リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

BlackBerry

2021年02月28日 12時56分36秒 | 日々のこと
ブラックベリーとググってみますと、バラ科キイチゴ属の実がなる植物のことが一杯出てきます。本当はそれを探したいのではないので、「ブラックベリー スマホ」としますとお目当ての品が出てきました。

最初からBlackBerryで検索すればよかったのですが、物理キーボードがついているスマホBlackBerryが5G対応で復活するらしいです。BlackBerryと言えば、iPhoneが出るはるか前にPDA(Personal Data Asistant)として発売されてとても人気だった機種で、これが世の中のスタンダードになるかと思っていましたら、iPhoneがあっという間に広まってしまい、BlackBerryは昨年の夏頃にもう終わり宣言をしたばかりでした。

20世紀の終わり頃私はSony のCLIEを愛用していまして、電話機能こそついていませんが、物理キーボードもついていてスケジュール管理、住所録その他に活用していました。それまで予定帳はシステム手帳に手書きでしたが、それ以降は手書きを終了して今に至っています。バーゼルで勉強してた頃もCLIEを愛用していました。電話番号を聞くときなんか、スタイラスペンを取り出して、ここに書けと言ってCLIEの画面を差し出したものでした。

その後iPhoneに切り替えたのですが、iPhoneで一番困るのは物理キーボードがないことです。インターフェイスは画面に出てくるカナの専用キーボードをフリックして入力するのですが、これはどう考えても合理的ではありません。いくつかの異なる動作をしなければなりませんし、点やマル、促音を入れるのもとてもイレギュラーで手間がかかります。私の息子なんかは結構小器用に入力するのですが、それでも一般的なQWERTYキーボードにはかないません。

小さいとは言え、物理キーボードを持ちAndroidを採用して5G対応で出てくるBlackBerry、今から楽しみです。現在使用しているiPhone 8は処理速度も遅いしぼちぼち替え時なので、検討してみたいです。でも乗り換えとなるとアプリに関することやらSonyのFeliCa搭載かどうかとかいろいろ検討事項があって面倒くさそうではあります。一番いいのはiPhoneに物理キーボードがつくことなんですけどね。

武満徹没後25年

2021年02月27日 15時07分24秒 | 音楽系
今年は武満徹没後25年にあたります。私は彼の死を運転中のラジオで知りました。その10カ月ほど前に名古屋のしらかわホールでオール武満プログラムのコンサートがありました。(岩城宏之指揮オーケストラ・アンサンブル金沢)そのときに武満本人も来ていまして、休憩中にロビーに出てきていたご本人に挨拶をしたことを覚えています。「こんにちは」って言っただけですが。(笑)

会場は8分くらいの入りでしたが、それでも相当スポンサーが無理してチケットを売ったのか、あまりこの手のコンサートには縁のない方も聴きに来ていたみたいで、私のすぐ後ろの人が曲の合間に「あんまりよーわからん音楽だがや」と名古屋弁丸出しで話をしているのが聞こえて来ました。

武満徹は著書を通じても一般的に知られた存在でした。中学校の音楽ではノヴェンバー・ステップスが鑑賞曲になっていた時期もありました。これは邦楽器と洋楽器との邂逅というのがテーマであったようで、決して彼の音楽に主眼をあてたものではありませんでしたが、それでも日本中の中学生が彼の音楽を聴いていたのはすばらしいことだと思います。

没後はときどきオケのプログラムに乗ることがあるくらいですが、それでも彼の同時代の作曲家と比べたらはるかに恵まれていると言えます。題名のない音楽会というテレビ番組であれだけ知られていた黛敏郎は、残念ながら今やほとんどの人が作品はいうまでもなく名前も知らない存在になっています。でもジャイアント馬場の入場行進のテーマは多くの人に知られていますが。詠み人知らずの行進曲ですね。

昨年はベートーベンイヤーでいくつかコンサートが企画されましたが、コロナ禍のせいで今一つ盛り上がりに欠けました。今年の武満関連のコンサートはオンラインで企画されているものもあるようです。コロナ禍の終息に光が見てて来た昨今ですが、これからの10カ月を楽しみにしたいです。また9年後の2030年は武満生誕100年ですが、こちらも今から注目しています。

ZOOMの一年

2021年02月26日 09時04分19秒 | 音楽系
昨年の今頃はすでにコロナが蔓延し始めていて、これからはレッスンはオンラインでやらなければいけないと思い始めていました。アプリは何を使ったらいいかいろいろ調べてみましたら、ZOOMというアプリが勢いがありましたのでそれを使うことに決めてサブスクしました。本日付けでZOOMから更新の案内が来ていました。早いものでもう1年経ったんですね。

