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駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『クラウディア』

2022年07月13日 | 観劇記/タイトルか行
 東京建物ブリリアホール、2022年7月12日18時。

 愛を禁じられ、戦いに明け暮れる「根國」と「幹國」というふたつの民族しかない世界。神親殿(湖月わたる)という神が定めた絶対の掟に背いて、ふたつの恋が芽生えた。民族を越えて密かに育まれる愛と自覚せぬままお互いを想い合う愛のふたつが、やがて世界そのものを揺るがしていき…
 脚本・演出・振付/岸谷五朗、主題歌/サザンオールスターズ、衣裳/山本寛斎事務所。全編サザンの楽曲を使用した音楽劇で、岸谷五朗も寺脇康文も出演しない「Produced by 地球ゴージャス」作品。2004年初演、全2幕。

 そんなに回数を観ているわけではないのですが、何故か惹かれるものがあって行って、そしていつもなんかソリが合わないなと思って帰ってくる…というのを繰り返しているのが私にとっての地球ゴージャスです。過去にはこちらこちらこちらなど。
 やろうとしていることはいつもわりと大がかりなエンタメで、そのコンセプトはいいと思うし、この作品も初演当時はジュークボックス・ミュージカルなんてまだまだ珍しかったと思うので斬新だし、なのでいいと思う部分もホント多々あるんですけど、でもなんか…大味に感じたり笑いのツボが違ったり、なんかこう…あまり良くない観客ですみません。
 今回も、歌って踊れて殺陣もタップもできるアンサンブルは素晴らしくて最強だし、ロミジュリみたいな設定での(衣装も赤と青に別れているし)ラブストーリーってのもベタだけど素敵だし、役者はみんな素晴らしく歌えて踊れて音楽劇だもんこうじゃなくちゃね!とたぎるのですが…
 でも、なんでこんな台詞なの? いや、わざとこうしているんだとは思うんですけれど…ロミジュリに引っ張られてシェイクスピアふうってことなの? なんかヘンにポエミーな、文語的とも言えない、要するになんかリアリティのない芝居がかった大仰な言葉遣いの台詞の羅列で、私は設定がファンタスティックなんだからそこに生きるキャラの在り方やしゃべる言葉はリアリティがあって普遍的なものにしないと共感しづらくない?と考えるタイプなんですけれど、作者はそうは思っていないということですよね…
 あと、キャラが全然立っていないのも気になりました。書き割り、お人形みたい。長、とか歌姫、とか女剣士、みたいな役職というか立場というか設定しかなくて、性格とか生い立ちとか人となりみたいなものが全然見えない、記号的なキャラクターで、ますます作り物めいていて、私は共感も感情移入もしづらいなとちょっと退いて観てしまいました。
 それと、これまで「再演は皆無で時代が後退しない限りありえない」としてきたこのプロデュース企画が今回この作品を再演したのは「時代が後退した」から、「人類が犯した『大きな過ち』の時代へ急速に遡った』から、というのはものすごく納得なのですが、「初演でぶつけた反戦というテーマが一八年後の今日、最も必要不可欠なテーマになろうとは」というほど、これって反戦の物語かなあ?と私は疑問なのでした。小うるさくて申し訳ない、でもこれ、ちょうど再演観てきて原作漫画を再読したところだから思うのかもしれないけれど、『風の谷のナウシカ』同様に反管理、反コントロールの物語でしかなくない? つまり、戦うことは残念ながら人類の本能に組み込まれてしまっているのかもしれなくて、でもそれも含めて人間なんだから、たとえば闘争本能を抜いてより優しく賢い人類を作ろうとするとか、そういう不遜なコントロールや管理は、たとえ神や宇宙人であろうとやめろ、俺たちに手を出すな、俺たちは自分で考えて自分で決めて自分で生きる、もしその結果滅ぶならそれも受け入れる、だが外から口出しするな手出しするな、俺たちの生命は俺たちのものだ、俺たちが自分で滅びの道から抜け出すようがんばって変わる、変われるはずだ、だから手出し無用、生きねば…ってお話なんじゃないのかなあ? というか、そうなるようもっと整理すべきだったと思うのです。
