リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

BWV1006a(10)

2024年07月16日 18時09分02秒 | 音楽系

4)13小節~16小節:動いているメロディラインの右手指使いは3小節のパターンと同じにします。以降このパターンが出てくるときはこの右手パターンに統一します。

左指が開放弦に当たったり指が外れたりしやすいとてもリスキーな部分です。弦高が低い楽器だとそんなにリスキーではないかもしれません。まぁこの部分は練習と工夫次第です。

5)17~28小節:とてもきれいな部分ですが、4)のときのようなリスキーな部分です。左指自体はそんなに難しいことはしていませんが、慎重に弾かないと指をはずしたり開放弦に指が当たります。この部分の弾き方をクラシック・ギターの人なんかはまるでアルベッジョの練習みたいにあまり意味を考えないで弾いている人がいます。でもハーモニーの流れをつかんでそれを表現しないといけません。4連音の4つ目を親指で弾くので強く弾いてしまいがちです。あと不協和音-解決になっている部分も然るべき弾き方でなければなりません。これらのことを考えないでよく音を抜かさないで弾けたもんだと思いますが、多分そういう人は音を聴かずに指の動きだけに集中して弾いているのでしょう。まぁ演奏家としては失格ですが。

 

4)も5)も3コースがラよりシ♭にしたほうが弾きやすくなる感じがします。右手の指使いはずっと同じですが、28小節目の最後の拍だけ29小節目に備えて指使いを変えてあります。

59小節目以降にこの部分を含めた冒頭部分が調を変えて出て来ます。


ノングレアフィルム

2024年07月15日 16時40分35秒 | 音楽系

新しいiPad Airのノングレアフィルムが届きましたので早速貼ってみました。

本番のときに照明が上にありますので、できるだけ当たらない位置にiPad を置くようにはしていますが、多少は入るときもあります。ノングレアフィルムなしだと鏡のようにライトが映ります。フィルムを貼っていてもライトが反射すれば見にくいには違いありませんが、それでもフィルムがあるとないとではかなり違います。

この手のフィルムは気泡がはいらないように貼るのに少々コツが必要です。この商品は失敗してもいいようにフィルムが2枚ついています。そんなの必要ないだろう、とタカをくくっていましたが、1回目はどうしても取れない気泡が2つ入ってしまい、やり直しました。2回目はコツも覚えたのでパーフェクトでした。

中国のメーカーですが、フィルムの素材は日本製とのことでこれも安心材料。マニュアルもきちんとしていて中国製品にありがちな変な日本語も書かれていませんし、まるで日本製品みたいな至れり尽くせりの品です。もう日本製品が出る幕はないのかしら?

少し前に購入したバンパー付きケースとこのノングレアフィルムでiPad Air を完全防備です。


BWV1006a(9)

2024年07月14日 13時02分11秒 | 音楽系

2)7,8小節は4コースのファから一気に2オクターブ駆け上がるフレーズです。ここは相当ポジションを工夫しないとなめらかには弾けません。ここを音がブツ切れでよたって弾いていてはリュート奏者が廃ります。カッコよく一気に2オクターブ上まで行きましょう。

カンパネラ式の動きがポイント。10フレット以上での音階はバレをしないと指が弦から外れがちになります。7小節目の3拍目冒頭では、2拍目の3つ目の1の指を10フレットに持っていきバレ、8小節目の1拍目で一時的にバレを外しますが、2拍目以降はまたバレをして12フレットまで駆け上がります。

3)9,10小節:9小節目の最初のファと次のドは1コースで弾いてスラーにしたいところです。

※この図版と次の図版の右指使いが間違っていました。2拍目の3つ目の指は人差し指(・)です。

ただ残念ながら私の指のスパンが足りないので次のようにしました。


ホピーは上のポジションで弾いていますが、彼の左手は私よりかなり大きいです。


10小節目はこんな感じです。

いろんなポジションが考えらますが、出てくるファは開放弦を使ったものにしました。2,3拍目は左指が開放弦に当たりがちでとても弾きにくい所ですが、ファを3コースでとった場合よりはマシかなという感じです。

