駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇宙組『MAKAZE IZM』

2023年01月15日 | 観劇記/タイトルま行
 東京国際フォーラム ホールC、2023年1月12日15時半。

 宙組トップスター真風涼帆の過去と未来に迫るリサイタル。構成・演出/石田昌也。全1幕。

 ダーイシは打診を受けた際に『FWM』を観てから、と即答しなかったそうで、それは自分が「時代に付いて行っていない」自覚があったからでもあるんだそうな。よくわかってんじゃん。なら勉強するか、勉強するほどの情熱がもうないなら引退するべきだと思うんですけど…今回は若手スタッフたちにアンケートなどもして、好きだったゆりかちゃんやゆりかちゃんで観たかったものを並べるタカスペならぬマカスペに徹することにしたようで、それは奏功していたと思います。拡大版さよならショートでも言いましょうか…ただ、すべて演出助手を務めている雑賀ヒカル先生の手腕によるものなのかもしれません。どうかパワハラ被害などに遭っていませんように、とせつに祈ります。
 だってこの期に及んで、というか今回の文春砲事件があろうとなかろうと、「海人イレブン」みたいなコント場面の台本に許可を出している、あるいはスルーしたまま上演させている劇団の気がホント知れないんですよ。ホテル支配人らしきすっしーと副支配人のまっぷーが、リゾートホテルでバカンスを楽しんでいるミスターSのゆりかちゃんに、「カンパニー」と呼ばれる職場に戻るよう言い、スターSは「あそこでは大変なことばかりやらされてきたから嫌だ」とゴネる…という設定なんですよ? もちろん、そのあとに出てくる、ずんちゃんカイルやあきもニコライ、しどりゅージョルジュや極めつけはかのちゃんホームズという、メンバーが扮するゆりかちゃんのかつての役たちとゆりかちゃん扮するスターとのデュエットがキモの場面なんだ、ということはわかりますよ? でも、清く正しく美しい、愛と夢と伝統のスミレの花園を、ブラック職場だとにクサして落として笑いを取ろうとするようなホンを書く男なんですよ所詮ダーイシは。なんでこんな作家をいつまでも起用してるの劇団? なんでこんなコントをのうのうと上演しているの劇団? なんでこんなことを毎度毎度スターにやらせてんの劇団? なんで気づかないの反省しないの改善しないの劇団?
 そんなんだからMCでのフォローがあろうとなかろうと「でも事実無根ではないんでしょ?」って思われちゃうんじゃん、だって一事が万事なんだからさ。文春砲事件がなくても私はこの場面にざらりとしたものを感じたでしょうが、あってなお未だ台本に手も加えずに上演し続ける劇団の神経が心底理解できません…馬鹿なの? ねえ、馬鹿なのかな??
 第二文春砲事件に関しては後述します。

 まあそれも含めて、たとえばオープニングのお衣装なんかももう完全にダーイシ節で、まあでもそれは「あー、ねー、ハイハイ」って感じだしなんせスターが人質に取られているんでおとなしく観ますよそれはね。
モアダン』ではなかった「♪ダンディー、それは~」があるのは何故?とか思っていたら、『ネオダン』がゆりかちゃんの初組子ショーだったのかな? 懐かしいですね、この歌自体は好きだったので私は嬉しかったです。星組時代の楽曲のメドレーも懐かしく楽しかったです。プログラムにはもっと絡む組子含めて細かく紹介、記載してほしかったけれど、まあセトリをバラしたくないという判断なのでしょう。でもせっかく少人数口で使われる下級生の識別チャンスなのになー…考慮をお願いしたいところです。
 ずんちゃん指導の下、客席が三三七拍子の手拍子で参加する「ナイガイ」は楽しかったです。やったことないけど、太鼓の達人とかのリズムゲームみたいでもありました。
風共』企画もよかったと思います。ゆりかちゃんのバトラー姿ももちろんいいけれど、これはなんか観たことある気がしたので、それよりかのちゃんのスカーレット姿に感動したなー! かのちゃんなら真紅のドレスか緑のカーテン地のドレス、喪服の黒ドレスも似合いそうだけれど、ここはベタにこの緑のヘアリボンとサッシュベルトに白の段々フリルのおっきな輪っかのドレス、やはりコレですよコレ! なんせかのちゃんはこのままいくとおそらくショーで一度か二度くらいしか輪っかのドレスを着ないままに卒業することになりそうじゃないですか、着せられるチャンスにはなんぼでも着せましょう! 別に歌は上手かないんだけどそれはゆりかちゃんもおんなじだからいいんです(^^;)。さらにずんちゃんセンターのセントルイス・ブルース、そしてゆりかののナイタンデー! キャー!! これは滾りました、大階段と銀橋が見えました。あの手のひらチョン!はやっぱやってくれないとねー!! あっきーの顔しか観るとこねえ、と思って通っていた宙『風共』の供養が少しはできましたよ…
 でも歌の前の台詞は、おそらく卒業を控えたふたりに沿うように変更したつもりなんでしょうが、今ひとつ不発だと思いました。こーいうとこだよダーイシ…
 あと、ここがゆりかので観たかったものコーナーだったのなら、『風共』一発だけでなくフェルマリとかトートシシィもやらせるとかしてもよかったのではないでしょうかね?
