古代ギリシアに、こういう判例がある。
ある船が座礁し難破した折、一人の水夫が壊れた船の板切れにすがりついて助かった。
するとそこへ、別の一人の水夫が泳いできて、その同じ板切れにつかまろうとしたが、先の水夫は、その者を突き飛ばして溺死させてしまった。
救助された後に行なわれた裁判では、この水夫は殺人の罪に問われなかった。
これは、古代ギリシアの哲学者・カルネアデスが出した問題とも言われることがあり、『カルネアデスの舟板』とも呼ばれるものである。
この例えは、現代でも、法的には刑法第三十七条「緊急避難」の例として、よくあげられるエピソードである。
圭子の衝動的行為は、まさにその「カルネアデスの舟板」だったのであろうか…。
であるならば、『蜘蛛の糸』のカンダタも、緊急避難であったとは言えないのだろうか…。
しかし、人道的には、賛否が分かれる処かもしれない。
同情はするが、いざとなったら何をするか判らない女、というので、配偶者に選ぶには躊躇する男もいるやもしれぬ…。
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