このポジションだと水色の部分のポジション移動が少し危ないです。こういうときは2つのポジションを何回も弾きくらべて決定します。


BWV1006a(8)

2024年07月13日 19時30分39秒 | 音楽系

プレリュードは139小節にわたる長い無窮動曲です。そのあとにフランス的な舞曲が続く組曲ですが、ヴァイスなどのリュート奏者による作品で冒頭にこのような大がかりな曲が置かれているものはほとんどありません。小節ベースではこのプレリュードが全体の3分の1以上を占めるというある意味では特異な曲といえます。

長大なプレリュードにはリュートにとって技術的な要になる箇所がいくつか出てきます。そこをどうやってリュートにとって効果的な左手ポジションと右手指使いに落とし込むかが編曲のポイントになります。それらをひとつずつ見て生きましょう。

1)3,4小節:左手のポジションはこんなところでしょうけど、右手に関してはこの曲のポイントとなる指使いが出てきます。

まず3小節目ですがここはこれではなく

こちらです。

 

下のラインを親指だけで弾かないというのがポイントです。奏者によってはこの様な音型を全て親指を使わないで弾いている人もいます。

4小節目は一番低いポジションを使いできる限りモルトレガートで弾きます。このポジションが取れるのは3コースをシ♭したおかげです。


夏場にガット弦を使う

2024年07月12日 16時58分18秒 | 音楽系

最近バロック・リュートのオクターブ弦をガットに替えたという話は少し前に当ブログに書きました。いつも練習する部屋はエアコンを書けて室温が25,6度、室温が40%台になるようにしています。しかし外気の影響を受けますので、完全に一定というわけではありません。猛暑になった日では書きは40度近いですから、内と外の気温差は10数度になります。

こういう条件ですから6~13コースのオクターブ弦は、気温の条件でかなりの幅の音程が狂います。合成樹脂弦の場合も気温の影響を受けますが狂う音程幅はガット弦よりは狭いです。この時期ガット弦のオクターブ弦は数分もしないうちにかなりの割合で音程が上がります。どのくらいの幅でしょうか、1,2セントではありません。多分10セント以上はいっていると思います。

私の今の弦ソリューションでは、6~13コースのオクターブ以外は合成樹脂弦ですから安定しているので、数分おきにバス弦の方に音を合わせ直すだけですみますがそれでも8本もいちいち直さなければならいのでそれなりに面倒です。全部ガット弦を張った場合だと全て大きく狂いますのでこれは大変です。同じ素材なので全ての弦が全く同じ割合で狂ってくれれば相対的な音程間隔は同じと思われがちですが、実際はそうではありません。相対的にもバランスが崩れてしまいます。これは多分全ての弦の太さが異なるからでしょう。

一応保険としてナイロン弦のオクターブ弦をガムート社に注文して今日届きました。オクターブ弦は、ナイルガット、カーボン、ガット、ナイロンと試していますが、一番悪目立ちがするのがナイルガットでした。カーボンが意外にも8コース以降の低いところが渋い音になりいいのですが、6,7コースあたりがちょっと悪目立ちします。アクィラのCDとのマッチングが一番いいのがガット、一番妥協的なところがナイロンという感じでしょうか。これはバス弦の80%程度の張力のオクターブ弦を張った場合の感想ですが、この割合を変えればまた別の結果が出てくるでしょう。


新しい iPad

2024年07月11日 20時21分22秒 | 音楽系

新しいiPadが到着しました。13インチのiPad Air 、メモリは128Gです。楽譜リーダー専用なので64Gで十分なのですが、残念ながら64Gというモデルはありません。あとApple Pencil Pro 、バンパーケースとノングレアのフィルムも併せて購入しました。

