リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

第二波か?

2020年06月30日 10時37分16秒 | 日々のこと
東京では昨日58人の感染者が確認されたとのことですが、昨日は月曜日、いつもは数が減る曜日です。今日は大丈夫なのかとても気になります。近所でも昨日は名古屋市で一人感染者が出ています。感染経路は不明ですので、この一人の後ろには多くの感染者がいるはずで、当分はまだ公共交通機関を利用して名古屋に行く気にはならないです。

名古屋にはレッスンで行かなくてはならないのですが、以前から車中心で滅多に公共交通機関を利用しません。ですから実は私にとってはコロナ以前と同じわけですが、たまには近鉄電車に乗って出かけたいと思わなくもありません。

アメリカではニューヨークでは少し下火になってきたらしいですが、いままでそれほどひどくなかったところで感染が広がりつつあるようです。昨日のテレビで、公聴会のような場で女性が「マスクを強制するのは人権の問題よ!」なんてわめていましたが、日本でこのようなことをいう人はまずいません。日本人なら、マスクは人にうつさないようにする効果があるんだ、ということを受け入れてみなさんマスクをしていますが、件のアメリカ女性はパンツとマスクごっちゃにしていました。でもそうなるのは無理なからぬところもあるような気がします。

英語ではパンツもマスクも「wear」するものですが、日本語ではパンツは「はく」、マスクは「つける」「かける」?とはいわないか、「する」ですね。パンツを「する」とはいいません。日本人は日本語ができたときからこういうときの備えがあるのです。(笑)

1979年バーゼルに行く、補遺(3)最終回

2020年06月29日 16時43分56秒 | 音楽系
今村氏ははじめ佐藤氏のところ(デン・ハーグ)で勉強していましたが、76年か77年頃スイスのバーゼル(スコラ・カントルム)に移りました。私が先述しましたように76年に佐藤氏のところに居候させて頂いたときには、今村氏はまだデン・ハーグにいまして一晩中リュートのことについて語りあったものでした。もっともその時は夏でしたので、緯度の高いオランダではすぐに夜が明けますが。私が右指の爪を切って指頭奏法に切り替えたのはオランダから帰ってきたすぐあとのことでした。

今村氏は76年当時既に右手の爪を切っていました。師匠は爪弾き、生徒は指頭ということになります。すでに70年代後半には多くの人が指頭奏法だったと記憶しています。佐藤氏が爪を切ったのはグライフを入手した90年代の初めの頃のようです。90年頃に発売されたアルバムではまだ爪を使って(弦も合成樹脂、金属巻弦)演奏したいるようです。

現在も爪弾きの方も少数ですがいます。弦もそうですけど、爪が音楽になるわけではないので、要はどんな演奏をするかということに尽きると思います。

1979年、バーゼルに行く、補遺(2)

2020年06月28日 17時32分35秒 | 音楽系
ホプキンソン・スミス氏がいつ爪を切ったのかは尋ねませんでしたので知りません。後に留学して彼のもとで勉強するようになってからも指頭で弾くのが当たり前すぎていちいち訊くことはありませんでした。彼の師匠ドンボア氏は使っていたときもあったようです。

ヴァイスのファンタジア ハ短調(ナクソス)、バロック・リュート/オイゲン・ミュラー・ドンボア

この曲は日本では東芝から発売されていた「天使のメロディー<バロック音楽とその周辺>シリーズ バロックへのお誘い」(1968年※)というタイトルのアルバムに収められていました。このLPのバロック・リュートによるヴァイスは私が高校2年生のときに初めて聴きましたが実に衝撃的な演奏でした。



※普通LPジャケットには何年の発売というのは書いてないことが多いのですが、このLPは解説を書かれた方が執筆年を記入していたので発売年が分かりました。ちなみに佐藤豊彦氏がヨーロッパに留学したものこの年でした。

(ただこの2年くらいあとになって聴いたルネサンスリュートのアルバムでは爪を使っていない感じがしますし、さらにそのあとのバッハアルバムは爪を使っているみたいです)

当時ジュリアン・ブリーム氏が演奏する(ギター式)リュートの録音しか知りませんでしたし、ヴァイスのファンタジアに関してはギター編曲しか知りませんでした。何より、冒頭の2つ目の和音が、ギターでいうとレがレ♯になっている!ので驚きました。テンポの取り方も当時のギタリストの演奏とは全く異なっていました。

