リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

やはり冬です。

2005年01月31日 04時44分33秒 | 日記
なんか最近えらく寒いです。今日も学校に行くときホイヴァーゲにある寒暖計のディスプレイをみたら、マイナス1度。おー寒いはずです。風はほとんどないので助かりますが、(これで日本の冬みたいに風が吹きまくったら途中で遭難してしまいます)ほんとに底冷えするので、手なんか手袋をしてそれをコートのポケットに突っ込まないと冷え切ってしまいます。学校の練習室に入ったら、バロックリュートの調弦はばらばら。せっかく合わせておいたのに。でも21度→0度→21度だから当たり前ですね。この時期の外出は楽器によくないな。
こんな寒い日なのに大家さん夫妻がイタリアから帰ってきました。2週間くらいまえ、こっちがえらく暖かい日が続いていたころ、「これから寒くなるので体に良くないから、イタリアにいくわ」なんていって言ってしまったんですが、そのすぐあとあたりからすごい寒い日が続き、今日に至っています。そのときは「うーん、読みが深い!さすが長くスイスに住んでいるだけあるなぁ」なんて思ったんですけど、今回ははずしましたな。こんな寒い日に帰ってくるなんて。学校から帰るときなんかマイナス4度だったんだから。ん?でもひょっとして明日から急にあたたかくなるということなのかも。
大家さんからはおみやげにイタリア産のもぎたてオレンジ(かな?)いただきました。

リュートという楽器 (4)

2005年01月30日 03時36分27秒 | 随想
 17世紀に入ってヨーロッパの音楽シーンがバロック時代を迎えるにつれて、リュート自身も時代に対応し変化し始める。これらの変化はフランスで起こった。17世紀に入る頃からリュートの弦の数が増え始め、特にフランスでは調弦自体もあたらしい調弦方法がいくつか試みられるようになったのだ。これらの変化を、リュートが絶頂期から滅亡の道を歩み始めた端緒ととらえる向きもあるが、むしろ当時の音楽の変化に巧みに適応してよりパワーアップした結果ととらえる方が正しいだろう。リュートが音楽シーンから消え去ったのは変化していく音楽の様式や演奏会のあり方に適応できなかったのが原因なのだから。
 フランスでの様々な試行の結果、ある一つの新しい調弦システムを持つリュートが生まれる。それが今私がメインで演奏しているバロック・リュートと現代では呼ばれる楽器だ。もちろんその当時、旧来のタイプから派生した調弦システムの楽器も平行して使われていたが、ソロ作品に関しては圧倒的にこの新しいタイプ楽器のものが多くなって行く。そしてその隆盛はその当時の鍵盤楽器に大きな影響を与え、ほどなくリュートは主役の座から降りることになる・・・とはよく音楽史なんかには書いてあることだが、もちろんリュートはそのあとのドイツバロック音楽に引き継がれ、二人の偉大な音楽家によってリュート音楽最後の巨大なモニュメントがうち立てられるに至る。その偉大な音楽家とは、シルヴィウス・レオポルド・ヴァイスとヨハン・ゼバスチャン・バッハだ。

タブ打ち

2005年01月29日 05時56分05秒 | 日記
今日は半日ずっとタブラチュア打ちです。なぜ「打ち」なのかというと、手書きではなくてDjangoを使って、コンピュータで打っているからです。もうほとんど引きこもり状態です。(笑)このDjangoというソフトは最近愛用してるんですけど、まだちょっとどっかにバグがひそんでいる感じで時折動作が変になります。あと、装飾記号関係とリズムサインをもっとそれっぽくしてほしいって感じはしますが、まぁ実用的で重宝しています。でも前々から、どうして挿入のコマンドがないんだろうと思いながら、いつものように一つ一つ消して書き直すという原始的なことをやっていたんですが、ここはやはり作者に教えてもらおうと、メイルを送っておきました。
タブ打ちも一段落して、今日はちょうど金曜なので、オルガンコンサートに。ここ2週間位行ってないので、今日はどんな感じかなと期待をしながら、第一曲目。あかん!はずれや~。(笑)うーん、すぐに帰ろうかと思いましたけど、他のお客さんのこともあるので、ここにいて一寝入りすることに。タブ打ちで疲れたことだし。
家に帰って食事をしたあと、メイルを整理していましたら、Djangoの作者から早速の返事。「はい、はい、挿入は、INSキーを押すんですよ・・・」なっなーるほどー。ものすごーく当たり前。なぜ気が付かなかったんだろう?あと彼はバス弦を書き込むショートカットも教えてくれました。これで今晩からより快適に。

やられたか!

