駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

萩尾望都『マージナル』

2009年11月28日 | 愛蔵コミック・コラム/著者名は行
 小学館プチコミックス全5巻
 モノドールの街は死にかけていた。不毛なマージナル・ワールドには男しかいない。唯一の女である「マザ」は老い、子供は年々減っていた…
 これまたすばらしくよくできたSFの傑作です。
 メイヤードというのは『スター・レッド』ペーブマンの流れを汲むのでしょうか。ちょっと手塚治虫作品のロックを連想させますね。好きだなあ。
 完全な共感力を持った「夢の子供」として作られた少年が、病んだ地球の夢見る愛と再生に共感して、命を賭して星を救う。すごい話です。
 これまた以前はラストシーンが不満でした。グリンジャもいいけれど、健全で健康でまっすぐで前向きなアシジンの方が生き方としては正しいと思うし、確かに三角関係というのは微妙で危険ですわりがよくない。
 でも、今はこれが真実か、とも思います。
 人類の未来の象徴でもある最後のキラの両隣には、生や繁栄を体現するアシジンと、死や滅亡を体現するグリンジャとがいる、どちらに転ぶかわからないし、どちらかがないのも変なのだ、ということなのだ、と今は思うのです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

萩尾望都『A-A’』

2009年11月28日 | 愛蔵コミック・コラム/著者名は行
 小学館プチコミックス萩尾望都選集Ⅱ17
 コンピュータ制御のエキスパートとして人工的に開発された一角獣種をめぐる連作短編集。
 クローンとはどういうことか、魂はどこにあるのか、感情とは何か、感覚が違う相手と恋愛するってどういうことか…といったことを考えさせられる作品群です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

萩尾望都『エッグ・スタンド』

2009年11月28日 | 愛蔵コミック・コラム/著者名は行
 小学館プチコミックス萩尾望都選集Ⅱ16
 短編集。表題作の舞台はナチス・ドイツ占領下のパリ。ルイーズは公園で少年ラウルを拾うが…
「誰がおまえを裁くだろう? 愛も殺人も同じものだと言うおまえを?」
 そう言ってマルシャンはラウルを撃った。ラウルは目を閉じて待っていた。マルシャンに殺させてはいけないのが本当なのだ。ルイーズを死なせてはいけないのが本当なのだ。ラウルのような死に魅入られた子供を作ってはいけないのが本当なのだ。戦争があってもなくても人間は「きわどいところにある」。本当のことを知っていなければいけない、と思います。
 併録は堕胎の罪悪感を扱った現代的な『天使の擬態』と、「ビッグコミックオリジナル」に掲載された二本。学生時代からの三角関係を描いた『十年目の毬絵』はともかく、『影のない森』ははたしてどうおじさまたちに読まれたのでしょう…
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

宝塚歌劇月組東京特別公演『SLAPSTICK』

2009年11月27日 | 観劇記/タイトルさ行
 日本青年館、2002年7月5日マチネ。
 時はハリウッド草創期。ケベック生まれのミコール・シノット(霧矢大夢)はオペラ歌手を夢見てニューヨークへやってきた。マック・セネットと改名してバーレスクの端役として働くうちに、コメディ映画の魅力に取り付かれ、バイオグラフ社に押しかけて映画制作を学び始める。そこへ、モデルをクビになったおてんば娘のメイベル・ノーマンド(紫城るい)がコメディ映画女優になりたいと志願してくる。当時、コメディ映画はヨーロッパが主流で、アメリカでは下品なものとされていたが、セネットはアクション満載のドタバタ喜劇、スラップスティック・コメディをアメリカで撮りたいと夢見るようになり…作・演出/小柳奈穂子、作曲/吉田優子、振付/御織ゆみ乃。
 …新人のデビュー作・演出とはいえ、久しぶりに痩せてスカスカで何もない舞台を観てしまいました。
 一幕は「ああしてこうなりました」的なお話があるだけでキャラクターもドラマもナイ。
 二幕に入ると一転してシリアスというか深刻ぶった展開になって、全然ついていけません。馬鹿馬鹿しくておもしろおかしい映画が作られる一方で、愛も憎しみも戦争も犯罪もある人生があって…というようなことがやりたかったんだとしたら、あまりにも力不足なのでは?
 逆に出演者は完全に役不足。あの脚本ではどうにもならないでしょう。お疲れさまなことです。
 マック・セネットという人は20世紀初頭の実在の映画監督だそうですが、作者はこの人の人生の何にどういうヒントを得たのでしょうね。史実をそのままやるんだったら伝記を読んだ方がよっぽどおもしろい訳で、舞台で、しかも宝塚歌劇でやるからには、もっと何かちゃんとした焦点が必要なはずなんですが。その焦点に絞って、題材だけはもらって、架空のキャラクターたちをきちんと作ってあげた方がよっぽどいいんじゃないでしょうか…『JFK』ですらなかなかにツラい、と思った私なので、厳しすぎる意見なのかもしれませんが…
 青年の理想、奮闘、青春、成功、そして失恋、転落…みたいなものを描きたかったのなら、それに焦点を絞って、まずはちゃんとラブコメディをやらせるべきでした。結ばれずに終わる、でも戦友、みたいな男女関係を描きたかったのだとしたら、それはなかなかおもしろい視点だと個人的には思いますが、もっといろいろ整理・肉付けしないとね。
 史実をそのまま丸投げしても誰も感動しません。台詞で説明しようとしていますが説明になっていないし、そこをこそドラマで見せてくれないと感動なんかできないよ、というくだりを説明台詞で流してしまっていると思います。セネットがどう成功したのかよくわからないし、セネットとメイベルが恋愛しているのかもよくわからないし、誰がどう悪者なのかとかよくわからないし、メイベルがゴールドウィンのところへ移籍する理由もよくわからないし、メイベルとテイラーとの関係もなんなんだか全然わからないし、ドラッグがどうとかも全然わからないし、そもそもモデルをクビになる経緯もよくわからない。この「わからない」は、「判然としない/意味が理解できない/共感できない」、全部です。
 キリヤンはホント危なげがないなあとか、娘役に転向したヒロインは健闘していたなあとか、月船さららちゃんってタモさん(花組先々代トップスター愛華みれ)にそっくりに見えるときがあるなあとか、城咲あいちゃんがかわいかったなあとか、いろいろ思いましたけれど…とにかくまず、いい物語が観たかったです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

