リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ガット弦使用メモ

2012年03月17日 20時01分58秒 | 音楽系
ガムート社に注文してあったガット弦が届きました。注文したのは0.38mmのvarnished、0.72mm、0.86mm Pystoy(いずれも unvarnished)です。それぞれ1コース、4コース、5コース用です。

0.38mmのvarnishedはケバがすぐでるので、varnished弦なら多少はよくなるのでは、ということで注文。結果は、同じかそれ以下でした。張ってすぐケバが出たりそもそも弦の表面が不均一。

0.72と0.86はそれぞれ4コース、5コースに使えそうです。音はナイルガットのNG73とNG88と比べて少し暗くなりますが使えそう。ナイルガットの太いのは温度感受性が他の弦と逆なので、この2コースにガットが使えると、その現象が解消、調弦が楽になりありがたい。

2コースに張ってある0.46mmの弦は大変丈夫で今もまだ使用中。1コース用の弦もこのくらい保てば、5~1コースまでガットを使えそうです。1コース用として0.38は使用不可なので、あとは0.40mmがどんな性能なのか次第です。5~1コースをオールナイルガットで張ったソリューションも明るい音色で悪くはないと思います。「使いやすさ」「鳴り」も考えるとやっぱりこっちか。


どの弦がガットなのかは見ただけではわかりにくいと思いますが、1コース→ナイルガット、2コース→ガット、3コース→ナイルガット、4、5コース→ガットです。6コース以下はピラミッドやアキーラの合成樹脂素材の弦です。

ガット弦いろいろ

2012年03月15日 13時47分32秒 | 音楽系
ガムート社のガット弦、今回購入分(1~3コース用、計10本)あと3本を残すのみとなりました。1コース用の0.38mmは4本買いましたが、そのうち2本はすぐケバが出てきて翌日にはケバケバでどうにもならない状態になってしまいました。残る2本は比較的長く使えました。でも切れてはいないものの音はポコポコになってきています。1本はドイツテオルボに張っていますが、バロック・リュートに張っていたもう1本の方は、昨夜ナイルガットに張り替えました。ナイルガットは結構がんばっているとはいうもののやはりナイルガットの音で若干違和感を感じます。でもその差は、10メートル離れて聴いている人にはほとんど感じないくらいのレベルでしょう。

2コース用の0.46mmは意外にもよく保っています。バロック・リュートに張ったものはまだケバも出ず、音の劣化も非常に少ないです。これなら十分実用的です。残った3本は、0.46mm3本ということです。

3コース用にと買った0.56mmは2本とも全くの振動不良で弦の体裁をなしていないひどいものでした。こういうこともあるんですねぇ。これってすぐ送り返せば新しいのに交換してもらえるんでしょうけど、送料が・・・

0.46mmが大健闘しているので、0.38mmのコーティングしているのと、あと4コース、5コース用のものも先日注文しました。4コースには0.72mm、5コースにはPistoy0.86mmを注文しました。Pistoyというのは、ガムート社のダニエル・ラーソン氏が開発したミドルレンジ用のガット弦です。ちょっときつくなるけど、1コース用に0.40mmも注文しておけばよかったかな。

私見では、バロック・リュート用のガット弦はまだ満足いく組み合わせが見いだせないと思います。問題点は、バス弦と1コース用の細い弦です。バス弦(6コースから13コース)は、いろんな人がこういうのがいいとか言っているしメーカーも一応推奨している弦があるんですが、ライブや録音を聴いたり自分で試したものも含めて、今ヒトツです。いくらバス弦の減衰時間が当時は短かったとは言え、ポコポコの音でしかも棒振動(直径が太いので弦の両端が振動しない)を起こして音程感が怪しいのでは話になりません。細い1弦はすぐに使えなくなります。

ピラミッド弦のながーい減衰時間は確かにもうちょっと何とかならんかなとは思いますけど、かと言っていくつかの録音にあるようなポコンという音では話になりません。アキーラ社が出しているオープン・ワウンド弦が行けそうな感じですが、現時点では生産していないらしいです。

今月はコンサートが入っていないでアレですけど、来月の初めにはひとつ小さなコンサートがありますので、ぼちぼち実験は終わりですね。(笑)ま、ガット弦実験はお金がかかります。少なくとも現時点では、とにかくガット弦でなければ、というような単純素朴な話ではないことは確かです。

フェルメール再考察

2012年03月08日 13時20分21秒 | 音楽系
フェルメールの「窓辺でリュートを弾く女」をもう少し詳しく考察してみることにしました。この絵のことについて詳しく(しかも音楽的な見地から)説明している本はないかと探しましたら、ありました。梅津時比古著の「フェルメールの音 音楽の彼方にあるものに」です。早速アマゾンで注文しました。

本が届いて読んでみますと、件の絵について説明しているのはその中の一章でした。この本全てがフェルメールの楽器が描かれている絵の考察かと思ったのでちょっと残念。(^^;)

少し引用してみます。


・・・女性の左手は高音部の糸巻きをつまんでいるが、右手は低音の弦に触れるか触れようとしており、高音の調弦を終えて低音に移ろうとしているか、あるいは、すべての音を整え終わり、確認のため低音から弾き直そうとしている寸前のように思われる。調弦し終えた高い音は立ち昇ったまま、まだ宙に止まっていて、その瞬間に女性は物思いにとらわれたのだろう。・・・