2019年の初め頃にアップルの認定整備済み製品から第1世代と第2世代のiPad Pro13インチを購入、それらを2枚並べて使ってきました。電池は認定整備済み製品の場合新品に交換されるので今でも特に問題なく数時間は楽にもちます。

アプリはForScoreを使い、同じソフトハウスのCueというアプリで2枚のiPad Proを連動させて使っていました。左のiPad ProでForScoreをデュアルページモードで起動し、右のiPad ProでCueを起動させて使います。ただ最近になってある条件のもとではCueが落ちてしまい連動できなくなることがわかりました。その条件というのがよくわかっていません。2019年から2回のリサイタルを含む全てのコンサートにおいてこの「2枚持ち」で使っていた訳ですが、幸いなことに一度も落ちたことがありませんでした。これはたまたまということだったのでしょうか。本番中に落ちていたら一大事でした。

最近新しいフットペダルを使って確実にページをめくる方法を見つけ、これなら別に1枚でもいけると思ったのでこの際思い切って1枚派に転向しました。これなら片方が落ちると言うことはあり得なくなります。(ForScore自体はとても安定しています)

またアレンジやリハーサルのときに楽譜に書き込みをするときにつかうApple Pencil (第1世代)の使い勝手の悪さには閉口していましたので、今回一緒に購入した第3世代にあたるApple Pencil Proの使いやすさは大いに仕事の効率をあげることになるでしょう。写真にありますようにApple Pensil ProはiPad Air本体に磁石で取り付けることができ、その状態で充電もします。第1世代のApple Pencilの置き場がなくまん丸なので転がってしまうし、充電方法もいちいちキャップを外しケーブルでつなぎ、おまけにそのキャップの置き場も必要というのに比べると隔世の感があります。

重量は第1世代、第2世代よりは100gほど軽量化しており、これは手にするとすぐ分かるレベルです。また画面表示サイズは同じなのに筐体自体は横数ミリ縦2センチ余り小さくなっているのも特筆点。

新しいiPad Airをセットアップするときに、横に古いiPad Proを置くと自動的に環境を全てコピーしてくれました。おまけに古いiPad Proを初期化しメルカリ(別のところでもいいですが)ですぐに売れる状態にしてくれるとは何という親切!感動的でした。一応古典的にiTunes経由でバックアップを取っておきましたがその必要はなかったわけです。今は楽になったものです。

 


BWV1006a(7)

2024年07月09日 09時50分45秒 | 音楽系

では今回から具体的に編曲タブを見ていきましょう。まずプレリュードの冒頭8小節あまりです。


3コースは半音上げてシ♭です。

ちなみに他の方の編曲を見て見ましょう

ホプキンソン・スミス版


今村版ではスコルダトゥーラ(ミド♯ラミド♯ラ)のホ長調版です。


冒頭の8小節あまりでもこのように三者三様です。このあとはもう奏者の考え方・解釈や指クセなどにより全く異なっています。でもこの違いはこの曲をどう捉えるかの違いであって、むしろ同じであることの方が不思議です。この曲の場合はヴァイオリンやチェロの無伴奏作品と異なりバスや和声を加えることは基本的にはありませんが、どの弦のどのポジションでどの指で弾くかは奏者による曲の解釈そのものです。

今後この曲のタブを少しずつ公開していき、ほぼ1曲分そろってしまうかもしれませんが、決してこの曲を弾きこんで仕上げようとはしないようにしましょう。ましてやどっかで発表とかウェブに上げるようなことは決してなさらなぬように。絶対にきちんと弾けませんから。でも「つまみ食い」は大いにしてみてください。「つまみ食い」なら楽しいですよ。


BWV1006a(6)