 神親殿(なんて名前だ、なんて漢字を当てるんだ。まさしくカルト宗教ですよタイムリーすぎます)がしていたことって要するに、人類は放っておいたら愛し合いもするがその陰に必ず憎しみが生まれ戦いが生まれ戦争して爆弾使いまくって地球もろとも滅ぼしそうになったので、人間に愛を禁じ、男女とも成人したら乱交して国のための子供を作りその子供は親から離して国が養育し戦士に育て、闘志の発散のために隣の国との小さな戦争を続けさせ、ただし人が死にすぎないようにまた生まれすぎないように、銃器は規制するし男女の数も管理する、そういうコントロールされた社会を作っていた、ってことですよね? それに対し、個別に愛し合ってしまった細亜羅(この日は甲斐翔真)とクラウディア(この日は田村芽実)は抗い、細亜羅と昆子蔵(この日は小栗基裕)も実は幼なじみなので本当は戦いたくなく、そして昆子蔵は実はクラウディアの父親だったので(一体何歳の設定なんだ…)親子の情が湧き、そんな昆子蔵がクラウディアにかまう様子を見て自分の中の彼への想いに気づく織愛(美弥るりか)がいて(愛が禁じられているのに名前にこの字を使うことは許されているのか…)、この世界の有り様はこれで本当に正しいのか?となっていく…というお話になっているんだと思います。で、神親殿と実はその弟だった(ここでも姉弟萌えが…!)龍の子(この日は新原泰佑)が退治されて終わるわけですが、でもそれだけなんですよね。
 細亜羅も昆子蔵も織愛も死んで、クラウディアだけは生き残るけれど、残された二国の民が平和を誓うとか愛を取り戻すとかそういうことは特に描かれない、ように私には見えました。だからこれは単に男女の自由恋愛を取り戻した、神から解放されたというだけの話で、別に反戦とか平和の話ではないように私には見えました。
 でも、それにしてはそういう社会の仕組みを作り人類を導こうとした神親殿の理屈が中途半端というか未整理で、イヤそれは間違っているヒロインとともに立ち上がろう、オー!みたいな構造にストーリーがなっていなかったのがモヤモヤしましたし、SFとしても中途半端に感じられました。成人したら乱交、ないし組織が決めた相手と番い子供を作れ、なんてまさしく旧統一教会がやっていることでおぞましすぎるんですが、それが何故いけないのか、何に反しているのか、ということが全然語られていなかったように思いました。そもそも細亜羅とクラウディアがどう出会い何故恋に落ちたのかも描かれていないし、ふたりは衝動に酔っているだけで本当に理解し合い愛し合っているのかちょっとナゾな描写もあったりするので、主人公側が正しい!って感じがあまりしないのも、ストーリーとして弱いんですよね。なんかそういう全体のゆるさ、ぬるさが、せっかくおもしろいこと、いいことをやっているのにもったいなくて、毎度歯がゆくてイライラさせられて、なのにこんな豪華な座組でいいセット作っていい音楽でいいパフォーマンスしてて、悔しいやら虚しいやら…という砂を噛むような思いを私は毎度させられるのでした。脚本は手放さない気がするから、誰かもっといいプロデューサーがつくといいんじゃなかろうか…それか岸谷さんはせめて演出だけに徹するとかね。あ、でも今回振付はすごくよかったと思うので、振付もできちゃう岸谷さんってホント異才だなあとは思うんですけれどね。
 というわけでストーリーにはとても不満(というかもったいない感満載)なんですけど、役者がみんなよかったのと、お目当てで行ったみやちゃんが素晴らしすぎたので、まあチケット代の元は取ったかもしれない…というのはあります。みやちゃんの女剣士役、殺陣と歌とダンス、絶品でした。刀の錆になりたい人生でした。コロナ対策かキスは宝塚式に見えたけど、どうかな? あとラストの田村芽実のシャウトね! 素晴らしすぎました。
 この日のヤンは中河内雅貴。ダブルキャストを多く配し、同じ組み合わせの回が全然ないようです。大変だろうけど、通うファンには楽しいだろうしコロナ対策にもなっているのかもしれませんね。
 …と思っていたら、私が観た回を最後に中止に入ってしまう模様…残念です。
 第7波、確実に来ていますよね…ホント政府は何もしないよね、外国人観光客はノー検査で入れ出すし、隙あらばGoTo施策をやりたがるし…うちの両親は4回目のワクチンを無事に終えましたが、老人以外にはマジで基礎疾患持ちにしかもう打たないつもりなんでしょうか。それでは感染拡大が止められないのではないでしょうか…
 興行側も、もう3日おきに全員検査するとかはやめているんだと思うんだけど(それだと必ず誰かしら陽性が出るから)、それでもやはり発熱や体調不良の申告はさせているんだと思うんですよね、それはコロナでなくてもあたりまえのことではありますが。で、やはのメインどころに症状が出ると、ダブルキャストを組んでいない舞台はアンダーがいてもやはり続行はつらい…ということになるのではないかしらん。
 対策に飽きたり、疲れたりするのはわかるんだけど、地道にやっていくしかないと思うので…がんばれ演劇界! がんばれエンタメ! そしてこんな選挙結果じゃ怪しいかもしれないけれど、引き続き支援してあげてください政府! 何より国民の生命と生活を守ってください! 頼みますよ…
 私も襟を正して、気をつけつつ、生き抜きたいと思います。



 




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