2005年01月28日 04時35分21秒 | 日記
一昨日バリトンのマークから電話がかかってきて、「ハロー、ショージ。木曜日にエヴリンのレッスンを受けるんだけど、ジョン・ダニエルを伴奏してくれない?で、明日少しリハーサルをしたいんだけど・・・」エヴリンはエヴリン・タブという女性の声楽の先生です。アントニー・ルーリーと組んでのリュートソングには定評があります。もちろん、他のジャンルも歌いますけど。彼女は、イギリスに住んでいて、月に2週間くらいだったか、スコラに教えに来ています。そういや、この間ロンドンから帰ってくる時、彼女も同じEasyJetに乗っていましたね。(笑)
マークと一緒に弾く曲はジョン・ダニエルのCan doleful notes to measur'd accents set?という曲で始まる3部作です。時間があったので、伴奏をするのを約束したのはいいけど、これがえらい難しい曲です。(笑)こんな難しい曲をほとんど初見で弾いてしまうのはオレくらいだろう、なんて少しも思いませんでしたが、しかし難しいけどいい曲ですね。
マークは日本で言う小学校時代から音楽の専門の少数精鋭学校で学んできた筋金入りの古楽人(こんなことばがあるのかな?)です。英語はもちろんネイティヴなので完璧だし、本当にリュート・ソングを歌うのにぴったりの声ですが、それ以降のパーセルでもバッハでもすごく上手に歌います。
で、レッスンは楽しくも充実した内容で終わった(笑)んですけど、何やら彼がエヴリンと話をしています。「これで金曜日のコンサートはなんとか・・・」え?これってひょっとしてコンサートで弾くの?「そう。来週の金曜日の学内発表会で、6時スタートね。」そうか、やられたなぁ。ということで来週の金曜日はがんばります。

アジアン・レストラン

2005年01月27日 07時14分19秒 | 日記
ミスター・ウォンという名前のレストランは、世にもめずらしいバーゼル紹介のHPで怪しいアジアンとして紹介されています。
http://www.tabilinks.com/basel/asian.htm
この店って、国際的なチェーン店なのか、バーゼルだけの店なのか知りませんが、市内にはバーフューサプラッツの近くと駅前に2軒あります。
一般にスイスのレストランは皆値段が高く、日本の吉野家みたいに500円も食べたら結構いろんなものが食べられるなんてことは皆無です。ケバブでも700円くらいします。日本ではいくらおいしくても700円ならだれも買わんだろうなぁ。そんな中で比較的安いのがこのアジア系のミスター・ウォンという店です。一見中国料理って感じですけど、中身は東南アジア風の無国籍系って感じです。わけわからない?そう、わけわからない感じです。店の内装には中国風、日本風、東南アジア風のデザインやアイテムが混然としていますね。でもたぶんスイスの人はこれらの区別はつかず、全部「アジア」って思っているんじゃないかな。でも安いとはいえ、1000円は払わないとまともなものはありません。やっぱいに日本的大衆レストラン感覚からいくとやや高め。それでも他の普通のレストランよりは安いですね。Chicken Fried Riceがおすすめ。(単に自分の好みだったりして(笑))

リュートという楽器 (3)

2005年01月26日 00時34分55秒 | 随想
リュートは中世にはすでによく使われていたようだが、黄金期を迎えるのは15世紀後半から16世紀である。特に16世紀に入ってからは、当時の最新技術であった印刷術でリュートの楽譜が大量に複製されるようになり、ヨーロッパ各国で大変な人気を呼んだ。そして単に人気だけではなく、現代の水準ではおよびもつかないような名人たちを多数輩出したのがこの時代だ。地域的にはイタリア、フランス、ドイツ、イギリス地域は言うに及ばず、ハンガリー、チェコ、ポーランド、スペイン、ポルトガルといった周辺地域にもおびただしい名人を生んだ。この時代 ―― 一般的にはルネサンス時代と言われているが―― リュートがもっともひろがりを持ち、楽器にとっても最も幸せな時代だっただろう。

寒い朝

2005年01月25日 04時08分17秒 | 日記
今朝は外がうっすら雪化粧、寒いなと思いながらインターネット接続するためにコンピュータに電源を入れて、その間にシャワー。さすがに寒い。どおりで夕べは寒かったはずです。ご飯を炊いて、コンピュータの所に来てインターネットにつないでみたら、あらら、つながりません。でもこっちはこんなくらいはよくあることです。日本のYahoo BBだったら苦情の山でしょうが、なぜかこっちではBluewinに苦情殺到ということは聞いたことありません。時々モデムの設定が未設定の状態になってしまうので、再設定の方法を机の上の引き出しのところに張ってあります。あとモデムのドライバが壊れてしまってモデムを認識しなくなるとかもあります。日本でインターネットを接続していたときなんかモデムは空気みたいな存在で、けなげにも陰で一生懸命働いているという感じでしたが、なんでこっちの機器ってだめなんでしょうかね。そういやロンドンの地下鉄もしょっちゅう運行停止(駅の表示にはsuspendedと書いてありました)になったり、駅をとばしたりしていましたが、別に大騒ぎになるわけでもなかったですね。スイスで買った安物の電気製品もしょっちゅう壊れますしね。イタリアからの郵便物は時折行方不明になるし。まぁヨーロッパはこんなんだから仕方がないか、とあきらめつつ、手際よくモデムの再設定をする私でありました。(笑)

