稚内出張の帰りに、中頓別町の小林町長さんを訪ねました。
先日「なかとん牛乳」ができた、というお知らせを受けて早速様子を伺いたいと思ったのです。
小林町長さんは、「せっかく"酪農の町"と言っているのに、町内でつくる牛乳が飲めないのは残念だ、という声がずっとあって、それに対する一つの答えであり実践です」と言います。
牛からとれる生乳を飲めるようにするには様々な加工の手順があって、最初から大規模に始めるのは得策ではないと考えていて、今のところ、週一回で60リットルを町内の酪農家から受け入れて、飲用牛乳の製造をすることにしているそう。
そして、これができれば次はアイスクリームやソフトクリームなどの乳製品への展開も可能になり、可能性が広がることが期待されます。
しかしやはり小規模、小ロットではコストがなかなか下げられないのが悩み。容器代だけでも安くならないので、売値も高めになるのはやむを得ないところ。
最初からビジネスとしての成功を狙うよりは、まず実際のものができて、それを町民と共有しながら可能性を探るのが良いように思います。
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帰りしなに小林町長さんが「そうだ、ちょっと一か所寄ってください」というのでついていくと、一軒の農家の軒先に入り込んでいきました。
「これこれ、これをちょっと食べてみてください」とくれたのは、町長自らが作っているニンニク。
二種類のニンニクをもらったのですが、その一つは"北海道在来"という品種なのだそう。
「北海道在来ってなんですか?」
「北海道開拓に入った人たちが故郷から持ち込み、それをずっと絶やさずに育ててきた品種なんです。今ではあまり作られなくなりました」
「それは興味深いですね。今や北海道オリジナルの食材ということになれば、ご当地グルメなどへの発展も考えられます。『日本人はコンテクスト(文脈)の中に生きる』といった人がいます。この意味は、人々はモノだけではなくそれにまつわる物語を好む、という意味です。どのような曰く因縁があるかを、歴史や人に結び付けて語るとモノの見方が変わるでしょうね」
「私は北海道の風雪に耐えてきたこのニンニクを『風雪百年』と言っているんですが、それもまた物語ですね」
単に「美味しい」というだけの農産物では差別化はできません。そこにどんな歴史があって、人の取り組みがあって、他とは違う特徴があるか、ということを掘り下げてみるべきです。
それぞれの地域にある産物。まずはこれを見極めて、それにいかに地域的で魅力的な物語を生み出すかがポイントなんだと思います。さて、中頓別町さんの動向にはこれからも注目していきたいと思います。