リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

リハーサル

2019年11月29日 11時11分46秒 | 日々のこと
昨日は横浜にリハーサルに出かけました。

12月8日のバロック音楽の旅13第4回コンサートのリハーサルです。今回はオーボエの大山有里子さんとの共演で、大山さんの地元横浜でのリハーサルです。実は3月28日に東京の近江楽堂でも大山さんとコンサートをするのでそれのリハーサルも兼ねています。

天気予報では昼からは雨が上がるという予報でしたので、傘を持っていきませんでしたが、リハーサール会場近くの駅から外に出てみると小雨が降っていました。関東は寒いということでしたので、完全防寒で行きましたが、こちらは予報通り、完全防寒は大正解でした。

最近は関東は車で行くことが多いですが、昨日は新幹線で行きました。やっぱり新幹線は速いし楽ですね。でも運賃が高いのが玉に瑕。

1時から5時までリハーサルを行い、外に出ましたらまだ雨が降っていました。すぐ近くのサイゼリヤで軽く食べて、外にでましたらようやく雨は止んでいました。当然帰りも新幹線ですが、行きと内装が異なっていました。多分帰りの車両の方が新しい感じしましたが、窓枠のゴムのパッキンをみましたら、そこそこ経年劣化がありましたので、そう新しい物ではなさそうです。

今回は1カ所を除き全ての列車、店舗がキャッシュレスでいけました。新幹線の予約は「エクスプレス予約」でスマホからです。これ、便利ですよね。駅の窓口に並ばなくても済みますから。キャッシュレスでいけなかったのが何とサイゼリヤでした。レジのところに「現金のみ」としっかり張り紙がしてありましたが一応念のために尋ねてみましたがやっぱりだめでした。これは意外でしたね。

周辺国

2019年11月26日 16時26分27秒 | 日々のこと
日本の周辺には何かとお騒がせすな国が多いです。日本の国境があるところではほとんど全て何らかの紛争なり問題が起こっています。北方領土とロシア、(北海道とサハリンは特に問題はないようですが)尖閣諸島と中国、竹島と韓国、北朝鮮はちょっと離れていますが、ときどきミサイルが飛んできます、などなど。

こんな状況なのに、ボーっと生きていていると誰かさんに叱られます。日本国憲法が「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と掲げているのはいいのですが、そこで思考停止してしまっていている人も多いようです。「諸国民」は確かに平和を愛しているのでしょうけど、「諸国家」の公正と信義は怪しいもんです。

私が留学していたスイスは多くの国と陸地で接しています。フランス、ドイツ、イタリア、オーストリア、あとリヒテンシュタインもあったかな。永世中立国であるスイスはまさしく平和国家と言えますが、彼らは決して周りの国々やよその国々が平和的であるという風に信頼しているわけではないようです。

スイスには現在も徴兵制があり、バーゼルの駅では小銃を持った若い兵士を見かけました。休暇で帰省するのだと思います。列車でベルンの方に行くと途中の駅で陸軍の機動車みたいなのを運搬しているのを見かけるときがありました。スイスには立派な陸軍、空軍があります。海軍はありませんが、ライン河のバーゼル港やレマン湖がなどがあるので、船舶部隊もあります。

スイスには以前から兵器産業もあり、ゼロ戦(零式艦上戦闘機)に装備されている20ミリ機関砲は、スイスのエリコン社の機関砲を元に開発されたものだそうです。エリコンというところがチューリッヒの近くにありますが、そこに本社がある会社です。もっとも現在のエリコン社には兵器部門はありません。

スイスには「軍隊なきスイスを目指す会」というのがあるそうですが、スイスでは国民投票で圧倒的に徴兵制維持が採択されたということが示すように、「軍隊なき・・・」はあまり支持されていないようです。

スイスの周りに危なそうな国はないみたいですが、国民は過去2,300年の歴史に照らして決して油断はしていないようです。振り返って我がニッポン、スイスより遙かに状況はよくないと思いますが、思考停止していて大丈夫でしょうか。

バロック音楽の旅13第3回講座(コンサート)

2019年11月24日 23時20分49秒 | 音楽系
バロック音楽の旅13の第3回はコンサートです。久しぶりにチェンバロの杉浦道子さんにお越し頂いて、バッハ、スウェーリンク、ルイ・クープラン、スカルラッティの作品を演奏して頂きました。

週初めの天気予報では、今日は昼から雨でしたが、幸い雨雲が来るのが送れて雨にはなりませんでした。今回も沢山の方にお越し頂き大変有り難うございました。



途中で休憩を頂きましたが、多くの方がチェンバロを見に来られました。スマホで写真を撮られる方もいらっしゃいました。



プログラムは次の通りです。

ヤン・ピーテルスゾーン・スウェーリンク(1562-1621)
大公のバレー(Ballo del granduca)