録音機器などを販売している会社でZOOMというのがあるので、てっきりそこがが立ち上げたのだと思っていましたら違っていました。iPhone とアイホンみたいな関係でしょうかね。(笑)

今はすべてのレッスンはZOOMで行っていますが、とてもスムーズにいっています。はじめの頃は生徒さんの機材の選択にばらつきがあり少し問題がありましたが、今ではすっかり安定しています。最も設定や扱いが簡単なのはiPadでしょう。細かい設定が不要で、カメラは高性能、音も実用上全く問題ありません。iPhoneなどのスマホでも接続自体は簡単にできますが、画面が小さすぎるのでちょっと不向きです。

私自身はPCを使い、カメラはiVcamというアプリを経由してiPhoneのものを使っています。それからオーディオ・インタフェイスとUSB接続のコンデンサマイクを使い、アンプを通してそれなりのスピーカーで音を出しています。この方法は音も画面も一番きれいだと思いますが、結構手間と経費もかかります。

PCを使う場合は、どんなPCなのかとかカメラやマイクはどうするかなど、周辺機器の選択でのファクターが多く、ITのスキルが要求されます。iPadを使えばそんな面倒なことは不要で、ドーンとまるごとセットになっているのでお薦めです。

修理完了!

2021年02月25日 15時59分32秒 | 音楽系
昨年末にスウェーデンの製作家、Lars Jönssonのルネサンス・リュートが完成し送ってもらいましたが、裏面の塗装が輸送途中に高い温度のため表面がゆるくなりケース内装の柄がかなりの面積に渡りついてしまっていました。普通はこういうことが起ることはなく、たとえ塗装に影響があったとしてもせいぜい1cm四方くらいの面積にうっすらつくというレベルでした。これもコロナ禍で物流の滞ったためだったのではと思います。

その修理を1月の始め頃愛知県某所のギター製作家に依頼しましたが、先週完了したので取に行ってまいりました。長い時間をかけてじっくりと丁寧に仕事をしていただきました。



某ギター製作家さんにはいい仕事をしていただきました。この楽器は私のではなく生徒さんのものですが、きっと満足されることと思います。

セラックの塗装は完全に乾き切るまで2シーズン近く見ておいた方がいいと思います。ヨーロッパの製作家は着色したセラックを何層にも重ねて深い色合いを出す人が多いですが、この場合塗装が厚めになりますのでしばらくは注意が必要です。でも早い時期だとほぼ元通りに修復できることがわかりました。もちろん修復してもらう製作家のウデしだいですが。


贋作はなぜ魅力的なのか(14)

2021年02月24日 17時40分41秒 | 音楽系
さて贋作はなぜ魅力的なのかというこの連載のテーマに戻りますと、それはそのための戦略があるから、ということになると思います。始めから魅力的に作るから、いい?贋作が生まれるのです。

本物は少しとっつきにくいところもあるものです。音楽なら少し構造をシンプルにして、沢山砂糖をまぶして口当たりをよくしたメロディと、あと受けそうなストーリーがあればさらにいい贋作になります。大して意味はなくても大きな音で盛り上がる曲もとてもいいです。古文書であればいろいろ都合のいいことにつながったり今までわからなかった謎が解けた、というのもいいです。絵画なら人気のありそうな画題にしたり、さらには名うての贋作師にやらせたら本物レベルになります。

誰の作品であれ、魅力的であればそれはそれでいいのだと思います。ただいかに魅力的な作品であっても、それだけではなかなか世に知られることにはなりません。真作があっての贋作なのです。

しかしいままで大好きだった作品が贋作だったということがわかったら、とたんに嫌いになったというのも変な話です。それはビッグネームの作だからいいと思っていただけに過ぎないということかも知れません。真作であれ贋作であれ、余計なバイアスをかけず自分の感性でジカにその作品に接するようにしたいものです。

贋作はなぜ魅力的なのか(13)

2021年02月23日 16時35分22秒 | 音楽系
バッハによる短調の曲のエンディング、聴いてみました?オルガン曲以外にも平均律、イギリス組曲、フランス組曲、パルティータなどを順に聴いていき実感されるといいかなと思います。

