日本は情報の最果ての地ですから、一旦入った情報の「つづき」が来ないとその古い情報がずっと残ってしまいます。当時入った情報は、実は古楽黎明期の情報にすぎずその後成熟期に至るまで絶えずアップデートされて今に至っています。
リュートだけでなく古楽の分野はそういう意味では他の分野と比べて少し特殊であると言えます。奏法や楽器に関しては研究が進んで大きく変わってしまっている部分もありますので、役に立たないことが出て来ます。
ただすべてがそうであったわけではなく、楽譜に関する一次情報は何も変化がありません。例えば当時集めたオリジナル楽譜のファクシミシリ資料などは50年前に入手したものでもそのまま使えます。私が1976年に約450年前の楽譜としてデン・ハーグのヘメーンテ博物館で見せてもらった「エル・マエストロ」は現在約500年前の楽譜になっただけで中身は何も変わっていません。ただ同じ楽譜でも2次資料以降の楽譜は使えないと考えておいた方がいいでしょう。それはあくまでも一次資料に限った話です。
70年代後半同じく黎明期であったコンピュータの分野でも私はいろいろプログラム言語を独学で学んでいましたが、その時の資料は今では全く役に立ちません。ところがリュートや古楽関連の資料は何も古くならず(もともとが古いものだけに)現在も使っています。これは古楽をやっていて得をしたと感じるところです。