その頃までのリュートの演奏は、学者先生にしてはとても上手に弾いているというのはありましたが、楽器のプロフェッショナルが演奏しているというレベルのものは残念ながらブリーム氏のもの以外はありませんでした。(残念ながらブリーム氏が使っていた楽器はギター式リュートでしたが)そんな中ドンボワ氏は古楽器としてのリュート界のホープと目されていましたが、70年代の初め頃に左手を痛めて手術をしたらしいのですが、その結果が思わしくなく、リュートを演奏出来なくなってしまいました。

ただクラヴィコードは弾けるみたいで、実は79年にはドンボア氏のバロック・リュートレッスンも受けたのですが、クラヴィコードで音を出しながら指導していただきました。



氏は手を痛めた頃に録音したバッハのアルバムを出し、それ以降は演奏活動はしていません。そしてその後もスコラ・カントルムで指導を続けられ、退官後もバーゼルの郊外に住んでいました。そして2014年にお亡くなりになりました。

知恵袋

2020年06月27日 12時07分46秒 | 音楽系
知恵袋

なにげに知恵袋を見ていましたら、こんなのがありました。


とある「ABCの歌」の歌詞を探しています。
約20年前、中学校の英語の授業で歌った「ABCの歌」の歌詞をご存じの方いらっしゃいませんでしょうか。

歌詞は、

A for apple pie
B for bubble gum
C for ceiling light
..........

所々忘れているので、抜けている箇所を教えてください。


ほー、これってどっかで聞いたことがある歌詞ですねぇ。というか、この曲は私が三省堂教科書のために作った曲で、タイトルは「ABC CHANTS」といいます。

ABC CHANTS
カラオケを聴いてみて下さい。

知恵袋に質問があったのは約1年前ですが、20年以上も前の曲を覚えて下さっているなんて嬉しいですねぇ。それで早速返事を書こうかなとおもったんですが、回答が締め切られているので書くことができませんでした。ひょっとして当ブログをご覧になることもあるかも知れませんので、以下に歌詞を書いてみます。ただし曲は私の方に著作権がありますが歌詞は三省堂に著作権がありますので、質問の中で抜けていた所だけ書いておきます。


G for garden gate
K for kitchen knife
L for looking glass
M for music box
N for napkin ring
R for roller skates
S for Santa Claus
T for teddy bear
U for umpire
V for Valentine
W for winter sports
X for x-ray film
Y for yellow cab
Z for zigzag path

ご質問された方、このブログをご覧になられたらぜひ久しぶりにカラオケに合わせて歌ってみて下さい!

1979年、バーゼルに行く_補遺(1)

2020年06月26日 12時22分22秒 | 音楽系
ニュルンベルクのドイツ博物館にあるWidhalmの楽器です。ずっと後の2004年に同博物館を再訪しましたが、この楽器は展示されていませんでした。今はどうなんでしょう。






この楽器は弦長73.9cm(8コースまで)/100cm(9コース以降)です。この位弦長があれば、音量もありしっかりした音がなることでしょう。でも弾くのは大変そう。(私のフレンチ・テオルボがちょうど74cmですが、弾くのは楽ではないです)

ホプキンソン・スミス氏は若い頃ギターを弾いていたこともあり、さらに日本にも住んでいたことがあります。そのときは松田二郎(晃演)氏のレッスンを受けていたようです。松田氏の紹介で現代ギター誌にスミス氏が作曲したギター曲が掲載されました。


現代ギター1967年9月号より

後日(2003年頃)彼にこの曲のコピーを見せたらとても喜んでいました。「これは管楽器なんかのアンサンブルでもいいんだ」なんて言っていました。ちなみに私も1972年頃松田先生のレッスンを受けていたことがあり、これでいくとスミス氏は兄弟弟子でもあり師匠でもあります。プホールはターレガの弟子でしたから、私はターレガのひ孫でしということになります。まぁ、ターレガのひ孫弟子は世界に一杯いることになりますが。

3月28日がピーク!?

