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評価 (3点/5点満点)
〝ザ・人事〟(人事の本丸)である人事異動の全体像をつかむための参考書です。
人事異動の考え方ややり方には、会社によっていくつかのパターンがあることが本書から分かります。
また、同じ会社であっても、対象者によって人事異動の考え方ややり方が使い分けられている実情もあります。
【my pick-up】
◎管理職ではない人のうち、ホンモノの専門職と呼べる人は2割程度
過去と同等以上の実績を、環境の異なる転職先で再現できるかどうかを論理的に説明する必要があります。つまり、自分の担当分野を体系的に捉えて、その論理や手法を異なる環境下で応用展開できる人が求められるということです。同じことを長くやっているだけでそうなれるというわけではなさそうですね。何らかの特定分野であっても、その中でそれなりの幅と変化を経験するとともに、勉強する、考えて自分のものにするということが不可欠です。
◎課長20年時代
標準より優れた人であっても「一般社員20年、課長20年、ポストオフ後5年」というのが会社員人生のリアルです。
一般社員時代の20年、とくに最初の10年については、どの会社も育成観点で、社員に相応の目配りをしています。次の10年はプレーヤーとして働き盛りの年代です。その後については、管理職にならない場合は「目配りされないミドルパフォーマー」だったはずが、40代半ば以降だんだんとローパフォーマー化するリスクがあるとはいえ、プレーヤーとして働き続けている強みがあります。
むしろ、人事部が今後ケアすべきは課長の20年かもしれません。管理職層についてはジョブ型的な仕組みに移行する会社が増える傾向にあり、かなり長期間、同じ部署の課長を務める人も増えそうです。管理職の仕事は、ある面、キャリア形成上のインプットが少ない仕事です。課長になると会社の業績動向や部下からの伝聞情報は頻繁に入りますが、プレーヤー時代に比べると市場や技術の生情報などに触れる機会はかなり減少したりします。実際の仕事としては、会議資料作成に関するやり取りと会議、部下との1on1、各種承認業務にほとんどの時間を割かれてしまう管理職が少なくありません。
それがマネージャーというものだという見方もあるかもしれません。ただ、同じ部署の課長を長期間担当して専門能力が向上するのかというと疑問もあります。技術系の人の中には、マネジメントは雑務だと考えている人が一定割合存在しますが、一概に否定できない面もあります。課長にも、生情報のインプットは不可欠です。また、別の観点では、課長はマネジメントの定型業務に埋没することなく、戦略的業務やリーダーシップの発揮に時間を使うようにならなくては陳腐化リスクが大きいということです。
役職定年については、65歳定年延長とのセットで新設する会社もあるでしょうが、全体的な流れとしては、グローバル化やエンジフリーの観点から廃止方向です。一方で、役職定年の廃止は新陳代謝の障害になる恐れがあります。また、長期間同一ポジションを同じ人が担当することは、組織活力や管理職本人の成長のためにもあまり好ましくなさそうです。やはり、ある程度の期間で「次」の場所に移るべきです。