リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ブサール先生の教え(8)

2022年07月31日 22時57分47秒 | 音楽系
今回は音楽を愛する人についてです。

「音楽を愛する全ての人は、速さだけの演奏やありえないくらい汚い雑音よりも、本物の音の方をずっと好むものです」

あなたは本当に音楽を愛する人ですか?

速さだけの演奏やありえないくらい汚い雑音というと、つい某ギタリストのことを想い出してしまいます。(笑)昔は速さだけで音楽性も美的センスもへったくれもない演奏家が妙にもてはやされていた時期がありました。(今はどうなんでしょう?)そのへったくれもない演奏家氏のコンサートにたまたま出かけることがあったのですが、あまりにもひどいので途中で出ました。そうしたらロビーで酒井康雄氏にばったりと会いました。氏も私と同じように途中で出てきた口で、「どうしてああいうのが拍手喝采なのかわからない」とおっしゃっていました。氏は2017年に惜しくもお亡くなりになり、こういったことについて話ができなくなったのはとても残念です。

さて「本物の音」というのがなかなか判断できない人が多いようですが、どうも真摯に音楽に耳を傾ける姿勢に欠けていることが原因のように思います。ご自分の判断に自信がないのか、著名な奏者だから、ガット弦を使っているから、あたりから入ってしまう人が一杯います。まぁとっかかりは仕方ないことでしょうけど。

著名な奏者でも特にバス弦の弾き方に問題があって、ペンペンペンという音で弾く演奏家もいます。またガット弦を使っていない録音なのにガット弦の音は素晴らしいと陶酔しているアマチュアの方もいます。

知識で武装してしまうと、ある種の思考停止状態、音楽ですから感性に蓋をしてしまう状態になってしまい、結局は本物の音に出会うチャンスがなくなります。予断なく音に耳を傾けることが本物の音に出会う機会を広げると思います。

ブサール先生の教え(7)

2022年07月30日 16時25分49秒 | 音楽系
今回はこれ。

「誓って真実を、嘘偽りなく敢えて申し上げれば、ものごとの始めにおける忍耐ほど上達の支えとなるものはありません。何事もすぐには手に入るものではありません」

このくらいは分かっています。でも20年やっていてもバッハはちっとも弾けないんだよな。とおっしゃる方がいらっしゃるかもわかりませんが、ブサール先生はこのあとこんな風に続けています。

「全てのグリッフとその間にある音符を丁寧にはっきりと、しかしゆっくりと弾くことのみに注意を払ってください」

グリッフというのは和音などの複数の音を抑えるときの指の型です。ブサール先生はまずきちんと音を出すことの重要性をおっしゃっています。

でも私が教えている経験から言いますと、次の2点が問題になることが多いです。

1.きちんと押さえられない。
2.そもそもゆっくりテンポをキープして弾くことができない。

でもさすがブサール先生、2.についてはちゃんと言及しています。

「いつの間にか、望むと望まないとにかかわらず、ついつい速く弾く癖がついてしまいがちです」

2.について放ったらかしにしておくと、いつまでたってもテンポをキープすることができず、自分で設定した特定のテンポ?でしか弾けなくなります。1.については押弦の基礎をきちんと学ぶしかありません。1.と2.が克服できていることがブサール先生の箴言の前提です。要するに、私がよく言うように、ものごとには順序があるということです。

ブサール先生の教え(6)

2022年07月29日 22時36分30秒 | 音楽系
右手の使い方について、

「しかし親指が短い人は、親指を他の指の下にして弦を弾いている人のまねをするといいかも知れません。その奏法はあまりエレガントではないかも知れませんが、親指が短い人にとっては都合のいいものです」

これは今でいうサムインサイド奏法を指しています。現代ではルネサンス・リュートを弾く人の多くがこの奏法で弾いていますが、ブサール先生はこれを「あまりエレガントではない」と言っています。

ブサール先生自身は、サムアウトサイド奏法をまず推していて、親指が短くてそれが少し難しい人は不格好だけどまぁインサイドでもいいんじゃない?みたいなスタンスです。

現代の奏者でアウトサイド弾く代表的な奏者はナイジェル・ノースです。バロック・リュートを中心に弾いている人はアウトサイドでルネサンス・リュートを弾く方が手のフォームを変えなくてもいいので都合がいいのですが、アウトサイドで細かいパッセージをスラスラ弾くのはなかなか難しいです。