2020年06月25日 11時33分29秒 | 日々のこと
最近東京の新型コロナウィルス感染が、実は3月28日がピークだったという説を聞きました。この日と言えば・・・そうです、オーボエの大山さんと東京の近江楽堂でコンサートをするはずの日でした。

コンサートを延期すると決定しましたが、まだホテルは予約してあったままでした。ホテル予約は格安プランで、「キャンセルなし承知」でしたので、無駄に捨てるよりはとりあえず行くだけ行って家内と都内をブラブラして息子と食事でもしようかと考えていました。

さらに、それだけではつまらないので、日光まで足を伸ばして日帰り旅行でもしようかなんて呑気なことも考えていました。グーグルマップで調べて見ましたら、都内からは2時間ちょっとでいけるみたいです。さすがに日光だったら人出も少ないだろうというのもありました。

でも結局東京行きは断念しました。一番大きな理由は、キャンセルできないということになっていたホテル予約が、キャンセルできるようになったからです。ウィルスの蔓延を踏まえての措置だったようです。今考えるとこの日がピークだったらという説もありますので、行かなくてよかったと思います。

実はこの次の日、コンサートの翌日は箱根の温泉に立ち寄りいい湯とうまいものを食べようという欲張った予定もしていました。こちらは箱根だし宿もどうせ予約がキャンセル続出で(予約サイトで調べましたら空き室が増えていました)大丈夫だろうと行くつもりでした。

ところが・・・神の御采配によるものなのか、箱根地方は想定外の雪です。何も3月の末に雪が降らなくてもいいのに。例年ならスノータイヤを装着しているのでこの時期の雪なら大丈夫ですが、今年は暖冬でそもそもスノータイヤを装着していませんでした。去年なんか5月に入ってやっと夏タイヤに交換したくらいでした。ついていないのか、それとも偉大なる神の采配によるものなのかわかりませんが、まぁ感染もせず事故もなかったので(ウチでじっとしていたので当たり前ですが)これでよしとしましょう。

1979年、バーゼルに行く

2020年06月24日 22時46分25秒 | 音楽系
1979年の3月の終わり頃、私は約2週間バーゼルに滞在しました。当時バーゼル・スコラ・カントゥルムに留学中の今村氏をたよって今風に言えば「短期留学」をしたのです。

当時はやっとソ連の上空を経由してヨーロッパに行けるようになったばかりでした。76年に渡欧したときは、アンカレッジュ経由で北極の上を飛んでいったのですが、余りに早く到着にしたので大いに驚いたものでした。ただし、モスクワに一回着陸しなくてはいけない決まり?があったようです。給油のためかも知れませんが。

前年に開港したばかりの成田空港からモスクワを経てパリにひとっ飛び、パリで今村氏と落ちあいそのまま夜行列車でバーゼルまで行きました。

バーゼルに滞在中はスコラの授業にニセ学生として何回か「出席」させていただきました。授業中なぜか当てられてしまい、それらしいことを答えたこともありました。なんかおおらかな時代だったんですね。

今村氏はスコラでホプキンソン・スミス氏に師事していました。連絡先を教えてもらい早速レッスンのアポを取りました。スミス氏がバーゼルのどこに住んでいたかはもうすっかり忘れてしまいましたが、当時今村氏が済んでいたライメン通りから歩いて行ける程の距離だったことは覚えています。

レッスンではダウランドの「ファンシー」を見てもらいました。意外にも氏はこの曲を知らないと言っていました。(21世紀に入ってリリースしたアルバムには録音されていますが)レッスンが終わって、いろいろ話をしていましたら、Widhalmのドイツテオルボを使った新しいLPがあるというので2,3枚譲って頂きました。使用したWidhalmの楽器について詳しく聞いたのは、実はこのときではなく、ずっとあとに私が留学していたころの話。このときはそもそもまだレコードも聴いてはいないし、彼もガット弦のことやら楽器のことは何も語りませんでした。



譲って頂いたLPレコードです。



久しぶりにレコードプレーヤーで聴いてみました。

レッスンが終わって記念写真を撮っていいかと尋ねたら、「日本人はすぐ写真をとりたがるんだよねぇ。ブツブツ」といって写ってくれました。(笑)



この「短期留学中」には、ニュルンベルクの博物館にも行ってきました。そこでかの録音に使ったWidhalmの楽器を見てきました。この楽器でホプキンソン・スミス氏が録音をした旨の案内も出ていました。見た感じでは今にもすぐ弾けそうな、綺麗でどこも傷んでいない楽器に見えたのですが、実際はあちこちに狂いが出ていて演奏が大変だったという話は21世紀になって初めて彼の口から聞きました。

ガット弦に思う(17最終回)

2020年06月23日 14時33分50秒 | 音楽系
さて最後に私なりのバロック・リュート弦のソリューションを2つ提言してみましょう。(昨年の秋頃にも弦ソリューションについて書きましたが、ややこしかったので今回はぐっとしぼりました)

