり「ミ♭」にしたりが交替に出てくる曲順にしましたが、これはもうちょっと考えておくべきでした。今度のコンサートのときは、曲順を変えるとか、タブをフランス式に書き直すとかした方がいいかも知れません。

アンサンブル・バロック・イーラの活動は、昨年は岐阜、桑名、今年は3月に豊橋、そして今回の名古屋で今年は終わりです。来年はぜひ関東地方でもコンサートを行いたいと考えています。


バロック音楽の旅8第4回講座、「リュート、パリ楽派の栄光」

2014年11月17日 00時05分56秒 | 音楽系
バロック音楽の旅8第4回講座が終了しました。今年のコンサートはフレンチで統一していますが、今回はリュート編です。「リュート、パリ楽派の栄光」と題しまして、黎明期のバラール、最盛期のゴーティエ、ガロー、終焉期のド・ヴィゼー、他楽器・他地域への影響としてそれぞれフランソワ・クープラン、エザイアス・ロイスナーの作品を演奏しました。



今回のコンサートでは、ロベール・バラールの作品に久しぶりにアーチ・リュートを使いました。この楽器は10数年前にスペインの製作家、ルーデス・モレーノ・ウンシージャ氏に作ってしてもらったものです。最近あまり使用していませんでしたが、先月のマンドリン・コンクールの招待演奏で使いましたし、来週のアンサンブル・バロック・イーラ名古屋公演でも使う予定です。

他の作品の演奏は実は11コースの楽器を使う予定でしたが、以前このブログでも書きましたように故障して今フランスにいますので、いつもの13コース(モーリス・オッティガー作)を使いました。演奏後、質問に来られた方のお一人から、上の2コースは全く弾かなかったのはなぜですかという質問を受けましたが、フレンチの曲は11コースまでしか使いませんからね。でも実はフランソワ・クープランの神秘のバリケードのリュート編曲を演奏したのですが、それはしっかりと13コースまで使っていたんですけどね。(笑)

今日は大変天気がよく会場の暖房が全く必要ありませんでした。1ヶ月前の第3回の講座では少し寒かったので暖房を入れましたが、一ヶ月後の今回は不要ということで何か妙なものですね。

このコンサートとほぼ同じ内容のコンサートを来月12月14日(日)15時ミューズサロン(名古屋市北区大曽根)で演奏致します。興味のある方は是非お越し下さい。

薄い財布

2014年11月05日 20時57分50秒 | 音楽系
かねがね財布が分厚くなりがちなのをナントカしたいと思っていた矢先、プロモーションメイルで「極薄財布」が紹介されていましたので、ついつい買ってしまいました。

これがその財布。




開いたところ

皮が重なるのを極力少なくし、コインやカードも必要最小限に抑えた結果極薄になるという触れ込みです。

カードは今まで7枚入れていたので、2枚減らし、コインもあまり入らないので(無理して入れるとホックが閉まらないです)入らない分はポケットへ。

でもよく考えてみたら、標準的な財布でもカードを減らし、コインも減らせば同じジャン!?それに何よりこの財布はコインを出すのにえらい手間取ります。コンビニなんかでコインだけで払おうとすると、なかなかコインが出てこず店員さんがイラついているのがよくわかります。少し練習が必要なのかもしれません。

このお財布、実はえらく高かったです。このお値段が高いということが財布を薄くするこにさらに貢献しているようです。

故障発生!

2014年11月04日 17時22分46秒 | 音楽系
スティーブン・マーフィー作11コースのバロック・リュートに故障が発生してしまいました。まだ製作して1年くらいの楽器なのでちょっと珍しいことだと思います。彼は決して手を抜いたり、ましてや技量不足の製作家ではありませんですが、何があったのでしょうねぇ。

今月16日にその楽器を使う予定のコンサートがありますが、急遽モーリスの13コースで演奏することにしまして、早速弦を一部張り替えました。

スティーブンに連絡しましたら、すぐ直してくれるとのことで、早速楽器を梱包しました。段ボールは、引っ越し用のものをネットで注文しました。サイズは100cmx45cmx50cmです。近所のホームセンターではこのサイズのものはなかったです。



EMSで遅れるサイズがこの箱でぎりぎりです。(高さ+底の4辺の長さ=3m以内)姿が見えるようにプチプチでぐるぐる巻きにして送ろうかとも思いましたが、国内ならいざ知らず海外ではちょっと危険でしょうから、段ボール箱に入れて送ることにしました。

実は国内ならプチプチグルグルでも問題になったことはありません。製作家のM氏はいつもその方法で楽器を送ってくれました。7年くらい前にモーリスから新しいテオルボを送ってもらったときも彼は「ブチグル」で送ってくれましたが何の問題もありませんでした。ただ、そのときはキンガムの頑丈なケースに入っていましたのでよかったのだと思います。私の楽器の場合はあまり強度が高くないラソオマの超軽量ケースですので、やはり段ボールに入れないと危険でしょう。

送付経費は意外と安く、送料、保険、梱包材一切を含めて1万6千円ほどでした。昔ロンドンの製作家にリュートを頼んだとき、輸送経費として10数万払った覚えがあります。ちなみに関税も20%くらいたっぷりかけられました。70年代の終わり頃だったと思います。時代は変わりました。

