リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

謹賀新年

2013年12月31日 22時20分06秒 | 日々のこと
新年あけましておめでとうございます。まだアメリカにおります。こちらは31日の早朝ですが。

今年もこのブログを細々と続けていくつもりです。読んでくださっている皆様には本当に感謝いたします。前身の「バーゼルの風」時代を入れると今年で10年を迎えます。10年と言えば一昔、そんな長期間の割には大して変わり映えしない当ブログですが、引き続きよろしくお願い致します。

今日(こちらの31日)のお昼の飛行機で日本に帰る予定です。今年は旧年から新年に変わる瞬間を通過することなく新年を迎えることになります。こちらの時間で新年を迎える前に出発して、日付変更線で日が変わるときはすでに新年を迎えております。プチ・タイム・ワープですね。(笑)1日の夕方に到着しますが、すっかりお正月ムードの日本が楽しみです。


ホ短調組曲 BWV996

2013年12月28日 21時31分12秒 | 音楽系
ギターでは結構よく演奏される曲です。でもギター編曲の大半は、大胆に和音を減らしたり、バッサリと必要な声部や装飾をカットしています。まぁそこまで割り切ればコトは簡単なんですが。

リュートの場合はもちろんバロック・リュートを使います。ルネサンス・リュートとかアーチ・リュートは論外。テオルボでもあかんでしょう。

この曲はまず間違いなくラウテン・ヴェルク(チェンバロにガット弦を張ってリュートっぽい音が鳴るようにした楽器)のためでしょう。バロック・リュートの標準のニ短調調弦でこの曲を弾くととてもじゃないですけど弾けたもんではありません。大体このホ短調という調性がバロック・リュートがとても苦手とする調です。演奏技術的な問題から、バロック・リュートはシャープ3つの嬰ヘ短調の曲は結構あるのに、シャープ2つ、1つのロ短調、ホ短調の曲はとても少ないのです。

そこで現代のリュート奏者たちは昔からこの曲をいろんな調に移して格闘してきました。ホプキンソン・スミスはへ短調、今村泰典はト短調、ニ短調という人もいましたねぇ。中には強引にホ短調で録音した人もいました。

何調にしてもこの曲はとても難しく、プレイアビリティという点で行けば危なくて本番ではできるような代物ではないです。某有名リュート奏者は、「録音はしたけどライブではほとんどやったことがない」とおっしゃっています。

そんな中、ヤコブ・リンドべルイは彼のCDのライナーノートで、ロイスナーが使ったスコルダトゥーラに言及していて、スコルダトゥーラを使って、ホ短調で録音したようです。どんなスコルダトゥーラかというと、1コースを半音下げてミ、2コースを全音下げてドにするだけです。(もちろんバス弦はホ短調に合わせます)

ホ短調組曲の最低音はCで11コースのバロックリュートの最低音と同じであることも注目すべきことです。もっともこれはフレンチのチェンバロの最低音でもありますが・・・音域的には11コースの楽器にとてもうまい具合に当てはまっています。ですから移調するとしんどいところがいっぱい出てきます。ホ短調が一番いいところを使っているわけです。でも弾きにくい。それがこのスコルダトゥーラで解決されるのか。答えは、たぶんイエス!リンドべルイがやってるのでもうとっくに答えは出てるんですけどね。

自分で「追試験」をやってみた結果では、とりあえずプレリュードだけですが、1か所だけ11コースの楽器では不可能なところがありました。13小節目冒頭のバスが、音域的には11コース内の音ですが、レ♯の開放弦がないと弾けません。でもこれは13コースの楽器を使えば簡単に解決できます。つまり12か13コースをレ♯にしておけばいいのです。この曲はドより下の音は出てきませんから。

ジグの冒頭の難所(何調で弾いてもアクロバットみたいなことをしないと弾けないところです)もこの調弦で実用的に弾けるのはすでに確認しました。もちろん簡単な曲ではないのでそれ相応の技術は必要ですが、ライブでの演奏も行けそう!?