2024年07月07日 09時52分01秒 | 音楽系

1~6コースをミ、ド♯、ラ、ミ、ド♯、ラ(7コース以下はホ長調の音階)のスコルダトゥーラでBWV1006aをコンサートで弾くとすると、どういう曲と組み合わせるかは大きな問題です。アルバム録音だけなら特に問題はありませんが。一番近い調であるイ長調の曲をその次に弾くとすると、1,2,4,5コースをそれぞれ半音上げ7コースを半音下げなければなりません。弦数にして8本!これは大変なことです。続けて弾く場合音程がずっと不安定です。もう1曲このスコルダトゥーラで編曲した曲を演奏し、休憩をはさんで後半はイ長調の曲、という形ならなんとか行くでしょうか。

同じスコルダトゥーラだとどういった曲がいいでしょうか。10コースをレ?にしてイ長調の曲がいいかも知れません。もうこのコンサート全曲ミ、ド♯、ラ、ミ、ド♯、ラで行くなら逆に問題はなさそうです。でも考えただけでもしんどいコンサートですねぇ。

まぁ現実路線としてはミ、ド♯、ラ、ミ、ド♯、ラではなく3コースのみシ♭でしょう。次回からはその現実路線ではどんなタブになるかを見ていきましょう。


BWV1006a(5)

2024年07月06日 08時43分58秒 | 音楽系

70年代初めだったと思いますが、前の前のバーゼル・スコラ・カントルム・リュート科教授だったオイゲン・ミュラー・ドンボア氏が、BWV1006aはスコルダトゥーラを使えば全く問題なくバロック・リュートで弾けるという内容の論文を発表しました。そのスコルダトゥーラというのは、1~6コースをミ、ド♯、ラ、ミ、ド♯、ラにするというものです。

このスコルダトゥーラが歴史的に存在していたかどうかは調べて見たことがないのでわかりませんが、知っている限りでは見たことがないです。近いスコルダトゥーラではロイスナーが1~3コースをミ、ド、ラにするスコルダトゥーラの曲を作っています。(4~6は変更なしです)

3コースをシ♭にした場合、ドンボア氏が提唱したスコルダトゥーラと1~5コースまでは各コースの音程間隔は同じになりますので、ミ、ド♯、ラ、ミ、ド♯、ラ用に作ったタブはほとんどそのまま3コースのみシ♭にした楽器で演奏できます。

今村泰典氏は1回目のバッハ録音では3コースのみシ♭(=ヘ長調)、2回目の録音ではミ、ド♯、ラ、ミ、ド♯、ラ(=ホ長調)で演奏しています。


BWV1006a(4)

2024年07月04日 10時25分45秒 | 音楽系

この曲をリュートで弾くにはいくつかの方法があります。代表的なのはホ長調ではなく半音上げてヘ長調で弾くことです。大体都合よく弾けるようになりますが、ひとつだけメンドクサイ部分があります。それはプレリュードのいち部分(2回目のカンパネラ、63小節目~)です。ここをスムーズに弾くにはB♭の開放弦があると都合がいいです。

ここを乗りきる方法としては、1)何とか指を伸ばし、ポジションを工夫して弾き切る、2)3コースを半音上げてB♭にする、3)オクターブ下のB♭を使う。ギターの人はもうみんな割り切って3)の方法をとっています。

師匠のホプキンソン・スミスは1)の方法をとった楽譜をUT ORPHEUS EDIZIONI から出版していますが、それを見るとかなり広い指のエクステンションがあり、私の指だとちょっと届かない部分が出て来ます。

20何年か前に三重県の田舎のホールでこのプレリュードを弾いたことがありましたが、件の部分は高いポジションをつかって工夫しました。しかし音色がハイポジションで妙に丸くなり他の部分と合わなくなるのと、なんと言っても複弦の高いポジションを取るので指が外れてしまいがちでとてもリスキーです。

リュートでも3)の方法を取る人がいますが、ギターみたいにやってもねぇ。やっぱりリュートですからちゃんとしたいところです。そこで出てくるのはやはり2)の3コースをB♭にする方法です。