リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

バロック音楽の旅X第3回

2016年10月24日 13時10分41秒 | 音楽系
バロック音楽の旅X第3回が終了いたしました。今回は、太田光子さん率いるリコーダーカルテット「まるかる」をお呼び致しまして、スペイン、イタリア、ドイツ、フランスなどヨーロッパ各国の作品を演奏していただきました。



リコーダーの太田光子さんはもうすでに何度も本講座に出演いただいていますが、カルテットでの演奏は初めてです。さすがにファンの裾野が広いリコーダー+太田さんの人気も相俟って、今回の講座前に多くの方にお問合せをいただいておりました。

プログラムは次の通りです。

アントニオ・デ・カベソン(西1510-1566)
『イタリア風パヴァーヌ』によるディフェレンシアス
『騎士の歌』によるディフェレンシアス

作曲者不詳
川を越えておいで,私のいとしい人

フワン・バスケス(西c.1510-c.1560)
愛するミンゴよ,帰ってきて ~ 恋する人は

フワン・デル・エンシーナ(西1468-1529)
平安にある,私の自由 ~ 愛は運命と共に ~隠者になりたい

作曲者不詳
リウ リウ チウ

ジローラモ・フレスコバルディ(伊1583-1643)
ファンタジア ~ ベルガマスカ(音楽の花束より)

ジョヴァンニ・マリーア・トラバーチ(伊c.1575-1647)
第6旋法による半音階リチェルカータ

ジョヴァンニ・パオロ・チーマ(伊c.1570-fl.1622)
カンツォン第13番

―――――――――――休憩――――――――――――――

ヨハン・セバスチャン・バッハ(独1685-1750)
プレリュード ハ長調(プレリュードとフーガハ長調BWV545より)
小フーガ ト短調BWV578

カール・ディッタース・フォン・ディッタースドルフ(墺1739-1799)
夜想曲

ジョゼフ・ボダン・ド・ボワモルティエ(仏1689-1755)
協奏曲第3番 ヘ長調(作品15)


まるかるの4人による息の合ったアンサンブル、美しいハーモニーに出席者のみなさんは圧倒されたようで、終演後も楽器を見に来たり、出演者と記念写真をとるなどされていました。まるかるの皆さんには来年度以降また定期的に出演をしていただこうかと考えています。

Angels and Skyscapes

2016年10月15日 20時50分29秒 | 音楽系
名古屋在住の作曲家、ジェイソン・ロバート・テイラー氏の自作品によるコンサート「Angels and Skyoscapes(天使と空の景色)」に出演しました。会場は名古屋市千種区の5/Rです。このコンサートはいわば「作曲家の個展」で、彼が来日してから10数年にわたる期間に、名古屋地区の音楽家との交流で生まれた作品のコンサートです。

彼の交流の場は広く、その結果ギター、ヴァイオリン、チェロ、コントラバス、ピアノ、テナー、バロック・リュート、バロック・ヴァイオリンのための作品が今回演奏されました。曲想もとても変化に富んで豊かな「ジェイソン・ワールド」が広がっていました。楽器の種類が多いと言うことは演奏する人もとても多くて、楽屋が一杯になっていました。


終演後演奏したみなさんと

私も10年ちょっと前にバロック・リュートのための曲を依頼しました。その時に作って頂いた、「4階建ての物語」という、4つの小品からなる組曲を久しぶりに全曲演奏しました。今回の演奏のために、何カ所か私の意見を取り入れて改訂していただきました。それと、バロック・ヴァイオリンの廣田君と演奏するための曲も作曲を依頼して、今回初演いたしました。曲は「アナバシス」という曲で、リュートがとてもオリエンタルな響きを奏で、ヴァイオリンはそれをバックに鳥のように歌うとてもユニークな曲で、とても好評です。また機会があれば別のところでも演奏してみようかなと思っています。




途方もない!

2016年10月10日 13時14分29秒 | 日々のこと
子供の頃、鉄腕アトムの性能には驚いたものです。何しろ10万馬力ですから。当時は100馬力でもすごいと感じたものでしたから、10万馬力なんて想像もつかないレベルでした。でも最近のニュースでは、造船会社が10万馬力のディーゼルエンジンを開発したそうです。まさにアトム級ですが、実は「その程度」の出力は特に目新しいものではないようで、かの戦艦ヤマトは15万馬力の出力があったと言われています。でもアトムは身長135センチ、体重30キロらしいですから、巨大船舶の10万や15万馬力と比べたら、パワー・ウェイト・レシオはやはり途方もないものであったのは確かです。