なかなか文学的で美しい表現です。特に「調弦し終えた高い音は立ち昇ったまま、まだ宙に止まっていて」のあたりはとてもすばらしい表現だと思います。

でも残念ながら、彼女が触っているペグは「高音部の糸巻き」ではありません。フェルメールの頃のフランドルにあったリュートは多分時代的に11コースのバロック・リュートだろうと思われます。彼女が触れているペグの位置は、4コースか5コースあたり、音名でいうとFかDです。右手の指の位置からすると10コース(ひくいD)あたりですので、調弦をしている動作だとすると、左手がペグボックスの奥から2番目か3番目のペグ(5コース)を触っているということになります。

でも多分5コースのDと10コースの低いDのオクターブで調弦している瞬間ではないと思います。理由は、右手が調弦している格好ではないからです。調弦するときはあのような形の手にはなりません。もちろん演奏しているときもそうはなりません。要するに弦をはじくときの形ではないということです。

昔のバロック・リュートを弾いている絵を見ますと、右腕の弦に対する「進入角度」は45度とかあるいはほとんど弦に対して直角に近いような感じのものばかりです。少なくとも絵にあるような右腕が弦に平行になるような感じで演奏している絵画は皆無です。そのような右腕進入角度はもっと古い時代、15,16世紀のいわゆるルネサンス・リュートの時代のものです。

では、彼女の右手は何をしているのでしょう。彼女の左肩に注目してください。肩に力が入っているような感じがしませんか?そして少しこちら(鑑賞者)側にきています。それに対して左腕は少し後ろにいっています。そして右腕は肩のあたり腕のあたりから力が入っていて、体も楽器に少し強めに圧着しているように見えます。

ペグを回すときに、ペグがペグボックスから抜けないように、少し押し気味にペグを回すのが調弦するときのコツですが、こちらから向かって左側の列にあるペグは上から押さえつけるように回せばいいのですが、反対側のペグは押さえつけて回すのがなかなか大変です。そんなときはどうするかというと、体を楽器に圧着させ、右腕全体で楽器を押さえて楽器が動かないようにして、ペグを回します。そうやってやっていてもどうしてもこの列のペグは緩み気味になり、緩んできて抜けそうだと感じたら、まとめてグッとペグを回しながら突っ込むこともよくします。このあたりは楽器を演奏したことがある人ならすぐ理解できるはずです。

つまり右腕や体で楽器を圧着させ、左手で少しゆるみ気味になっている4,5コースあたりのペグを「よいしょっ」と回しながらつっこんでいるという感じです。絵のタイトルとしては「ペグをまわす女」「ペグを突っ込んでいる女」あるいは「よいしょっ」(笑)あたりでしょうか。ガット弦の音は数秒で減衰してしまうので、この絵の瞬間の数秒前に高音弦をはじいた可能性はとても低いでしょう。もちろんこの絵の瞬間の前後に高音弦がなっているということはあり得ません。

LCC

2012年03月03日 14時41分40秒 | 日々のこと
月末にちょっと別府の温泉にでも旅行しようと思い、飛行機の便を探しました。最近LCCとやらが出始めたのでそれにしようと探したんですが、中部空港発はないんですねぇ、これが。FDAが小牧から出てますが、福岡までしかないし、それに結構高いです。これではLCCとは言えませんです。

10年くらい前ですが、スイスだったかドイツだったかのホテルのテレビでLCCのことをやっていました。ヨーロッパの都市間が日本円で3000円台でいけるという話でしたが、そのときは驚きましたねぇ。十分の一ですよ。そんなのあり得るのかとは思いましたが、そのすぐ後バーゼルに留学してEasy Jetを使いまくりましたけどね。(笑)

Easy Jetはもうヨーロッパではすっかり定着しているLCCの一つですが、インターネットで予約、チェックインまで行い、予約時の情報を自分で印刷したものをカウンターで見せて、あとは荷物を預けて搭乗するだけというシンプルさ。飛行機への搭乗も地べたを歩いて行って、タラップを上がるという昔ながらの方法だし、座席の指定なし、飲み物サービスなしです。

最近日本でスタートしたピーチもほぼそれと同じ方法ですね。やっと日本にも本格的LCC登場という感じですが、他の地域からは10年遅れです。うーむ、なんでこうなってしまったんですかねぇ。日本が停滞している原因の根は深そうです。

ピーチは関空発ですので、一応関空まで電車で行って、空路福岡まで、そして福岡からまたJRというルートを検索してみましたが、時間はかかるはお値段もピーチの分は確かに安いですが、それ以外の部分(距離はずっと短いですが)がえらく高め。それなら陸路新幹線経由の方が安いし時間もかかりません。

ま、結局ANAのナントカ特割28というのが一番安いということがわかりましてそれにしました。でもいわゆるLCCの平均的なフライト料と比べたら、2,3倍はします。中部空港からもチェジュ航空が安いのを出しているみたいですが、まだ本格就航にはほど遠い感じ。中部空港からLCCが九州、北海道、沖縄、韓国行きの路線を出せば相当の需要が掘り起こせるような気がするんですけどねぇ。確かにこれらの地域は高い運賃を払っていっている人が多いので、そのままLCCに取られたら減収になるんでしょうけど、逆にいままでは高いからといって行かなかった人たちが行くようになるわけで、需要の掘り起こしが相当期待できると思うんですね。日本にもつぎつぎとLCCが参入しているので、近いうちに実現することを期待しましょう。


写真は、バーゼル空港にEasy Jetが就航し始めた頃の広告です。

「明日はティラミス?」「そうだよ。でもローマでね」バーゼル発79.90フランより 往復料金(税や手数料一切込み)

79.90フランは当時7000円ちょっとですから、これで往復というのは超格安です。この時はまだ、ロンドン、ローマ、(パリもあったかな)などごく限られたところしかいけませんでしたが、今ではバーゼル空港はEasy Jetの一大拠点となっています。