リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

レコーディング・イン・ドイツのあとスイスへ

2009年12月31日 12時28分12秒 | 音楽系
先日エンジニアのヤンから仮編集したものを送ってもらいました。今それを聴いて「精査」しているところです。送ってもらったもののうち、組曲第4番のサラバンドとブレⅠⅡをホームページにアップロードしますので、興味のあるかたは聴いてみてください。ただしこのテイクがリリースバージョンになるかどうかはわかりませんので、そこはご了解ください。

先月の29日に録音が終了したあと、30日はヴィンタートゥアに住む知り合いのペーターの家に急遽泊まることに決めまして、ヤンに車で送って行ってもらいました。もともと30日は予備の日として設定してあったのですが、特に必要がなくなりましたので、ペーターと連絡をとったわけです。

彼は以前名古屋に住んでいたことがありまして、その頃に知り合いになりました。もう30年以上前のことです。20年位前に家族で彼の家に押し掛けたことがありましたし、7年前にクールというところで落ち合ったこともありました。7年前に会ったときは、なんかサンタのおじさんみたいな感じになっていましたが、とてもお元気そうでした。



ヴィンタートゥアはナックの村から30キロくらいのところにあり、ヤンはチューリヒに行く用事があったんですが、少し遠回りをしてペーターの家まで送ってくれました。ナビが威力を発揮しましたね。(笑)

レコーディング・イン・ドイツ(10)

2009年12月21日 19時30分12秒 | 音楽系
今日は最終セッションで、バッハの組曲第4番BWV1010です。今までの曲の中では一番長いので大変かと思いきや、実際は意外とスムーズに録り終えました。リサイタルでたっぷり弾き込んだ曲でもあるし、レコーディングセッションにも慣れてきたこともあるんでしょう。今回のCDではリサイタルで弾いた曲は実は、このバッハの組曲第4番だけです。リサイタルの曲をそのままCDにすればいいのに、と思われるかもしれませんが、それでは芸がなさ過ぎます。(笑)販売戦略上もバッハを中心にしたほうがいいのでは、と考えまして、昨日録った組曲第1番とこの第4番、そしてヴァイスでは多分もっとも知られているんじゃないかと思われるニ短調ソナタを選びました。もっともこちらに来てこれらの曲をさらっていると、やっぱりリサイタルで弾いた曲ばかりにすれば楽だったかな、と思ったこともありましたが、すべて録音が完了した今ではやっぱりこの選曲は正解だったと思います。曲順は、組曲第1番、ニ短調ソナタ、組曲第4番にする予定です。



録音は今日で完了、あと編集は年内に終えることが出来るそうです。明日1曲だけ仮編集をしてくれるそうで、聴くのが楽しみです。編集を終えてからあとは、実際のCDの形にする必要がありますが、ヤンがこちらのレーベルをいくつかあたってくれるそうです。どっかのレーベルに拾ってもらえるといいんですが。中身には絶対に自信があります(なんちゃって)。

レコーディング・イン・ドイツ(9)

2009年12月19日 22時28分23秒 | 音楽系
セッション2日目、今日はバッハの組曲第1番BWV1007です。2日目ともなるとこちらも結構慣れてきまして、快調に進みました。朝は昨日よりも2時間くらい早く起きまして、7時前にはもうシャワーをしておりました。セッションの開始は昨日と同じ11時です。ホテルで音階練習をしてウォーミングアップ、そしてざっと組曲全体をさらってみました。プレリュードは昨日すでに録っていますので、今日はアルマンドからです。まさに朝に録音を開始するのにふさわしい曲です。

録音も順調に進んで、次にメヌエットをというときに、重大な問題が発生しました。ヤンがスタジオ内に何かノイズが聞こえるというのです。それはなんと蜂がブーンと飛ぶ音でした。実は3日前にスタジオ内に蜂が飛んでいるのを発見、でも多分2、3日で死ぬだろうと予測で特に気にしませんでした。実際昨日のセッションでは飛んでいませんでしたので、とっくに死んでしまったと思っていました。ドイツの田舎ならではのハプニングですが、事が録音ですから結構重大な問題です。スタジオの天井は3階建ての屋根と同じ高さですから、一匹の蜂といえども簡単に殺すことは不可能です。しばらく様子を見ていましたが、やがてどっかに止まったまま音がしなくなりました。メヌエット1、2とジグと進み組曲の録音が完了しまたが、もう蜂の飛ぶ音はしなくなっていました。ひょっとして、あれは蜂のラストフライトだったのかも。