BWV565のトッカータに関して贋作の「証拠」はまだ言及していませんので、ひとつあげておきましょう。それは冒頭から続くフレーズです。少し前のエントリーでリンクをつけましたYouTubeのビデオクリップをまたご覧ください。タララー鼻から牛乳ー(笑)、から始まって1分22秒くらいの間まで和音以外のラプソディックなフレーズが全てオクターブになっています。バッハならこういう書法を取らず、単音でもっと複雑な音型を使っているはずです。

BWV565のソースについては詳しいことは知りません。使われている用紙の研究で大体の時代はわかるかも知れませんが、それ以上の詳しいことはわからないのが実情なのでしょう。本作は構造がシンプルなことからよくバッハの若い頃の作品だろうと言われてきましたが、バッハは若い頃でもあのようなスタイルの曲は書いていません。さすがのバッハも若い頃はまだシンプルな作品しか書けなくて、そのうちだんだん複雑な曲を書けるようになったと思うのは凡才の思考で、天才はごく若いうちからすごい作品を書きます。息子のエマヌエルやモーツァルトの10代の作品なんか、全く老大家が書いたかのような「こなれ感」があります。ましてや天才中の天才、バッハが若い頃は緩んだスタイルの曲しか書けなかった、ということはあり得ません。

BWV565は、あくまでも私の直感ですが、時代的にはバッハの次の世代の人の作品ではないかと思います。時代はちょうどバロックの時代が終わりかけて、新しいスタイルがで始めたころ、生まれたのが1700年から10年代のドイツ語圏の人が1740年前後に書いた作品、というと大体納得の範囲に入ります。18世紀後半とかましてやロマン派の時代の誰かが書いたとなると少し無理があると思います。

ええかっこしい

2021年02月22日 10時48分36秒 | 日々のこと
第二次世界大戦中アメリカに在住の日系人は施設に強制収容させられましたが、今年はルーズベルト大統領がその施策関連の大統領令に署名してから79年を迎えるそうです。先ごろアメリカのバイデン大統領が第二次世界大戦中の日系人収容について謝罪を表明したそうです。大戦中の強制収容に関しては、レーガン政権(共和党)時代の1988年に謝罪と賠償が行われています。切りの悪い79年目に取って付けたような声明は、アメリカ民主党の政治家のお得意ポーズかも知れません。

トランプ大統領の前任者、民主党のオバマ大統領もリベラルイメージを全面的に出していましたが、よく見てみるとかなりエグいところもありました。例えば広島訪問。彼が広島を訪問したときには、いわゆる「核のフットボール」という核攻撃の許可を出せる各種道具が入った黒いブリーフケースを持った人も同行しています。

核のフットボール

これって何か悪い冗談ですよね。広島における彼のスピーチもざっと目を通して見ました。Seventy-one years ago, on a bright, cloudless morning, death fell from the sky and the world was changed.(71年前、晴れ渡った雲一つない朝、死が空から舞い降り世界が変わってしまった)あんたの口でそんな風にいうんかい!という感じですねぇ。いかに交戦中とは言え、十数万人にのぼる非戦闘員を殺戮した国の大統領が広島に来たわけですから、謝罪のひとつやふたつ言うかと思っていました。

私の地方のことばではこのおふたりみたいな人のことを「ええかっこしい」と言います。「ええかっこ」したらアメリカ国内外でリベラル度があがるのでしょうけど、日本は単に踏み台にされただけです。

トッパライ

2021年02月21日 12時37分34秒 | 音楽系
先日テレビのお笑い番組を見ていましたら、「トッパライ」ということばを使っている芸人がいました。これは業界用語でギャラを終演後すぐ現金で頂けることを言いますが、番組の字幕が「取っ払い」となっていました。

この漢字だとなんか取り払ってしまってギャラがもらえない感じもしてしまいますが、多分漢字は「特っ払い」でしょう。特別支払いの公演料ということでしょう。ギャラは公演の翌月末に振込みというのが一般的なようですので、即現金だと特別な支払い方法ということになります。ウチの近所に長島温泉というところがありますが、今でも歌謡ショーが毎日開催されています(現在はコロナ禍のためお休みです)長島温泉が出来たのが今から60年近く前で、当時の有名歌手のショーで人気を得ました。片田舎のできたばかりの温泉に有名歌手が来たのもギャラの支払いがトッパライだったからだと言われています。

トッパライは一般の人にはわかりにくいし、普通に使われることはないでしょうけど、いくつかの芸能関係の業界用語とか隠語で一般的に使われるようになったことばもあります。例えば「マジ」なんか今でも結構普通に使われているような感じがしますし、ひっくり返していう言い方(ワイハー、ギロッポン、ヒーコー、クリソツなど)をする人もときどきいます。でも今はマジでヒーコーという人はもういないようです。