向こうにいたとき、ロバート・バルトと話す機会があって、話題がインサイドとアウトサイドのことになったとき、彼は「オレはどうしても速いパッセージをアウトサイドでスムーズに弾けないけど、ナイジェルはできるんだ・・・」って言っていたことを思い出します。ロバート・バルトはほとんど人前でルネサンスを弾くことはないですが、実際はよく弾くことがあるらしくディディージョの話もしていました。ナイジェルとロバートの親指の長さを比べた人はいないでしょうけど、映像で見た感じではロバートは短めでかつ先が曲がっていて、ナイジェルは長めでまっすぐのような印象があります。

現代において親指が長い人でもインサイドで弾いている人がいるとは思いますので、もしフィゲタがうまく弾けない人はブサール先生がおっしゃっていることに従い、アウトサイドにしてみるといいかも知れません。

粗大ごみネット受付

2022年07月28日 22時33分56秒 | 日々のこと
桑名市の粗大ごみのネット受付が6月1日から始まっています。11月30日受付までは半額になるというので、家内が申込をしました。



しかし途中で断念し、私にお鉢が回ってきました。(笑)

それで、続きをスマホでやってみました。今回は5点出して、大きいものばかりでしたので1つにつき600円で合計3000円。これが半額の1500円になるというのはなかなかお得です。今までは市の担当に電話をかけて予約し、粗大ごみ券をコンビニで購入、それを張り付けて回収の日の朝に外に出しておくというシステムでしたが、とても便利になりました・・・というところですが・・・

コンピュータやスマホで24時間受付ということ自体は便利なのですが、スマホの申し込み画面がとてもわかりにくく使い勝手はあまりよくありませんでした。家内が先に進めなくなったのはこのあたりが原因だったかも。

PCでもできるというので、別のアカウントを取って申込を進んでみましたが、こちらは画面が大きいこともあり特に使いづらいという感じではありませんでした。

一般の特に老齢世帯ではネットを使って粗大ごみ回収予約はこのインターフェースでは多分難しいでしょう。そのあたりユーザーの方を向いてもう一工夫ほしいです。そもそもネット受付の「受付」(サイトでは「予約」になっていますが)は市の側から見た書き方です。受け付けてやるんだ!みたいな。ユーザー(市民)の側に立つのでしたら、「ネット申込」です。

ブサール先生の教え(5)

2022年07月27日 15時29分06秒 | 音楽系
右手の使い方に関してです。

「まず小指をリュートの表面板に乗せてください。位置はロゼッタの方ではなく少しブリッジ寄りです。そして親指をできる限りまっすぐ伸ばして、親指が短い人の場合特にしっかりと、他の指が握りこぶしのようになるようにします」

今日特にルネッサンスリュートを弾く人の多くはロゼッタ付近に右手を持ってきている人が多いようですが、ブサール先生は昔のバロック・リュートが描かれている絵に見られるように、ブリッジ寄りを推奨しています。

親指の短い人に対する注意事項として、特にしっかりと伸ばすようにアドヴァイスしています。親指の長さは右手のフォームに大きな影響を与えるということを認めています。私は親指の長さに加えて、第1関節から先が曲がっている人とそうでない人ではフォームが少し異なるべきだということも考えています。要するに指の長さや生え方がフォームに影響するので、人のフォームを真似しても必ずしもうまくいくとは限らず、自分にあったフォームを見つける必要があるということです。

親指以外の指に関しては握りこぶしのようになるように、すなわち第1~第3関節でゆったりとした円弧になるようにということをアドヴァイスしています。

400数十年前の人も現代の人も体の構造に大きな違いはありませんので、当然注意することも同じことになります。

ワカタカカゲの言い方

2022年07月26日 12時10分24秒 | 日々のこと
名古屋場所は逸ノ城が見事優勝をはたしましたが、最近力を付けてきているのが関脇若隆景。この力士はおじいさん、お父さん、兄弟皆お相撲さんと言う相撲一家で、成るべくして成ったという人です。シロウトの私からみても贅肉のない均整のとれた体付きでもっと番付があがるのではという感じがします。