実は翌日墜落現場を発見。やはりラストフライトだったです。(笑)

今日はセッションを5時過ぎに終わり、ヤンの家で夕食をご馳走になりました。地元のワインを飲みながら音楽談義で8時近くまで過ごしました。いよいよ明日は最終セッション、組曲第4番の録音です。

レコーディング・イン・ドイツ(8)

2009年12月18日 19時48分31秒 | 音楽系
27日
いよいよ録音セッションの第一日目です。まだ時差ぼけが少し残っていまして、夜中の1時過ぎに眼が覚めてしまいました。昨夜7時過ぎにレストランでワインを飲んで鱈腹食べた後、ベッドに横になったのがいけませんでした。もう少しふんばろうと思っていたのですが。その後うとうとしてまた何時間かねたみたいで、起きたのが8時前でした。昨日と全く同じ時間に起きたのか、窓から外を見ると、昨日と同じ老夫婦が犬と散歩に向かい、小学生が登校するところでした。これまた昨日と同じように(って別に縁起を担いで昨日と同じ時間で行動しているわけではありませんが)朝食を下のレストランで取り、20分程散歩して、その後音階練習をして指ならしをしました。そして約束の11時にヤンのスタジオに入りました。

本日はヴァイスのニ短調ソナタを録音する予定です。録音スタジオで録音するのは実は初めてで、本番とはまた異なった緊張感を味わいました。録音だから全然緊張しないだろうと思っていたのですが、そうはいかんもんですねぇ。本番だと、とにかく終わればそれまでですが、録音だと終わるのはかなり先なのでこれは思ったより大変そう、とちょっと弱気にもなりましたが、よくしたもんでそれなりに場慣れしてくるもんです。お昼過ぎには結構快調に進めていまして、ニ短調ソナタの録音は予定より早く終わりました。まだ時間もエネルギーもあるので、バッハの組曲第1番に進みました。5時過ぎに一旦休憩を入れて、5時30分くらいからレストランで食事をすることにしました。そして食事後再開して、7時半過ぎに組曲のプレリュードを録り終えて、本日のセッションを終了しました。



今日のセッションを終えて思ったのですが、録音ってエンジニアとの共同作業なんですね。てっきりプレイヤーが弾きまくり、エンジニアはそれを淡々と録音していくだけだと思っていました。実際には、もう一人の自分、つまり自分の演奏を聞く自分(客観的自分)を入れて3人という感じでして、いくつかのテイクを取って、ヤンと客観的自分がそのテイクを聴きながらいろいろ議論をして進めていきました。もちろん客観的自分は相当主観的自分をひいきはしていましたが。(笑)録音エンジニアは音のセンスはもちろんのこと演奏家と対等に音楽のことについて言えることが必要だと思いました。(ヤンはプロのギタリストでもあるので、当然音楽の事は対等に話ができます)その演奏家の力を生かした録音になるかどうかは、ひとえにエンジニアのセンスにかかっているわけで、そういう意味で彼を選んだのは正解だったと思います。

レコーディング・イン・ドイツ(7)

2009年12月17日 21時50分13秒 | 音楽系
26日
 11時からマイクのセッティングを行いました。どういうマイクをどの位置にセットするか、つまりどんな音にするかというのを決めます。本当は、明日(レコーディング・セッションの第1日目)にすることになっていたのですが、今日やったほうがいいだろうということで今日行いました。



 曲を弾いていくつかのマイク、いくつかのセッティングで録音してもらい、それを聴いてみるという作業を繰り返しました。マイクってわずか10センチ近づけるだけで結構音のキャラが変わるのにはびっくりしました。私としては、ダイレクトな感じよりも距離感とか広がり感があるほうが好きなので、結局無指向性のマイク2本をある程度距離を取って前上方からとってもらうことにしました。そのマイクのメーカー名は忘れましたが、一般的に無指向性マイクをある程度距離を取って録音すると、音がぼんやりしたものになりがちだそうなんですが、そのマイクは距離をとってもシャープに録音できる優れものだそうです。

 そのマイクを10センチ近づけてもらったわけですが、音に艶が出てなかなかいい感じでした。艶って英語とかドイツ語でなんといったらいいんでしょうね。ヤンには説明的に伝えましたが、日本語というのはなかなか微妙な語彙をもっているもんです。

