写真①:「縣屋酒造」の白壁に描かれた「毘沙門天・弁財天・布袋」の鏝絵
=大分県宇佐市安心院町折敷田で、2012年5月11日撮影
〈大分・町歩きスポット〉 4
:安心院町の鏝絵通り
宇佐市観光協会安心院支部では、同市安心院町の本町通りを「鏝絵(こてえ)通り」と銘打ち、町歩きマップで「ゆっくり歩きたい ~見上げれば夢がある~」とPRしています。明治時代制作の古い鏝絵だけでなく、平成作の鏝絵もあり、「鏝絵通り」の町並みづくりを目指す安心院の人たちの心意気を感じました。
宇佐市安心院町折敷田(あじむまちおしきだ)にある江戸中期・正徳2年(1712年)創業と大分県最古の酒蔵・「縣屋(あがたや)酒造」の2階白壁には、同町の左官職人江藤智子さんが平成16年に描いた「毘沙門天・弁財天・布袋」の鏝絵=写真①=があります。大きな樽の前で麹を混ぜている毘沙門天さん、その横でおいしそうに酒を酌み交わす布袋さんと弁財天さんの姿が、笑いを誘う図柄です。当家の社長ご夫妻をイメージして作ったという。
1階の店舗に掲示された「縣屋」の看板の下には、宇佐市下庄出身の大横綱「双葉山」銘柄の薦被りの酒樽が置かれています。軒下に立ち、桁を支える腕木と柱を斜めにつなぐ「持ち送り」=写真②=を見ると、おしゃれな装飾模様が施されていました。
写真②:「縣屋」の軒下にある洗練された「持ち送り」
「縣屋」前の通りに、鏝絵めぐりの研修に訪れた左官見習いの人たちが、引率教官とともに通りかかるのに出会いました=写真③=。
写真③:左官見習いの研修生が通る「縣屋」前(2階右側の白壁に描かれているのが、「毘沙門天・弁財天・布袋」の鏝絵)。
下毛にある「安心院印刷邸」の鏝絵は、子どもをたくさん生むので子孫繁栄を託して「鼠」の絵柄です=写真④=。同印刷の社長夫妻が鼠年生まれなので、鼠の鏝絵を左官職人後藤五郎さんへ平成14年に注文。印刷屋なので、ペンとインクが描かれ、鼠は着物姿に下駄履きで、明治時代のバンカラ族風なのがユーモラスです。
写真④:ペンとインク、着物姿に下駄履きの鼠が描かれた「安心院印刷邸」の鏝絵