極寒散歩

2013年12月28日 21時06分09秒 | 日々のこと
今日の散歩は少し暖かかったです。暖かいといってもマイナス2度くらいですが。(笑)昨日散歩した時はマイナス14度の世界でしたからかなりマシです。マイナス14度だと道が完全に凍てついて白っぽくなっていました。もちろんどれだけ太陽が当たっても雪は全く融けません。今日は道が少し黒っぽいです。



昨年もこちらに来ていましたが、昨年は例年の寒さだったらしく、雪にはおおわれていませんでした。庭にはカモが毎朝来ていましたが、今年は雪に覆われているせいか、カモは全然来ません。

まぁあまり外に出ないで家の中で孫の守りをしているのが正しいようで。



孫が寝ている間を見計らって、リュートを練習したり楽譜を書いています。去年も同じようなことをしていましたが、雑用がとても少ないというかほとんどないので結構はかどります。今年はバッハのホ短調組曲BWV996(ギターの世界ではいまだにリュート組曲1番と言っているアレです)をスコルダトゥーラ(変調弦)でタブにしています。

スコルダトゥーラといっても独自にこねくり回したのではなく、歴史的に使用例があるものを使うべきというのが私の考えです。実はいいのがあります。五線譜でさっと弾いてみた感じでは、この曲の難所はなんとか弾けます。(後半部は明日に続く)

NSX

2013年12月24日 19時17分43秒 | 日々のこと
娘の婿さんは飛行機の専門家です。自動車も大好きで、ホンダの大ファン。家の納屋には「整備工場」がありまして、そこでNSXというホンダが1990年代初め頃に発売したスポーツカーをレストアしています。(NSXの詳細についてはこちらをどうぞ。→NSX

画面右方奥が納屋です。母屋からえらく離れています。(笑)



早速納屋を覗くと・・・




なんでも初期型を購入して、こつこつとレストアしているそうで、ほぼレストアは完了したそうです。5月に日本に来た時も鈴鹿にNSXの専門店があるということでその店まで連れていったこともあります。

エンジンを始動してもらいましたが、さすがにいいサウンドです。日本にもあると思いますが、アメリカにもNSXの愛好会があるそうで、ずらっと並んだNSXの写真を見せてもらいましたが壮観ですね。

納屋にはこんなのもありました。ホンダのCB350FOURというオートバイです。これも自分でレストアしたものです。



今は寒いのでアレですけど、暖かい季節になったら乗せてくれるそうです。



アメリカです

2013年12月23日 19時15分46秒 | 日々のこと
アメリカに来ています。まぁ、孫の守ということころです。プライベートコンサートをするかも知れないので、一応リュートは持って行きました。



利用した航空会社はアメリカン航空ですが、最近はあまり言わなくても楽器をキャビンの中に入れてくれます。航空機はボーイング700-20で、両端と小型のラゲッジスペース以外は、弦長70cmくらいのバロック・リュートまでならラゲッジスペースに入れることができます。でも満席の場合は、下手をすると入れるスペースがなくなりますので、チェックインの際にできるだけ優先して搭乗させてもらえるよう頼むと対応してくれます。その際、例のユナイテッド航空の事件を話題にするととても効果的だと思います。(笑)(You tube に United Breaks Guitars というのが出ています)

お正月には帰ってきますが、年末に出かけるのは、年末の諸事をすべて10日以上早く進行させなくていけないので結構大変です。年末の諸事といってもそんなに大げさなものではなく、実際は大掃除と年賀状くらいなんですが、それがなかなか・・・

大掃除は最近ずっとサボっていましたので、今年は何日かにわけて細かいところをきれいにしました。換気扇もピカピカに磨くぞと思いましたが、こちらはあまりに汚れがひどいので、思い切って新品に替えました。

年賀状はここ20数年間ずっと家族をテーマにしたイラストを描いていますので、もちろん今年もその路線で。何かの調査で、年賀状にプライベートな写真(たとえばペットとか恋人とか)を載せると結構嫌われるなんて書いてありまして、「えー、そうやったんか」と思いましたが、もう20数年も出しているのであとの祭り。でも終わりまで読んでみると、家族写真はそうではない、とありましたので、ひと安心。で、今年はアナログ手書き路線で、クレヨンで娘家族を含めて6人分描きました。

手書きで色を着けたのは今回が初めてでして、スキャンしてコンピュータに取り込んでみると、色の線がつぶれてオリジナルの線が出てこなくなるので苦慮いたしました。まぁ、そんな大げさなことを言うほどのレベルではないんですが、ちょっといろいろ加工してなんとか完成にこぎつけました。



そんなんやらかんやらで、バタバタして日本を飛び立ち、シカゴ郊外の娘宅でこのブログを書いています。やはりこちらは相当寒いですが、それでも普段よりは暖かいそうです。でも明日から寒波襲来らしくマイナス20度くらいになるようです。もうじっと家の中にいるよりほかはなさそうです。

英検準一級

2013年12月13日 19時46分49秒 | 日々のこと
文部科学省は、全国の公立中学・高校の英語教員のうち「英検準1級レベル以上」の英語力を持つ教員の割合を、初めて都道府県別に公表する方針を固めた。...