リュートという楽器 (2)

2005年01月24日 06時34分28秒 | 随想
 リュートという名はアラビア語のアル・ウード(アルは冠詞、ウードは木という意味)から来ていると言われている。今も中近東にはウードというリュートとほとんど同じ形をした楽器がある。中国のピパや日本の琵琶もリュートと同じ祖先を持つ楽器だが、楽器の形は似ていても発音の基本原理はずいぶん異なる。中国のピパや日本の琵琶は基本的にはソリッドボディであるが、リュートは薄い木で作られた箱タイプのボディである。これらはおそらく共通の祖先から派生して異なった道を歩んできたものであろう。

ロンドン行 (2)

2005年01月23日 06時32分10秒 | 日記
予約したホテルを探すのは苦労しました。私は「地図の読める男」なので普通は絶対に道に迷いませんが、今度ばかりは向こうが教えてくれた情報が180度違っていたので、結局タクシーに乗りました。何しろ、右に曲がるが左に曲がるになってんだもんね。どのようにあたりを歩いても道案内の通りにならないのであきらめました。地図の読める男はそのあたりの判断も的確で迅速です、はい。(笑)
それにひきかえ、リュート協会のミーティング会場の案内は実に的確。説明に書いてもらった通りの道や広場が次々と目の前に現れてきました。まぁ、普通そうですけどね。
定刻より30分くらい遅れて会場に着いたのですが、まだ始まってなかったのはさすがイギリス式、なのかな?
会場に来ている人たちは比較的年齢の高い人が多かったですね。やはりここも高齢化なのかな。でも若い人もちらほらで、60人近く集まっていました。このミーティングは年に数回あるんですけど、毎回こんな感じらしいです。単一の古楽器の例会でこれだけ人が集まり、中身も充実しているのですから、やっぱり伝統がある国は違いますね。
で、その中身ですが、まずレックス・アイゼンハートによるバロック・ギターの調弦についての考察から始まりました。レックス・アイゼンハートはソルとかバルトロッティのアルバムで日本でもファンがいるんじゃないかな。彼は派手さはないけどじっくりと音楽を聴かせるタイプの演奏家ですね。
昼食休憩をはさんでミニコンサートが2つ、そしてバーウェル・リュート教則本についての研究発表、最後がレックス・アイゼンハートのリサイタルというてんこ盛りです。午前中の11時すぎから始まり、6時前までやっていました。
例によってこういう所には必ずといっていいほど来ている「危険な楽譜商」(笑)が楽譜を展示販売していましたが、買い出せばキリがないので1冊だけ買いました。何をって?それはヒ・ミ・ツ。

ロンドン行 (1)

2005年01月22日 06時28分55秒 | 日記
EasyJet 3314便に飛び乗り、(実際はちゃんと待合室で待ってから乗りましたが)いざロンドンへ。この便に乗るのはこれで3回目かな。何しろ安いです。年末のドレスデン行きの列車代の半分ちょっとですよ。
で、こんどこそ、空の上から自分の家を見てやろうと飛行機の左方窓際でエンジンより前の席に陣取り目をこらす。飛行機が上昇して、ライン川が見えてきて、おーあれが駅だ、跨線橋が見えて、そのもうちょっと右に・・・ありましたねぇ。ほんの一瞬ですけどたぶんあれがそう。見えるもんですね。この間わずか10数秒。でも何か得した気分に。
ロンドンのパスコントロールのお兄さんに、「滞在目的は?」って聞かれて、「えっとリュートソサエティの集まりがありますのでそれに出ます。」「えっ何?」「あのですね、リ・ュ・ー・ト」「はいはい、あのこうやって弾く・・・」「その通り!」って感じで今スタンステッド空港のポンチ・レストランで食事をしています。変な名前のレストランでしょ、ポンチ・レストラン。スタンステッド空港はもうひとつ変に楽しい名前の店がありまして、その名もずばりラブ・ジュース。(笑)やりますねぇ。でもこれは店の屋号でして、店にはラブ・ジュースという名前の飲み物は売っていません。ぜひ飲みたかったんですけど、こればかりはご婦人方におまかせのようで。