ヨハン・セバスチャン・バッハ(1685-1750)
インヴェンション より、1番 ハ長調、8番 へ長調、9番 ヘ短調、
14番 変ロ長調、15番 ロ短調

ゴールトベルグ変奏曲よりアリア

パルティータ 第2番より
シンフォニア、アルマンド、カプリッチョ


――――――――休憩―――――――――――


ルイ・クープラン (ca.1626-1661)
組曲 へ長調(プレリュード、アルマンド・グラーヴ 、クーラント、
サラバンド、バスクのブランル、 シャコンヌ)

ドメニコ・スカルラッティ (1685-1757)
ソナタ K.208 イ長調、K.209 イ長調

アレクサンドロ・スカルラッティ (1660-1725)
ラ・フォリア

次回は12月8日再来週でもうすぐです。オーボエの大山有里子と私のデュオコンサートです。本講座は桑名市民以外の方でも参加になれます。また第4回以降の途中参加も可能です。是非聴いてみたいとおっしゃる方は、くわなメディアライヴにお越し下さい。

組曲ハ短調BWV997を弾く(5)

2019年11月23日 12時13分54秒 | 音楽系
2017年版ではかなり無理をしてオリジナルの通りのバスが弾けるようにしていましたが、今回の版(実際には何度も改訂をしていまして、今回でVer.4です)では極端に無理な運指は避けました。というかオリジナル通りポジションを決めて何度か練習してもどうしても失敗の率が高い部分が出て来ました。そういう箇所は思い切ってバスをオクターブ下げて左手を楽にさせてあげました。

あとフーガで何度も出てくるタイで音を伸ばして繋留→解決する部分はもちろんきちんと音を保持することに徹しましたが、2カ所だけ指が裂けるくらい開く必要があるところが出て来ましたがその部分に関してはある特殊な方法で困難を回避しました。どうやったかは禁断のわざなのでヒミツです。(笑)こういった箇所は1,2回演奏するだけなら問題はないのですが、練習で何度も弾いていると指を痛める原因になります。私の左手は指が届く限りはまず押弦ができないことはないので、ついつい無理をしがちなのです。 

何度も改訂を重ねた編曲で、結局少しゆるい感じで落ち着きましたが、それでもとても大変な曲であることには変わりありません。やはり鍵盤のテクスチャはリュートには合いません。この編曲改訂の合間にBWV1002(無伴奏ヴァイオリンパルティータ1番)のサラバンドとテンポ・ディ・ボレア(それぞれドゥブル付き)もアーチリュートに編曲してみました。この2曲はバーゼルにいた頃にバロック・リュートにイ短調で編曲し、向こうでも何回か弾きましたし、何年か前のリサイタルでも演奏しました。

アーチリュートではハ短調で編曲しましたが、これがまたよく楽器の響きに合います。結果的に以前のバロック・リュートの編曲とは異なるバスをつけましたが、比べてみると10数年前とは考え方が少し異なってきたことがわかり我ながら興味深かったです。こっちの編曲はシベリウスを使って行ったということもありますが一晩で完成、演奏自体も翌日は大体通るようになりました。997とはえらい違いです。やはり、5度調弦の弦楽器のものとはいえ、同じ弦楽器のためのテクスチュアということで親和性が高いんでしょうね。バッハと言えどこのくらいでなくてはやってられません。でも997はチャレンジングなので止められませんが。(笑)

さて、編曲した997(プレリュードとフーガ)と1002(サラバンドとテンポ・ディ・ボレア)は今年から来年にかけて桑名、名古屋、金沢、東京で演奏する予定です。

組曲ハ短調BWV997を弾く(4)

2019年11月21日 19時20分15秒 | 音楽系
原調のハ短調によるバロック・リュート編曲では、今村泰典編曲、イ短調編曲ではホプキンソン・スミス編曲が出版されています。いずれもちゃんとした運指がわかりとても実用的なものです。アマチュアの方でネットで探してきた編曲を使う人がいますが、絶対に止めた方がいいです。弾いた形跡がないあるいは全く弾けないタブが大半です。先日もあるリュート講習会でそういった類いの楽譜を使ってらっしゃる方がみえました。弾ける実用性がある今村、ホピー編曲でも超難曲なのに、そもそも弾けないタブを使っていたんでは絶対に弾けるようにはなりません。アマチュアの方はパッ見ただけでそのタブが演奏可能なのかすぐには判断できないでしょうから、ちゃんとした奏者が録音もしている版を使うべきです。

私は今回はアーチ・リュートによる編曲を試みました。なぜバロックにしなかったかというと、この春先までアーチ・リュートを使うコンサートが多いからという単純な理由からです。でももう一つ理由があります。それはアーチ・リュートの方がバロック・リュートよりは高い音を少しだけ取りやすいし、弦長も短いので少し有利かなと考えたからです。