第17回名古屋ギターコンクール

2009年12月14日 12時29分20秒 | 音楽系
昨日は、第17回名古屋ギターコンクール本選の審査員をさせていただきました。一昨年から審査員をさせて頂いていますので、今回で3回目になります。

このコンクールの前身といいますか、もうずいぶん昔なので「祖先」と言った方がいいかもしれませんが、ギター新人演奏会というのがありました。その第7回目に実は私は出たことがありました。まだ20代はじめの頃です。確かその年には初めてのリュートを手にしていまして、その3年後にはもうギターを弾かなくなり、名古屋のギター界からも離れてしまいましたが、まだ私のことを覚えていてくださって、こうして審査員として呼んでいただけるのは大変有り難いことです。

コンクールの入賞者は、1位が斉藤泰士君、2位小暮浩史君、3位吉住和倫君でした。審査の詳細はまだここでは公表すべきではないので控えますが、ここ2~3年の間、少なくとも本選に関しては着実にレベルが上がっているということを感じます。

少し前までは、音楽の基本的なことをほとんど勉強しないで、指だけ動いているという、以前から日本のギター界にありがちな演奏をする人が本選でもちらほら見られました。それが、一昨年くらいから減り始め、昨年は一人だけ(どなたかはいいません(笑))今年は、そういう人はゼロでした。

ゲスト審査員の福田進一さんが講評の中で、奇しくも同じようなことをおっしゃっていました。彼は世界のいくつかのコンクールに関わっておられるようですが、そのどれもここ2,3年著しいレベルアップを感じさせると、おっしゃっていました。名古屋のコンクールもそのウェーブの中にあるのでしょうね。

コンクールが終わってからは、本選に入った人たちや関係者の方たちと打ち上げです。実はこっちが楽しいので、審査員を引き受けているんですが(笑)、今年も若い有能な人たちや、懐かしい人たちと話がはずみあっという間に11時前になってしまいました。また来年も楽しみにしています。ん、どっちを?(笑)

レコーディング・イン・ドイツ(6)

2009年12月13日 11時44分10秒 | 音楽系
今日はやっと晴れました。雲ひとつない天気です。朝ホテルの前の道をまっすぐ歩いてみました。途中でゴルフコースがあり、さらに行くと、林業の許可がないと入ってはいけません、という表示がある柵まで来ました。多分この先歩いていくとスイスなんだろうなと思って引き返しましたが、あとでホテルの人に聞くとやっぱりそうでした。





ナックの村はドイツがちょうどスイスに突き出た半島のような形になっていて、どの方向に行ってもスイスに出てしまうという場所だそうです。ドイツの他の場所に車で行く場合も必ずスイスに一度入らないといけないそうで、事実上の飛び地みたいなところです。

朝食はヤンの家でいただきました。食事をしながら録音の簡単な打ち合わせを。昨日スタジオで演奏した際、どの位置で弾くのが一番気に入ったかとか、全体的な録音の好みなんかを伝えておきました。録音セッションはあさってからですが、明日11時からマイクのセッティングをしてくれるそうです。

バロック音楽の旅2009講座第3回

2009年12月12日 22時54分00秒 | 音楽系
今日はバロック音楽の旅2009講座の第3回目が行われました。今回は、女性のみのアンサンブル、ローゼ・ブロックフレーテ・コンソートのコンサートでした。

この講座で第3回目に当たるコンサートは、いつもはもう少し前に行われていましたが、今回は12月も中頃に近い時期に行ったこともあり、会場の教会は、クリスマスムードが一杯で、華やかなツリーやキリスト生誕の人形などが飾られていました。演奏する人数もいつもの3,4人ではなく、11人で皆さん女性ですので、クリスマス装飾と相まって、とても華やいだ雰囲気でコンサートが行われました。

曲目は、

シバの女王の入場(ヘンデル)
協奏曲ホ短調、作品15-6(ボアモルティエ)
協奏曲ホ短調、作品37(ボアモルティエ)
協奏曲「ごしきひわ」(ヴィヴァルディ)
ファンタジー(ホワイト)
ソナタニ短調 (ルイエ)
小フーガト短調(バッハ)
オルガン協奏曲作品4-5(ヘンデル)

という構成で、ソプラーノリコーダーからコントラバスリコーダーまでのさまざまな楽器を使い分けての演奏でした。



コンサートが終わって、教会の方から、この時期のバロック音楽のコンサートは本当にいいですので、ぜひ毎年催してください、という嬉しいお言葉いただきました。今年はたまたまこの日になっただけなんですが、来年からはぜひ、この時期に持ってきたいと考えています。