番付が上がれば上がるほど、注目されテレビなどでワカタカカゲと呼ばれる機会が増えるわけですが、このしこ名の発音がちょっと言いにくいようです。解説の舞の海さんなんか最初はかみまくっていました。場内放送のアナウンスはさすがにスムーズに発音していますが、NHKのアナウンサーはちょっと警戒してか、ワ・カ・タ・カ・カ・ゲみたいに少しゆっくりと言う人が多いです。でも取り組みが始まるとそういうわけにはいかず、舌がすべってしまいがちのアナウンサーもいました。

これは多分「カ」が多く、特に途中で2回連続するのでいいにくくなるということでしょう。本来の日本語の発音としては語の冒頭に来た場合の「カ」は破裂音ですが、語の途中の場合の破裂は少し軽くなります。でもワカタカカゲの3つの「カ」を全て強めの破裂音で言うととてもいいにくくなります。

若隆景というしこ名は、1.「ワカ」2.「タカ」3.「カゲ」の三つから成り立っていますが、1.と2.の「カ」は語尾、3.の「カ」は語頭ですので、1.2.は破裂音ナシもしくは軽く、3.は少し鋭めの破裂音で発音するとぐっと発音しやすくなります。連続する2つ目と3つ目の発音が少し異なるようにするわけです。頭の中の整理としては「ワカタカ」と「カゲ」にわけて、「ワカタカ」の「カ」は軽く、「カゲ」の「カ」は鋭くというような感じにまとめるといいと思います。

最近の日本語の傾向で、鼻にかかる鼻濁音の「ガ」(語頭に来ない場合の発音)が消滅しつつある感じがしますが、NHKのアナウンサーはさすがにきちんと鼻濁音しています。(語頭の「ガ」は鼻にかかりません)鼻濁音の「ガ」が消滅しつつあるので、清音の「カ」もそれに引きずられて破裂音一本になっている傾向がありますが、それだとワカタカカゲはとても言いにくくなります。NHKのアナウンサーもワ・カ・タ・カ・カ・ゲ(この場合全ての「カ」は破裂音で言っているようです)みたいにに言わないで、本来の日本語の発音でサラッときれいに言ってほしいものです。

ウナギの魚信

2022年07月25日 19時51分44秒 | 日々のこと
今年は2回土用丑の日があるらしいですが、1回目は過ぎ去ってしまいました。今日はホントに夏らしいいい日でしたので、遅れ馳せながらスタミナをつけるべくお昼にウナギを食べに行きました。

最近はウナギのお値段も高騰していて、5000円近く出さないと満足に食べられないという感じですが、今日行くお店はなんと半額以下でうな重を食べることができる格安店です。

そのお店は岐阜県の南端、揖斐川左岸にほど近いところにある魚信というお店です。ウチからだと伊勢大橋の真ん中から中堤を北上して揖斐川の右岸道路に出て、しばらく走って堤防を降りてすぐです。岐阜県といっても30分もあれば行くことができます。

ここが入り口。なんか普通のお家という感じです。



中に入るとお昼時だけに沢山のお客さんが。



注文をしたのはうな重の大盛りです。近くのおっさんがうな重の大盛りを頼んだのでそれにつられて私も。



大盛りというので、ウナギも一切れ多く入って居るのかと期待したのですが、実際はご飯だけが大盛りでした。(笑)これで2000円です。いまどきこのお値段でウナギを食べられるのは貴重なお店です。

メニューはウナギ料理の他、一般的などんぶり物、うどん、刺身(アユ、コイ、フナ、マス)、各種定食などがあります。ナマズの蒲焼きとかモロコもあります。このあたりは大きな川に挟まれている地域なので川魚はなんでも来いです。このお店は各種川魚を自分のところで養殖しているので、お値打ちに提供できるようです。今年はもう一回土用丑の日が8月4日にあるらしいので、また出かけなくては。



ブサール先生の教え(4)

2022年07月24日 17時09分48秒 | 音楽系
その4です。

まず始めに選ぶべき曲として、

「自分の実力に合うと思う曲を1曲選んでみましょう。他の曲に目移りしたり、次から次へと曲のつまみ食いをして棒を折ったりせず、1つの曲を完全に弾けるようにします。そして初見でいきなり終わりまで弾かないで、各声部をよく吟味しひとつの声部を何度も(たとえ千回を超えても)なめらかに弾けるようになるまで練習しましょう。」