{ガット弦の音を大切にしたいソリューション}
1コースから5コース→プレーンガット弦
6コース以下→プレーンガット弦とローデドナイルガット弦(合成樹脂弦)の組み合わせ
【解説】
1,2コースの張力はやや高め(3.5kgくらい)4~6コースは3kg台前半、7コース以下はバス弦が3kg未満、オクターブ弦はその8~9割の張力。このソリューションだとバスが現在入手可能なバス用ガット弦より少しクリアになり、湿度による変化は受けないので調弦が楽です。経費もバス弦に関しては1/10くらいで済みます。でもガット弦の良さは充分に発揮されます。もちろん高音弦に関してはマメに弦を交換する必要はあります。

{合成樹脂弦でとにかく前に出る明るい音を出したいソリューション」
1、2コース→ナイロン弦
3コース→ナイルガット弦
4、5コースと6コース以下のオクターブ弦→フロロカーボン弦(KF)
6コース以下のバス弦→フロロカーボン弦(KF)

【解説】
張力はガット弦ソリューションと大体同じで行きます。合成樹脂弦は湿度には強いですが、温度による変化が実はガット弦より大きいという問題点があります。このソリューションはそういった問題点を最小限にした素材の組み合わせです。高音はキンキンしませんし、バスはくっきり音が出ます。でもバス音の減衰時間は中高音とほぼ同じくらいなのでとてもバランスがいいです。

ということでこの連載は終わりますが、上記の弦はフロロカーボン弦を除いて全て輸入品です。新型コロナウィルス禍で物流が滞っているので現時点では入手が難しくなっています。フロロカーボン弦というか釣り糸ですが、これは国産です。ただ直径1ミリ以上であっても、サバレス社のKF弦のように研磨はされていません。(釣り糸として売られているので当然ですが)来年の後半くらいにはぼちぼち今までの生活に戻れそうですので、それまでは、ポール・バイヤー氏の張力計算アプリで張力計算をして「そのとき」に備えましょう!

ガット弦に思う(16)

2020年06月22日 10時09分31秒 | 音楽系
色んなプロ奏者がいて、色んな弦のソリューションがあります。ひとつのソリューションにこだわらないで、広く目を見開いてみることが大事だと思います。あのエラい方がおっしゃったのだから絶対に間違いはない!のはその通りかもしれませんが、世の中そんなに単純なものではないかも知れません。ガット弦もいろいろあるし合成樹脂弦もいろいろあります。

リュートの弦に関してはまだ「開発途上」です。リュート自体は古い楽器ですが、現代の古楽器リュートは70年代に再現が始まったばかりの新しい楽器でもあります。黎明期も含めて50年、ある程度の成果を見てからだと40年未満の歴史しかありません。リュート用の弦についてはさらに短いのです。

ギターやヴァイオリンのモダン楽器としての歴史は古楽器としてのリュートのそれよりずっと長いのです。「開発途上」のリュートが少々面倒くさいのも致し方ないのかも知れません。でも遠からず他のモダン楽器なみになっていくでしょう。これでも昔よりは随分楽になりましたから。

ガット弦に思う(15)

2020年06月21日 15時34分38秒 | 音楽系
ただ最近の若手奏者も含めて、合成樹脂弦を使っている演奏家の方がずっと多いというのは事実です。そういった状況を踏まえて、こうおっしゃる方がいました。

プロは毎回条件シビアな会場で演奏することもあるので、合成樹脂弦を使うけど、われわれアマチュアはそうではないのでガットを使うんだ。

もちろんこうおっしゃってガット弦を使うのは自由ですが、一言二言もの申させて頂きましょう。

まずプロでガット弦に関心がない人は多分いないということ。でも環境的な問題が少ないはずの録音でも実はガット弦を使う人はそう多くはないのです。これはプロにとってもガット弦を扱うのが大変だということ、それと6コース以下の現在入手可能なバス用ガット弦の性能に満足していないのではないかと推測します。

もちろん紹介させていただいたようなオールガット弦というのを貫いている奏者もいますが、これにはある程度の条件が必要です。それは楽器のクオリティ、そして楽器の形状です。楽器のクオリティのことを持ち出すのはなかなか厳しいものがありますが、形状的にはフランドル式リュートとかドイツテオルボのようにバス弦の弦長を長くとっている楽器は有利です。