先日、イタリアのパルマハム協会&パルミジャーノ・レッジャーノ・チーズ協会の共催で、
パルマハム&パルミジャーノ・レッジャーノとワインとのマッチングセミナーが都内で開催されました。
これらは、どちらも イタリアのエミリア・ロマーニャ州パルマの特産品です。
どちらも何度もここで紹介してきましたが、改めて知る事がありました。
それは、これら2つの産地が 塩の産地 と重なっている こと。
パルマ周辺は2000~3000万年前は海の底にあり、現在は、地下深層から汲み上げられる塩水から塩がつくられています。
パルマ市の西に位置するサルソマッジョーレはヨーロッパ屈指の温泉保養地として知られていますが、塩の名産地でもあったんですね。
ここの塩水は、あの有名な死海の何倍もの濃度の塩分を含むとか。
サルソマッジョーレの塩は真っ白で細かく、チーズや生ハムをつくる際に使用するにはピッタリ だったそうです。
かつては山の塩も採れたようですが、山の塩は高価なので、現在はサルソマッジョーレの海水塩が使われています。
パルマ市の南側には山(アペニン山脈(や丘陵地帯が広がっています。
山から流れ出す水はポー川に注ぐいくつもの川となり、周辺には小さな沼地がたくさんありました。
これらの沼地を開墾する際、耕すのに牛の力が必要でした。
牛からは乳が出ます。ある程度はそのまま飲みますが、残った乳は長く保存できません。
この乳を長期保存するためにつくったのがチーズでした。
そうです、このチーズが、パルミジャーノ・レッジャーノ です。
チーズをつくる際には、ホエー(乳から滲み出る透明な液体、乳清)ができます。
それらは豚の飼料となりました。糖分の多いホエーを摂取した豚は、大きく肥えて育ちます。
この豚 が パルマの生ハム となるわけです。
パルマはティレニア海から約100km近く内陸にありますが、アペニン山脈を越え、川を伝ってやってくる海風の影響を受けています。
この海風が、生ハムの熟成に重要な役割を果たしました。
つまり、
塩と豚と海風が、パルマの生ハムをつくり、
牛の乳と塩が、イタリアチーズの王様と呼ばれるパルミジャーノ・レッジャーノをつくった。
この話を聞いた時、ストンと合点がいきました。
パルミジャーノ・レッジャーノも生ハムも、パルマに偶然的に誕生したのではなく、こうした必然的な背景があったんですね。
この興味深い話をしてくださった 西村明美 さん
西村さんはパルマ在住で、パルマの特産品に造詣が深い方。
イタリアソムリエ協会(AIS)公認ソムリエでもあります。
今回のセミナーのメインテーマは、パルミジャーノ・レッジャーノとパルマハムの熟成 。
ご存知のように、どちらも熟成により味わいが変化していく、という特性を持っています。
パルマの生ハムの24カ月と36カ月熟成
デジカメの画像なのと、光線の加減でわかりにくいかもしれませんが、手前の2列が24カ月で、奥の2列が36カ月です。
外側と内側のハムの外見が違うのは、部位の違いによるもので、外側に置いてあるのがクラッチャ、中央に置いてあるのがフィオッコと呼ばれる部位です。
クラッチャは豚のおしり部分で、脂が多くて甘みが強く、口に入れると脂身がとろけます。
フィオッコは太ももの前側の部位で、脂身が少なくて、あっさりした味わいが特徴です。
カロリーも低くなるので、イタリアでは若い女性に好まれているそうです。
膝の上部になるガンベットと呼ばれる部位もあり(今回は紹介がありません)、筋が多くて塩が入りにくく、ガチガチに硬くなりがちですが、それを噛みしめているうちに甘みが出てくるとか。
“クラッチャ”の24カ月(手前)と36カ月熟成(奥)
24カ月熟成の方がジューシーでやわらかく、塩気もマイルド。
36カ月は水分が抜け、うまみが凝縮し、弾力のある歯ごたえも出てきます。
“フィオッコ”も同様で、24カ月の方がソフトで、36カ月の方が味が濃厚になります。