 ジャポネスク場面は、ずんちゃんともえこが青い法被に黄色の襷、差し色が赤で、ガンダムかドラえもんみたいで良きでした(笑)。ゆりかちゃんに熊本民謡を歌わせて、かのちゃんには娘役全員引き連れてソーラン節、というのも大正解。
 そこからのコント場面はコンセプトはアリだったと思うのですが…そして娘役のアイドル場面、アイドル歌唱だったのがちょっと残念だったかなー。もちろん、あえてなんでしょうけど、単に下手なのと紙一重だなと私は感じたし、この楽曲でももっと娘役芸としての可愛くてカッコいい歌唱をしてほしかったのです。
 そこからのトーク・コーナーは、私が観た回はかのちゃんがすっしー、まっぷー、ずんちゃんそしてゆりかちゃんの似顔絵を描いてきて、どれが一番似ているか観客にペンライトの色で判定してもらおうというもの。かのちゃんが「今日はサプライズです!」と言い出すのにずんちゃんが「いつもじゃん!」と即つっこみ、「3秒待ってください!」と言って似顔絵を取りに袖にハケるかのちゃんに「自由だなー!」とずんちゃんがまたつっこむのを観て、ああ毎回こんななんだないつもこんな感じなんだな、と微笑ましく察しました(笑)。似顔絵はほぼどれも同じやんという出来で、判定はわずかにゆりかちゃん。でもその後、吸水係として現れた鳳城のあんくんが描いてきた似顔絵がイラストふうのやや小洒落たもので、かのちゃんは本気で焦り、ずんちゃんが「歌劇」のえと文に載せると言い出してまた本気で悔しがり、ジタバタ地団駄踏んで「昭和のアニメみたいな動き…!」とまたまたゆりかちゃんをツボらせる、楽しい一幕もありました。
 そのあとはJ-POPコーナーだったのかもしれませんが要するにカラオケだな、という感じ。そしてまた主題歌を全員で…みたいな流れでしたでしょうか。
 やはり男役も娘役ももうちょっと少人数口を作って、誰が誰か識別できる時間、場面が欲しかったなーとは思いました。ピンの出番があるのはずんちゃん、もえこ、じゅっちゃんくらいで、あとは出るとなったら常に一緒に全員出るバックダンサー扱いだったからです。
 ただ、もちろんそれでもキヨちゃんのダンスは目を惹きましたけれどね。あとさよちゃんはもはや娘役の長ですが、どの場面でも髪型に工夫があったし、金髪のヒロコはどの場面でもお人形さんのような美しさ愛らしさで目立っていましたし、そこにまた違う生き生きした魅力とコケット、パンチを乗っけてくるさらちゃんがとてもよかったです。有愛ちゃん、愛未ちゃんは特徴あるお顔だし、夢風ちゃんと美星ちゃんを覚えられた気がしているので、あとふたりももっとじっくり見たかった…!
 …と、そんなメンバーチェックをしていたら二時間弱なんてあっという間なので、まあ一回観るくらいの私程度のファンならそこそこ満足なショーだったのではないでしょうか。セット(装置/稲生英介)も定番ながらゴージャスに見える仕様で、小さな盆も効果的でよかったと思いました。
 無事に休演日も越えたようですし、後半戦もしっかり盛り上げて、無事の完走をお祈りしています。


 最後に。
 前回のダーハラ号とは違って、今回の「週刊文春」は私は読めていません。次に出社したときに会社の資料室とかで読めるかもしれないけれど、まあ読まないかな。もう面倒だしな。
 電子で有料部分を読んだ知人によれば、「劇団関係者」なる者の伝聞レベルの「証言」だそうで、そんなのうちらファンだって立派な「関係者」だし、呑んで愚痴って噂話するレベルの戯れ言クラスの話だな、と感じました。ちょっと芝居やダンスの息が合わなければ「実は仲良くないのかね?」くらい言うし、リフトがなければ「男役の腰が悪いのか、娘役の乗り方が下手なのか、仲が悪くて息が合わないのかな?」くらい言いますよファンでも、誰でも。あまり前例のない、ほぼ不可解と言ってもいい人事があったときとかも、何が原因なんだろうとかそりゃ憶測するし勝手な推理するしまことしやかに語ってみせたりしますよ仲間内ならね、呑みの席でならね。そのレベルの話でしょう? わざわざこんな記事にしても、メイン読者のおじさんたちには芸名も読めないし誰かも知らないし観たことなくて関係なくて、全然望まれない、売れない記事だったんじゃないですかね? なんのためのものだったのか、純粋に疑問です。この話題には宝塚ファンしか興味を持たないし、ファンはスルーするか手を出さないか手が出せないかだと思うので、売り上げにも広告にも評判にもなんら寄与しない気がしました。これで飽きて文春がもっと意味ある方向を向いてくれるといいんですけれどねえ…
 ただ、上下関係が厳しい世界であることは喧伝されていて、美談として語られがちだけどその「指導」がいきすぎていないのか、高圧的になりすぎていないのか、立場が弱い者をただいじめる形にはなっていないか、という観点はあたりまえですが常に必要です。そして劇団がそれをきちんと把握し正しくコントロールできている組織だとはとても思えない、たとえファンでもそんな信頼は劇団には寄せられない、そこが問題なのです。だから、戯れ言レベルの噂話や与太話、事実無根とされる誹謗中傷であろうと「ああ、まあ、でも、そういうこともあるんじゃない?」と、ファンにすら思われてしまう。そこが問題なのではないですか。劇団はこの問題を真摯に受け止めてほしい。そしてマジで少しも早く専門家の手を借りてください、あんなリリース出しただけで済ませられると思っていられる企業マジ今ヤバい。
 事実無根の誹謗中傷だというなら、文春にきちんと抗議し法的措置も辞さずに行い、そのことをこそファンに報告すべきです。そうした措置の報告も何もないあんなリリースならむしろ出さない方がよかった、完スルーの方がマシでした。そういう突っぱね方を貫く、スミレのカーテンを下ろし続けるという道はあったと思うからです。
 そしてもちろん、どういう経緯ですることになったのか、どこまで事前の確認や許諾があったのかははなはだ謎ですが、今回のリサイタルのトーク・コーナーで生徒自身に弁明させるなんてことはとにかく絶対にするべきではなかった。しかも加害者側とされる片方のみの発言なんて、絶対的におかしい。双方それぞれの言い分を聞かなければ、真実が何かは解明できないのではないですか? しかも、コメントはよくよく考えられたものなのかもしれないけれど、「彼女は私の言葉をそんなふうに受け取る人ではない」という言い方は、受け取りようによっては加害とも取れる発言を上級生側がしたこと自体は否定していない、ということになる。そこは認めてしまっていいのでしょうか? でもどんな意図であろうと真意であろうと、された側が被害だと感じればそれは害なのです。こうした発言そのものを改善していかなければならないのです。そこをスルーしようとしていないか劇団?