というニュースを見たんですが、英語教員のレベルアップは結構なことですねぇ。英検の準1級は「英語圏での社会生活を不自由なく送れる」レベルということですので、そのくらいの先生に教えてもらっていれば、生徒の英語力は十分つくと思います。

私の知っている範囲で言いますと、残念ながら10年前まで(それ以降は知りません)の英語教員の英語運用力はお世辞にも高いとは思えませんでした。日本の公立学校の英語教育については何度も方向を変えたりしていますが、そんな必要は全くなく、英語教員のレベルさえ上がれば全てが解決されると思っています。

小学校の早期英語教育?はい、そんなもの不要です。小さいときは国語をしっかりとやりましょう。会話重視の授業?文法をしっかりやりましょう。そんな口先だけでぺらぺらしゃべる練習したって、話が続くのはせいぜい10秒です。でもそういったことを英語運用力が十分ある先生のもとで学びましょう。ここが肝心なんです。履修年齢は今の中学校3年間でいいと思いますが、できれば2年繰り下げて小学校5年生から初めて中学校1年生で修了、あとは選択とする、というところが公教育としての英語教育として最も効率的なのではないでしょうか!

なんて、当事者じゃなくなって10年もすると無責任に思い切ったことを言えるものですねぇ。(笑)でも準1級を通った先生の割合を都道府県別に公表するらしいですが、また始まりましたねぇ。こういう事業は粛々とやるもんです。どこそこの県は割合が一番高いだの低いだのという話になるにきまってるではありませんか。ホントに文科省というのはロクなことを考えません。

でもまぁ、こういっておいたあとで肩を持つわけではありませんが、こと英語教育に関しては専門外の方からの雑音が一杯入ってくるという特質があるようで(音楽教育に関して門外漢から雑音が入ることはあまりないでしょう)文科省としては公表するということにせざるを得なくなったというのが実際のところじゃないかと想像致します。

日本人の英語力アップのために、教員の研修費用を出し、給与も上げつつ、はよ準1級くらいは取りましょうと励ます、という事業を15年くらい前からやっていれば(15年前というのはいわゆる「ゆとり学習指導要領」が告示された年です)制度なんか何もいじらずとも相当レベルはあがっていたはずです。

基準変更?

2013年12月12日 13時25分44秒 | 日々のこと
有り難いもので、CD第1集が出てもう2年近く経ちますが、まだちょくちょく注文を受けることがあります。この間も注文頂いたので早速いつものようにプチプチ内装付きの袋に入れて、黒い動物がトレードマークの宅配業者に持っていきました。

この業者さんは厚さ1センチまでのものでA4サイズまでのものであれば80円で送れます。2センチまでだと160円です。今まで注文頂いた方はほとんど全てこの業者を利用しています。お店に到着して「お願いしまーす」。ポケットから100円玉を探していると・・・

「160円です」
「あれ?80円じゃないですか?」
「このすきまに入らないものは、80円ではありません」

と言って、1センチのスリットがある専用の計測器で入らないことをアピール。

「えー、ちょっとそれ貸してみて・・・ほれ、ちゃんと入りますよ」

まぁちょっとカツカツですが、プチプチが少しへこんでくれるおかげで、スリットは一応通ります。

「いえ、すんなりと入らないとだめなんです」

「でもいままで何十通ってこれと同じものをここで送っていて、皆80円でしたよ」

ちょっと声高に言ったせいもあって、他のお客さんの視線が一斉にこちらに。なんか自分がうっとーしークレーマーに見られているみたいです。結局「他の係にも基準を守るよう伝えておきます。今回だけは特別に80円にさせて頂きます」なんて言われて80円でしたが、何かうっとーしー客としてあしらわれているようでちょっと不愉快でした。でも今まで全く同じものを全て80円で送ってもらったという事実があるんですから、「昔はかつかつでもよかったんですが、最近は基準が厳しくなりましたんですよ」なんておっしゃっていただいて「あ、そーですか」という感じで行きたかったんですけどねぇ。