ただアーチリュートの場合はシングル弦で運用しているので(私の場合)、バスのオクターブ弦のみを使うという技が使えないのが少しつらいところです。編曲はプレリュードとフーガはすでに2017年に行っています。そのころプレリュードだけですが、何回かコンサートで演奏しました。今回はもう一度それらを見直して見ることにしました。

行進曲(2)

2019年11月19日 10時53分49秒 | 音楽系
団伊玖磨の2曲に対して、おめでたいムードに水を差すようで申し訳ありませんが、奉祝行進曲令和(北原幸男作曲)は残念な曲です。色んな経緯があって、オープンカーの出発には新作行進曲でということになったんでしょうけど、まぁ作曲の方にもプレッシャーもあったんでしょう。ただ純粋に作品として比べてみると、数段落ちるのは否めません。まぁ作曲家としての技量・実績が違いすぎますので、比べるのも酷かも知れませんが。

でも作曲家として無名というかほとんどアマチュアに近い方でも傑作をものした例もあります。それは1964年の東京オリンピックのファンファーレです。この曲は公募が選ばれた曲で、当時アマチュア・オーケストラ諏訪交響楽団の指揮者を務めていた今井光也の作品です。このファンファーレはテレビで何度ともなく流れたとても印象深い曲です。ペンタトニック風の(ペンタトニックではありませんが)テーマで始まるとてもシンプルですが、たった8小節の中に風格、情緒をたたえた傑作だと思います。彼は作曲界の一発屋(失礼!)といった感じで、これ以外に数曲社歌や校歌を書いたくらいだと言われています。この時はきっと音楽の女神の光が彼を照らしたに違いありません。

東京オリンピックでは、マーチを古関裕而が作曲しました。古関はNHKのスポーツマーチも作曲し、これは少しアレンジを変えて現在も使われています。古関のオリンピックマーチは手堅い作りだけどなんかぱっとしない曲だな、と当時中学生だった私は感じていました。特に曲の後半、トリオに向かう部分のメロディの一音が半音下がってくれるといいなと感じます。あと、トリオが終わり、ブリッジからテーマに行くときの転調がちょっと強引だと思いますけど、まぁ慣れの問題かも。NHKのスポーツマーチの方が曲としてずっとしっかりしていると思います。

スポーツ関連のマーチとして現在もよく使われているのは、黛敏郎作曲のマーチです。この曲は黛がまだ学生だった頃に作曲した曲で、ジャイアント馬場の入場テーマとしても有名です。当時黛は超売れっ子作曲家でしたけど、現在では作曲家としての名声はほとんど忘れられています。これは70年代初めから彼が表明していく右よりの政治的姿勢と関係がありそうです。実際70年以降彼はほとんどめぼしい作品を残していません。この頃に才能が枯渇したなんて噂もありましたが、実際は曲の委嘱が全然来なかったということらしいです。

組曲ハ短調BWV997を弾く(3)

2019年11月18日 13時46分11秒 | 音楽系
残念に思うのは、鍵盤楽器で演奏する人の何人かは、新バッハ全集版をそのまま使っていることです。鍵盤楽器なら音域の制約がないので、原典を弾いてみるべきだと思うのですが、いくつかの録音はプレリュードからジグまではメロディ(右手)が1オクターブ下げ、ジグのドゥブルだけ右手が1オクターブ上がるという新バッハ全集に則したものです。これ、きちんと原典を検討していないという証拠ですね。現在少数ですが、ラウテンヴェルクでの原典を使った演奏も出て来ています。

実は新バッハ全集というのは「原典」ではなく、スラーなども整理し、異稿の問題もそれなりに(場合によっては適当に)結論を出した「実用版」なのです。とりあえずチャチャっと使うには便利な版ですが、プロが演奏や録音に使うには、参考程度に留めるべきです。ギターの編曲なんかはこの新バッハ全集を原典として使ったというのもあり、さらにそれを少し変更して別のギター版を作ったりでもう伝言ゲームみたいになってしまっています。

さてリュートで弾く場合は、音域的にいって原典版の使用は不可能で、新バッハ全集の考え方を取らざるを得ません。ジグのドゥブルは、新バッハ全集とは異なり、オウターブ下げる措置をとります。といったことをしたところで、全てリュートで演奏可能かというとこれがなかなか。(笑)

全く弾けないところ、弾けるけど運指的に相当無理をするところのオンパレードです。もう30年くらい前に、バロック・リュートで1音上げてニ短調でアレンジをしてみましたが、あまり実用的ではありませんでした。

つづく

行進曲(1)