40何年か前、リュートの楽譜を集めるためせっせと欧米の博物館や図書館に手紙を書き、マイクロフィルムコピーを購入していました。当時の感覚で言えば、途方もない距離にある所に手紙を書くのですから、なんか別世界というか異次元のところと繋がりを持っているかのようにも思えました。一番早く届くのは大英図書館で、手紙を出してから約1ヶ月たつと、インヴォイスと共にマイクロフィルムコピーが自宅に届きました。一番遅いのは東ドイツでしたが、当時のこの国は郵便物が途中で消えて無くなったようで、届いたのか届かなかったのかもわからないことも時々ありました。

今はインターネットという便利なものが普及したお陰で、隣のお家であろうと欧米にあるお家であろうと、すぐ返事がもらえるようになりました。送金もカードやペイパルで即完了です。もしタイムマシンで昔の私のところに行って、「あんた、40年後にはそんな面倒なことしなくても、コンピュータとインターネットで即楽譜なんて手に入るよ。だいたいマイクロフィルムコピーなんか買ってもそのあとまだ印刷して製本してと、途方もない手間がかかるんだろ?そんな時間があるんならもっと練習できるんやけどなぁ」

「えー、うそやろ?大体そんなに便利になったら人間堕落するで」なんて当時の私はウソぶくかも知れません。経費も時間も当時はかかりましたが、楽譜が手に入るという事実においては今も当時も同じです。すでに欧米の図書館は依頼されたらコピーを作って送るという体制が整っていましたし、輸送するための交通機関や郵便制度も確立されていました。当時の私としては途方もない経費と手間をかけて大量の楽譜を集めましたが、今も大事にそれらを活用しています。今はものによっては1分もかからずに昔の手稿本が手に入りますが、もしそうやって手に入れていたら結構だだくさに扱うことになるかも知れません。それにひょっとしたらいつでも手に入るということがわかっているので、かえって手に入れることはおろか閲覧することもしないかも知れません。

アインシュタイン?

2016年10月08日 23時00分12秒 | 日々のこと
私の楽器を作ってもらったスイス人製作家モーリス・オッティガーさんが名古屋に来ました。先月の30日に日本に着いたそうで、宮島、広島、大阪、奈良と回って今日は名古屋です。



一昨日奈良から電話がかかってきまして、8日昼頃に名古屋に来るというので、名古屋市内のホテルをこちらで予約しておきました。日本に着く前は14日頃に名古屋に来ると言っていたんですが、少し早くなったようです。そもそも厳密にスケジュールを組んで日本を回っているわけではないようです。

私の生徒さんも何人か彼の楽器を使っていますので、連絡をしましたところ、N君、Kさん、Hさんが都合がつくということでしたので、名古屋駅の金時計のところで落ちあいました。

生徒さん3人とモーリスおよび彼の奥さんと私の6人で、近くのお寿司屋さんでランチをとることに。生徒さんたちは彼に会うのは初めてで、最初は少し緊張気味でしたが、すぐ打ち解けて英語やフランス語で彼と話していました。

すっかり話こんでしまい、3時近くになりましたので、お昼のあとは、どこに行きたいかと聞いたら、お城とか美術館がいいとおっしゃる。そこで、現在の名古屋城は鉄筋コンクリート造りで、いわばイミテーションである、しかし例えばボストン美術館の国貞・国芳展は全て本物である、どちらをとるか?と尋ねましたら、まぁ予想通り本物を取りました。

生徒さんたちは用事があるとのことで、私が金山のボストン美術館に連れて行きました。徳川美術館もよかったんですが、ちょっと名古屋駅から行きにくいので、また今度ですね。

夕方にはホテルに戻りまして、それからはゆっくりするそうです。明日は一気に日光に行くとのことでした。

合成樹脂弦

2016年10月07日 20時42分24秒 | 音楽系
4日に替えた合成樹脂弦もかなり安定してきました。今日なんかは結構気温も下がり湿度も安定してきましたので、早まったか!(笑)とも思いましたが、ミューズでレッスンの合間に曲をさらっていてもほとんど狂わなかったので、やっぱり替えといてよかったと思いました。

私の合成樹脂弦セレクションはかなりガット弦と音の特性が近くなるようセレクトしています。バス弦にはマグロ釣りようの太いカーボンを使っていますが、ピストイ弦よりは音が明るくかつ音の減衰時間が少し長いです。もちろん巻き弦よりははるかに減衰時間は短いですが。

ミドルレンジも少し明るい感じです。ハイレンジはちょっと鋭い感じで、ガット弦だといい音がしていた、ブリッジよりの撥弦もちょっと注意が必要です。

音的にはガットの方が高音部は雑音が入りにくいし、バスは余計な倍音がなくクリアな音です。ただ高温多湿の条件下では、ピストイ弦がまったく安定せず、狂う音程幅も半音以上、時には全音近くまで短時間で狂います。3コース以上の細い弦はそんなに大幅には狂わないのですが。