牧阿佐美バレエ団『白鳥の湖』

2009年11月27日 | 観劇記/タイトルは行
 ゆうぽうと簡易保険ホール、2002年6月21日ソワレ。
 晩夏の午後、城の庭。今日は王子ジーグフリード(ベン・ヒューズ)の21歳の誕生日。友人たちや村の者たちがお祝いに集う中、王子の母である王妃は、花嫁となる女性を選ぶよう王子に告げる。だが王子はまだ友人たちと戯れる方が楽しいようで、白鳥狩りをしようと夜の森に出かけていく。湖のほとりでひとりになった王子は、一羽の白鳥が美しい娘に姿を変えるのを見て驚く。彼女はオデット姫(草刈民代)と名乗った…演出・振付/テリー・ウエストモーランド(プティパ・イワノフ版による)、作曲/P・I・チャイコフスキー、芸術監督/三谷恭三、管弦楽/ロイヤルメトロポリタン管弦楽団。
 私が幼稚園から中学一年までずっと同じクラスだった男の子で、何やら高名な音楽家の遠戚にあたり、自身も音楽一家に育ってピアノかなんか習っていた子がいたのですが、何故だか理由は覚えていないのですが小学校一、二年生のころにその彼から『白鳥の湖』のレコードをもらって、それが私が最初に持ったレコードのうちの一枚だったということがありました。チャイコフスキーの音楽のハイライト版に、物語のあらすじのナレーションがかぶさるという、子供向けのお話レコードでした。それ以来、私はずっとこの音楽を愛してきて、今でも一番好きなバレエの演目なのです。私はミーハー・バレエファンなので、有名海外バレエ団の来日公演にばかりいそいそと出かけているようなていたらくで、今回初めて日本のバレエ団の公演を観ました。
 おそらくは振付がよくできているのでしょうが、第一幕、王子の友人たちや村娘たちが音楽によく乗って踊る美しいパにみとれて大満足だったのですが、そこへ登場した外国人ダンサーによる王子は…王子に見えませんでした。日本人とは明らかにちがうプロポーションがおっさんのようで…おでこも後退していて御髪も薄かったし…とても成人したばかりの若者とは…ごにょごにょ。
 第二幕、湖のほとりで踊る白鳥たちはなかなか揃っていて美しく感じましたが、やはりまだまだ足が短い…チュチュの位置が見慣れたところよりだいぶ低い感じがしました。踊りは端整で良かったんですけれどね。
 映画『Shall Weダンス?』でしか私は知らないヒロインは、黒鳥オディールの方が生き生きしていてよかった気がしました。もっと、本当に白鳥のようにしか見えないはかなげなオデットを見たことがあるので…でも、ロットバルト男爵が翻す黒いマントの陰からオディールがパッと現れたところは、本当にかっこよかったなあ。
 第三幕の民族舞踊はどれも大好き! 良かったです。私は音楽がどうしても頭に入ってしまっているので、バリエーションやコーダなどパート分けされて間にレヴェランスが入って音楽が中断されるのがどうにも好きじゃないのですが、黒鳥のパ・ド・ドゥはわりとおっかぶせ気味にほぼ続けてやってくれたのでうれしかったです。その方があそこは盛り上がると思うし。
 第四幕は、わかっていても感動してしまうのですが…あのスワンボートはどうだろう…ヘンじゃない…?
 ともあれ、大満足した三時間でした。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする