ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

パルマの生ハム&パルミジャーノチーズ【前編】

2014-06-27 16:50:00 | おいしい食べもん
先日、イタリアのパルマハム協会&パルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会の共催で、
パルマハム&パルミジャーノ・レッジャーノとワインとのマッチングセミナーが都内で開催されました。



これらは、どちらも イタリアのエミリア・ロマーニャ州パルマの特産品です。

どちらも何度もここで紹介してきましたが、改めて知る事がありました。

それは、これら2つの産地が 塩の産地 と重なっている こと。

パルマ周辺は2000~3000万年前は海の底にあり、現在は、地下深層から汲み上げられる塩水から塩がつくられています。

パルマ市の西に位置するサルソマッジョーレはヨーロッパ屈指の温泉保養地として知られていますが、塩の名産地でもあったんですね。
ここの塩水は、あの有名な死海の何倍もの濃度の塩分を含むとか。

サルソマッジョーレの塩は真っ白で細かく、チーズや生ハムをつくる際に使用するにはピッタリ だったそうです。
かつては山の塩も採れたようですが、山の塩は高価なので、現在はサルソマッジョーレの海水塩が使われています。

パルマ市の南側には山(アペニン山脈(や丘陵地帯が広がっています。
山から流れ出す水はポー川に注ぐいくつもの川となり、周辺には小さな沼地がたくさんありました。

これらの沼地を開墾する際、耕すのにの力が必要でした。
牛からはが出ます。ある程度はそのまま飲みますが、残った乳は長く保存できません。
この乳を長期保存するためにつくったのがチーズでした。
そうです、このチーズが、パルミジャーノ・レッジャーノ です。

チーズをつくる際には、ホエー(乳から滲み出る透明な液体、乳清)ができます。
それらは豚の飼料となりました。糖分の多いホエーを摂取した豚は、大きく肥えて育ちます。
このパルマの生ハム となるわけです。

パルマはティレニア海から約100km近く内陸にありますが、アペニン山脈を越え、川を伝ってやってくる海風の影響を受けています。
この海風が、生ハムの熟成に重要な役割を果たしました。

つまり、

塩と豚と海風が、パルマの生ハムをつくり、
牛の乳と塩が、イタリアチーズの王様と呼ばれるパルミジャーノ・レッジャーノをつくった。


この話を聞いた時、ストンと合点がいきました。
パルミジャーノ・レッジャーノも生ハムも、パルマに偶然的に誕生したのではなく、こうした必然的な背景があったんですね。


この興味深い話をしてくださった 西村明美 さん
西村さんはパルマ在住で、パルマの特産品に造詣が深い方。
イタリアソムリエ協会(AIS)公認ソムリエでもあります。



今回のセミナーのメインテーマは、パルミジャーノ・レッジャーノとパルマハムの熟成
ご存知のように、どちらも熟成により味わいが変化していく、という特性を持っています。



パルマの生ハムの24カ月と36カ月熟成

デジカメの画像なのと、光線の加減でわかりにくいかもしれませんが、手前の2列が24カ月で、奥の2列が36カ月です。

外側と内側のハムの外見が違うのは、部位の違いによるもので、外側に置いてあるのがクラッチャ、中央に置いてあるのがフィオッコと呼ばれる部位です。

クラッチャは豚のおしり部分で、脂が多くて甘みが強く、口に入れると脂身がとろけます。

フィオッコは太ももの前側の部位で、脂身が少なくて、あっさりした味わいが特徴です。
カロリーも低くなるので、イタリアでは若い女性に好まれているそうです。

膝の上部になるガンベットと呼ばれる部位もあり(今回は紹介がありません)、筋が多くて塩が入りにくく、ガチガチに硬くなりがちですが、それを噛みしめているうちに甘みが出てくるとか。


“クラッチャ”の24カ月(手前)と36カ月熟成(奥)

24カ月熟成の方がジューシーでやわらかく、塩気もマイルド。
36カ月は水分が抜け、うまみが凝縮し、弾力のある歯ごたえも出てきます。

“フィオッコ”も同様で、24カ月の方がソフトで、36カ月の方が味が濃厚になります。

こうした熟成食品を購入する場合、熟成が長い方をなにかと選びがちですが、好みや気分はもちろん、用途も重要なポイントだと思います。

例えば、フレッシュなイチジクやメロンと合わせる場合、ジューシーで肉質がやわらかい生ハムの方がより合うと思います。つまり、24カ月の若い方がよく、部位はクラッチャ。
ボディのしっかりしたワインのつまみにするなら、水分が抜けて凝縮した36カ月のフィオッコが合いそうです。



パルミジャーノ・レッジャーノ 24カ月(左) 36カ月(右)

こちらも色が少し違い、淡いクリーム色の方が若い24カ月。
食感も、少しむちっとした感じが残り、ミルクの風味、酸味もほのかにあります。
36カ月は白い組織が増え、ポロポロ崩れるようになり、口の中の熱で溶けます。ナッツを思わせるような熟成の風味がしっかりと出て、うま味たっぷり。


この画像だと、色の違いがはっきりとわかるでしょうか


パルミジャーノは専用ナイフでかち割ります


セミナーのためにイタリアから来日した マッテオ・ペッシーナ さん
1996~2002年イタリアソムリエ協会(AIS)パルマ支部運営。
2006年よりALMA(プロ対象高等料理学校)でソムリエコース講師を務める。

マッテオさんオススメのパルミジャーノの食べ方は、
そのまま食べるのはもちろん(おやつ、ワインのつまみ等)、ハチミツをかけたり、バルサミコ酢を添えたり、ドライイチジクと合わせるほか、パスタの上にすりおろしてかけたり、肉の中に入れて調理したり、硬い皮の部分は細かく刻んでミネストローネやミートソースに入れたり、ブロード(スープ出汁)を作る時にも入れるそうです。

パルミジャーノに関しても、日本の消費者は熟成が長いものを選ぶ傾向がありますが、それぞれの良さを理解した生かした選び方をすると、より楽しめますね。

私なら、ちょっと軽く飲みたい時は熟成が若めな24カ月を、フルボディの赤ワインになら36カ月を合わせたいかな。



マッテオさんによるワインとのマリアージュのお話は 【後編】 で紹介します。

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ボルドー2013年プリムール情報【後編】

2014-06-27 10:00:00 | ワイン&酒
【前編】 より続きます

プリムールとは何?

2013年のボルドー情報は? 

バロンフィリップのエルワン・ル・ブロゼック氏の話にあったように、
2013年のボルドー白ワインは、辛口・甘口とも期待ができます。
ヴィンテージのクールな影響で、辛口の白は酸がよく残りますので、オススメです

また、雨が多い年は水はけのよい砂地土壌がよく、水分を保持する粘土質土壌は注意が必要。
同じ理由で、斜面にある畑 は水はけがいいので、これもポイントになります。

上記をザクッと理解していただいたところで、試飲した約50アイテムのボルドーワイン2013年ヴィンテージ の中から、気になったものを画像とともに紹介します。



白/辛口


Ch. Mont Perat Blanc 2013 (AOC Bordeaux)
果実のボリュームと酸味のボリュームのバランスが良好で、すでにおいしい。
ここは粘土石灰土壌(シリカ)。

Ch. Cantelys Blanc 2013 (Pessac Leognan)
酸が充実。絶妙のバランスで、個人的に超好み。スミス・オー・ラフィットと同じスタッフ、同じ醸造方法。
小高い傾斜にある深い良質の砂利土壌。

Ch. Pape Clemant Blanc 2013 (Pessac Leognan)
まだ混沌としていて、まとまりに欠ける段階。しかし、上品。今後に期待。
土壌は粘土・砂利質。


Ch. Smith Haut Lafitte Blanc 2013 (Pessac Leognan)
濃さがあるが、酸もたっぷり。ここは樽を感じることが多いのですが、2013年はそれほど強く感じず、ほどよい加減がgood。
小高い傾斜にある深い良質の砂利。


白/甘口

Ch. Broustet 2013(Sauternes)
軽やかでピュア、品のある甘さ。今も充分おいしい。
土壌は、砂利・シリカ層の下に粘土石灰層。

Ch. Guiraud 2013(Sauternes)
Broustetと比べると、甘さがより濃密。色も粘度も濃く、風味も複雑で、これは熟成させて楽しみたいタイプ。
土壌の80%は砂・砂利質、20%は粘土・砂利質。
オーガニックワインとして3年目。






Ch. Calon Segur 2013 (Saint Estephe)
樽の風味をしっかり感じながらも、フレッシュな酸とタンニンがバランスよく、若々しさを感じさせてくれます。これからに期待!
土壌は、表層40cmが砂利粘土質、その下層が粘土質。
カロン・セギュール2013年はいいキャンペーンを実施し、成功させている、とエルワン氏が言っていました。


