日本語学校からこんにちは ~水野外語学院~

千葉県市川市行徳にある日本語学校のブログです。日々の出来事、行事、感じたことなどを紹介しています。

「小学校の運動会の練習」。

2013-05-16 08:46:39 | 日本語の授業
 早朝から、元気な子供達の声が響いています。応援歌です。懐かしいですね。こういう歌を聞くと自然に子供の頃のことが思い出されてきます。何せ、日本人なんて、小学校6年間、中学校3年間、高校3年間と、合わせれば12年間も、毎年いつも、1か月ほども練習に費やしてきているのですから。誰にでも運動会に纏わる記憶はあります。

 高校生の頃など、運悪く、その年度は、私のクラスの女子が応援団に属することになっていて、袴何ゾを穿いて空手の型までさせられたのです。まあ、いい思い出ですけれども、応援団の男子団員は全くと言っていいほど面倒をみてくれませんでした…けれども。

 そういえば、いつでしたっけ、近くの小学校で、徒競走のバトンの練習をしている姿を見かけたことがありました。

 この「バトン」の手渡しというのがなかなかの難物で、運動神経の発達している子は、どこら辺りで走り出せばいいのか、ツーと聞けば、カーとできるのでしょうけれども、これも運悪く、運動神経がそれほどでもない人達が集まったクラスに入ってしまえば、そこそこの速さでもクラス対抗などに選ばれてしまうので(一番、速い子は、紅白対抗に出ていたようですが)大変です。だいたい日本人なんてのは、子供の頃から、自分はどれほどのものかというのが、わかっていますから、本当に足が速くなければ、選ばれてうれしいなんて思いもよらぬこと。まず、どうしよう…というのが、多分、多くの子供の気持ち。時には先生に直訴に出たりして、どうにか逃れようとする…子までいましたっけ。

 そうすると、直ちに、クラス会です。その子の名前は出さないようにして、運動会をどうしてやるのかという話から始まって、「参加することに意義がある。勝っても負けても関係ない」とか、「みんなの代わりに参加してくれるのだから、みんなで応援しよう」とか、何と無しに断れないような雰囲気ができ上がってしまうのです。

 運動会というのは、そんなに楽しいことではありませんでしたけれども、終わってしまえば、まあ、それなりに懐かしい思い出です。

 そう思いながら、「バトン」の練習をしている子達を見ていると、やはりいますね、ドンクサイ子が。可哀想に。これは先生が叱ったからといって、できるものではないのです。たまにできて褒められても、当人はなぜできたのかわかりませんから、また失敗してしまう。そうすると、「どうして、さっきはできたのに」と、叱られているのか、残念がられているのか、わからないような言われ方をしてしまう。一番焦っているのはその子なのに。

 もし、渡す相手が走り始めるのが少しでも早かったら、自分が着く頃には全力疾走になっているわけですから、これは追いつけません。小学生なんて、50㍍のうちの、48㍍なりを全力で走ってしまいますと、最後の2、3㍍は、息も絶え絶え、ゼイゼイ状態になってしまいます。それなのに、前を行く相手は走り始めたばかりですから元気いっぱいで、しかも、一等賞を取るぞとばかりに責任感に燃えていますから、これは…当然のことながら…追いつけない。

 焦れば焦るほど、足はフラフラ、相手はますます遠ざかっていく…。前の子も、バトンが来ないと、あれあれという顔になって、振り返りますから、ずっと後ろにいる友達に気づく。そして慌てて引き返す。後から来た子にドンドン追い抜かれれば、嫌でも焦ってしまう。焦っていますから、それは、バトンがうまく渡せないし、取れない。アッアッと思う間もなく、ポトリとバトンが落ちてしまう…さあ、こりゃ大変だと拾おうとするが、こういう時にかぎって、バトンがコロコロと転がっていく。下手をすると別のコースに入ってしまったりする。そして、そこを走っている子と団子になって、一緒に倒れたりしてしまう…ああ、申し訳ない、ごめんなさい。

 ああ、あ、人生ではそういうことなど、日常茶飯事のことなのに、それが子供の頃にわかっていれば、その一つにしか過ぎないということで、それなりにあきらめもつくであろうに、あの頃はこれ一つで人生が終わったように感じてしまうのです。人生を賭けた大ごとのようにさえ感じてしまう。皆が自分を非難しているように見えて、学校に行くのが辛くなったりする…。

 多分、同じようなことは、今の留学生達にも起こっているでしょう。ただ、2年目の学生たちとはいうのは、ずいぶん逞しくなっています。毎日見ているわたしたちは気づかぬことも多いのですが、たまにそのクラスに入った先生から、来たばかりの学生達に比べて、随分大人に見えるなどと聞かされると、だてにここで一年を生きてきたわけじゃないなどと思ってしまいます。

日々是好日
コメント
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