CDを送る送料が件の業者で160円だと、日本郵便のゆうメールで180円ですから、件の業者の競争力はほとんどなくなります。日本郵便のほうより確実に早く着くし、郵便局の方がウチから近いし(笑)。20円差は微妙ですね。




リュート音楽のひととき12

2013年12月08日 15時39分13秒 | 音楽系
リュート音楽のひととき第12回が終了しました。このコンサートシリーズはいわば「趣味」で細々とやっているコンサートで、小さな会場で少人数でリュートの魅力をたっぷりと楽しんでいただくというのをコンセプトにしています。バーゼルから帰国して始めまして今回で12回目になります。



今回は9月に入手しました、スティーブン・マーフィー作の新しい楽器をフィーチャリングしたコンサートです。この楽器はコンサートで使うのは4回目になりますが、回を追うごとに音が出るようになってくるのを実感します。特に会場のミューズサロンで演奏するのが10月中頃以来今回で2度目ですが、その前回と比べるとはるかに音が大きく前に出ているのがよくわかりました。来ていただいたお客様に10月のときも来ていただいた方もいらっしゃるので、そのことを実感されたのではないでしょうか。

この楽器は現在ボストンに博物館にある、アンドレアス・ベールのレプリカです。もう少し正確に言うと、ボストンにある楽器は当時のある時期に13コースに改装された楽器でして、今回作ってもらった楽器はその改装される前の姿である11コースの楽器です。弦長がバロック・リュートとしては短い65cmですがとてもよく鳴る楽器です。オリジナルはリブに象牙が使われていますが、さすがにそこまで踏襲するのは難しいので、多少なりともオリジナルに近づくために少し硬めの素材を使ってもらいました。11コースでここまでよく鳴る楽器ですから、こうなってくると改装後の13コース版も欲しくなってきましたねぇ。でも先立つものが・・・

アンコールにはビットナーの作品を演奏しましたが、次回はこのビットナー特集を考えています。次回はまだ未定ですが多分5月頃になるかなと思います。


バロック音楽の旅7第4回

2013年12月02日 22時47分29秒 | 音楽系
バロック音楽の旅7第4回講座が終わりました。今回はソプラノの増野友香さんと私のルネサンス・リュートで、「5人のジョン」と題して、イギリスのリュートソングを演奏しました。

5人のジョンとは、ダウランド、メイナード、ジョンソン、レノン、ウィルソンの5人です。一人特別参加でジョン・ジョンソンの息子のロバート・ジョンソンも入りました。(笑)



メイナードはほとんど演奏されていないし、リュート関係者の中でも知名度が低いのではないでしょうか。彼は1611年に「世界の12不思議」と題した作品集を出版しました。この作品はいろんな職業、あるいは立場の人12人が自分のことを語るという趣向になっています。でも単なる職業紹介とか苦労話ではなく、皮肉やユーモアたっぷりの語り口がとてもおもしろい作品です。この中から二人、「廷臣」と「既婚男性」の2曲を演奏致しました。いずれ機会があった12人全部紹介したいところです。

さてレノンというのはもちろんジョン・レノンのことです。今までも何曲かビートルズ作品をリュートソングとして編曲してきましたが、今回はヘルプとアクロス・ザ・ユニヴァースを編曲してみました。ビートルズ作品は多くの曲がレノン・マッカートニー作曲になっていますが、この2曲は多分ジョン・レノンの作でしょう。

このバロック音楽の旅7シリーズもいよいよあと1回を残すのみのなりました。次回第5回は来年2月9日(日)です。バロック/チェロの橋弘治さんによる、「バッハ、無伴奏チェロ組曲を聴く」シリーズの最終回です。4年かけて無伴奏チェロ組曲全曲を演奏してきましたが、今回でいよいよ最後になります。この回だけ聴きたいという方も歓迎致しますので、興味のある方はぜひお越しください。コンサートの詳細はホームページのコンサートガイドをご覧ください。

そして来年度のバロック音楽の旅8も始まる予定です。近いうちに同じくコンサートガイドで発表致しますので、是非ご覧ください。