きのうは
午前中に口腔外科で
辛い開口訓練をやって
涙目になったので(笑)、
お昼からは
自分へのご褒美として
30年来常連の三ツ星フレンチで
デジュネを頂いてきた。
人生“メリハリ”がないと、
辛いばっかりでは
生きてゆくのも楽じゃないから、
口福のひと時は
大事な“気養い”なのである。
三月から月一で
シェフにメインをリクエストして
通っているが、今回は、
不漁のラングスティーヌ(手長海老)の
代わりとして「赤座海老」を
用意して頂いた。
*
ムニュを見ながら、
胸をときめかせ、
卓上に飾られたフルールを愛で、
見事な《レイノー》の飾り皿を
じっくりと鑑賞して
オードヴルを待つのも
フレンチの楽しみである。
*
まずは、
目新しい蓋つき器に
眼にも涼しげなジュレ。
きのうは、
戸外は30℃を超すような
真夏日だったので、
さっぱりしたモッツァレラに
冷え冷えのトマト・ジュレは
快適なスターターとして
味蕾を覚醒させてくれ、
ゆるゆると喉を滑り落ちた。
*
シェフもマダムも
口を揃えて、
「今日は、珍しく・・・
年に一度くらいで、
満室なんですよ」
と、自虐的に笑っておられた。
二階は自宅となっている
個室だけ三室の
オーナー・シェフ・レストランである。
*
ポワソンは
赤座海老のパネット。
ナイフがスッと入るほど
柔らかな身だが、
雅味のある旨味が
他の海老とは一線を画していた。
アスペルジュは
旬の時季が北上しており、
今はドイツ産に移ったという。
仄かな苦みが奥に忍んでいて、
ガルニとしては
堂々たる存在感があった。
シェフが
調理前の素材を撮った画像を
スマホで見せて下さり、
エラの部分が透明なのが
新鮮なもの・・・と、
教えて頂いた。
*
ヴィアンドは、
A5の米沢牛の
「カブリ」のブレゼ。
ナイフを入れると
繊維にそってホロリと崩れた。
深みのあるソースが絡まって
滋味深い旨味が
脳髄にまでズズンと響いた。
「カブリ」といっても、
ほとんどヒレと同じだが、
中にゼラチン質が含まれており、
それが層状になっているので、
艶冶な食感をも醸し出している。
やはり、
家庭レベルでは
入手しがたい素材と
プロフェッショナルな
調理技法によって
創り出される逸品は、
フレンチ・オタクも
唸らざるを得なかった。
*
デセールは、
ファミレスでも出てきそうな
見栄えのプディングだが(笑)、
似て非なるものである。
三ツ星シェフが創るのは、
タヒチ産のバニーユを用いて
アダルトなほろ苦カラメルに
クレーム・シャティと旬のスリーズが
ヴェネチアン・グラスとリモージュに
ドレッセされているのである。
なので、
味も推して知るべしである。
*
甘やかになった口中を
抽出したてのエスプレッソで
コキュッと引き締める。
甘味と苦味のマリアージュは、
和菓子と抹茶のそれとも同じで、
至福の瞬間でもある。
あらためて、
プティ・フールを味わい、
クレマのなかに
キャソナードを沈めて、
溶け残ったものを
スプーンで掬って
カリカリ味わうのも
稚気なる楽しみでもある。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます