日本語学校からこんにちは ~水野外語学院~

千葉県市川市行徳にある日本語学校のブログです。日々の出来事、行事、感じたことなどを紹介しています。

「樹は育つ、人も育つ」。「クラス編成、『漢字圏』、『非漢字圏』」。

2010-01-06 09:11:06 | 日本語の授業
 日本海側での「大雪」を知れば、「行徳」の朝が寒いなんぞ言っていられません。申し訳なさが先に立ちます。新年に入ってから、東北地方のある町では、一晩で一㍍近くも積もったそうですし、この数日来の寒波の影響で、新潟では二メートル近くも積もったと言われています。それは重々承知なのですが、それでも、やはり、寒いのです。歩いているうちに、ホカホカとしてくるにしても、歩き出すまでが寒いのです。

 今朝は、久しぶりに歩きました。自転車は、学校で「お寝んね」です。歩くと、自転車に乗っているときとは違い、随分余裕が生じてきます。というわけで、歩きながら、見るともなしに、家々の庭先から垂れている樹々を見ていますと庭師のような心持ちになってきました。山本周五郎の短編に登場する庭師です。その庭師がこんなことを言っていました。

 「私が造った庭は、造り上げた瞬間からもう私の造ったものではなくなっている」
理由を問われて、「樹は育つ。だから、庭は変化する」という意味の答えをしたと思います。記憶はおぼろげで、細かい所を思い出そうとすると霞んでしまうのです。

 「樹は育つ」。そう。生き物は「太る」のです。

 勿論、名高い庭師が造園したものは、10年後、20年後、100年後の姿まで考えて設計されていると言います。が、それでも、細かい所では、庭師の予想に反する結果が出ているはずです。天賦の才がどれほどあろうと、努力をし、その才を如何に磨こうと、所詮、人のなせるワザは知れたものです。自然からみれば、一瞬の作業であり、一瞬の結果でしかないのです。

 生きている限り、草も樹も人も変化していきます。この変化は、「変わっていく」としか言えないものです。望ましいものになるとも言い切れないからです。進化しているとも言えず、また、発展しているとも、伸びているとも言えないような、そんな変化でしかないのです。あるものは、ひねこび、あるものは、真っ直ぐに、あるものは横に這い、あるものは高く高くと思います。

 この変化の差異はどこから生じるのでしょうか。ある人は「畑の土の善し悪し」と一言で片付けました。けれども、そうとばかりも言えないから、教師は困るのです。

  庭師の言葉から、どんどん逸れていきます。今度は、人が話題です。
 
 この1月から「CDクラス」を編成し直します。これまでも、小規模で入れ替えを行っていたのですが、「非漢字圏」でまじめに学習する学生が増えてきたのと、「漢字圏」出身といっても、「漢字圏」で一括りにできないような学生が目につくようになってきたからです。

 まず「非漢字圏」の学生ですが、「漢字圏」出身者中心のクラスとは、授業の構成も、教材も変えていきます。進度も違えます。目標は、今年の十二月の「日本語能力試験・二級」合格です。そのためには、かなりの量の宿題もこなしてもらわなければなりません。漢字の時間もずっと増やします。単語(漢字交じりの単語も含む)も一万語までは、覚えられるようにします。

 「『漢字圏』の学生クラス」といいましても、(ディクテーションをしてわかったところでは、それほど「漢字の意味」がとれていないと思われる人もいます)、漢族中心のころとは多少違います。漢族中心のころは、「見れば判る」(私たちが「中国語」を学ぶときも、そうでした。単語の意味を調べなくとも、漢字から類推して判ることも少なくなかったのです)式でやっていた所もありました。つまり、直ぐに「読解」レベルで勝負出来たのです。

 ところが、(国籍は中国人であっても)そうではないということが、かなり判ってきますと、自然に授業の形態も変わって来ます。ただ、漢族中心の頃は、「非漢字圏」の学生のために待ってもらうことも出来たのですが(ここでいう「待つ時間」は、「非漢字圏」の学生に説明していくうちに、中国人の理解している漢字、乃至単語の意味と、日本語のそれとが微妙に違うということに気づく時間でもあります)、その余裕がなくなってきたのです。「漢字」の理解も、漢族に劣るし、当然、「読解力」も落ちる。こういう人たちには、またそれにふさわしい授業を目一杯受けてもらわなければならないのです。

 というわけで、「Cクラス」から、中国人を二名、「Dクラス」に移し、また、「Dクラス」から「Cクラス」へ、ネパール人、スリランカ人、カンボジア人、インド人、モンゴル族を、一名ずつ移します。これで、「Cクラス」は13名、「Dクラス」は(「Bクラス」から移ったミャンマー人一名を含め)、16名になります。

 おっと、「Aクラス」の学生が、一人、勉強にやってきました。それから、もう一人、今日から始まると勘違いした(本当は7日始まりです)「Eクラス」の学生がやって来ました(もっとも、この学生は、勘違いが判ると大慌てで帰っていきましたが)

 こうやって、少しずつ「日常」は始まるのでしょう。

日々是好日

コメント
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