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北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

釧路市財政白書2013

2013-02-05 23:45:05 | Weblog

 釧路公立大学の下山朗准教授による「市民による釧路市財政白書2013」作成報告会が生涯学習センターまなぼっとで開かれました。

 以前、中間報告会に出席したこともあって、市役所代表というわけでもありませんが、半分は個人的な興味もあって参加してきました。

 下山先生の下へは、すでに釧路市役所から平成22年度に「釧路市財政情報のあり方」について研究依頼をした経緯があり、その際に行われたアンケート調査の結果、「財政情報については難しくて分かりにくい」という声が多く、もっと市民に対して分かりやすい広報が求められました。

 それを受けて下山ゼミでは、「市民による釧路市財政の理解を深めるための研究会」を立ち上げ、学生のみならず市民参加によってよりわかりやすい財政情報の提供を目指してきました。

 その研究の成果が、今日公表された「釧路市財政白書」というわけです。

 財政という極めて難解なテーマに学生と市民が理解を深めようと奮闘した成果がここに表れています。


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 白書の内容は、第一章が「釧路市の財政をめぐる数値は良いのか悪いのか」、第二章が「釧路市の財政はどんなふうに決まっているのか」、第三章が「釧路市財政は私たちの暮らしにどのように影響しているのか」というテーマで書かれています。

 第一章では、釧路市の財政を税収、経常収支比率、財政力指数、公債費負担比率といった財政指標を取り上げ、これを他市との比較や、釧路市の経年変化としてとらえようと試みています。

 それらはできるだけ「見える化」を心がけ、グラフを多用した分かりやすいものにしようと試みられています。

 評価結果は、「あまり良いとは言えない」というものでしたが、財政の状況を推し量る数値を理解しようという努力に敬意を表したいと思います。

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 第二章では、釧路市役所で内部作業による予算編成過程を追ったレポートとなっており、市議会との役割なども明らかにされています。

 発表の中で、「市長、副市長によるヒアリングが…」と何度も言われるので、「そうかな」となんだか不思議な感じ足しました。

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 第三章では、市の財政は具体的に市民の日常生活にどのように影響しているのか、を三つの例を挙げて、コストとその意味を明らかにしようとしています。

 救急車を一回利用するといくらかかるのか、ごみ一袋を処理するのにはいくらかかるのか、給食一食当たりいくらかかっているのか、についてコスト構造を示すことで、市民がサービスを享受するうえでの課題を整理しています。

 まだまだ追及が甘くて、突っ込みどころも満載なのですが、今までなかったこうしたテーマのレポートを作り、ゼロを1にした功績は大きなものがあるでしょう。

 


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 私が最後にコメントを求められ、発言したのは二つの視点です。

 一つは、「受益者負担とサービス」という視点。

 救急車は利用しても無料ですが、これは無料であるためにモラルハザードが起きて、軽微な症状でもタクシー代わりに使う人が増えています。

 だからといって、一回幾らという料金を請求してよいのでしょうか。

 市民の生命と財産を守るという市役所の役割の真髄は命を守ることで、そこに料金ハードルを設定して良いのかは議論になるところでしょう。

 私たちはそうした受益に応じた負担がどうあればよいかを日々悩んでいます。


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 もう一つは、「問題の社会化と個人の責務・自由」という視点です。

 給食の議論がありました。

 本来なら親として子供に与える昼食には世話をする義務もあれば、食べさせたいものを食べさせる自由もあるはずです。

 しかしそれを個人たる親の自由に委ねていると、昼食が満足に与えられない子供たちや各自の昼の質にもばらつきが見えます。

 集団で生活をするうえで、一定の質を保った昼食を担保しようと思うと、全員に同じものを供給することが食育などの教育的観点からも良いという事で、市役所が給食という形で税金を投入する行政的価値があると判断をしました。

 市役所が実施している行政ニーズは、市民や社会からの要請を受けて問題を個人に負わせるのではなく、社会全体で受け止めましょう、ということに外なりません。

 市民一人一人はそのことから受ける利益と負担を認めてくれなくてはなりません。

 そこで社会の問題を行政が受け止めるべきなのかどうか、ということは常に議論されなくてはなりません。

 財政という小窓を開いてみると、財政というお金の問題だけではなく、行政ニーズの最前線での問題が見えてきます。

 今回のこのような取り組みが、市民一人一人への財政問題、そして社会全体に対する関心へとつながってくれればこれに勝る喜びはありません。

 これからも関心を持ってくれる市民が増えることを期待しています。

 白書をまとめてくださった関係者の皆さんに心から敬意と感謝を申し上げます。
 
 

コメント
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