こうした熟成食品を購入する場合、熟成が長い方をなにかと選びがちですが、好みや気分はもちろん、用途も重要なポイントだと思います。
例えば、フレッシュなイチジクやメロンと合わせる場合、ジューシーで肉質がやわらかい生ハムの方がより合うと思います。つまり、24カ月の若い方がよく、部位はクラッチャ。
ボディのしっかりしたワインのつまみにするなら、水分が抜けて凝縮した36カ月のフィオッコが合いそうです。
パルミジャーノ・レッジャーノ 24カ月(左) 36カ月(右)
こちらも色が少し違い、淡いクリーム色の方が若い24カ月。
食感も、少しむちっとした感じが残り、ミルクの風味、酸味もほのかにあります。
36カ月は白い組織が増え、ポロポロ崩れるようになり、口の中の熱で溶けます。ナッツを思わせるような熟成の風味がしっかりと出て、うま味たっぷり。
この画像だと、色の違いがはっきりとわかるでしょうか
パルミジャーノは専用ナイフでかち割ります
セミナーのためにイタリアから来日した マッテオ・ペッシーナ さん
1996~2002年イタリアソムリエ協会(AIS)パルマ支部運営。
2006年よりALMA(プロ対象高等料理学校)でソムリエコース講師を務める。
マッテオさんオススメのパルミジャーノの食べ方は、
そのまま食べるのはもちろん(おやつ、ワインのつまみ等)、ハチミツをかけたり、バルサミコ酢を添えたり、ドライイチジクと合わせるほか、パスタの上にすりおろしてかけたり、肉の中に入れて調理したり、硬い皮の部分は細かく刻んでミネストローネやミートソースに入れたり、ブロード(スープ出汁)を作る時にも入れるそうです。
パルミジャーノに関しても、日本の消費者は熟成が長いものを選ぶ傾向がありますが、それぞれの良さを理解した生かした選び方をすると、より楽しめますね。
私なら、ちょっと軽く飲みたい時は熟成が若めな24カ月を、フルボディの赤ワインになら36カ月を合わせたいかな。
マッテオさんによるワインとのマリアージュのお話は 【後編】 で紹介します。
パルマハム&パルミジャーノ・レッジャーノとワインとのマッチングセミナーが都内で開催されました。
これらは、どちらも イタリアのエミリア・ロマーニャ州パルマの特産品です。
どちらも何度もここで紹介してきましたが、改めて知る事がありました。
それは、これら2つの産地が 塩の産地 と重なっている こと。
パルマ周辺は2000~3000万年前は海の底にあり、現在は、地下深層から汲み上げられる塩水から塩がつくられています。
パルマ市の西に位置するサルソマッジョーレはヨーロッパ屈指の温泉保養地として知られていますが、塩の名産地でもあったんですね。
ここの塩水は、あの有名な死海の何倍もの濃度の塩分を含むとか。
サルソマッジョーレの塩は真っ白で細かく、チーズや生ハムをつくる際に使用するにはピッタリ だったそうです。
かつては山の塩も採れたようですが、山の塩は高価なので、現在はサルソマッジョーレの海水塩が使われています。
パルマ市の南側には山(アペニン山脈(や丘陵地帯が広がっています。
山から流れ出す水はポー川に注ぐいくつもの川となり、周辺には小さな沼地がたくさんありました。
これらの沼地を開墾する際、耕すのに牛の力が必要でした。
牛からは乳が出ます。ある程度はそのまま飲みますが、残った乳は長く保存できません。
この乳を長期保存するためにつくったのがチーズでした。
そうです、このチーズが、パルミジャーノ・レッジャーノ です。
チーズをつくる際には、ホエー(乳から滲み出る透明な液体、乳清)ができます。
それらは豚の飼料となりました。糖分の多いホエーを摂取した豚は、大きく肥えて育ちます。
この豚 が パルマの生ハム となるわけです。
パルマはティレニア海から約100km近く内陸にありますが、アペニン山脈を越え、川を伝ってやってくる海風の影響を受けています。
この海風が、生ハムの熟成に重要な役割を果たしました。
つまり、