2019年11月17日 12時52分43秒 | 音楽系
先週は天皇陛下の即位にともなうパレード「祝賀御列の儀」でした。このパレードに使われたのが、奉祝行進曲令和(北原幸男作曲)と新・祝典行進曲(団伊玖磨作曲)でした。両陛下がオープンカーにお乗りになり、出発するときに奉祝行進曲令和が演奏されました。

沿道では10カ所くらいにわけて新祝典行進曲をリレーでつないでいくという形で演奏されました。パレードのテレビ中継ではずっと行進曲が流れていましたが、車の移動に合わせてリレー演奏するというある意味古典的な方法が取られたわけです。

この団伊玖磨作曲の新・祝典行進曲は1993年の皇太子徳仁親王(現今上陛下)と小和田雅子さん(現皇后)の結婚の儀のパレードのために作曲され演奏された曲です。パレードでずっとこの曲が流れたので、さぞかし両陛下も沿道のみなさんも感慨深かったことでしょう。

この曲には「新・」がついているということはこれがつかない「祝典行進曲」もあったわけで、これは皇太子明仁親王(現上皇)と正田美智子(現上皇后)のご成婚を祝して作曲された曲ですが、実際にパレードに使われたわけではなかったようです。

海外のこういった儀式のために作曲された曲だと、ウォルトンの戴冠行進曲(クラウン・インペリアル)が有名です。これはエドワード8世の戴冠式のために作曲された曲です。ウォルトンは1953年のエリザベス2世の戴冠式の際にも「行進曲宝玉と勺杖」を作曲しています。これら2曲はとびっきりの華やかさの中にも格調を漂わせた英国王室の儀式にふさわしい行進曲です。

団伊玖磨作曲の祝典行進曲、新・祝典行進曲もウォルトンの曲と同様高い格調を保っていますが、少し控えめでしっとりとした曲想に国柄の違いが反映されていて興味深いです。いずれも行進曲の傑作と言えます。

組曲ハ短調BWV997を弾く(2)

2019年11月16日 22時25分07秒 | 音楽系
1.に関して、自筆が残されていないのは残念ですが、弟子のアグリコラが筆写した原典の1つは残されていますので、自筆にかなり近いと考えられます。

2.に関しては、各原典では微妙に音型が異なるのところがあります。やはり元(自筆)がどんなものだったのかは知りたいところです。実際に演奏する際は、それらを検討してどう扱うかを判断する必要があります。当時のタブ編曲は、「リュートのための」という文言がありますが、リュートタブで書かれているわけですからこれは当然でしょう。言い換えたら、リュートタブのもとになった楽譜はリュートのためというのではないということかも知れません。リュートタブ編曲は、そこそこ無理をせずリュートで弾けるプレリュード、サラバンド、ジグ(ドゥブルなし)のみです。まぁ、賢明な選択だったでしょう。
3.に関して、タブ編曲を除いた原典は、バスの上のメロディが、現代における大半の録音、楽譜より1オクターブ上になっています。新バッハ全集の楽譜もジグのドゥブル以外は上のメロディが1オクターブ下げられています。新バッハ全集がなぜこのような措置をとったのかはよく分かりません。個人的には原典に即した形で出すべきだったと思います。

(続く)

組曲ハ短調BWV997を弾く(1)

2019年11月14日 12時24分58秒 | 音楽系
バッハの組曲ハ短調BWV997はラウテンヴェルクのために作曲された作品です。バッハ全集ではリュート曲に分類されていますが、BWV996、998と同様リュートのために作られたものではありません。学術的な書物に、これらの曲について「音域と書法は完全にリュート用」なんて書いてありますが、確かに音域的にはそうですが、書法は全くリュート的ではありません。リュートのシロウトから見れば確かにリュートっぽいですけど、実際のリュートの書法はこんなものではありません。BWV995は自筆のタイトルで「リュートのための」という文言がある通り、こちらは書法的に見てリュート的だと言えます。でも弾きにくいところがあったり、弾けないところもありますが・・・実はこれも完璧にリュートの書法を踏襲したラウテンヴェルク用の作品なのかも知れません。

さて997です。この曲はとても作品として素晴らしいので、リュートはもちろんラウテンヴェルクやチェンバロ、ギターなんかでもよく演奏されます。でもこの曲を演奏する方(特にアマチュアの方)は997の実態をご存じないまま、楽譜を買ってきて弾いている人が多いのではないでしょうか。

この曲についてわかっていることを以下に挙げてみましょう。

1.自筆譜は残されていない。

2.8つの2次資料(以下「原典」)が伝えられている。(当時のタブ編曲も含む。また全楽章そろっていないものも含む)(角倉一朗、バッハ作品総目録による)

3.大半の録音、現代における楽譜は、原典とは異なる。

(続く)