Ch. Lafon Rochet (Saint Estephe)
充実したタンニンと酸が印象的で、骨格が太い。粗野ではなく、ミネラル、フィネスのある太さ。個人的にとても好きなラフォン・ロシェ。これは長熟しそう。
土壌は上から、深い砂利質、砂利粘土層、粘土質、の3層。ワインがネバつかないのは、砂利によるものが大きそう。


Ch. Clerc Milon 2013 (Pauillac)
ハッとさせられた、溌剌とした酸と果実味、そして、手ごたえのある骨格。この先が楽しみ。
2011年にセラー、樽貯蔵室を刷新しているようですが、その影響もありそう?
土壌は砂利質と粘土石灰質。


Ch. D'Armailhac 2013 (Pauillac)
なめらかなテクスチュアですが、酸に若干の雑味を感じました。
クレール・ミロンと同じバロンフィリップ社の所有で、土壌も似ていますが(砂利質と粘土石灰質)、前者が新樽比率50%に対し、ダルマイヤックは新樽100%(樽の種類は同じ)。同社輸出ディレクターのエルワン氏によると、どちらも160カ国に輸出され、2013年のキャンペーンは成功していると言っていました。

Ch. Beychevelle 2013(Saint Julien)
まろやかで甘い!こんな感じでしたっけ?土壌は深い砂利質。
この先、どう変わるんでしょうか。

Ch. Rauzan Segla 2013(Margaux)
酸が際立ち、ザラついて、まとまりに欠ける状態。まだまだこれからですね。
深い良質な砂利質、違う年代の層が折り重なる粘土層。


Ch. Lascombes 2013(Margaux)
甘くなめらかで、すでにおいしく飲める状態。
メルロ(粘土石灰、粘土砂利質)60%、カベルネ・ソーヴィニヨン(粘土石灰、砂利質)40%と、メルロ多め。醸造コンサルタントはミシェル・ロラン。


Ch. Camensac 2013(AOC Haut Medoc)
上品なエクストラクト。
深い砂利の下層に粘土石灰の土壌。

Ch. La Tour Carnet 2013(AOC Haut Medoc)
酸味がしっかりし、タンニンの収れん味も強く、非常にパワフル。まだまだこれから。
厚い砂利層の下は、石灰質を多く含む粘土層。


Domaine de Chevalier Rouge 2013 (Pessac Leognan)
エクストラクトが上品で優雅、テクスチュアもなめらか。いい出来です。
土壌の上層は砂利と黒砂、下層は砂利粘土。


Ch. Pape Clemant Rouge 2013 (Pessac Leognan)
抽出が強いが、酸のバランス良好。今からでも楽しめる。
土壌は粘土・砂利質。


Ch. Smith Haut Lafitte Rouge 2013 (Pessac Leognan)
意外にも、酸が繊細で、タンニンの収れん味もキレイ。
酸化鉄を多く含んだ砂利質の土壌。


Clos Badon Thunevin 2013(Saint Emilion Grand Cru)
抽出がしっかりしていて、超濃密。タンニンも酸も豊富で、しかもなめらか。
土壌は砂利質。

Ch. La Fleur 2013(Saint Emilion Grand Cru)
果実の甘みがあり、酸がジューシー。やわらかなタッチ。
北部の台地で、砂の混じった粘土質。


Ch. Corbin 2013(Saint Emilion Grand Cru)
エクストラクトがキレイで、なめらか。すべての要素がいいバランスで、エレガント。
土壌の上層は砂粘土質、下層は粘土層。


Ch. La Dominique 2013(Saint Emilion Grand Cru Classe)
樽香がやや強く感じるものの(新樽100%、16カ月―まだこれからも続く)、ワインとして非常にいい出来の良さを感じました。今後の熟成に期待したいですね。
土壌の25%は深い砂利質、75%は砂と砂利+粘土質。


Ch. La Conseillante 2013(Pomerol)
エクストラクトがしっかりで、ボディはふくらみがありますが、酸が充実し、品があっていい出来。
土壌は赤鉄分を含む粘土質、砂・砂利質。



白は辛口も甘口も、どれも安心して購入できるでしょう。

赤は、アペラシオンの個性もあると思いますが、やはり土壌がポイント。
個人的には、ペサック・レオニャンがオススメ。

プリムールで買うか?(代金は今、納品は約2年後)
リリースされてから買うか?

確実に買うものが決まっている人には、プリムール買いは検討してもいいのでは?

輸入元:株式会社 徳岡
※輸入元へのプリムール申し込みは 2014年7月13日が締切

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