塩と豚と海風が、パルマの生ハムをつくり、
牛の乳と塩が、イタリアチーズの王様と呼ばれるパルミジャーノ・レッジャーノをつくった。
この話を聞いた時、ストンと合点がいきました。
パルミジャーノ・レッジャーノも生ハムも、パルマに偶然的に誕生したのではなく、こうした必然的な背景があったんですね。
この興味深い話をしてくださった 西村明美 さん
西村さんはパルマ在住で、パルマの特産品に造詣が深い方。
イタリアソムリエ協会(AIS)公認ソムリエでもあります。
今回のセミナーのメインテーマは、パルミジャーノ・レッジャーノとパルマハムの熟成 。
ご存知のように、どちらも熟成により味わいが変化していく、という特性を持っています。
パルマの生ハムの24カ月と36カ月熟成
デジカメの画像なのと、光線の加減でわかりにくいかもしれませんが、手前の2列が24カ月で、奥の2列が36カ月です。
外側と内側のハムの外見が違うのは、部位の違いによるもので、外側に置いてあるのがクラッチャ、中央に置いてあるのがフィオッコと呼ばれる部位です。
クラッチャは豚のおしり部分で、脂が多くて甘みが強く、口に入れると脂身がとろけます。
フィオッコは太ももの前側の部位で、脂身が少なくて、あっさりした味わいが特徴です。
カロリーも低くなるので、イタリアでは若い女性に好まれているそうです。
膝の上部になるガンベットと呼ばれる部位もあり(今回は紹介がありません)、筋が多くて塩が入りにくく、ガチガチに硬くなりがちですが、それを噛みしめているうちに甘みが出てくるとか。
“クラッチャ”の24カ月(手前)と36カ月熟成(奥)
24カ月熟成の方がジューシーでやわらかく、塩気もマイルド。
36カ月は水分が抜け、うまみが凝縮し、弾力のある歯ごたえも出てきます。
“フィオッコ”も同様で、24カ月の方がソフトで、36カ月の方が味が濃厚になります。
こうした熟成食品を購入する場合、熟成が長い方をなにかと選びがちですが、好みや気分はもちろん、用途も重要なポイントだと思います。
例えば、フレッシュなイチジクやメロンと合わせる場合、ジューシーで肉質がやわらかい生ハムの方がより合うと思います。つまり、24カ月の若い方がよく、部位はクラッチャ。
ボディのしっかりしたワインのつまみにするなら、水分が抜けて凝縮した36カ月のフィオッコが合いそうです。
パルミジャーノ・レッジャーノ 24カ月(左) 36カ月(右)
こちらも色が少し違い、淡いクリーム色の方が若い24カ月。
食感も、少しむちっとした感じが残り、ミルクの風味、酸味もほのかにあります。
36カ月は白い組織が増え、ポロポロ崩れるようになり、口の中の熱で溶けます。ナッツを思わせるような熟成の風味がしっかりと出て、うま味たっぷり。
この画像だと、色の違いがはっきりとわかるでしょうか
パルミジャーノは専用ナイフでかち割ります
セミナーのためにイタリアから来日した マッテオ・ペッシーナ さん
1996~2002年イタリアソムリエ協会(AIS)パルマ支部運営。
2006年よりALMA(プロ対象高等料理学校)でソムリエコース講師を務める。
マッテオさんオススメのパルミジャーノの食べ方は、
そのまま食べるのはもちろん(おやつ、ワインのつまみ等)、ハチミツをかけたり、バルサミコ酢を添えたり、ドライイチジクと合わせるほか、パスタの上にすりおろしてかけたり、肉の中に入れて調理したり、硬い皮の部分は細かく刻んでミネストローネやミートソースに入れたり、ブロード(スープ出汁)を作る時にも入れるそうです。
パルミジャーノに関しても、日本の消費者は熟成が長いものを選ぶ傾向がありますが、それぞれの良さを理解した生かした選び方をすると、より楽しめますね。
私なら、ちょっと軽く飲みたい時は熟成が若めな24カ月を、フルボディの赤ワインになら36カ月を合わせたいかな。
マッテオさんによるワインとのマリアージュのお話は 【後編】 で紹介します。