レコーディング・イン・ドイツ(5)

2009年12月10日 09時21分18秒 | 音楽系
3時過ぎにスタジオに行き、はじめて音を出してみました。新しく作ったというステージがあったので、そこでまず音出しです。



とてもきれいな響きですが、少し残響が遠い感じです。次にちょうどスタジオの真ん中で弾いてみました。位置的に少し下がったこともあるのでしょうか、こちらの響きの方が断然素晴らしいです。低音も高音もとてもいいバランスで本当に気持ちよく演奏できます。その場所で、7時近くまでずっと曲をさらっていました。



このスタジオの壁面はほとんどが木質で、一部にオリジナル家屋の古い壁をそのまま使っています。日本のホールでてっかてかの大理石壁面のホールがありますが、やはり木質系とか石でも多孔質のもの方が響きのバランスが良いようです。

練習を切り上げて、昼食を食べたレストランで夕食を取りました。昼過ぎまで降っていた雨もあがり、月明かりの夜道をとぼとぼと20分ちょっとかけてレストランへ。ナック村の外に出ますと、街灯がないので道は暗いですが、月明かりがそれなりにありますので助かります。レストランでは魚料理をいただきましたが、でっかい魚をどんと塩焼きにしただけのちょっとかわいげがない感じです。魚も料理法ももうちょっとこう何というんでしょうか、繊細さがほしいものです。ま、魚自体は白身がたっぷりあるおいしい魚で、骨まで食べてやろう思いましたが、ちょっと骨が硬く無理でした。もっとも頭と骨を含めて一匹丸ごと食べたら、レストランの人は驚くでしょうね。



支払いを済ませて、ふと時計を見ると、9時10過ぎになっています。私の時計は8時10分過ぎ。1時間ずれてます。そういや、今朝ヤンが30分くらい早く来たはずなのに、遅くなった言い訳をしていたのを思い出しました。そのときは早く来ているのに変だなと思いましたが、そのときから時計の時刻がずれていたわけです。ドイツでも対応できるカシオの電波時計なんですが、どこで間違えたんでしょう?

レコーディング・イン・ドイツ(4)

2009年12月09日 22時39分23秒 | 音楽系
7時過ぎにはさすがに眠くなり寝てしまいましたが、12時ちょっと過ぎには眼が覚めてしまいました。この時間はちょうど日本の朝ですので、まだ日本時間で体が動いているわけです。仕方がないのでそのまま起きずにうとうとしていましたら、いつのまにかまた寝てしまい、7時頃に眼がさめました。うむ、これは理想的なパターンですね。

シャワーをして、下のレストランに行ってみますと、ちゃんと朝食が用意されていました。持って行った佐々木譲の小説「ストックホルムの密使」を読みながらゆったりと朝食をとりました。昨夜は気がつきませんでしたが、レストランの壁にはしゃれた絵がかかっていたり、窓際には焼き物が置いてありました。値札もついていましたので、買うこともできるわけですね。そんなに高い値段ではなかったので、多分地元の若い作家が制作したものなんでしょう。こういうレストランなんかに発表の場があるのってさりげなくてなかなかいいものですね。



レストランで食事をしたあと部屋に戻り音階練習をしていると、外からヤンが呼ぶ声が。予定より少し早く来てくれました。初対面の挨拶もそこそこに早速70メートル離れた彼のスタジオに。



スタジオの概観は昔の古い田舎家ですが、中は立派な録音スタジオです。中でコーヒーをいただきながら、四方山話と簡単な録音の打ち合わせ。その後昼食を取ることが出来るレストランを紹介してもらい、一緒に車で出かけました。彼はその足でチューリヒにギターを教えに行くとのことで、帰りは歩きです。徒歩15分くらいのところです。スイスのチューリヒで教えると言っても、距離的には30キロちょっとで、ちょうど私がミューズにレッスンに行くのとほとんど同じです。彼のスタジオは彼が帰るまで自由に使ってもよいとのことで、鍵を預かりました。一般にヨーロッパの人は、平気で人に部屋の鍵を貸したり、冷蔵庫を自由に使ってもよいなんていいますが、こういうのってホントありがたいですね。ホテルも貸切状態だし。でも自分の家や冷蔵庫だったら、ちょっと抵抗感がありますが・・・