 実際にはそりゃイロイロあったのかもしれないよ、人間だもの組織だもの。でもプロなんだし、ガタガタ言わずにビジネス・パートナーとして黙って互いにベストを尽くせや、とも思うし、周りも最大限のサポートをするべきだとも思います。だってそれで商売している団体なんだから、そこが売りの組織、芸なんだから。でもトップコンビ一本被りで非人間的なまでに働かせてはいけない、しごきやいじめで働かせてはいけない。当人たちが自主的に、楽しく、気持ちよく、健康に働ける環境を整える必要が、経営者側にこそあるのです。
 劇団が、やるのです。演目としてサービスとして、より豊かな高みを目指すためにも、所属する若者たちをきちんと育て導き自立していけるように計らい、労使ともども互いに尊重し合い助け合い高め合って、より良きものを客に見せて金を取る…それを目指すべきでしょう劇団は。そのために誠心誠意注力すべきなのです。
 お嬢さん芸、とか言われがちな宝塚歌劇だけれど、経営側こそいつまでも坊っちゃん芸でやってんじゃねえ、と言いたいです。プロとして、21世紀も生き残っていこうという企業として、もっと腹括ってアップデートしてコンプラ守ってキリキリしっかりやらんかい、と言いたい。現状、まったく信用できません。目に見えていることがすべてです、そこから推して知るべし、です。改善の予感すら感じられない今回の措置には本当に納得しかねますし、ただただただ残念です。
 ゆりかちゃんがまどかにゃんに電話して、かのちゃんもまどかと長々話して、なんの問題もなくて、お互いがんばっていこうねってなって、ってのも、まあそうかもね、よかったね、とは思いますよ。それは嘘だとは思わない、でもだからって上級生から下級生への指導という名の暴言めいた圧力が絶対になかったなんてそれこそ絶対に言いきれません。逆に言えばどこででもあることで、でも決してあってはいけないことで、なくしていかなきゃいけないことで、そのための不断の努力が必要なことなんです。報告、発表するならそういう、なくしていくために新たに講じた策とか、そういうことであるべきです、「あんなの嘘です」みたいな子供の言い訳みたいなしょーもないリリースではなくてさ。
 あとは、再三言っていますがトップ娘役の極端な低学年化をやめることです。トップスターの就任時期はいっこうに早くならないのに、トップ娘役は新公内がほぼデフォルトなのはおかしいです。娘役は女優とは違います、若く綺麗なかわい子ちゃんになら誰でもできるというものでもない。娘役にも年月をかけた娘役芸の習得が必要なのです。若くさせたいならコンビともども就任学年をもっと下げるべきで(セカンドキャリアのことを考えて私はずっとこの説を提唱してきました)、トップコンビの学年差が十も十二もあるのは不似合いだし不自然です。プロジェクトのリーダーコンビとして経験差がありすぎて、そこにほぼすべての興行を背負わせようなんて無理ゲーです。こんなプロジェクトを組む経営陣の方がおかしい。女は若い方がいい、と言うしょーもないおっさん理論丸出しでもある。今すぐ滅べ。
 そしてもっとお見合い爺として責任を持て。きちんとしたビジョンを持ち、事業計画を練ってくれ。いろいろ試していろいろ模索して、それでも敷いた線路のとおりに走ってくれない列車なのかもしれませんが(いいのか親会社が電鉄なのにそんなんで)、最大限の努力をして最高の座組で興行してほしい、それに尽きます。
 人を愛し、信じ、慈しみましょう。基本的人権を尊重しましょう。関わるすべての人々を尊厳ある存在として扱い、愛と夢と希望に満ちた作品を作り出しましょう。その上でもちろん儲けましょう、そしてそれはまた社会に還元していきましょう。それが創作、経済、世の中の仕組みというものです。困難な道です。だがその覚悟がない者は今すぐ去れ。
 他山の石どころか火中の栗です、イヤこの栗は他人のものなので正しい喩えではないですね。ともあれ新年早々大変なことですが、膿を出すのが早い方が治りもまた早い。気合いを入れてがんばるしかないのです。
 みんながみんな、なんでもいいと言ってついてきてくれる盲目的、妄信的なファンばかりじゃないよ。これで心が折れて観劇回数を減らしますって層が一定数いるよ、それくらいファンの多くの女性の多くはつらい現実に傷ついているんですよ。慰めを求めて観た宝塚歌劇にまで裏切りの影が見えたらそら離れますよ、それは肝に銘じないとダメですよ。今までなんとかなってきたんだとしても、今は本当に厳しい時代です。その覚悟を持ってくれマジで。
 私はたかだか三十年観ているだけの一ファンにしかすぎませんが、この社会の立派な構成員のひとりです。この意見を無駄にすることなく、一歩ずつでも改善し前進していってほしいです。私も日々アップデートに心がけます、しょーもない老害になりたくないですからね。
 言われているうちが花ですよ、お互いにね。頼みますよホント…





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