今年のクラッセン

2014年11月03日 17時23分11秒 | 音楽系
日曜日は教室の催し物「クラッセン・シュトゥンデ」でした。クラッセン・・・は、ドイツ語でクラスの時間、クラス全体でのレッスンといった意味で、スコラにいたときに師匠が月1回か隔月くらいに行っていたものに倣っています。

内容は、発表会であったり、公開レッスンであったり、レクチャーであったりしますが、今年のクラッセンは公開レッスンとレクチャーを行いました。私の生徒さんのうち約70%の方に参加して頂き大盛況でした。


滋賀県からお越しのYさん。ヴァイスの超難度の高い曲を弾いています。

最近ふと気がつくとバロック・リュートの生徒さんがとても多くなりました。現在ルネサンス・リュートだけのレッスンを受けている方はなんと一人だけになってしまいました。
今までルネサンスをやっていたAさんは昨年からバロックですし、長年ルネサンスをやっていたB君も今やヴァイスをバリバリに弾いています。最近教室にこられた方お二人もそろってバロックです。今やバロック・リュートの時代なんでしょうか?

昔は、ルネサンスリュートで基礎をしっかりと固めてからバロックに移行するべきだということをまことしやかにおっしゃる方がいましたが、実はこれって何の根拠もありません。さらにはギターで基礎を固めて・・・とおっしゃる方もいましたが、これは今ではさすがに言う人もいないかも。

確かにギターで鍛えた左手のテクニックはリュートで随分役に立つでしょうけど、これはギターが上手くなった人の話。リュートをやるためのギターなんて腰掛け感覚ではギターも上手くなりようがありません。

そんな遠回りをせず、バロック・リュートが弾きたいのなら、いきなりバロック・リュートを始めればいいと思います。17~18世紀のドイツやフランスで、リュートを始めようという人は、バロック・リュートでもって始めていたというのは恐らく事実でしょう。ドレスデンでヴァイス氏に教えてもらいたいので、まずダウランドが弾けるようにがんばってます、なんて人はいなかった筈です。

とはいえ弦が沢山あり、弦長も長いバロック・リュートは初めての方にとって大変なのも事実です。これからバロック・リュートを始めたいという方は11コースの楽器で、弦長が短め(65cm~68cm)の楽器で始められるのがいいと思います。65cmより短いのはさすがに低音が鳴らないのでちょっときびしいかなとは思いますが、ボストンにある Andreas Berr のモデル(弦長65cm)は今まで3台弾いたことがありますが、どれもとても良くなりますので、あと1cmくらいならは短くできるかもしれません。

こぶりなバロック・リュートのペグを超スムーズに動くように調整し、扱いやすい合成樹脂弦を用い、使い勝手のよいコルグのチューナーを使えば調弦もなんのその。まぁ弦が多い分だけウクレレよりは時間がかかりますが。(笑)(20本vs4本なので単純に5倍の時間がかかります)楽器そのものは18世紀様式ですが、そこへ少し現代テクノロジーの助けを借りれば随分と楽になります。まぁ我々は21世紀に住んでいて、エアコンも使えば自動車にも乗るわけですから、便利に使えるものがある以上は利用した方が得策でしょう。

フェルメールの楽器

2014年11月01日 13時30分08秒 | 音楽系
昨日のフェルメール関連で、彼にはいろいろ当時の楽器を描いた作品があります。彼の描いた楽器は17世紀後半の楽器です。「紳士とワインを飲む女」「恋文」「中断された音楽の稽古」「合奏」ではシターンが描かれています。WIKIでは「紳士とワインを飲む女」に描かれている楽器がリュートであるとしていますが、これは間違いですね。シターンって当時のオランダでは人気だったようです。

フェルメールの絵画に出てくる楽器の頻度を調べて見ましたら、次のようでした。

ヴァージナル→5作品
ヴィオラ・ダ・ガンバ→3作品
リュート→2作品
シターン→4作品
ギター→1回作品
あと楽器ではありませんが、声楽が1作品

ヴィオラ・ダ・ガンバは立てかけてあったり床に転がっていたりで、演奏者は描かれていませんが、ヴァージナル、リュートは全て演奏者も一緒です。シターンは有名な「恋文」だけが演奏者も描かれていますが、他の2枚は楽器のみです。

「合奏」に描かれているリュートは低音部のペグボックスだけがテオルボの様にストレートなタイプの楽器です。これはフランドル地域に特有の楽器です。

「リュートを調弦する女」の楽器はフランドルタイプの楽器ではなく、11コースのフランス式の楽器です。「・・・調弦する・・」というタイトルですが、この絵は実際は調弦している瞬間をとらえた絵ではありません。というのは、彼女の左手がさわっているペグと右手が触っている弦が一致しないからです。



左手は右列ペグボックスの一番向こうのあたり、つまり5コースか6コースのペグあたりに行っています。それに対して右手は、一番低い音の弦のあたり、つまり11コースか10コース上にきていますので、明らかにその瞬間は調弦している訳ではありません。

恐らく彼女は6コースのバス弦かオクターブ弦が狂ったので合わせていたら、外からヴィオラ・ダ・ガンバ(絵の下方に転がっています)を弾く彼氏が来る物音がしたので、調弦を中断して外を見た、その瞬間を描いているのだと思います。

ですからこの絵のタイトルは「リュートの調弦を中断して外を見る女」とした方がいいのかも知れません。