これはもちろんプロフェッショナルな人に言っているのではなく、リュートの初学者に言っていることばです。この「自分の実力に合うと思う曲」というのを見極めるのが難しいのかも知れません。自分が弾きたい曲と実力に合うと思う曲というのは異なります。

50年以上前の日本はギターブームみたいなのが起きてきて、全然実力が伴わないのにステージでアルベニス作曲のアストリアスを弾く人が結構いました。アルハンブラの人もいたかな。リュートだとほとんどまだ弾けないのに998のプレリュードをレッスンしてくださいというのも同じ。

つまみ食いは楽しいですが、食い散らかすのはいけません。各声部を何度も弾きなめらかに弾けるようにするのはとても重要なことです。こういうことをきちんとせずなめてかかっているとこんな演奏になります。実力に合わず、つまみ食い放題、吟味なし、なめらかさナシです。ブサール先生怒りますよ!

こんな演奏
(適当に想像してください。You Tubeには結構身近にころがっています)

買ってしまいました!

2022年07月23日 11時57分48秒 | 日々のこと
MAKUAKEで応援購入した品がやっと届きました。注文したのは6月頃でしたか。初めは8月の終りに届くと言われていたのですが、予定より早くなったみたいです。



ゲーマー用の椅子ですが、とても座り心地がいいです。アグラもかけます。実はこれがこの椅子の売りのひとつでもあるので、その名もAgrelux アグリラックスといいます。(笑)

これでデスクワークがいろんな形で出来ることになるので疲れはより少なくなるのではと思います。写真に写っているテーブルは昨年の秋に完成したものですが、テーブル面が上下しますので、「立って」「座って」「あぐらをかいて」の3通りのデスクワークが可能です。

この椅子、普通の椅子よりは相当大きいので、ちょっと心配になったのは部屋から出せるかどうかですが、心配した通り出せませんでした。(笑)この部屋で組み立てたのでよかったのですが、隣の部屋で組み立てたらえらいことになっていました。

もっとも「部屋から出せない」というのはテーブルの角が鑑賞してドアが90度くらいまでしか開かないからで、一杯一杯ひらけば寸法的には出すことが可能になります。そりゃそうです。この椅子は日本製なので、いくら大きい椅子であっても日本の住宅の規格は当然意識しているでしょうから。

テーブルの角がドアに干渉しないようにするためには少し配置換えをする必要がありますが、今のところ部屋から出す必要はありませんので、またぼちぼちやっていきましょう。(これがいけないんですが)

ブサール先生の教え(3)

2022年07月22日 15時13分00秒 | 音楽系
ブサール先生は日本史で言うと、千利休と同じくらいの時代かなと思って調べてみましたら、利休の方がだいぶ年上ですね。でも人生の後半とでも書物を通じてお言葉を読んでいるとすごく身近に感じてしまいます。世の中の仕組みは全く異なるでしょうし、電気もないし自動車もなかった時代です。ただひとつ、リュートという共通項だけでつながることができるのは誠に不思議なことではあります。

さて、今回のお言葉:

「もしバランスを欠くやりかたで極端な労力を自分に課したりすると、それは自然の摂理に抗うことになります。それゆえ、学ぶ心構えが出来、練習する機会や時間があるときに、無理なく学習を進めていって下さい」

バーゼルにいた頃、テレビもないし情報に飢えていましたので、もっぱらネットを見るのを楽しみにしていました。ただ、You Tubeはまだ産声をあげたばかりで大したコンテンツもありませんでしたし、ブログというものもまだあまり普及していませんでした。ある時知り合いから面白いHPがあるというのので見ていましたら、そこはトンデモ理論が横行しているハチャメチャな内容のサイトでした。そのサイトの管理人は「脳内マエストロ」みたいな感じの人で、いっぱしの理論めいたことを仰るのですが、ご自身の演奏はブッツンブッツンのなんじゃこれ!?というレベル。そしてそこに書き込んでくる人も同レベルの人たちがほとんど。でも面白いので毎日楽しみにしていました。(笑)

あるとき書き込みで「よーし、これから練習をがんばるぞ。思いっきり指を痛めつけるぞ」なんて書いてありました。これがブサール先生のおっしゃる、「バランスを欠くやりかたで極端な労力を自分に課す」ということですね。

いくつか変なことが一杯書かれているので、私なりの意見を書き込んでみましたら、「そんなことを言っているからあなたはダメなんだ!」ってしっかりおこられてしまいました。(笑)