ガット弦での運用は、晩秋以降春先までで、空調が完備したコンサートホールならなんとか行きそうです。高温多湿の時期や、寒い時期でも狭いところで雨天の場合(お客さんの衣服についた水分で部屋の湿度が上がる)とかレストランやカフェでの演奏で厨房が近くにあるいようなところだと厳しいでしょう。もっとも、たとえ条件が悪くても、短い曲中心で、となりで調弦の際に適当にMCをこなしてくれる人がいればなんとかなります。(何度も調弦をし直すのは大変ですが・・・)8月の碧南とこの間の六華苑のコンサートはまさにそうやってしのいだのでした。(笑)

奈良へリハーサルに

2016年10月04日 18時19分48秒 | 音楽系
昨日は奈良の坂本さん宅にリハーサルに行ってきました。本当はこのリハーサルはもっと前に行っていたはずですが、台風で延期になりました。今回も台風が近づいてきていましたので、少し心配でしたが、域の途中で少し真っ黒な雨雲に突っ込んだ以外は大した雨は降りませんでした。

一昨日は六華苑でバロック・リュート、今回は通奏低音なのでアーチ・リュートと、曲も楽器も異なるので大変です。こういうふうにならないように注意はしているんですが、なんかの弾みでというか、今回は台風のせいですね。(笑)

アーチ・リュートは合成樹脂弦、しかも低音弦は金属巻き線なので、ギンギンになります。でもアンサンブルだと音がなってナンボ(だけではないんですが・・・)の世界ですので、オール・ガットという選択はなかなか難しいです。それにアーチ・リュートはシングル弦とはいえ14コースですから、ガット弦が狂いまくりというのもみなさんに迷惑をかける、というか嫌われます。

ガット弦は湿度、温度が低く安定している場所で演奏するには何も問題はないんですが、いろんな場所で演奏する必要がある現代の演奏家にとっては、運用していくのがとても大変です。温度や湿度がコントロールされているコンサートホールにおいてでも、もし外が雨だったりするとお客さんの衣服についている湿気のため一気に湿度が上がります。

今月の15日には作曲家ジェイソン・テイラーの作品展コンサートです。会場はコンサートホールなので、先日の六華苑みたいに湿度たっぷり+高温ということはないとは思いますが、会場の天井が低く、お客さんの状態の影響を受けやすいので、今回は合成樹脂弦で演奏することにしました。六華苑の場合は自分たちがメインになるコンサートなので、調弦している間をトークでつなぐということも可能でしたが、テイラーのコンサートではそういう技を使えません。ということで今日の午後は弦の取り替え作業にあてました。

六華苑秋のミニコンサート

2016年10月02日 21時59分29秒 | 音楽系
今日は六華苑で秋のミニコンサートを行いました。宣伝不足もあってか、幾分いつもより来て頂いた方が少なかった感じもしましたが、それでも用意してあった椅子はほぼ一杯でした。



今回はバロック・ヴァイオリンの廣田雅史さんとご一緒させて頂きまして、ヴァイスの協奏的二重奏全楽章、テイラーのアナバシス、日本の編曲で、通りゃんせ、山田耕筰作品の編曲で、この道、赤とんぼ、そして私のソロで、ヴァイスのソナタ第34番より、プレリュード、アルマンド、ジグを演奏しました。

ヴァイスの協奏的二重奏は、ロンドン写本にリュートパートのみが伝えられている作品で、ヴァイオリンのパートは私が補作しました。今回初めて演奏します。この曲の第4楽章は、私のホームページに、コンピュータによる演奏ですが音源がアップされています。

またテイラーの作品は、私の委嘱作品で実質的世界初演!もっとも公式の世界初演は今月15日に行われる、テイラーの作品展コンサートになります。(於5/R、名古屋市千種区)

小さな演奏会の割には、「初演」の曲が時間的に言うと半分くらいありました。

例年ですとこの時期は気温もそこそこ、空気も乾燥していて爽やかなんですが、今日は暑いし、湿度も高く、まるで梅雨時みたいな天気でした。ことしは少し異常ですね。お陰でガット弦が狂いっぱなしで、とどまることを知りませんでした。1分ともたないので、一曲演奏するたびに全体の調弦をささっとしてまた次の曲って感じでした。その間は廣田さんの絶妙トークで間を持っていただいてなんとか繋いて行きました。こういう気候になるとは思っていませんでしたらねぇ。

15日のテイラーのコンサートはどうするか思案中です。合成樹脂弦に取り替えるのなら、もうあまり時間的余裕がありません。15日はコンサートホールなので問題は少ないと思いますが、もし当日雨で湿気たっぷりのお客さんが沢山いらっしゃると・・・