ギャラの額を言う言い方にも隠語があって、音階のC,D,E,F,G,A,Hのドイツ語読みを数字の1,2,3に当てはめて、例えば3万円のギャラだと「エーマン」という風に言います。5万5千円だと「ゲーゲー」です。55万とか550万も「ゲーゲー」ですが、そのくらいもらう人はギャラの額をいちいち口に出すことはしません。口に出す人は55000円か5500円の人です。

この言い方は人前でギャラの金額がわからないように話すときに便利ですが、もうあまり使われていないようです。少し前に若い人に、この言い方を使ったら「よくわからない」と言われました。若い人でも知っていると思っていたので、クリビツです。

昔はギャラが3万円だと言われたら、実際には33333円のギャラで税を引いていただけるのが30000円ということが多かったですが、最近は税込みが多く、頂けるのは3000円の税を引いて、さらに復興税が引かれて実際に頂けるのは26937円になります。これだと隠語を使っていうのは言いにくいし、そもそも目減りしすぎて言うのもアホらしくなります。

佐地多美交遊サロンその4

2021年02月20日 21時08分39秒 | 音楽系
ソプラノの佐地多美さんが主宰する交遊サロンその4「穏やかな心の居場所を求めて」コンサートに出演しました。会場は名古屋市中区の電気文化会館ザ・コンサートホールです。この会場は定員400人弱、以前リサイタルなどで使わせてもらったホールです。このご時世なので、座席はひとつ置きです。



受付も透明カーテン、消毒液、そして検温とものものしいです。



今回のプログラムは、次の通りです。

パーセル/最も抜きんでて美しい島、ひとときの音楽
アルカデルト/どうして私の嘆きがわからないのですか(カラヴァッジョの絵画から)
自作/ファンタジア、プレリュード「夏のうた」、風のたよりに
広田龍太郎/叱られて
山田耕筰/この道、赤とんぼ
自作/紅殻とんぼ
中田喜直/ほしとたんぽぽ、みんなをすきに

日本歌曲のうち中田喜直作品以外の伴奏は私が作り替えたもので原曲とはかなり異なるモダンな響きがします。中田作品は原曲のピアノ伴奏をリュート用に編曲したものです。ソロ曲は昨年開催できなくなったコンサート用に作ったもので、今回やっと日の目を見ました。


会場外のモニターテレビを写したものです。

佐地さんのご厚意で拙作の紅殻とんぼもプログラムに入れてもらいました。もともとソロ曲として作った変奏曲ですが、テーマの部分を歌って頂きました。今回はお客さんが少なめでしたので会場がとてもよく響きました。でも会場の諸制限なしで沢山お客さんが入るコンサートができるように早くなりたいものです。



贋作はなぜ魅力的なのか(12)

2021年02月19日 10時45分15秒 | 音楽系
短和音のアーメン終止の例としては、1536年に出版されたハンス・ノイジードラーのリュート曲集にプレアンベルという曲があります。この曲のエンディングは短和音のアーメン終止です。タブで音が実際に示されていますので、それ以外の判断(ムジカ・フィクタ)の余地はありません。青で囲ってある和音から赤で囲った和音への進行です。


ドイツ式タブです。タブの最後の一番下の音は原本が間違っていますので、修正してあります。緑のラインがそうです。

五線譜に直しますと:


ほぼ同じ時代の曲、以前紹介しましたアルカデルトのマドリガル集第1巻第18曲目の Perche non date uoi donna crudele の終わりも同じく短和音のアーメン終止で曲を閉じます。



これら2曲は確かに短和音のアーメン終止で曲を閉じますが、そもそもこれらは後に現れる「短調」の曲ではなく、教会旋法の曲です。それに例に挙げたアルカデルトの曲は五線譜で書かれていますが、最後の和音をピカルディ三度により第3音を半音上げて長和音にしていた可能性もあります。ノイジードラーのタブ譜の場合はたまたま音を変化させなかった例であったのかも知れません。

いずれにせよ、「短調」が確立された時代の短調の曲においてアーメン終止で終える曲は知りませんし、バッハの作品でそのような曲は聴いたことがありません。一応念のためオルガン小曲集と平均律第1巻の短調の曲のエンディング(曲の終わりのカデンツ)をざっと聴いてみましたが、BWV565のフーガのエンディングと同じタイプのものはありません。